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[2008.01.10]

ただいま開幕!【空白に落ちた男】首藤康之、小野寺修二インタビュー

主演/首藤康之さんインタビュー
---- 今回の公演ですが、小野寺さんやcobaさんというアーティストと一緒にお仕事をすることになったいきさつを教えてください。

首藤 小野寺さんが以前いらした、「水と油」というカンパニーの公演を見て、ぜひとも一緒に仕事をしたいと思いました。僕の表現の中に欠け ていたと思われる、マイム的要素ですとか、ユーモアの要素ですとか、たくさんやりたいことがあったのです。それで僕が小野寺さんにぜひ一緒に仕事がしたい と言って、今回の企画につながりました。

---- ご自分から積極的にお話されたのですか。

首藤 はいそうです。最近はやりたいことはもう、自分の感情が抑えられなくてその人に直接、何か作れないか何かやれないかということを言いに行くことが多いんですけど、その一つですね。

---- 小野寺さんの表現は、バレエ、ダンスとか今までなさってきたところと違った独特の表現ですけれども、それはやっぱり本番をご覧になって、やってみたいと思われたのですか。

首藤 そうです。「水と油」はもちろんパントマイムを基盤としたカンパニーでしたけれども、その枠を超えて演技の間ですとか、動きですとか、すべてが新しいことをやっていてとても新鮮だったんですね。
パントマイムと言うと少々古臭いイメージがあるかもしれませんが、それを基盤としながらもすごく新しいことをやっていて、もう心を打つ瞬間がたくさんありました。
ぜひ、その中に自分も身を置いてみたいと思ったのがきっかけです。

---- クラシックバレエのマイムとはずいぶん違いますが、実際に稽古されてみていかがですか。

首藤 もちろんクラシックバレエのマイムとはまったく違いますけれども、どちらかというと、最近、バレエもマイムはそれほど使われてなくて、むしろ排除されていると思います。
でも、すごくマイムというのは重要な要素であって、少し違うようですが、じつは基盤はやはりとても似ているんですね。
だから、僕がダンスをこれから踊ることにおいても、そのマイムの要素というものを少し学びたいと思いました、今、稽古をしていてもとても演技的にも勉強になる瞬間がたくさんあります。

---- 首藤さんの口から今回の舞台を簡単にご説明をしていただくとどうなりますか。

首藤 内容はまだ見てのお楽しみという感じですけれども、これは記憶の話で、自分自身がちょっと忘れかけていたこと、日常の生活でもよくあることなんですね。
例えばつい1時間前にやったことをポッと忘れて、次の日にたまたますぐ思い出してとか、そういうことの連続の話で、とてもスリルがありますし、今まで見た ことない僕自身の表現、僕というものがこの舞台で見られると思います。---- ものを動かして素早くパッパッと動いたりしますよね、そういうのはバレエにはあんまり無いですね。

首藤  そうですね。物を使うとか、ものの移動とか、そういうことはほとんど僕のダンスの中では無かったので、そういう経験も初めてですし、ひとつ共通項と言えば 言葉を使わないということだけで、あとの表現の基盤というのは少し違うので、そこら辺は僕の挑戦でもありますし、すごく楽しんでやってますね。

---- ダンスは音楽とかカウントとかそういうことでタイミングをとると思いますが、またちょっと違いますよね。

首藤  ダンスはまず音楽があってですね、そこに振りをつけていく形が多いんですけれども、今回の場合はcobaさんの音楽もそうですけれども、オリジナルという ことで、まだ曲が出来ていないところから始めて、そこにまた曲を載せていったりという順序が逆なことも多いので、そこら辺もとても勉強になってますね。い つも音に助けられることも多いんですけれども。

---- 振りを覚えるのと、そういうパッパッパッとみんなとタイミングを合わせながら動くのと、ちょっと動きを覚えるのも違いますか。

首藤 そうですね。僕には新しい動き自体が多くて、とても覚えるのに苦労していますけれど、それも新しい挑戦ということで楽しんでやってい ます。ただ、ダンスはもうちょっと早く作っていくんですけど、とても時間をかけて作っていますので、そこら辺は色々試行錯誤しながら作っていて、すごく楽 しいです。
---- ダンサーとしてだけではなくて、色々なジャンルに積極的にお仕事なさっていますけれど、これからさらに挑戦したいこととか、実際のご予定とかありましたら教えてください。

首藤 07年は、この小野寺さんとのお仕事もそうですし、あとシディ・ラルビ・チェルカウィというベルギーの振付家と2年越しの夢がかなって仕事が出来たので、2つ大きなプロジェクトをやりあげたことになります。
作品というのは進化していくので、この『空白に落ちた男』もそうですし、出来てからまた進化していく作品だと思いますので、それをなるべくたくさんの観客に見ていただきたいです。とりあえずここ1年はそういうことでしょうか。

---- チェルカウィとの舞台は日本でも見られそうなんですか。

首藤 まだなんとも言えませんけど、今はヨーロッパを回っています。

---- ベジャールさん亡くなられてしまいましたが、首藤さんはずいぶん一緒にお仕事をなさって、本当にベジャールさんの死に対しても思われることがあると思うのですが、一番印象に残っていることといいますか、一番教えられたことということはどういうことでしょうか.

首藤 ベジャールさんは、まぎれもなく僕のダンス観を変えた人で、今でも変わらずもっとも重要な人です。彼のダンスに対する情熱やその精神というものは、僕の中でずっと残り続けるものであると思いますし、信じられないです、未だに。
やはり振りつけてるときは、本当にもう永遠だと思わせるほどのパワーを持って、振付をしていただいていたので、まさか、という感じです。
これからは、その死は少しずつ受け入れて、彼の精神を自分の中に宿らせながら、前に進んでいくだけだと思います。表現者としては。

---- 実際にお別れ会みたいなのはあったのですか。

首藤 そうですね。ちょうど彼が亡くなって、すぐに僕はヨーロッパで踊る予定があったものですから、その前にすこしローザンヌに寄ってきました。個人的に「ありがとうございました」と言えたのでよかったんですけれども。

---- ベジャール作品を踊られて一番印象に残っている作品はなんでしょうか。

首藤 一番はないですね。彼と仕事したすべてですね。
その中でも『M』というのは僕自身にオリジナルを振付けていただいて、一番最初にやった大きな仕事ですから、そのすべて、1秒1分が僕の中に残っていますし、体にも残っています。記憶にも残っています。
ベジャールさんについて印象に残っていることは本当にたくさんありすぎて。彼の振付けた作品、振付けてもらったものを通して今の僕があるという感じですから、今の僕を見ていただければ教えていただいたことがすべて分かると思います。

---- 貴重なお時間をありがとうございました。

【空白に落ちた男】作/演出・出演:小野寺修二さんインタビュー

---- 「水と油」というマイムを核にしたお仕事をされていたわけですが、バレエダンサーの首藤さんを起用されて、一番基本的な部分で作りたい舞台というのはどういうところでしょうか。

小野寺 「水と油」をやっていた時もそうなんですけれど、出来る限りいろんなジャンルの方といろんなジャンルを混ぜ込んで一つの表現は作り たいなと思っていました。ダンスと言ってもいろんな表現方法があって、その中でも特にバレエというのは、ひとつそのちゃんと形式も出来ているし形も出来て いて、なかなか僕らのコンプレックスも含めて踏み込めません。そこで、ひとつ形のあるものだしそういう人と一緒に舞台に立つという時に、僕らがバレエをす るのは難しいんですけど、彼が持っている身体とか、体験とかが、こちらの土俵に入ってもらった時にどういう風に変化するかな、というのは、例えば音楽家を 入れるとか、美術家を入れるとか、そういうことと同じように考えています。
そういう意味では自分の中では新しい刺激が生まれてくるので、それがまた新しい表現になっていけばいいなとは思っています。

---- 小野寺さんは首藤さんの舞台とかはご覧になったことはありましたか。

小野寺 これは正直言ってお話いただくまでちゃんと見たことはなくて、もちろんお名前は知っていたし、ビデオとかで見たことはあったんですけど実際追っかけて全部見ていたかというと、むしろ見ていなかったという方が正解だと思います。

---- バレエは、ご覧になることは?

小野寺 もちろん、マイムって、もともとすごくバレエと似たところから、というか体の訓練の仕方が、僕が習ったメソッドが、比較的バレエのメソッドを利用しているんです。
なので、それを詰めていくとやっぱりバレエに行きつくので、本当に恥ずかしい話なんですけど、バレエをちょっとやってみたり、こういうことだな、という理屈はやったことがあります。

---- ただ実際に作られる動きは違いますし、すごいたいへんですよね。

小野寺 そうですね。ただバレエの方がたいへんだと思いますけど、正直言うと。やっぱり似てるところがすごくあって、こういう風に間をとるのかとか、体を、軸をどう使うのかとかっていったところがそれはすごくおもしろいですね。
僕らの表現ってどちらかというと日常のしぐさを振りにしていく形なので、日常ではそんなに軸のある人っていないんですね。
そこがまたバレエのおもしろさなんだと思うんですけど、それをやっぱり首藤さんと今回やってみると、じゃあどうやって軸を壊すかとか、軸を使ってどうするかとかといった、ある種もう確固たる技術があるのでアプローチの仕方はすごくおもしろいですね。
全く何もない中でやるんではなくて、まずこれをやると違和感がある、それをじゃあどっちに修正するかっていうような形でやっていくので、それはちょっとやりすぎてるな、やらなすぎてるなっていうのは、お互いビデオを見ながら確認できるから、それはすごく楽しい作業ですね。

---- バレエダンサーの首藤さんを、狭い所に押し詰めてみようと思った、とコメントをされていましたが。

小野寺 舞台がですね。普段、首藤さんが踊っている舞台の、多分、どれぐらいだろう、少なくとも5分の1ぐらいの大きさになっているんじゃないですかね。
で、それもあって、手を全開に広げたり足を伸ばしたりできないような空間になっているので、そこがまず一番、ある意味それをどう処理するのかなと思いまし た。大きな舞台でやってきた方なので、お客さんが近くてなおかつ舞台がせまい、という中でどうやって自分を処していくのかというのはすごく興味があります ね。
ただそれはちょっとずつアジャストというか、合わせてきているので、何かその過程を見ているのがすごくおもしろいです。大きくやりすぎてるねというのを、ちょっと自分の中で戻してきたり、そういうことが、今、盛んに行われています。
やっぱり僕らがやる仕事は負荷をかけるというか、いろんなことをこれはダメあれはダメということをまず言っていくと、それに適応していく中で、もちろん自分の持っているスキルみたいなのが出てきます。「水と油」の時もそうなんですけど、そういうのがすごく楽しい。
結果それが、団体というか今回の5人のルールになっていく感じなので、特に言葉で、たとえば台本があって、何か伝えるべきものがあるという世界ではなく て、なんとなくそのイメージみたいなものをどうやって形にしようかという表現なので、それが、どうやって共通言語を獲得するかみたいなことがまず一番最初 大切なことになると思うんですね。
だからそういう意味では、狭いとか、すごくいろんな道具の中に囲まれてる首藤さんというのは、また今までとはちょっと違う首藤さんが見れるんじゃないかなと思っています。

---- 今までパフォーマーとして、別のメソッドというか、別のジャンルでやってた方と一緒にやられたことはありますか。

小野寺 「水と油」ってあんまりコラボレーションしなくて、どちらかというと。ミュージシャンでN響の方とか、あとはジャズのピアニストと か、そういう意味では、トヨタのロボットと一緒に動いたりとかってそういう全く違うものと団体がコラボレーションすることはあったんですけど、実際にダン スカンパニーをやっているとか、あと俳優さんというのは、ほぼ初めてに近いかもしれないですね。
個人的な作業はしてましたけど、ちゃんとした公演でやるのは初めてだと思います.

---- 今回の作品で、一番こだわっているといいますか、ここだけは伝えたいというのはなんでしょう。

小野寺 僕らの表現の一番特徴的なところは言葉を使わずに、イメージだとかお話だとかを伝える作業なので、それはずっと変わらないんです が、どれぐらいお客さんがその出てきたものを見て、ストーリーとかイメージとか、それはもう別々で全然構わないんですけど、それぞれがいろんなことを思え るか。
それが見えたらいいし、お客さんが参加してもらって自分で見て、それをみて何か納得するんじゃなくて、ハテナも含めて何かを獲得してもらって、それからま た膨らませて、例えばその動いている人が自分なのかとか、この出来事はこうだったんじゃないだろうかとか、こういう風に見えたとかって、もう少し参加型と 言うとちょっと変ですけど、そういう舞台になるといいなとは常々思っています。
今回も、分かりやすく分りづらくというか、そういう形で作っていきたいと思っています。

---- フランスに留学されて、どういう勉強をなさったのですか。

小野寺 マイムの勉強をもう一回やり直そうというのが目的でした。僕が日本で学んだマイムが、ちょうどフランスのマルセル・マルソーの先生のエチエンヌ・ドゥクルーという方のシステムだったので、それを改めて発祥の地のフランスでやりたかったのです。
それをやりながらいわゆるフィジカルシアターって、「水と油」のようなダンスとか演劇とかを混ぜ込んだような、そういう表現をしているカンパニーがヨーロッパには多いんですけど、そのカンパニーの作業を見せてもらえたらいいなというのが主な目的でした。

---- 実際に行かれて、ご自分が作っていた作品と向こうのをご覧になって、どういう印象でしたか。

小野寺 自分は日本人だなと思いましたね.
何かすごく違う文化の中で生きてるんだなということを痛感しましたね。でも逆にそれだけ可能性がすごくあるように思いました。
どっちがおもしろいかというのは多分外からの判断なので、間違いなく自分だけで言うと自分の方が面白いと思っちゃうんですけど、それはお客さんの判断とし ても、何か違う表現が出来るんだなという意味で、日本で生きていること自体は素晴らしいなと思いましたね。変な意味で、ヨーロッパに対してのコンプレック スみたいなのが少し無くなったし、日本に対しての愛着とかが生まれました。
といってもいきなり何か和風なことをやりたいわけではなくて、もう少し日本人のしぐさとか、例えば何か言われた時にすぐこう、バンバン話をしないで一回飲 み込む姿勢だとか、そういう細かいところですごく、リスペクトというかおもしろいなと思うところがありました。自分を通してなんですけど、なかなか環境に 適応できなかったりしたので、そういう時に自分は日本人なんだなって何かすごく思ったので、それがすごく作品に、今思うと生きてます。
作品を作るのに外国の方と作業をしたんですね、そうすると、やっぱり、今まで作ってきた作品を彼らに当てはめると、そぐわないところがすごく出てくるんです。それがすごくおもしろかった。
日本人だったら普通に受けとめてもらえることが、なんでこういう風になるのかなみたいな話がずいぶん出てきて、そういう意味では自分がやりたいこととか、自分が作ってきたものに対してはすごく生産というか、いろんなことが自分の中で理解できるようになってきましたね。

---- 日常の動きを使って作品を作られていますけど、そういう目からみてフランスの動きもやっぱり違いますか。

小野寺 やっぱり違いますね、違うというか、例えば椅子一個に座るのでも向こうの人はかっこいいですね。
日本人はカッコ悪いわけではないんですけど、そういうもともとある文化でやっぱりちょっと違和感があって、正座が出来ない外国人が多くてとか、何かしぐさ というか動きひとつもずいぶん出来ることと出来ないことの差があって、そういうのから振りが出来ているので、ずいぶんこっちが思っていない振りも出てくる し、あ、そういうことは出来ないんだな、ということもずいぶんありましたね。

---- 今度はフランス人を起用して作品を作ってみるとか。

小野寺 外国の方とは、来年はぜひちょっとそういう作業もやってみたいのでやります。ただ、やっぱり日本人とやるのが一番楽っていうか楽しいですね。

---- では最後に『空白に落ちた男』について一言だけお願いします。

小野寺 セリフの無い世界の中に、いろいろなイメージを皆さん想像していただくことが出来る舞台です。
今回はバレエダンサーの首藤康之さんを迎えて、新しい形の表現を探しています。
ぜひ、そういう目でごらんください。

---- 楽しいお話をありがとうございました。(インタビュアー/関口紘一)
「空白に落ちた男」 >>>公演中

●1/14(月)~2/28(木)
●ベニサン・ピット
●作・構成・演出・振付=小野寺修二
●音楽=coba
●出演=首藤康之/梶原暁子/藤田桃子/丸山和彰/小野寺修二
●全席指定6,500円(税込)
●開演時間=下記にお問い合わせ下さい
●お問い合わせ=楽天エンタープライズ 03-6387-0140(平日10:00~17:00)
http://ticket.rakuten.co.jp/