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インタビュアー・関口紘一
[2010.05. 6]

<マラーホフの贈り物2010>直前インタビュー、ウラジーミル・マラーホフ

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----今回の「マラーホフの贈り物」公演で東京バレエ団と日本初演する『仮面舞踏会』のリハーサルは順調に進んでいるようですね。
マラーホフ ええ、東京バレエ団は『ザ・カブキ』に続いて『オネーギン』の公演もあるので、あまり苦しめないようにしないとなりません。今回、『仮面舞踏会』は「四季」のパートを30分くらい踊ることになりますが、東京バレエ団に踊りやすいように少しアレンジしています。

----ところで先日、ベルリンでマラーホフさん振付け、主演された『ラ・ペリ』を見せていただきました。
マラーホフ そうですか。いつ観たのですか?

-----初日です。お聞きしようと思っていたのですが、ブルグミューラーの『ラ・ペリ』の曲は全曲残っていたのですか。
マラーホフ はい。

-----振付は復元とかではなく、全く新しいものですよね。
マラーホフ ええ、振付は全く残っていないので、音楽を聴きながら頭の中で想像しながら創りました。

----コール・ド・バレエの細部に至るまですべてご自身で振付けられたのですか。
マラーホフ もちろん。すべてが私のプロダクションです。

----『ラ・ペリ』世界初演のカーテン・コールは凄かったです!
ベルリンの人たちがマラーホフさんの新作をすごく喜んでいたのが、とてもよくわかりました。

マラーホフ はい、たいへん好評で今回は6公演しかなかったので、いろんな人たちから「何でもっとたくさんやらないんだ」といわれました。ですから、来シーズンはもっと公演数を増やしたいと思っています。

----特に最近は、クラシック・バレエの新しい全幕物を見る機会がほとんどないので・・・
マラーホフ 21世紀になるとすべての振付がモダンになってしまっているようにみえます。
やはり観客には、全幕のきちんとしたストーリーのあるバレエが求められていると思います。理解しやすいですし。

----2011年のベルリン国立バレエ団来日公演では『ラ・ペリ』を上演されないのですか。
マラーホフ もう『シンデレラ』と発表されていますし・・・
私も『ラ・ペリ』は日本人の好みにあうのではないか、と思っていましたので、次の機会には必ず持ってきたいと思っています。

----ベルリン国立バレエ団には日本人のダンサーも何人かいるので、とても楽しみにしています。
マラーホフ ええ、SHOKOがセカンド・キャストで『ラ・ペリ』の主役を踊りました。
 

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----お話を戻しますと、『仮面舞踏会』はマラーホフさんが全幕を振付けられていますが、今回の「マラーホフの贈り物」で上演される「四季」は、どんなシーンでしょうか。
マラーホフ 『仮面舞踏会』第2幕の劇中劇になるパートです。ステージでグスタフ王のために踊っている、というシーンになるわけです。デヴェルティスマンとして取り出して上演するのに適しているパートでしょう。
「マラーホフの贈り物」も今年で8回目になりますので、フレッシュな演目も見ていただきたいと思っています。東京バレエ団のダンサーとのコラボレーションの部分を見せたいのです。「四季」は東京バレ団にぴったりのイメージです。

----日本のファンはどこを注目してみるといいでしょうか。
マラーホフ ひとつひとつのシーズンがそれぞれ個性を持っています。ヴェルディの音楽も素晴らしい。日本だと四季は春から始まると思われるかもしれませんが、ここでは冬から始まります。ヴェルディがもともと書いた冬の部分に合わせているので、冬、春、夏、秋という順番になっています。きっと日本の観客の方は新しい四季の感覚を感じることができると思います。

----日本初演ですが、東京バレエ団のダンサーに振付けてみていかがでしたか。
マラーホフ とても良かったです。リード部分を踊っているダンサーは、まるで彼らのために創られたかのようにぴったり雰囲気があっています。上野水香が冬、吉岡美佳と柄本武尊が春で、田中結子と松下裕次が秋を踊りますが、凄くいいですよ。そしてポリーナと私が夏の部分を踊ります。
 

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----その他の作品の見所といいますと。
マラーホフ 「四季」とそれから『カラバッジョ』、私のソロはイタリアの振付家マウロ・デ・キャンディア振付の『瀕死の白鳥』です。もちろん、日本で初めて踊ります。

----『カラバッジョ』の題材となった中世の画家カラバッジョは、故国のイタリアで展覧会が開かれたり、彼をテーマにした映画が作られたりして、注目が集まっています。今回踊られるのは、どういうシーンですか。

マラーホフ 第1幕の終わりの部分だけお見せするのですが、この作品はカラバッジョの生涯を描いたものではなく、カラバッジョの七つの絵画を題材にしているバレエです。

----マウロ・ビゴンゼッティという振付家は日本ではあまりなじみがないのですが、どういう振付家ですか。

マラーホフ すごくアイディアをたくさんもっているコンテンポラリー系の振付家で、たいへん音楽性に富んでいて様々な動きをダンスに組み入れる振付家です。実際、彼は絵を見ながら考えていて、ダンサーに説明する時もその絵を見せながら説明しました。すごく表現力が豊かで、見たものを表現することがじつに巧みな振付家です。

----『カジミールの色』も彼の振付だったと思いますが。
マラーホフ
 ええ。これもフルレングス・バレエですが、今回は一部だけです。

----ロシア・アヴァンギャルドの画家マレーヴィチを題材にしている・・・
マラーホフ そうです。ショスタコーヴィチの音楽を使ってシュツットガルト・バレエ団に振付けた作品です。今回は1幕の半分くらいの上演になります。

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----今回来日するダンサーについて教えていただけますか。
マラーホフ 何人かは既に来日したことがあるので、ご存知だと思います。
ポリーナについてはもう説明するまでもないでしょう。彼女はつい最近も来日して『シルヴィア』を踊りました。『ラ・ペリ』も彼女に踊ってもらうつもりでしたが、来日公演をしたすぐ後だったのでヴィシ二ョーワが踊りました。

----それでヴィシ二ョーワさんは初日だけだったんですね。
マラーホフ そうです。ヤーナ・サレンコも「マラーホフと仲間たち」や、「世界バレエフェスティバル」でも来日しています。
シュツットガルト・バレエ団のマリア・アイシュヴァルトも来ます。
新しい人といえばディヌ・タマズラカル、それからベルリンのエリア・カリッロ・カブレラとミハイル・カニスキン。

----『カジミールの色』を踊るエリア・カリッロ・カブレラは、メキシコ出身のダンサーですね。
マラーホフ 彼女はメキシコ出身で成功した数少ないバレリーナです。
ボリショイ・バレエ団のニーナ・カプツォーワとイワン・ワシーリエフ。マライン・ラドメイカーは、私がシュツットガルト・バレエ団を出たときに入団してきました。
それから、私が『仮面舞踏会』で夏を踊るのは初めてです。いつも劇中劇のバレエを見ているグスタフ王を踊っていましたので。作品の中ではこのバレエを見た後に暗殺されます。

----マラーホフさんのプログラムはいつもほんとに楽しいです。
マラーホフ 洋服でも2、3年たったら着替えるように、観客にはいつも新しいものを見せなければなりません。マラーホフの贈り物ですから、踊っている人たちにも新しいものを提供したいと思っています。

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----ベルリン国立バレエ団の芸術監督として、主演ダンサーとして、全幕バレエの振付家としてたいへんお忙しいと思うのですが・・
マラーホフ 何をおいても私はまずはダンサーです。振付することはとても楽しいことですけれども、非常にエネルギーを消耗します。プルミエの前にはもうがっくり来てしまいます。3つのことを一緒にやるのはやはり非常に難しいので、プルミエには踊らないで芸術監督として見守るか、あるいは振付家としてかかわるほうがいいと思います。『ラ・ペリ』の時のように全部3役ともやってしまうことは最近は珍しかったのです。3つの役割のうち、芸術監督とダンサーとか振付家とダンサーというふうに2つの役割はこなせるんですが、3役をひとつの演目で一緒にこなすということはやっぱりちょっと厳しいですね。

----日本のファンもダンサーとしての舞台はもちろん、楽しいプログラムや振付もみたいし・・・・

マラーホフ 身体の続く限り踊り続けたいと思っています。振付は今でなくてもできると思いますから。

----でも『ラ・ペリ』のような今日では失われてしまった良い作品を取り上げてくださったことは、観客としてもほんとうに嬉しいです。
マラーホフ 私の夢だったのです。女性は見ごもって8、9ヶ月で出産しますけど、私はこの作品を8年以上も温めてきました。大事な大事な赤ちゃんなんです。

----では、マラホフの贈り物2010、心より楽しみにしています。こんなことを言うと失礼かもしれませんが、どうぞ身体に気をつけてください。
マラーホフ 日本はなんでも売っているので、人工の膝や肘を売っているお店があったらいつでもお得意様になりますよ。

-----そんな。どんなにテクノロジーが発達してもマラホフさんの膝を創ることは不可能です。あんな全く音のしない着地ができる膝なんて!
マラーホフ そうスペシャルだからね。

----お忙しいところ、ほんとうにありがとうございました。

 

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photo:Kiyonori Hasegawa
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「マラーホフの贈り物 2010」
●5/18(火)〜5/22(土)
●東京文化会館
●出演(予定)=ウラジーミル・マラーホフ/ポリーナ・セミオノワ/マリア・アイシュヴァルト/ヤ―ナ・サレンコ/エリサ・カリッロ・カブレラ/マライン・ラドメイカー/ディヌ・タマズラカル/ミハエル・カニスキン/ベアトリス・クノップ/レオナルド・ヤコヴィーナ
●お問い合せ=NBS 03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp/

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