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佐々木 三重子
[2009.04.13]

デンマーク・ロイヤル・バレエ団芸術監督ニコライ・ヒュッベに聞く

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 5月に来演するデンマーク・ロイヤル・バレエ団(RDB)の芸術監督ニコライ・ヒュッベが、プロモーションのために単身来日し、2月23日、デンマーク大使館で記者懇談会に臨んだ。彼は1984-92年、RDBで活躍後、1992年、ニューヨーク・シティ・バレエ団に移籍。昨年、引退公演を行った後、古巣のRDBに芸術監督として迎えられた。

 1748年に設立されたRDBは、1830年代に偉大な振付家オーギュスト・ブルノンヴィルを芸術監督に迎えたことで大きな飛躍を遂げた。ヒュッぺはその功績について次のように語った。
「ブルノンヴィルがRDBに来た当初、バレエダンサーは一種の俳優とみなされていました。彼は、ダンサーは能力を要する職業の一つだとして、社会的地位を確立しました」

 デンマーク・バレエの創設者であるブルノンヴィルは、“優れた職人”だと言う。
「ブルノンヴィルの振付には優れたドラマツルギーがあり、その技巧は目を見張らせる。彼は本質的に素晴らしい大工、技の職人なのです。動きのつなぎ方が巧みで、形と中身を融和させる詩人ともいえるでしょう。テクニックはといえば、エンターティニングで、ステップで目を楽しませる。二人がくるくる回っている間に、三人目が跳び、跳躍の頂点に達する時に四人目がまた別な動きをするといった具合です。彼は優れた絵描きのようにハイライトを入れ、腕の良い料理人のように、スパイスを振り、酢を掛け、甘みを加える。彼の振付け方には輝きがある。彼が創るものはアカデミックで卓越しています」

 ブルノンヴィルの作品の特徴については、次のように指摘した。
「彼のバレエにはロマンテックな要素がある。一つは人生のダークサイドをとらえていること。例えば、今回上演する『ナポリ』では海に当たります。もう一つの要素は、試練というか誘惑。『ナポリ』では海王ゴルフォです。男も女も試される。それを乗り越えると次のレベルに進める。克服したごほうびは、多くの場合、愛する者と結ばれることです。ちなみに、彼が残した9か10の作品で、ハッピーエンドで終わらないのは一つだけです」

 今回の演目、ブルノンヴィルの代表作『ナポリ』(1842年初演)とジョン・ノイマイヤーの出世作『ロミオとジュリエット』(1971年初演)に触れて――。
「二作とも若い恋人たちの物語だが、創られた世紀は異なり、振付のスタイルも全く違う。こうしたタイプの異なる作品を上演できるのは、このバレエ団のダンサーにはストーリーを語る力があるからです。われわれのダンサーはまさにストーリーテラー。書かれた物語を、動きに、動作に、ダンスに転換することができます。これはRDBの強みです」
 

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 ダンサーについて、ヒュッベは、ブルノンヴィルやバランシンなど特定の振付家のエキスパートではなく、あらゆる振付に対応できるダンサーが望ましいと述べた。加えて、メンバーが多国籍なことはバレエ団にとって有益だと強調した。
「現在75人から80人のダンサーをかかえていますが、国籍は多彩です。中国、ロシア、フランス、イギリス、メキシコ、アメリカ、カナダ…。外国人が多いことに対して、デンマークのトレードマークを傷つけるものだと非難する人もいますが、それは当たっていない。国籍はバレエとは無関係。バレエの言語はユニバーサルだからです。私は、伝統に健全なものを導入することで、伝統も得るものがあると思う。私はもっと外国人ダンサーを増やしたい。彼らにまずわれわれのスタイルやテクニックを学んでもらい、その上で彼らの国の文化をRDBに導入してもらう。私が意図するのは、伝統を継承しながら、異国の良いものと融合し、よりモダンに、よりグローバル化して、バレエ団を発展させることです」

芸術監督として、ほかに目指していることは――。
「RDBは、優秀な男性ダンサーを輩出してきたことで有名だった。女性の存在はあまり目立たないできた。その理由の一つとして考えられるのは、ブルノンヴィル自身が素晴らしいダンサーだったということ。ある意味で、自分のためにテクニックを振付けました。自分の体で納得した上で、踊りの構成や体の動きを考えました。だから彼の振付けは男性向きだったともいえます。けれどロシアやアメリカのバレエの伝統では、女性も男性と同じように、男女の分け隔てなく振付けられています。だから私としては、RDBの女性ダンサーにもっと磨きをかけて、現代の振付家の要求に応えられるようにしたい。二百年前と比べて、女性ダンサーも素晴らしいと思ってもらえるようにしたい」