インタビュー&レポート

インタビュー: 最新の記事

インタビュー: 月別アーカイブ

インタビュアー/花谷泰明
[2010.10.12]

公演直前インタビュー/金森穣
舞踊ファンも唸る、演劇ファンも唸る作品を目指しています

3613.jpg

----まず前回、初めての新潟限定公演であった「劇的舞踊『ホフマン物語』」を振り返られていかがですか。

金森 新潟限定だったことについて、驚くほど多くの方が新潟まで来てくれたという実感はありませんが、来てくれる人は来てくれるんだなと思えたことは嬉しく感じています。新潟限定だったことに対する理解の声もあるし、そういったことを行政を含めた新潟市民の方たちに証明できたことは良かったですね。それにこの作品は新潟限定でなければできないものでした。3週間劇場を借り切って作品を完成させましたが、これは他の劇場ではできません。りゅーとぴあでも、通常Noismは最大で2週間しか続けて使用することができないところを新潟限定ということで特別に3週間使うことができました。そういう意味ではあの劇場のあの空間で、時間をかけて創ることができたからこその作品ですね。

----今回は研修生カンパニーのNoism2も合同での公演でしたが、それについてはいかがですか。

金森 合同公演はNoism2を立ち上げたその年のうちにやりたいと思っていました。それができたことで、ここから新しいNoismが始まったという感じがします。作品として合同だったというだけではなくて、クリエーションの段階から、1も2もNoismの一員として一丸となって参加してくれました。1のメンバーが2のメンバーに触発されることもあるし、もちろん2のメンバーは1に入ることを目標にしているわけだからそのために頑張ります。そういった様子があると、客観的に見てNoismという組織の構造がはっきりして成熟してきたなという実感があります。

----また今回はNoism作品には珍しい演劇的な物語のある作品でした。

金森 そうですね。そもそも今回『ホフマン物語』といった物語を採り入れたり、金森穣として、演劇的な物語のある作品に向かっている背景としては、やはり舞踊に興味のない人たちが舞踊を観に来る、劇場に来たことのない人たちが劇場に来るためにはどのような作品を作るべきなのかということがあります。舞踊をあまり観ない人が、今までの舞踊ではよく分からなかったけど今回は物語があって面白かったとか、演劇が好きな人が舞踊でもこんなに演劇的なことができるのかといったふうに、舞踊も面白いと思ってもらえればということですね。だから目指すところとしては、舞踊ファンも唸る、演劇ファンも唸るといった作品です。ただその過程のなかで、作品ごとに演劇性と舞踊のバランスについて意見が出てしまうことはあります。もちろんこれからも抽象的で身体の動きで突き詰めていく作品も作りますし、金森穣としてこれからは演劇的なものに進んでいくというわけではありません。

----次は『Nameless Hands〜人形の家』の再演になります。

金森 初演は2008年ですので初演は2年前ですね。この作品で、朝日舞台芸術賞を受賞し、再演を支援するキリンダンスサポートをいただきました。その後海外ツアーであったり、『ホフマン物語』という新作もあったのでこのタイミングでの再演になりました。
今回は新潟だけでなく愛知と高知でも公演を行います。再演ということで、当然、初演は越えるつもりでいます。初演時を振り返って演出的にも身体性的にも足りない部分はあったので、自分自身もっと高いものを作って行きたいし、そのとき出演していたメンバーも初演時の自分たちを越えたいという意気込みでやっています。新作を上演するときは新作ならではの怖さがありますけれど、どうなるかっていう期待感もあります。けれど今回は初演があって、ある程度は完成してしまっています、しかも賞までいただいているわけです。そして初演時のメンバーたちはそのときの自分たちを越えようとしています。そのなかで新しいメンバーは初演以上のものを、自分たちにとっては初演という状況のなかで作り上げなければならないということです。

----具体的に演出や振付が変わるということはありますか。

金森 大きくシーン自体が変更になることはありません。ただ各シーンごとに表現しようとすることを浮き彫りにすることはあります。そういう部分でもちろん動きが変わることもあるし、演出的に少し変わることはありますね。

----『Nameless Hands〜人形の家』の後にはすぐ『NINA-materialize sacrifice(ver.black)』のパリ公演があります

金森 『NINA』はもう何度も再演を重ねて、演出的に変更する点のない一番強い形にできあがっています。作った段階で挙げたテーマとして古典性というものがあったし、ダンサーが変わっても作品は変わりません。『NINA』という作品で今まで評価を得ているということです。その新しいメンバーでの『NINA』はもうリハーサルが始まっているので、どうなるか楽しみです。もう『NINA』はNoismに来たら踊らなければいけない作品になっているし、あの身体性が表現できないと金森作品は踊れないですね。

----身体性といえば、金森さんの作品には、舞踊家が何かに操られているような動きであったり、身体を操作する黒衣の存在というのが共通して見受けられます。

金森 そうですね。そういった動きや身体性は、遡ると僕が18歳のときにベジャールのところで演劇の授業で初めて作った作品から表れています。そのときの作品はソロで、自分が人形の役をやっていました。いわゆる架空の何かに操られる存在として人形を演じていたわけです。それが最初に作った作品なので、金森穣にとっては常にその物質的な身体と、意識としての自分の乖離というのがあります。どちらが何を操り、その狭間に生まれる表現とは何なのかということです。その身体と意識の関係性というのは、振付家と舞踊家、舞台の舞踊家と観客、社会と劇場という組織の間にもあります。つまり、人間として生きていることは、そういった力関係のなかに置かれているということです。このことは僕にとって常に疑問であり課題であり、生の本質だと感じています。『black ice』でも最初は自分自身が黒衣で、最後はそれを脱いで踊るということもしていましたし、そういった身体性というのは昔から表現していたことですね。

----舞踊家にはそういった身体性の習得が求められるわけですね。

金森 もちろん。毎朝やらなければならないトレーニングがあって、作品がどう変わろうとも舞台に立っている身体のクオリティは昨日今日始めた人には絶対できないような、それは回るとか飛ぶとかという次元ではなく、ただ立っているだけでもうトレーニングをしていなければ表現できないようなものを創るために劇場のなかで舞踊家を育てています。やはりレジデンシャル・カンパニーということを考えると作品を作るだけではなく、人を育てなければならないと考えています。

----ではNoism2もできればもっと若い世代から育てて行きたいですか。

金森 もちろんそうですね。将来的には彼らの年代の下に公立のスクールを作りたいです。そこに入るにはまずオーディションがあって、ふるいにかけられる。次にそこを卒業するとき、プロのダンス・カンパニーに入るときにもオーディションがあります。そうやって生き残って選ばれた人たち人が、高いチケットを買ってでも観るに値するものを提供できるでしょうね。そしてそのような体制的、権威的なものがあって初めてそうではない、選ばれた人たちのためのものではなくて日常的な表現としての舞踊が出てくると思います。Noismとしてはまず、オーソドックスな道、古典として、文化としてはっきりと残っていくものを作りたい。それがあってまた違った表現が出てくることで、舞踊というものが文化として成熟していくのではないかなと思います。

----でも、日本には金森さんがおっしゃるような組織化されたコンテンポラリー・ダンス・カンパニーというのはなかなかできないという状態です。

金森 ないですね。でも日本の場合は劇場が数多あって、舞踊集団もあって、ダンサーもたくさんいるわけです。そこで考え方を変えて、劇場のなかで専属で活動するNoismのような集団がもっとできてもいいのではないか、と思っています。ヨーロッパでは劇場があってそこで活動する組織があって、そういったクラシカルなものから抜け出てオープンプロジェクト、フリーランスで活動する集団が登場してきた時代がありました。でも日本では劇場のなかに集団がいたこともないという逆の状況ですから、そのオリジナリティを活かして、今一度劇場に戻ってそのなかで専門的な活動をするようになれば、世界のなかで面白い劇場文化、舞台芸術というものが生まれてくるのではないかと考えています。そういったかたちで劇場専属のカンパニーができてくれば、新潟で自分たちが行っている活動の良さや課題というものも見えてくると思います。お互いに刺激しあえば文化としてもより成熟していくでしょう。ダンサーもそういった集団が他にもあれば新潟と金森穣というものを選択できるようになりますからね。

----ダンサーやカンパニーの成長とともに、観る側も一緒に成長している気がします。2004年に活動を開始されてからダンスを観る側の人たちにも変化を感じることはありますか。

金森 それはありますね。アフタートークの内容からして、こちらに投げられる質問や意見の質が初めの頃とは全然違います。評論家の方かと思うぐらいの意見が出てくることもあって今は怖いぐらいですね。新潟はもちろん、何度も公演を行っている愛知や静岡ではアンケートを読んでも前回と比べての意見が出てきたり、応援してくれている人も多いですね。

----金森さんはすべての公演でアフタートークを開催されますね。

金森 はい。アフタートークは設立からすべての公演で行っています。もともと、舞台芸術の見方を変えたいと考えて始めました。作品を観て、綺麗だったねで帰るだけでなく、意見を言う場所があって、こちらも意見を聞くことでそういった見方があるのかと勉強になることも多いです。それに観る人もそういった意見が言える場所があると、具体的に何かを感じようとして作品を観てくれるということがあります。作品を観て他の人の意見を聞くことで、自分がどう感じたか、それとも何も感じなかったのかということを考えるようになります。そうなると感想をしっかり持つための見方が作られると思います。そういった見方ができてきていることは、新潟ではやはり感じますね。アフタートークに残ってくれる人数も増えていますし、舞台芸術を観るということに対する意識が変わってきているということは感じます。
また公演時のアフタートークだけではなくて、新聞にコラムを書いたり、小学生向けのワークショップを行ったりすることも舞踊を観に行くきっかけや、舞踊に触れる機会をを多くの人に持ってもらいたいという目的で行っています。そういった活動を通して、もっと多くの方に劇場に足を運んでもらえればと思います。

----本日はありがとうございました。次回の公演も楽しみにしております。
 

朝日舞台芸術賞受賞記念・キリンダンスサポート公演
見世物小屋シリーズ 第1弾「Nameless Hands-人形の家」再演公演
 >>>発売中

●演出振付・照明デザイン=金森穣
●衣裳=中嶋佑一(artburt)
●出演=Noism1

<新潟>
●11/5(金)〜7(日)・10(水)・11(木)・13(土)〜15(月)
●りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB
●開演時間= 平日19:00、土日17:00
●一般3,500円/学生1,500円(再演特別価格/税込/全席自由)
●お問い合わせ=りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521(11:00-19:00/休館日を除く)

<愛知>
●2011.2/2(水)、3(木)
●愛知県芸術劇場小ホール
●開演時間=2日18:30、3日17:00(予定)

<高知>
●2011.2/12(土)
●高知県立美術館ホール
●開演時間=18:30