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インタビュー/関口 紘一
[2013.03.26]

新国立劇場バレエ団プリンシパルとして目覚ましい活躍をみせる
福岡雄大 ロングインタビュー

----今はリハール中ですか。
福岡:はい、午前中は金森穣さんの『solo for 2』で午後から中村恩恵さんの『Who is "US"?』です。

----お二人の作品はちょっと違いますよね。
福岡:中村さんの新作は、バレエが基礎というか、これをこうしたらどうかというぼくらの動きに、中村さんのほうからの提案があってそれを繋げた感じの作品なので、ぼくらの身体には合っているんですけど。

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----金森さんの作品はアカデミックというか、とてもきれいに構成されていますね。中村さんの新作ではかなり踊りますか。
福岡:そうですね、最後のソロともうひとつソロがあります。多く踊らせていただいて凄く光栄です。恩恵さんの作品を踊るの機会は一度ありましたが、新作ということでたいへんありがたい経験をさせていただいて、ぼくとしては勉強になることが多いです。

----リハーサルはバーミンガム・ロイヤル・バレエ団のゲスト出演から帰られてから始められたのですか。
福岡:もっと前です、昨年からずっとやっております。作品自体の振付は昨シーズンでしたか、かなり長い期間にわたってやっております。

-----中村さんは振付を先に創ってくるのですよね。
福岡:最初はきちんと創られてきて、その後いろいろと合わせながら創っています。今は一人で踊っているのですが、最初は長田佳世さんと踊ったり、江本拓さんと踊ったりしながら試行錯誤を繰り返して、今の形になったという感じです。

----金森さんの作品を踊るのは初めてですか。
福岡:初めてです。

----金森さんの創る動きはきれいだから女性ファンが多いですね。
福岡:金森さん自身も格好いいです。振付もそうですけど。

----舞台が楽しみですね。

----福岡さんは大阪のK バレエ・スタジオご出身ですよね。

福岡:7歳の頃からですか、今もずっと在籍しております。

----K バレエ・スタジオはコンテンポラリー・ダンスが中心ですか。
福岡:3人の先生がいらっしゃって、一番妹の恵子先生がコンテンポラリー、久留美先生と香織先生はクラシック・バレエの指導に当たっています。ですからバレエとコンテンポラリーの両方です。

----それからチューリッヒのジュニア・バレエ団にいらっしゃったのが・・
福岡:行ったのが19歳ですから、ちょうど10年前になります。ジュニア・バレエっていうのは若い世代のカンパニーでして、学校を卒業した人たちが2年間活 動するものです。バレエ団と行動は一緒で、レッスンも一緒です。ジュニア・バレエ団のための本公演も年に2回だけあります。

-----当時のチューリッヒ・バレエ団の芸術監督はハインツ・シュペルリでしたか。ジュニア・バレエ団は誰が指導にあたっていたのですか。

福岡:クリス・ジェンセンというバレエ・マスターとフランソワ・プティという元ダンサーの二人でした。

----福岡さんがチューリッヒ・バレエ団でパックを踊られた『真夏の夜の夢』はシュペルリの振付ですね。
福岡:そうです、シュペルリの『真夏の夜の夢』はヨーロッパで人気がありましたが、しばらく上演されていなくて、ぼくの最後の年に久しぶりに上演されること になり、パックを踊らせてもらいました。かつて、ぼくが参加したコンクールの期間中に、ヘルシンキのバレエ団が上演していたシュペルリの『真夏の夜の夢』 を観て感動したことがありました。ですから自分が踊れるとなった時はとても嬉しかったです。
シュペルリの『真夏の夜の夢』は、振付は違いますが、内容はアシュトンやバランシンの作品と同じです。ただし、町人たちの芝居は芝居としてそのままドイツ語で行われます。セットも良くて色々と驚かされることが多い舞台でした。

201303fukuoka03.jpg 中村恩恵振付「Who is "US"?」舞台稽古より
提供:新国立劇場バレエ団

----それから福岡さんはいろいろなコンクールで受賞されていますね。ヴァルナのコンクールにも参加されて3位に入賞されていますが、ここは野外の舞台で踊りにくくはなかったですか。
福岡:正直踊りにくかったのですけど、野外ステージというのは魅力的でした。ぼくは参加する前にヴァルナを見る機会があったので、出たいと思っていました。 実際は厳しい環境でちょっと戸惑いました。夜中に照明をつけて夏の森の中の舞台で踊るのですから、虫があちこちで飛んでいたり、猫とか小動物も走ったりし てます。舞台に出る花道も草木が茂っていて見にくかったり、途中、石畳の道を歩かなければならないし・・・。
ぼくが参加した時は、チューリッヒか ら帰国してお仕事をいただいたりし始めたころで、幼い頃のひたむきさや一途さをを忘れかけていた時でした。子供のころの真剣さを再認識させようと、コン クールに参加してみたらという先生と話し合い、参加を決めました。ですからヴァルナが一番環境も厳しかったし、出て良かったと思いました。やはり、一番印 象に残っているコンクールです。
後は2003年の神戸のコンクールでシニアのグランプリを頂いた時です。それまではバレエ部門でグランプリを取った人はいませんでしたので、凄く嬉しかったです。先生に少し恩返しできたかな、と思いました。

----そうすると、クラシック・バレエは矢上先生に習って、チューリッヒ・バレエ団で鍛えた、という感じですか。
福岡:そうですね、チューリッヒではみんなバレエが上手でした。ぼくも2年目にはジュニア・バレエ団でもいろいろと踊らせてもらいました。

----そうですか、それでチューリッヒ・バレエ団では最後の年にはパック役も踊られましたから、良い経験をされましたね。その後はもう新国立劇場バレエ団ですか。
福岡:大阪で1年ほど仕事をして、その後、牧阿佐美監督の最後のシーズンの時に新国立劇場バレエ団へ入団しました。その時に『カルミナ・ブラーナ』を踊り、ビントレーとその作品に初めて出会いました。

-----新国立劇場で最初に主役を踊られたのは。
福岡:入団してすぐロシア版の『ドン・キホーテ』を踊りました。牧阿佐美監督の時でした。ビントレー監督になってから最初に踊ったのが『ペンギン・カフェ』 のブラジリアンウーリーモンキーという猿の役、『シンフォニー・イン・C』の第1楽章のプリンシパルと『火の鳥』のイワン王子を踊りました。
このトリプルビルでは、最終日に3演目を全部踊りました。その日はもうふくらはぎがあがったままで、ほんとにたいへんでした。

----その日は私も観ましたが、トリプルビルで3演目全部踊ったダンサー見たのは初めてです。
福岡:ぼくも初めてでした。みんな倒れるのじゃないかって心配してましたけど、まあなんとか踊りきって。

----でもスタミナは自信があるじゃないですか。
福岡:いいえ、ないです、全然。みんなにはあるといわれますけど・・・。

----でもこれだけ全幕物を踊っていると、全幕物のペースといいますか、バランスを考えながら踊るということも身に付いてくるでしょうね。
ビントレーの振付作品として最初に踊ったのは『アラジン』の再演ですね。ビントレー監督の作品は演技的なものも要求されるのではないですか。

福岡:そうですね。新作としては『パゴダの王子』をオリジナルキャストとして踊りました。サラマンダーの動きは難しかったですね、モダンな動きというか四つん這いになったり困難な振付でした。

-----サラマンダーって実在していないし、観客にこういうものかなと感じさせる努力をしなければならないでしょう。
福岡:そうですね、ビントレーさんの振付を信じて忠実に振りを創りました。信頼できる監督ですから。

-----『パゴダの王子』の王子役は最初はキャラクターとしてすぐ頭に入りましたか。
福岡:最初はイメージが沸きませんでしたね。だんだん王子の陰と陽の部分のコントラストを付けるようにしました。サラマンダーの陰の部分をちょっと悪くみせ るようにして、それで王子を際立たせられたらいいなと思ってリハーサルしていました。振付が難しかったので成功したかどうか分りませんけど。

----そうですね、王子を演じる上ではそれが大きなポイントですね。普通はさくら姫と王子は恋愛関係になるのですが、家族愛、兄妹愛になりましたね。
福岡:ビントレー監督の中では『パゴダの王子』は、ファミリー愛の世界だと思います。あるいはもしかしたら、ぼくと小野さんをみてそのようにしよと思ったのかもしれませんけど。ダンサーを観て振付けられる方なので。ブリテンの曲に対するイメージもあったでしょうし。
『パゴダの王子』はビントレー監督の最終シーズンでまた再演されますので楽しみにしています。

-----『マノン』はやはり力が入ったのではないですか。
福岡:ぼくはいつも力が入るのですが、『マノン』は特別でした。日本人でデ・グリューを踊るのは初めてでした。『マノン』の指導でいらっしゃったパトリシ ア・ルアンヌさんに教えていただいて凄く良い経験をさせていただきましたので、ぼくにとっては得難い財産になりました。踊りだけでなく演技のことも厳しく指導し ていただきました。『マノン』に長く関わっている方で、『マノン』に対する情熱が凄い、そいうのもひしひしと感じました。『マノン』は新国立劇場バレエ団 でも9年ぶりでしたし、みんなの期待も感じました。

----デ・グリューってなんか常識を越えてますよね、女性に対しても。

福岡:そうですね。ぼくも演じていてそこまでやると「オイオイオイ」と思いますけど、好きにさせるマノンもスゴイです。

----原作では親友の友情を裏切ったりもっとスゴイですよね『マノン』って。
福岡:そうです、原作を読んで勉強したり、小野絢子さんと練習したり。ルアンヌさんに話し合いなさい、とすごく言われました。例えば手を握るシーンでも演劇 の練習みたいに、どういう気持ちでそういうことをするのか、お互いに言葉に出して話し合って確かめ合いなさい。踊っていると自然とそういう意識が現れてく るからと言われました。
最初のマノンと出会った時のソロなどは、しっかりと目線を彼女に向けて決して離さないように、と言われました。

-----マクミランは感情や心理をリアルに描きますからね。
福岡:そう言うマクミランのリアルなところが好きです。『ロミオとジュリエット』でもそうですけど、なりきらないと演じられないようなところは現実的になってしまうような気がします。ドラマティックな踊りが好きなので。
『マノン』を踊ってからは演技に対する取り組み方が自分の中で変わってきたと思います。この作品を踊って学んだことを他の作品に生かそうと思っています。

-----『マノン』はそうとう絡みがあるから小野さんとはずいぶん話し合いましたか。舞踊だからといって、決して演劇的なものがないがしろにされないように創られている、ということですね。
『シルヴィア』のアミンタ役は、現実的ではなくて神話の世界を生きる役ですね。

福岡:種類は違いますけど、ぼくはドラマティックなバレエだと思いました。2幕はまた違いますけども。3幕は神話の世界にいるのですが、ドラマティックな表 現もあって、ぼくはとてもおもしろかった。最後もパ・ド・ドゥが終わってオライオンが処刑されて魔法が解けるところはドラマティックだけど、すると家が出 てきて現実に戻る、という風に現実と別世界が入れ替わったりする、そのコントラストがとてもおもしろかった。

-----あの仮装パーティから神話の世界に入っていくというアイディアが素晴らしいすですね。シリアスでドラマティックな役もいいけど、軽くて楽しいちょっとコミカルな役とかはどうですか。
福岡:ぼくはコミカルな役も踊っていて楽しいのですごく好きです。王子よりもコミカルな役が楽しい時もあります。

201303fukuoka02.jpg 金森穣振付「solo for 2」舞台稽古より、米沢唯と
提供:新国立劇場バレエ団

----最近はほとんど小野さんと踊っていますが、パートナーとしてどうですか。
福岡:とても良いパートナーだと思います。ここ2年くらい踊らせていただいています。ぼくとしてはすごくありがたいパートナーです。

----でもたまには他の人とも踊ってみたと思ったりすることもありますか。
福岡:たまにはそう思うこともあります。ぼくが決めるわけではないですが、でも今度の『ドン・キホーテ』は米沢唯さんと初めてパートナーを組んで踊ります。小野さんは菅野さんと踊ります。

-----バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の『アラジン』へのゲスト出演はいかがでしたか。
福岡:ほぼ3週間行ってきましたがとてもよかったです。レッスンもきっちりしているし、みんな気さくに話してくれたりして。佐久間奈緒さんとかツァオ・チー とかセザール・モラレスとか新国立劇場にゲスト出演したことがある人たちがいたので、そういう人に助けていただいてとても楽しい3週間でした。本番も無事 に終わりました。初日は二人とも緊張していたのですけど、2日目の公演の時はもう肩の力が抜けて2日目のほうが落ち着いてできたと思います。もちろん、ビ ントレーもいて『アラジン』のヨーロッパ初演でした。
主役キャストが7組いたので、最初はぼくたちのリハーサルはないんじゃないかなと思ってましたが、バーミンガムのバレエマスターの方々に指導していただいきスムーズにいきました。非常にフレンドリーな雰囲気のバレエ団です。

----次に新しく踊る作品はなんですか
福岡:『E=mc2』です。まだ取り組んでないのでわかりませんが・・・ビントレー監督の作品なのでおそらく難しいと。
ビントレー監督の振付はバレエのセオリーとは少し離れたような振りもあるので、それによって身体もこういうこともできる、と憶えられる気がします。わざと外しているような、逆に回ったりとかそういうのもあります。最初は回りにくても練習でできるようになります。

-----『シンデレラ』を踊って『アラジン』でしょう。それからコンテンポラリーを踊るので、身体は大丈夫ですか。
福岡:たいへんです。作品にもよると思うのですが、バレエとコンテンポラリーは全然違いますから。コンテンポラリーになると軸とかも変わりますし、体つきも 変わっていくのでたいへんだと思います。つぎのバレエ作品のためには崩れないようにレッスン後に練習したりしていますが・・・。ですから、ひとつひとつ作 品を仕上げる過程も、自分にとってプラスになるようにしていきたいと思って取り組んでいます。

----今はコンテンポラリーを踊らないと仕方ないですからね。
福岡:そうですね、今や両立が当たり前、ですから。

----でも新国立劇場バレエ団はまだコンテンポラリーといっても比較的小さな作品が多いですけども、大きな作品を踊ったらたいへんですよね。

福岡:最近ではバレエではないので大きな作品は『カルミナ・ブラーナ』くらいですかね。ぼくはもっと大きなコンテンポラリー作品もやってほしいと思っています。

----福岡さんなら大丈夫だと思います、パワーがあるから。女性もたいへんでしょう。今はダンサー受難の時代というか対応策も必要だと思います。だから先程おっしゃたようにリハーサルをやりながら身体のケアも積み重ねていくことが必要になるんじゃないですか。
新国立劇場でいつもファーストキャストで踊られてきて、いかがですか。

福岡:いつも驚いています。初日になんでぼくなんだろうと思います。とても嬉しいことですが。

----『マノン』を踊って『シルヴィア』、『シンデレラ』。次々主役を踊っていかなくてはならないわけですが、プレッシャーなどはありますか。
福岡:プレッシャーはありますけどあまり考えないようにしています。とりあえず練習をしてそういうものを取り除いていって、常にいい舞台にしようと心がけています。

----福岡さんと小野さんがファーストキャストで踊る以前は、みんな外国人のダンサーのゲストをファーストキャストにしていました。
福岡:ビントレーさんにもバレエ団のダンサーにファーストキャストを踊らせたいという意向があるようです。最近はゲストのダンサーがセカンドキャストを踊るようになりました。

----ビントレー監督の意向が生きてダンサーが育ち、実力がついたので看板をはれるようになった、ということは新国立劇場バレエ団としても大きいと思います。
ダンサーとしての目標はどんなところにおいていますか。

福岡:これからもいろいろな役柄に挑戦したいですね。ダンサーとしての幅も広げたいですし、それが良い結果をもたらすと期待してます。先程、話に出たコミカ ルな役とか演劇的な役も踊ってみたいです。あともっと繊細な表現の精度をあげていきたいです。自分の中ではまだ満足のいくものがないのですが、繊細な踊 り、表現で深い印象を与えるダンサーになりたいと思います。

----大いに期待しています。充分実力があると思いますので、世界を目指すダンサーになってください。

新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2013』

●3/26(火)・27(水)
●新国立劇場中劇場
●演目=金森穣振付「solo for 2」、中村恩恵振付「The Well-Tempered」、「O Solitude」、「Who is “Us” ?」【新作】
●S席6,300円/A席5,250円/B席4,200円/C席3,150円
●開演時間=両日19:00
●お問い合せ=新国立劇場 http://www.nntt.jac.go.jp/