インタビュー&レポート

インタビュー: 最新の記事

インタビュー: 月別アーカイブ

[2011.01.19]

セッションハウス20周年伊藤直子インタビュー
「負」の時代が「負」でなかった!セッションハウスの場合

p7732-02.jpg

東京・神楽坂のセッションハウスが2011年に20周年を迎える。神楽坂駅からほど近いセッションハウスは地下1階に平日はダンスクラスを週末には公演ができるホールを、2階にはイベントスペースとして使用できる「ギャラリー・ガーデン」を備える。今回はセッションハウス代表でありレジデンスカンパニー「マドモアゼル・シネマ」の芸術監督でいらっしゃる伊藤直子さんにお話を伺った。

やったことは一度も後悔していません。

----伊藤さんご自身がダンサーであり振付家でいらっしゃいますが、セッションハウス設立のきっかけをお聞かせください。

伊藤 私は舞踊団に所属して活動していたのですが、そこを辞めたとき活動する場所もシステムも何もなかったんです。劇場で公演する方法も何も知らなくて、レッスンする場所さえなかったんですね。その時日本で踊ったり教えたりしていたアメリカ人のダンサーと知り合って、そういうのはクレイジーだし、とてもお金がかかると。どこだって踊ればいいんだから、ということでふたりでライブハウスでジャズのミュージシャンと一緒に踊りはじめました。少ないけれどギャランティーもその場で分けて成立していました。
即興の方法もリハーサルの方法も彼女から学んで。いろいろなことを学びました。その後彼女はアメリカに帰っていったのですがじゃあそういう場所を作れないかな、って。何も知らずに、軽く考えちゃったんです(笑)
ここ(今のセッションハウスがある場所)に元の家があって住んでいて、古くなっていたので建て替えようと。だったら稽古場だけではなくいろいろなことができるようにしたい、照明なども入れて小さいホールにしたい。しかも時はバブルで。踊ってしまったんですね(笑)。そういう時でなければ発想そのものが出てこなかったと思います。
上の階はアパートにして貸せば良いという意見の建築家もいたんですけど、私はアパートの管理人もやりながらというのは難しいなって思ったのでこのような形式になりました。
自分が踊りたいし、学びたい。きっと他にもそういう人がいるだろうってそれだけで始めたんです。無知からの出発。

----当時の世の中の景気も後押ししたのですね。素晴らしい巡り合わせです。

伊藤 まあ時代に軽率にのったんですけどその軽率さもあとあと考えるとよかったのかな、と。立ちゆかないときには反省ももちろんしましたよ。でもやったことは一度も後悔していないですね。
私はダンサーが踊りたい、という時代が続くということはいいことだと思うんです。本当にたくさんの踊りたい人がいて、この場所がある。・・・本当に後悔はないですね。

----平日は稽古の場として、週末は劇場として使っているスペースというのは他にはなかなかないと思うのですがどうしてこのような形式を取ることに決めたのでしょうか?
 

w7714.jpg

伊藤 まず自分がたくさんのことを学べる場所をつくりたかったんです。
そしてダンスは人の前で踊るという責任があって初めて成立しますね。
学ぶことと踊ることはどうしてもやりたかった。
床もすぐ洗える素材を選んでとてもいい床ができたし、何も知らなかった私たちくらいの企画力では公演は週末のみぐらいがちょうどよかったですよね。
当時は週末は誰も来ない、お稽古は土日にしたいものなんだよと言われたのですが、外国でゆったり劇場に行くような週末にはおちついて見たり、聞いたり、食べたり、すごくのんきな場所を作りたかったですね。

----それを実現されたわけですね。


ダンスでつなぐからだの未来

---- 2011年のセッションハウスについてお聞かせください。

今年は「みんなで」というのがテーマです。見る側もする側も両方みんなでつながる。
セッションハウスのテーマは「ダンスでつなぐからだの未来」としているんですけど、「ダンスの未来」ではなく「からだのみらい」としたのはやる人も見る人も両方で何かしていきたいということで「からだ」の方をメインにしています。
ただ見るだけでなく、いっしょにその場に「いる」ということをどうしたら楽しめるかを考えていきたいと思います。今年の大きな目標ですね。
先日「ダンス花」という公演をしたんですが「休憩音頭」みたいな・・・私は「神楽坂ストレッチ」と名付けようと思っているのですけど、近藤良平さんが作曲した曲で全員に体操してもらったんですよ。みんな立ち上がって。お客さまも身体を動かすことを求めているし、見るだけではないことは喜ばれるということをちょっとつかみました。
7月頃には20周年記念「みんなでプロジェクト」をやるんですけど、それはもうみんなで作ったり境界線がないようなことをやりたいと。まだやったことがないので・・・最高の形というのはいつも見えないんですよね。みんなに「これが成功するかどうかは知らないけど、やってみようか」と話してそれに乗る人たちとすすめていくんです。

----なるほど。今後の公演はいかがですか?

2月から5月まで続く「D ZONE relay」は単独公演なのでそれぞれが自分のいい分をきっちり言う公演になればいいなと思っています。

時代も後押し!
スタッフワークのできるダンサー、マドモアゼル・シネマの場合

----マドモアゼル・シネマについてもお聞かせください。劇場のレジデンス・カンパニーであったり、ダンサーさんも皆スタッフワークができたり、「旅するダンス」ですごくいろいろなところに行かれているのですよね?

m01.jpg
m02.jpg

伊藤 スタッフワークをするようになったのは、最初プロのスタッフさんが関わって下さったんですね。音響はもう亡くなられましたが川崎さん、彼がこのスタッフの元を作られました。一番最初に教えてもらったのが「共につくる」ということ。表に出るのはダンサー、支えるのがスタッフでどちらも同じ表現者であると。これがやはり大きかったですね。
照明は関根さん夫妻。それぞれの世界のある照明できっちりと参加する。音響の言い分、照明の言い分ってあるんです。作品を消すのではなく、作品を前面に出すための言い分。勝手な言い分ではないということをスタッフから教わりました。じゃあダンサーがスタッフをするのはとてもいいのではないかと考えました。
私たちの公演はプロにサポートしてもらうけど、ノンセレクトの公演は私たちがサポートする。ここで独自のスタッフを育てたい。彼らは最初本当に安いお金でやってくれていていたんですが、今はセッションハウスの社員になってもらうとかしながら一緒にやっています。またその下の世代には来てもらい手伝ってもらうとか、そういうことが始まっています。

----すごいですね。

伊藤 第一期の時代は就職氷河期だったんですよ。優秀な子が就職先がなかった。踊りが好きでここに来ていた。センスもいいし、頭も良いし、デザインも出来る。設立の時はバブルに助けられて。どちらも負の時代なんだけどそこにいた若い人たちが次の担い手になった。

----セッションハウスにとっては負ではなかった。

伊藤 そうですね。しかも仕事がないから来たというのではなくて、これが運命だったかなという感じで(笑)。得たものは大きかったです。
2年目くらいのもう最悪でお金がまわらなくて、これからどうなるんだろう?というときに芸術の強さを尾本(安代)先生が身をもって教えて下さいました。
こどもクラスの第1回目の発表会をやったんです。私は裏方で、子どもが嬉しいようにパーティーして料理を作って食べさせたり・・・もう作ったり、洗ったりで大騒ぎだったんですね。こどもが喜んでよかったなあ、でもくたくただなあ、というときに「直子さんちょっと入ってください」って呼ばれていったら「座って」って。じゃあって床に座ったらパーンと照明が一灯ついて、尾本先生がきっちりと瀕死の白鳥の衣裳を着てそこにいて。私にばれないように準備したから照明は一灯だけ。
あんなに感動した舞台っていうのはないですね。本当に贅沢で。他にも人はいましたけどわたしだけが幸せって感じでしたね。「私にはこれでしかお返しできないから」と言ってもらって。「ダンスにはこういうお返しの仕方ができるんだ!」と思いました。
それまでは自分のために、自分が舞台に立ちたいというそれが私の幸せだったけど「それで人が喜ぶ」というのはわからなかった。その時に初めて喜びも責任も知ったような気がします。

----「旅するダンス」をはじめられたのはどのようなきっかけからでしょうか?

伊藤 故郷の鹿児島に「おじいさんおばあさん長生きしてください」といったような歌があるんですけどその中に「世の中がよくなって 弁天芝居も来るでしょう」という歌詞があるんです。芝居を見ることは人の喜びになるんだとその歌で思っていたんですね。そこで旅をして回ってくるダンス、というものができないものだろうかと。作品を作るときは「内への旅」なので自分の心の中に向かって旅をすることと、外に向かって旅をすることができないだろうかということを夢にしたんです。
なかなか仕組みができなくて行けない、日本にシステムがないのでつかみきれないんですけど、行けばやっぱりその土地にしかない見方をしてくださいます。
東京とは又、違う喜びがありますね。

----海外もいろいろなところに行かれていますね。

伊藤 国としてはフランス、ブルガリア、ドイツ、ルーマニア、オーストリア、今年はポーランド、ポルトガル。
日本の大使館がサポートしてくれたり、「日本年」という周年事業で招かれたり。
おもしろい所に行くんですよ。楽しいですよ。

----あちらも「日本からわざわざ!」ってワクワクしますね。

伊藤 大きい荷物を持って歩いていると「コメディアンかな?」なんて。喜ばれますよ(笑)

----毎年レジデンスアーティストを置かれていますが、「育てて、外へ」というのはとても良いことばですね。どのくらいから置かれているのでしょうか?

伊藤 今7年目です。最初セゾンの「環境整備」の助成がありまして。ダンサー達が社会に出ていくことを凄く考えていたので、その方法をサポートしてもらえるかな?と思い始めました。
ワークショップをして社会に出て行くこと、ワークショップの手法で作品を作ること。そこで育った人が今外の場所でもワークショップをしている。本当に「外へ」出て行っていますね。
文化庁から支援をいただいた時は海外との交流ができてよかったのですが、今年からはその制度が無くなります。できることを地道に続けていくつもりです。

----コンテンポラリーダンスを観てみたい方に、セッションハウスでの公演の楽しみ方を教えていただけないでしょうか?

伊藤 みなさんも私たちも評価されたもの、情報のあるものを観に行く傾向にありますよね?でも固定観念を外して観ればノンセレクトのコンテンポラリーダンス公演は楽しい見方ができます。いいと言われるものを見続けるだけよりは自分がクリアになる。「感動させてくれる」という受け身でなく、「私はこれは好きではない」でもいいんですね。そういうことが許される、観る側が主体性を持てる公演があると思います。

----ありがとうございました。セッションハウスのこれからに期待しております。

◇セッションハウスHP  http://www.session-house.net/

◇マドモアゼル・シネマ今後の予定
マドモアゼル・シネマ『途中下車』 >>>発売中

降りるところは「いま・ここ」です。
●2/26(土)、27(日)
●セッションハウス
●振付・演出=伊藤直子
●出演=村雲敦子/相原美紀/竹之下たまみ/伊達麻衣子/伊藤茉野/佐々木さやか/福島彩子/佐藤郁/榑松朝子
●前売2,800円/当日3,000円/学生2,000円
●開演時間=26日19:00、27日14:00と17:00
●お問い合わせ=セッションハウス企画室 03-3266-0461
yoyaku@session-house.net

◇セッションハウス20周年今後の予定
セッションハウス20周年記念『DZONE relay』2/5(土)〜5/21(土)
詳細はこちら