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[2008.05. 8]

アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル
ジリアン・マーフィー インタビュー

7月の来日公演に先駆けて、ABTを代表するプリマ・バレリーナ、ジリアン・マーフィーが来日した。6月にメトロポリタン歌劇場で世界初演されるトワイラ・サープの新作も踊るという美人バレリーナにABTの「今」を聞いた。

----3歳でバレエを習い始められたとお聞きしましたが。

ジリアン・マーフィー(GM)プロの訓練を3歳から受け始めるというのだったら早いと思ますが、3歳で始めた時は、ただのお稽古事として習い始めたのです。座ったりつま先をピンと伸ばしたり、蝶々のように走り回るというような、シリアスではないことでした。

----どうしてバレエを選ばれたんでしょうか。

GM 幼い頃は家中を踊りまわっていました。踊りに恋に落ちたといってもいいです。実際にダンサーになろうと決心したのは初めてトウシュー ズを手に入れた時、そこから先は出来るだけ長いことダンサーとしての人生を送っていきたいと思いました。それは動く喜びであったり、音楽に反応するとか、 バレエそのものの愛から来てるんだと思います。

-----英国で生まれてアメリカに移られた。

GM そうです、アメリカで育ちました。14歳の時に家を離れて、ノースカロライナ・スクール・オブ・アーツという素晴らしい芸術学校に入学しました。

------それからバレエの国際コンクールにも参加されていますね。

GM はい。15歳の時に、ジャクソン国際バレエ・コンクールでファイナリストになりました。また、同じ年にローザンヌ国際バレエ・コン クールでもエスポワール賞を受賞して、行きたい大学だったらどこでも行けるというスカラシップでしたが、私はノースカロライナ・スクール・オブ・アーツに 戻ることを選びました。あまりにもそこでの体験が素晴らしかったからです。

----国際コンクールで活躍する秘訣は何ですか。

GM 秘訣があるとは思わないんですけれども、大切だと思うのは、国際コンクールに参加して、それに行く時に、自分がパフォーマンスをしに 行くんだと、自分で人前に立つという、そういう機会なんだと思って行くことが大切なんだと思います。そこでは同年代の素晴らしいダンサーたちとも出会えま すし、また勝ち負けっていうことだけで行くのではなく、入賞すると何か自分では違う体験をして持ち帰れるものがあると思います。

----アメリカン・バレエ・シアター(ABT)というカンパニーについて、最初はどのような印象をもたれたのでしょうか。

GM ABTは世界有数の素晴らしいカンパニーです。ABTからの契約のオファーがあったんですけれども、オーディションの時にこのカンパ ニーに、もう絶対ここに入団したいと確信しました。そこで自分がそのメンバーとして踊るということはとっても名誉なことだし、歴史と伝統があり常に継続し てトップであるというバレエ団にとても誇りを持っています。
私は入団した二日後に舞台に立ったんですけれども、その時はバレエ団がリオデジャネイロに行って、そのあと韓国に行って世界中を回っていました。その後 で初めてメトロポリタン歌劇場に立つということになりました。その時の舞台が、演目が何だったかはちょっと思い出せないんですけれども、そのシーズンは一 週間に8公演、それを8週間というシーズンでした。それがメトロポリタン歌劇場で初めて踊った時です。もちろん、『白鳥の湖』も『ラ・バヤデール』もコー ルドでしたが踊りました。

----あなたは、現在、プリンシパルダンサーですが、ABTではダンサーはどのようにして昇格するのですか。

GM それはもちろん、ほとんど場合芸術監督が決めていきます。おそらくABTでもそうだと思うんですが、ソリストがソリストをやってる間 に、多くの場合ソリスト役だけではなく、プリンシパルの役を踊る機会もあります。将来的に踊るかも知れない役を踊ってみるという経験もあります。それが きっとひとつの基準になると思いますが、それでも私たちのカンパニーは本当に才能豊かなダンサーがたくさんいるので、コールドで終わってしまう人もいるけ れども、そのコールドの人だって素晴らしいダンサーです。

----ジリアンさんは何を通ってプリンシパルに昇格されたんですか。

GM 『ドン・キホーテ』のキトリ、オデットとオディール、『ラ・バヤデール』のガムザッティ、『ジゼル』のミルタ、コンテンポラリー物などを踊ってからプリンシパルになりました。

----バレエダンサーとしてトップでありつづけるのは、大変なことだと思いますが、何があなたを支えているのでしょうか。

GM 努力というのは必ず必要なことになります。それは身体的にも精神的にも、ものすごく多くを要求されるからです。それを乗り切るには踊 ることへの愛、それから学ぶことへの愛、それから自分は絶対に素晴らしいアーティストとしてやっていくのだという、強い意志が必要になると思います。つま り技術を超えたアーティストになるのだということを目標にしなければ無理だと思います。
プリンシパルに実際に昇格する前からそうだったんですけども、バレエの素晴らしさというのは自分自身の身体を通して自分を表現できるということ。そして観客とある関係を分かち合えるものであるということでした。
プリンシパルの責任というのも当然あります。全幕ものを通して、その公演を成功させるかどうかという責任があると思います。責任はいつも感じてます。役 との深い繋がりでその役を演じきることなどとても大切だと思います。誠心誠意、観客に対して踊るということもあります。

----最近のダンサーはクラシックばかりでなく、コンテンポラリー・ダンスも踊らなければならなくなりましたね。

GM もちろん簡単ではないと思います。いろんな様式とかスタイルのバレエ、コンテンポラリーを踊ってクラシックも踊るというのは、身体に とっては簡単なことではないけれども、例えば、ただクラシックだけ踊れるということでは、もう充分ではないと思います。実験的なものなどを体験すること で、逆に身体を通してクラシックを踊った時に違う面を見せられる、といつも思っています。

----どのようなコンテンポラリー・ダンスを踊られているのでしょうか。

GM マーク・モリス、マーサ・グラハム、ラー・ルボヴィッチなどの振付家の作品を踊っています。あと今は、トワイラ・サープの新作のリハーサル中なのですが、素晴らしい作品になるとみんなで興奮しています。
ABTは素晴らしいレパートリーを持っています。今回持ってくる『白鳥の湖』はドラマチックな名作だし、『海賊』は大仕掛けの花火のように大勢のスター が同時に舞台にそろって、嵐を巻き起こすような勢いで踊ります。またトワイラ・サープの新作もとっても個性的な、絶対に見逃せない優れた作品です

----いままでトワイラ・サープのどんな作品を踊りましたか。

GM 『プッシュ・カムズ・トゥ・ショブ』、『イン・ジ・アッパールーム』を踊りました。新作として作るプロセスから参加したのは今回が初めてですが、彼女は素晴らしい女性だし、クリエイティブなアーティストで本当に興奮してます。
ちょうど日本に来る前に振りが最後まで終わったところで、本当に素晴らしい作品が出来上がっています。書き下ろしのダニー・エルフマンの新曲に振付けていて、衣装はまだ見ていないんですけどノーマ・カマリがデザインしているので楽しみです。

----ノーマ・カマリの衣裳はお好きですか。

GM すごく楽しいデザインだと思います。私が彼女の衣裳を着て踊ったのは『イン・ジ・アッパールーム』だけですけれども、あれは80年代 の設定で、ストライプとブラウスみたいな形で最初始まって、途中でだんだん脱いでって、最後はスニーカーと赤レオタードとタイツだけっていう状態になりま す。すごく楽しかったです。

----サープの新作の見所はどんなところですか。

GM まずは素晴らしいアーティストたち、つまりトワイラ自身、ノーマ・カマリとかダニー・エルフマンが参加しているということ。それか ら、オリジナルキャストと創っているんですが、ダンサーの個性を最大限に引き出し、その人の強みまた才能を引き出して、そのダンサーを新しい方向性に推進 させています。それが本当に素晴らしくて見所になっています。

----サープの振付の現場はどんなふうですか。

GM トワイラはクリアなビジョンというか、はっきりとして考えを持ってリハーサルにやってきます。例えば、方向性とか演出的なことを口頭 でダンサーに言って、ダンサーの方でそれに反応してやってみます。するとそれが彼女の思ってる方向性だったり、全く違った時とかもあって、こうしてみてと 言ったり、全く違う物が出てきたら面白がったりして、そうやって一緒に創り上げていく、そういうプロセスになってます。
素晴らしいエネルギーが稽古場に流れることになります。またそのエネルギーだけじゃなくて、すごく即興性があって、それを奨励する人なので、振りがたと え同じでも毎日繰り返すのではなく、その時に感じてその瞬間に存在するという、つながりに反応するっていう状態とか、毎日観ていても全く違う表現になった りすることがあります。
この新作は、ずっと通して踊っているのがイーサン・スティーフィルとエルマン・コルネホで、5つのムーブメントで構成されています。第2ムーブメントと 第5ムーブメントで私とデイビット・ホールバーグがカップルとして踊ります。第4ムーブメントでパロマ・ヘレーラとゲンナジー・サヴェリエフがカップルと して出てきます。その他に2組のソリストのカップル、6組のアンサンブルのカップルが踊っているので、常に出入りがあって、動きがずっと流れていくように なっています

----トワイラ・サープは人間的にはどんな人なんですか。

GM 彼女はとても強い自立した女性でクリエイティブなアーティストだと思います。例えると、ダイナマイトのような爆薬とか、いつ爆発する か分からない物を持っていて、それがリハーサル室でものすごいエネルギーをダンサーから引き出すので、素晴らしいエネルギーのるつぼになるのです。

-----新しい映画『センター・ステージ 2 』に出演されていますね。

GM 『センター・ステージ 2 』という映画はヒップホップがたくさん出てきます。バレエのシーンもあって、とても楽しい映画に仕上がっています。若い世代が今人気のダンス・スタイルに 出会えるいい機会になると思います。私の役は、少女がスクリーンを観ているとそのバレエのビデオに、私がバレリーナとして踊っている、というちょっとした 演出のあるシーンです。出演できてとっても良かったと思っています。
私は今まで多くの名作に出ることが出来ましたし、今回トワイラ・サープと新作を創っていくことを体験して、多くのことを得ることができました。これから もクリストファー・ウィールドン、ラー・ルボヴィッチ、マーク・モリスなどの、今こうやって話しいてる間もどんどんどんどん発達を遂げている素晴らしい振 付家たちと、積極的に仕事をしていきたいと思っています。
そして最後に、アメリカン・バレエ・シアターが日本にやってきます。演目は『白鳥の湖』、『海賊』そしてトワイラ・サープの新作も上演する「オール・ス ター・ガラ」です。すべての演目素晴らしいので、機会があったらどの舞台でもぜひご覧になってください。この7月、どうかお見逃しなく!

(ジリアン・マーフィーのインタビューは、シアター・テレビジョンで6月2日13時、21時、3日6時。以後も27日まで放映されます)

(インタビュアー/関口紘一)