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インタビュー/関口 紘一
[2016.03.23]

『HYBRID Rhythm & Dance』公演直前
平山素子=インタビュー

スペイン、バスク地方の伝統打楽器「チャラパルタ」とアイヌに伝承されている唄、そして私たちのダンス

motoko_hirayama.jpg photo:Shiratori Shintaro

----今回の公演タイトルは『HYBRID』ということですが。
平山 いわゆる共同作業ではなくて、HYBRID、種の違うものを掛け合わせながら新しいものを生む、そういう気持ちで臨んでいます。
バスク地方の伝統打楽器「チャラパルタ」による音楽とアイヌに伝承されている唄と、私たちのダンスを組み合わせる、伝承しているものと、現代を切りとった視線でダンスを提案しているものと掛け合わせていくチャレンジです。また、ダンサーもルーツが違うタイプの人をキャスティングしましたので、一緒に踊ると単に上手くいくだけではなくて、なにか不思議な空間を生み出せるのではないか‥‥と期待しています。

----音楽とは、どういう風にして出会われたのですか。

平山 私はこれまでヴァイオリンやピアノ、三味線やお琴などいろいろなジャンルの方とご一緒してきましたが、歌の方とはありませんでした。床絵美さんの歌声に出会い、バスクとアイヌの土壌の違いから生まれる音楽を融合するとどうなるだろうかと触発されたのです。アイヌの唄は、自分たちは自然の中に神様とともに生きているよ、というシンプルなメッセージが多いように思います。

----オレカの方もアイヌの音楽に興味を持たれていたのですか。
平山 もちろん。彼らはいろんな土地を訪れ、原地のアーティストと一緒にフィールドワークをして新しい音楽を創り上げています。日本に行くのなら、アイヌの音楽とハイブリットをしたい、と楽しみにしてくれています。私自身も短期間ですがバスクと阿寒湖に直接出向き、彼らとセッションして今回の創作の準備をしてきました。

----いろいろなルーツを持つダンサーたちを起用しようということも、そうしたことと一緒に考えられてきたことでですね。
平山 ある種の違和感を感じる人と一緒に創ったほうが刺激を受けられるのではないか、と自分に試練を課しました。また、それぞれのダンサーが新鮮なものを生み出していくことに労力を注いでいるかも考慮しました。振付を覚えて上手に踊るではなく、音楽を聴いて提案し合って創っていくこと。それを最後まで一緒に作業してくれる気持ちがあるだろうか、ということを意識してキャスティングしました。

_hy14D_0971z.jpg photo/ Hiroyasu Daido

----それで設定といいますか、具体的なストーリーはないと思いますが。
平山 いつも私の作品には特別なストーリーはありません。しかし、何らかの制約のようなルールを設定して創作を始めます。
今回は長い1本道の大きなセットを使っています。それ自体はクールなものです。これと対峙しながら音楽や身体をどこまで有機的に存在としてたちあがらせることができるかをコンセプトにしています。旗をふって「こっちです」というふうにはせず、「どこに行き着くか分らない」というミステリーツアー感というか、不思議な巡りの中に身体を置きながら、最後に一気に矢印を示しだすようなイメージがあります。飛行機の滑走路みたいな形。

----『フランス印象派ダンス』でしたか。キャスター付きのバッグを持って動くシーンがありました。
平山 あれは旅がテーマでした。100年前のフランス・アートの世界を旅をしながら巡るというコンセプトで、キャリーバッグを開けると中にボヤボヤっとした印象主義の絵画的な色彩があれわれるという演出で使いました。

----古式といいますか、現代には使われていない楽器演奏と踊ることは、ダンサーとって違いはありますか。
平山 なぜかワールドミュージックって、差し込み感を感じます。計算外のパワーがあり、それに打ちのめされてしまう‥‥シンプルな盆踊りみたいなもので、複雑な高度な振付みたいなものは要らないんだな、と気がつかされます。
今、私たちのジャンルはテクニックに走っています。音楽でも何でも自由に編集できますし、振付も複雑化しているし、身体能力の高さだけを競ってアクロバティックなものに依存している傾向にあると思います。でも今回の『HYBRID』のチームのように実際にすごく踊れるダンサーに「得意のテクニックはどういうの?」と聞くと「うん、別にない」という答えが返ってきます。みんな、ちょっと違うものを探しているのでしょう。今回の音楽とともに踊ることは、「なぜ、これをやるの?」という原点を追い求めていこう、という共通の認識に繋がっていると思います。

_hy13D_0751.jpg photo/ Hiroyasu Daido

----どんな動きを作っても、もう既に誰かが作ったものじゃないか、と思えてしまう、というようなことも言われていますね。
平山 そうですね、どうやってもなんとか風とか、誰と誰を混ぜたような感じとか言われてしまいます。当然見たものには影響は受けますよね。「HYBRID」と付けたのは、影響を受けたのを何らかの形で乗り越え矢印を示す意志がある、ということを自分たちが意識していないと、ただの仲良しの人たちが楽しく音楽と一緒にコラボレートしただけになってしまいます。そうしたことを私が望んでいないということを、このチームは分っています。「HYBRID」は異種混合といいますか、共同で作業しただけでは決してない、ということです。ブレンドしながらより新鮮なものを生み出す試みなのです。

_hy14D_0276z.jpg photo/ Hiroyasu Daido

----現在は、制作の状況はどんなところですか。
平山 私はものの創り方として、構成を先に考えないタイプです。目の前にカードをいっぱい出し取りあえずやってみます。その後、それを眺めてみると必要・不必要が見えてきます。それに何かを加えたりカットしたりして、一気にカードを縦に整えて並べます。頭で先に結論を考えることはしないで、広がったカードをじーっと見て、まとめていくというやり方です。オレカTXと床絵美さんがリハーサルに加わり、今は、時間軸を積み上げ、構成に厚みを加えつつある段階です。

----ストラヴィンスキーの『春の祭典』は良い舞台でした。ピアノの連弾とデュオで創られました。
平山 プロデューサーの方から『春の祭典』を提案され、振付けるのなら群舞ではなく、と腹をくくりました。ベジャールやピナ・バウシュ、プレルジョカージュといった振付家の『春の祭典』をこの目で観てきてしまっているので、それを捨ててからスタートしなければなりませんでした。ブロックごとのリハーサルはできていましたが、通しでの感覚を確かめる時間が十分でなく「踊れるかな」と思いつつ劇場入りになってしまいました。今でも覚えていますが、幕が下りてたくさんの拍手をいただいた時は本当に感動しました。壮絶な思いで上演したのですが、ものを創る充実感がありました。

----それだけもたいへんですね。
平山 たいへんでしたが、私にはありがたい機会でしたし、より音楽に興味を持ったのは事実ですね。
それから『フランス印象派のダンス』、そして今度の『HYBRID』ですから、ほんとうにひとつひとつ大切に思ってやっていかなければならないな、と思っています。

----中川賢さんと踊られた『バタフライ』のデュエットも良かったですね

平山 私は『バタフライ』で、初めてデュエットを振付けました。デュエットはそれまでまったく創ったことがなかったのですが、それが良かったのでしょうか。通常のやり方をしていなくて、質の高い男性ダンサーがアイデアレベルの動きをスキルにまでもっていく、そういうことに時間を掛けてくれて個性的な作品が誕生したと思っています。やはり、ダンサーの協力は必要不可欠です。

_hy13D_0957.jpg photo/ Hiroyasu Daido

----床絵美さんの唄も生で唄われるのですか。
平山 はい。床絵美さんはステージで唄う活動もなさっていますが、ご自分のご家族、お祖父さんやお婆さんから受継いできたものをそのまま唄われっていただきます。それとは別に少しだけ新たな宿題を出していて、これがどう仕上がるか楽しみです。

----音楽の構成はどうなさるのですか。

平山 結局、全体は10日間くらいしか合わせられないので、欲張れないのですが、オレカの曲、アイヌの唄、両方が合わさった音楽、さらにダンサーが一緒に演奏している曲、をバランス良く構成していくことになります。現在は、積極的に意見を交換して日々進化中です。

----『HYBRID』のほうは、これからどのような流れになっていくのでしょうか。
平山 現在は、彼らが合流し、やっとたたき台の構成プランができたところ。これから上演に向けてまだ何段階も上げていきますよ。生演奏ですので、セッション感、ライヴの感覚を大切にまさに「Rhythm & Dance」が表出する瞬間を信じてブラッシュアップしていきます。

----そうですか、もっとお話をうかがいたいのですが、リハーサルの時間になってしまいました。演奏のライヴ感覚だけでなく、ダンスも独特ライヴ感が溢れる楽しい舞台になりますね、とても楽しみです。
本日は、リハーサル真っ最中のお忙しいところいろいろとお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

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photo/ Hiroyasu Daido

平山素子『Hybrid -Rhythm & Dance』

●3/25(金)〜27(日)
●新国立劇場 中劇場
●演出・振付=平山素子、音楽監修=笠松泰洋
 音楽・演奏=オレカTX
 唄=床絵美
●出演=平山素子/小㞍健太/OBA/鈴木竜/皆川まゆむ/西山友貴
●S席6,480円/A席4,320円/B席3,240円
 Z席1,620円
※Z席は公演当日ボックスオフィス窓口のみで販売
●開演時間=25日19:00、26・27日14:00
●お問い合わせ=新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999(10:00〜18:00)
http://www.nntt.jac.go.jp/