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インタビュアー/浦野芳子
[2010.06. 9]

マシュー・ボーンの「白鳥の湖」
主演 ジョナサン・オリヴィエインタビュー

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話題の舞台が再来日!
新しい伝説を日本のファンにお披露目するその直前、
主演のジョナサン・オリヴィエが緊急インタビューに答えました。

バレエ、ミュージカル、演劇の境を越えて大ヒットした伝説の舞台、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」が5年ぶりに日本に再上陸!
今回の主演陣には、ニュー・アドベンチャーズ生え抜きのマシュー・ボーンの秘蔵っ子たちに加え、クラシック・バレエ・ダンサーとして活躍してきたキャリアも長い、ジョナサン・オリヴィエがザ・スワン役に加わり、新たな話題を集めそう。
昨年9月に始まった長いツアーのしめくくりとなるこの東京公演のために、韓国ツアーを終えて東京に入った彼に、ザ・スワン役の手ごたえをたずねてみた。

ーーーーあなたの演じるザ・スワン役は、有名なクラシック・バレエの「白鳥の湖」で言えば主役のオデット姫、ということになりますよね。マシュー・ボーンの作品の中では、どのように描かれているのでしょうか。

オリヴィエ 「スワンレイク」とタイトルでは言っていますが、この作品における中心人物はスワンではなくあくまで人間のプリンスです。人間のプリンスである彼と、僕が演じるスワンの関係が中心となり、物語は展開していきます。孤独なプリンスがたまたま出会ったのがスワンであり、観客の視点からすれば、彼にとってスワンは想像の産物、現実の存在、どちらとも解釈できるのだと思うのです。大切なのは、スワンがプリンスを“受け入れる”存在であることだと、僕は考えています。

ーーー3幕で、あなたはストレンジャーとして宮廷に現れますが、あれはクラシック・バレエで言うところの黒鳥のような存在ですね。

オリヴィエ たった一晩のうちに二つの異なるキャラクターを演じる、体験できるというのは表現者としてとても素晴らしい経験です。スワンはとてもピュアな存在としてプリンスを受け入れます。しかしストレンジャーは非常に男性的でアグレッシブです。スワンのピュアさに対して生々しく、対極にある存在です。スワンを演じる時僕は完全に鳥、動物になりきります。動物ですから感情を顔の表情には出しません。また、腕は腕ではなく羽であり、ですから腕や手先を使ってものを持ったり動かしたりはしません。スワンの感情はすべて身体の動きのみで表現します。反対にストレンジャーを演じるときは、顔の表情、周囲の人とのやりとり、小物、仕草、われわれ人間が日常的に使う表現手段のすべてを使って、彼の行動と心理を表します。スワンは動物であり魂。ストレンジャーは生身の男。まったく異なる存在感です。

ーーークラシック・バレエにおけるオデットとオディールは意識しますか?

オリヴィエ 僕はケープタウン・シティ・バレエ、ノーザン・バレエ・シアターでそれぞれ「白鳥の湖」のジークフリート王子を踊った経験があります。ですから古典のスワンレイクもわかっているつもりです。クラシック・バレエの「白鳥の湖」はファンタジーですが、マシュー・ボーンの「スワンレイク」はリアルな幻想です。だからこそ、マシュー・ボーンのこの作品については、わざわざクラシックの「白鳥の湖」のエッセンスを持ってくる必要はないと考えています。これは全く新しい物語だからです。また、クラシックは振付すべてに決まった型がありますよね、アラベスク、と言われたらその形の正解はひとつしかない、という風に。しかしこの作品ではもらった振付の中に自分らしい表現を加えることが許されている。表現の自由の中で、すべての物語が流れていくのです。

ーーー昨年の9月にロンドンのサドラーズ・ウェルズでスタートした今回のツアー、もう10カ月目に突入です。長いツアーの間で、ザ・スワン役への思いも徐々に変化してきたのではないでしょうか。

オリヴィエ
 ええ!ロンドンでスタートを切った当初は、役に入りたてで、とてもフレッシュな状態でしたので(笑)、自分らしさをそんなには出せていなかったと思います。しかしロンドンで7週間の公演を終え、イギリス全土を11週間かけてツアーし、アテネで2週間、ソウルで3週間、と舞台を重ねるうちに同じ動きの中にも物語が深くしみこんでくるようになるんです。動きも発展し続けて、キャラクターは成長していますね。サドラーズ・ウェルズのころの舞台を振り返ると、今とはすごく違う作品に見えます。

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ーーー非常に愚問だとは思うのですがこんなにも長い間、ひとつの作品を踊り続けているとマンネリ化してきたり・・・ということはないのですか?

オリヴィエ (笑)!!ちょうど昨夜、友人とその話をしていたところなんだけど。答えはノーです。まず、チャイコフスキーの音楽が素晴らしい。素晴らしい音楽というのは、聴けば聴くほどいろんなハーモニーや、いろんな楽器の音色に気付かせてくれ、新たな感動を運んでくれます。また、公演の場所が変われば舞台のスケールも雰囲気も変わります。それによりダンサーとしての動きのサイズ・・・たとえば走り方一つにしてもね、(広い舞台なら速く走らないと時間内に所定の位置には着かないでしょう?)変わってきますから、常に刺激的です。決して飽きることはありません。舞台は毎日が発見の連続です。

ーーークラシック・バレエのカンパニーでの、プリンシパルとしてのキャリアをいったん中断して、こうした現代作品に飛びこんできたのには何か理由がありますか。

オリヴィエ 若い時に初演時のこの作品を見て以来、マシュー・ボーンの作品には大変魅力を感じていました。また、クラシックのカンパニーでもたまにコンテンポラリー作品を踊ることがありましたが、クラシックにはない表現の自由さや大胆さがとても面白かった。踊れば踊るほど、自分の内面を探索しているような、そんな感覚にとらわれる。だからいつかは、こちらの世界に飛び込んでみたいと思っていました。そんな折、友人がマシュー・ボーンと仕事をしていたこともあり、彼に手紙を書いたんです。そしたらすぐに返事がきて、次の休暇には僕はロンドンにいて、彼のクラス(カンパニーのレッスン)を受けた。それがオーディションで、そして僕は合格、晴れてカンパニーに入った、というわけです。

ーーー入団して最初の公演で、主演ですね!ビッグなデビューにプレッシャーは感じませんでしたか?

オリヴィエ いえ、とても幸せなこととして受け止めています。

ーーーさらに、こんなにも長いツアーの間、コンディションを保つのも大変ですよね。

オリヴィエ
 ツアーにはフィジカル・セラピスト(心理療法士)やマッサージ師がついてきてくれるので、何か問題がある時はすぐにケアをしてくれます。あとは自己管理です。日々のウォームアップやアイシングなどのケア、本番が無い日にはワークアウトして筋肉の状態を維持します。とくにこの作品は上半身が裸ですからね、きれいな筋肉は大切な衣装です(笑)。あとは、しっかり食べること。僕は幸い、好き嫌いはなく、世界中のどんな場所でも、その土地の食べ物をおいしく食べられます。でも、一番のケアは、一日二回、故郷にいる妻と息子にスカイプで連絡をすることかな。

ーーーいよいよ東京公演が今期のツアーの締めくくりとなりますね。

オリヴィエ
 終わっちゃうのはとても寂しいことだけれど・・・でもラストを飾るにはいい場所ですね、東京は!この素晴らしい都市で、美しくフィニッシュを飾りたいです。実は日本に来るのは初めてで、とてもわくわくしていたんです、何しろ日本食はとてもヘルシーで美味しいですから、今や世界のブームですよね。せっかくですから、オフのときには僕の知らない文化を訪ねたいですね。東京の中はもちろんですが、富士山の見える箱根にも行ってみたい!・・・実は、明日、京都の友達に会いに行くんですよ、今からわくわくしています。

ーーー渋谷に来たら、チャコットへも寄ってくださいね。

オリヴィエ
 渋谷のことは東京に来たことのある仲間からいろいろ聞いていたので昨日歩いてみたんだ!元気で個性的なファッションの若者たち、人形みたいにファンキーな女の子たちは、見ているだけで面白いですね!駅前の交差点を大量の人々が交差する様子には、思わずカメラを向けずにはいられなかったよ!渋谷は公演をしている青山劇場からもすぐだから、チャコットへも必ず行きます!

ジョナサン・オリヴィエ/Jonathan Ollivier
イギリス・ノースハンプトン生まれ。ケープ・タウン・シティ・バレエで3年間、ノーザン・バレエ・シアターで8年間、プリンシパル・ダンサーとして活躍。07年よりアルバータ・バレエ・カンパニーでプリンシパルとして2年間活躍した後イギリスに戻り、フリーダンサーとして活動。1977年生まれ。
 

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公演情報の確認やチケットのお問い合わせ
キョードー東京 03-3498-6666(朝10時~夕方6時)
ホームページ http://swan2010.jp
6月9日(水)~6月27日(日)青山劇場(表参道駅/渋谷駅 徒歩)