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[2008.11.10]

フリーデマン・フォーゲル来日直前インタビュー


フリーデマン・フォーゲル来日直前インタビュー
『白鳥の湖』

 イングリッシュ・ナショナル・バレエ団に客演し『マノン』全幕にデビュー。今やダンスール・ノーブルとしてバレエ界の頂点に立つフリーデマン・フォーゲル。
優雅な衣装に白いタイツの貴公子姿が最も似合うかと思えば、フォーサイスやマクレガー作品では男らしさとシャープなダンス・テクニックを見せるオールラウンドで多面体な魅力の持ち主だ。

 シュトゥットガルト・バレエ団との日本公演で『眠れる森の美女』のデジーレ王子と『オネーギン』のレンスキー役を踊る彼を来日直前にインタビューしたのは、故郷のシュトゥットガルトではなく英国だった。
フォーゲルはイングリッシュ・ナショナル・バレエ団(ENB)の英国地方公演にゲスト出演し、10月下旬にマクミランの名作バレエ『マノン』全幕にデ ビュー。その後もダリア・クリメントヴァと高橋絵里奈を相手役に、日本向かう直前の11月中旬まで英国地方3都市にて公演した。
(公演の模様は、近日中にDANCE CUBE「From LONDON」でご紹介する予定。)
今回は『マノン』ゲスト出演の経緯や、クランコとマクミランのバレエについて、日本公演への抱負その他についてお話をおうかがいした。

----ENB客演の経緯について教えてください。

フォーゲル
 ENBには2004年にロンドンの ロイヤル・アルバート・ホールで行われた公演『ロミオとジュリエット』に、シュトゥットガルト・バレエ団のアリシア・アマトリアンと客演して以来、去年夏 の『白鳥の湖』、今年は『ストリクトリー・ガーシュイン』と、定期的にゲスト出演しています。
バレエ団はこの秋初めてマクミランの『マノン』全幕を公演をすべく準備を進めていました。バレエの男性主役デ・グリューにデビューするお話は、去年の夏『白鳥の湖』に客演したさいに、ENBの芸術監督のウェイン・イーグリングから頂きました。
僕の所属はあくまでシュトゥットガルト・バレエ団ですから、ドイツに帰ってすぐ、シュトゥットガルトの芸術監督リード・アンダーソンに伺うと「デ・グリューは君にぴったりの役だから、ぜひ踊ってきなさい」と、許可を頂くことができました。
今回の『マノン』デビューについては、イーグリングの抜擢と、アンダーソンの理解があったから実現したことです。お二人に対して感謝の気持ちでいっぱいです。

『マノン』

----『マノン』全幕を初めて観たのはいつのことですか。

フォーゲル
 僕がまだ10代のバレエ学 校生の頃、ビデオで見たのが最初でした。ロイヤル・バレエのアントニー・ダウエル、ジェニファー・ペニー主演の舞台で、ENBで僕を指導して下さることの 多いデイヴィッド・ウォールがレスコー役、ロイヤル・バレエ団現芸術監督のモニカ・メイソンがレスコーの愛人役で出演しています。」

-----マクミランの作品はいかがですか。

フォーゲル
 僕はシュトゥットガルトで主としてクラン コ作品を踊っています。クランコの傑作の多くはドラマ重視のストーリー・バレエです。マクミランの名作の多くもドラマティック・バレエですから、子供の頃 も今も、とても好きで、いつかマクミラン作品を踊ってみたいと興味を持っていました。
『ロミオとジュリエット』についてはクランコ版、マクミラン版とも同じ物語を扱っているので、主演ダンサーにとっては振付こそ違っても、舞台で表現する感 情の流れは同じです。ですから僕自身は、クランコ版やENB版ですでに踊りこんでいるロミオよりも、自分にとって新たな挑戦となる『マノン』のデ・グ リュー役を踊ってみたいと長いこと熱望していました。デ・グリューは世界の男性ダンサーにとって、最も心惹かれ挑戦したいと思う役だと思います。今回長年 の夢がかなって、この役を踊ることができ本当に嬉しく思いますし、今後もチャンスを頂ければ、世界のどこに行ってでも踊りたいと思っています。いつか日本 の皆さんにも僕のデ・グリューを見て頂ける日が来ることを祈っています。

『ロミオとジュリエット』 『ロミオとジュリエット』

-----ダンス・テクニックの観点からみるマクミラン作品やデ・グリュー役は、いかがですか。

フォーゲル
  僕にとっては、今回『マノン』のデ・グリューがマクミラン作品を踊るデビューでした。ステップについていうと、テクニック的に踊りやすく、問題はありませ んでした。デ・グリューのソロは、男性ダンサーにとって、どれも技術的に難しいものではありません。ただ最初のソロは、バレエの中で、神学生デ・グリュー が生まれて初めて心惹かれた女性マノンに「初めて語りかける」部分です。
デ・グリューとしては、マノンが自分に興味を持ってくれるかどうか不安でドキドキしているはず。そんな状態の中で、マノンの心をとらえたいと努力している。
ダンサーにとって技術的に簡単でも、演技や表現する上では最も難しい。
僕自身、この役を自分のものにする過程で、どう踊るべきか最もよく考えたのが1幕最初のソロで、踊るたびに舞台で最も心を砕いて表現している部分です。
パートナーリングについて言うと、たとえば最後の沼地のパ・ド・ドゥのリフト(バレリーナを投げ上げて、受けとめる)のような部分は、パートナーと時間をかけて練習し慣れる必要があります。
今回観に来て頂いたサウスハンプトンでの11月8日の公演は、いつも一緒に踊っているダリア(クリメントヴァ)が怪我をしてしまった関係で、急に高橋絵里奈と踊ることになりました。
僕たちは10月下旬に、それぞれ別のパートナーとこの作品にデビューしたばかりで、これまで一度も一緒に踊ったことがなかったんですよ。それに公演当日 は土曜日で、お昼に別のペアの公演があったので、(ステージを使って)リハーサルする時間もなくて。公演前日に1時間あわせただけで舞台をつとめなければ なりませんでした。お互い不安もありましたが、奇跡的にもとても良い舞台になり、たくさんのお客様に満足していただくことがでたようで、とても嬉しく思っ ています。

----デ・グリュー役にデビューするにあたって、どなたから指導を受けましたか。

フォーゲル
 ENBの芸術監督のイーグリングから習いました。長らくロイヤル・バレエ団のプリンシパルだった方で、現役時代にこの役を踊っていらっしゃったので、特にパートナーリングについて良いヒントをたくさん頂くことができました。
それにより良く踊るためのりヒントをくださっても、役作りについては何ら強制されることはなく僕たちアーティストの自由にさせてくださるので、とてもお仕事しやすかったですね。

----これまで様々な作品を踊られていますが貴方にとって特別な役は何でしょう。

『白鳥の湖』

フォーゲル『椿姫』のアルマン、ロミオ、『白鳥の湖』のジークフリートのようなロマンティックな役が好きです。そして今回デ・グリューが新たに僕の「特別な役」リストに加わって、とても嬉しく思っています。
ただ僕の場合、基本的に、その時リハーサルしている役が、自分にとって「一番好きな役」「特別な役」になるので、今はデ・グリューですが、2週間後には(「オネーギン」の)レンスキーになっているでしょうね。

----これから挑戦してみたい役は何ですか。

フォーゲル『ドン・キホーテ』 のバジル、そして『ラ・バヤデール』のソロルです。そしていつか『オネーギン」のタイトル・ロールを踊ってみたい。普通はオネーギン役を踊るようになると レンスキーは踊れなくなるので、レンスキーを諦めなければならないとしたら、とても残念だけれど、でもぜひ将来オネーギン役に挑戦してみたいと思っていま す。

----ENBはどんなバレエ団ですか。

フォーゲル
 様々な国から集まった若いダンサーが多く、観客に「ヤング&フレッシュ」といった印象を与えるバレエ団だと思います。ロンドンでも公演しますが、基本的に英国国内のツアーが中心なので、団員みんながとても仲良しで、フレンドリーなんですよ。
僕が舞台で踊っている時も、仲間がみんな舞台袖から見ていてくれる。僕は、時々客演するだけなのに、みんながサポートしてくれる、とても居心地の良いバレエ団です。

----11月初めにはシュトゥットガルトでバランシンの『テーマとヴァリエーション』にもデビューされましたね。

フォーゲル
  ENBとの『マノン』の間に1週間だけシュトゥットガルトに帰って『テーマとヴァリエーション』と、新作を習いデビューしました。2つの作品と舞台の他に も、日本公演の準備や、日本から帰ってからのガラの準備もあって、何と1週間に7つのバレエのリハーサルをしなければならなかったんですよ。本当に忙しく て・・・・。

愛犬モリーを抱いて

----ドイツとイギリスそれぞれの生活を楽しんだり、愛犬のモリー(黒のミニ・プードル)と過ごす時間はあるのですか。

フォーゲル モリーについては、僕がシュトゥットガルトを留守にしている間は、両親が面倒をみてくれています。今の僕はとにかくバレエだけです。そしてバレエに集中できる環境にいられる自分をとても幸せだと思います。バレエ・ダンサーのキャリアはとても短いものですから。

----来年1月にはENBのロンドン公演でも『マノン』を踊られますね。最近はリハーサルや公演のため、ロンドンで過ごされることが多いわけですが、お気に入りのスポットなどありますか。

フォーゲル 一番好きな場所は、サウス・ケンジントンのビクトリア&アルバート博物館(V&A)です。トラファルガー広場のナショナル・ギャラリーも大好きです。ロンドンの博物館や美術館はどれも本当に素晴らしいと思います。
時間があれば、V&Aのカフェでランチを食べてリラックスしたり、お天気の良い日は、中庭から美しい館内を眺めたりして過ごします。
館内ではモード(ファッション)と彫刻コーナーが一番気に入っているんですよ。現代を生きる僕が、古い時代の彫刻に囲まれていると、一種とても不思議な 気持ちになります。忙しくてフリータイムはほとんどないけれど、時々好きな彫刻の間に身をおいて、インスピレーションに満ちた夢の世界に入り込み、美しい 夢の中を彷徨って過ごしています。

----もうすぐシュトゥットガルト・バレエとの日本公演ですね。
日本がお好きとうかがっていますが、どのような理由からでしょうか。

フォーゲル ヨーロッパで生まれ育った僕にとって、日本と日本文化は何もかもとてもエキゾチックです。それに日本では、ファンの皆さんの暖かい応援に励まされながら、これまでたくさんの思い出深い舞台をつとめることができました。
日本で最初に踊ったロミオ、そして若くして抜擢していただきき、世界バレエ・フェスティバルに参加したのは、僕のこれまでのキャリアの中でも特別な思い出になっています。
ドイツ人の僕にとっては、日本人の国民性は、精神的にもとてもしっくり馴染んで心地よいものです。公演のため世界の様々な国や街を訪れ、その国や街で過 ごすようになりましたが、なかなか日本や日本の人々のように、自分にとって居心地の良い環境には出会えないでいるんですよ。

(インタビュー/アンジェラ加瀬)

シュトゥットガルト・バレエ団 >>>発売中

<東京>
◇「眠れる森の美女」「オネーギン」
●11/23(日・祝)~30(日)
●東京文化会館
●S席18,000円/A席16,000円/B席14,000円/C席11,000円/D席8,000円/E席5,000円、エコノミー券4,000円/学生券3,000円(10/17(金)前売開始)
※ペア券、2演目セット券あり、詳細はお問い合せを。
●お問い合せ=NBS http://www.nbs.or.jp

<大阪>
◇「オネーギン」
●12/2(火)18:30開演
●フェスティバルホール
●S席16,000円/A席13,000円/B席11,000円/C席9,000円/D席7,000円、Sペア券28,000円/Aペア券23,000円
●お問い合せ=フェスティバルホール 06-6231-2221

<兵庫>
◇「眠れる森の美女」
●12/6(土)18:00開演
●兵庫県立芸術文化センター 大ホール
●A席16,000円//B席13,000円/C席10,000円/D席7,000円/E席4,000円
●お問い合せ=芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255