パリ・オペラ座の新シーズンと18年1月の「ル・グラン・ガラ 2018」公演に向けて:オニール 八菜=インタビュー

10月25日からバランシンの『アゴン』を踊るオニール 八菜に、リハーサル終了後ガルニエ宮に近いカフェでお話をうかがった。

----パリ・オペラ座の新シーズンがバランシンの『ジョワイヨー』(『ジュエルズ』)で始まりましたが、前シーズンのよかったことは何でしょうか。また、やり残したことがありましたか。

撮影:三光洋

撮影:三光洋

オニール フォーサイスの『ヘルマン・シュメルマン』を踊ることができたたこと、それから『ラ・シルフィード』ですね。この二つがハイライトでした。フォーサイス作品を踊るのはすごくたのしかったです。毎回、気合を入れて一生懸命踊れたので「やり残した」ということは特にありませんが、やっぱり『ラ・シルフィード』も『白鳥の湖』も一回だけ踊るというのはむずかしいですね。二回か三回踊ることができると変わってきます。一回だけとなるとどうしてもすごく緊張してしまいますので。

----オーレリー・デュポン新バレエ監督になって変わったことはなんでしょうか。

オニール やはり踊る回数でしょうね。日数はたくさん踊っていますが、バンジャマン前監督の時ほどは踊っていません。以前はたくさん踊らせてもらっていましたので。それと、バレエ団の雰囲気もオーレリー流になったと思います。ただ私たちダンサーは世代も変わってきているので、かつてと同じにようにはならないと思います。

----今シーズンがオーレリーによる最初のプログラムですが、どう思われますか。

オニール 今年のプログラムはエトワールたちが中心です。私たち(プルミエ・ダンスーズ)にはソリストの役であまり踊るものが残っていなくて。プログラム後半の演目では、私は『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』のリーズが特に踊りたいのですけど、どうなるかまだわかりません。外れる可能性もあります。

----海外公演に招かれて踊る機会が多くなっていますが、特に印象の深かった国がありますか。

オニール やっぱりマリインスキー劇場ですね。劇場、ダンサーたち、観客とどれを取っても全体に素晴らしかったです。

----日本公演はいかがでしたか。

----海外で踊ってオペラ座に戻ってくると、どんな気持ちになりますか。

オニール 戻ってくると、それまでは忘れていても、やっぱりオペラ座はいいな、と思います。衣装でも、レパートリーでもしっくりして自分の趣味に合っていると思えます。だから、どんなにつらくてもここから離れられないと思います。頑張ります。

----パリに来てもう6年が過ぎて、新しいアパルトマンでの生活も落ち着かれましたか。

オニール ええ、高層階なのでパリ市内がよく見渡せます。すっかりパリの生活に慣れました。最初はあまり言葉ができなかったので、友だちも作りにくかったです。相手が英語でしゃべってくれても、本当の気持ちは伝わらないですからね。パリで英語はしゃべりたくなかったです。言葉が一番大変でした。フランス語がしゃべれるようになってからは、生活全体がとてもたのしくなりました。外国から戻ってくると、ここが私の街だなと感じます。

----2018年1月にジョルジオ・マンチーニ(1964年生)振付の『ヴェーゼン ドンク歌曲集』をジェルマン・ルーヴェ、ユゴー・マルシャンと日本で世界初演されますが、リハーサルは進んでいますか。どんな作品になりそうですか。

オニール ジョルジオの頭の中に、最初からジェルマンとユーゴと私が踊るというイメージがあって、彼から依頼が来ました。 ワグナーの音楽がずっと流れていて、大体20分くらいの作品になります。シーズンの初めにまだオペラ座のリハーサルがあまりないときに、一応、大体の形は作りました。今は忙しすぎるので、11月の終わりにジョルジオがパリに来てくれて、一週間くらい練習して、また12月にリハーサルがあります。それから日本に行って仕上げる、という感じです。まだ、細かいところまでは振付けられていませんが、オーガニックな感じですね。

----オーガニックというのは?

オニール ジョルジオはイタリア人ですし、ナチュラルで無理がないような動きということです。ジョルジオはすごーく優しい方で、私が踊りやすいようにこちらの希望を聞いて振付けてくれます。まだ、細かくやっていないので、言葉ではいいにくいですが、ダンサーが踊りやすいように振付けることをとても大切にしている人です。ジェルマンとユーゴの二人とは気が合うので、とても踊りやすいです。ワグナーの音楽はすごくきれいですね。オペラ(と関連のある)曲で踊るのは初めてなのですが、気持ちがいいです。でも実は、私はジョルジオの作品を見たことはまだないんです。

ジョルジオ・マンチーニ photo/James Bort

ジョルジオ・マンチーニ
photo/James Bort

----ヴェーゼンドンクの詩を書いたマチルデはどんな女性をイメージされていますか。

オニール とても感受性の強い、ロマンチックな女性だと思います

----オペラ座の次回公演、バランシンの『アゴン』の舞台が間も無く開幕ですね。

オニール はい、来週の水曜日からです。二役踊ります。今リハーサルの真っ最中です。バランシン財団のポール・ブースが来てくれて、あとはクロチルド・バイエとリオネル・ドラノエがコーチです。あまりリハーサルの時間がなくて、あのストラヴィンスキーの音楽はとても踊りにくいので、すごくむずかしいです。普段はリズムを数えて踊ることはあまりないのですが、この音楽は拍を数えていないというか、数えていてもリズムが外れちゃうんです。もう少し音楽に慣れてそこまで数えなくてもいいようにしたいですね。何回か踊ったら楽になると思います。音楽を聴いていても、これはむずかしいなという感じです。

----同じ夜にピナ・バウシュ振付の『春の祭典』がありますが、これもストラヴィンスキーの音楽ですね。踊ってみたいと思われますか。

撮影:三光洋

撮影:三光洋

オニール ええ。でも今はまだバランシンの作品の方を踊りたいですね。

----その後が『ドン・キホーテ』ですね。

オニール 代役にもなっていないので、キトリは踊れません。

----その後のことは決まっていますか。

オニール 全然決まっていません。『オネーギン』のタチアナはもちろん踊りたいですが・・・。

----先日のシャンゼリゼ歌劇場のノイマイヤー振付の『ニジンスキー』を見に来られていましたね。

オニール 後半が特に面白かったですね。ドラマチックな作品でした。ちょっと長くて、お話がわかりにくいところもありましたけど。でもダンサーたちはきれいでしたね。

----江部直哉がハーレクインと薔薇の精の役で出演していましたね。 ところでレティシア・プジョル、マリー=アニエス・ジロ、エルヴェ・モローと今シーズンは現役のエトワールの引退が続きますね。

オニール ええ、でも女性のエトワールが多いので、新しい男性のエトワールが任命されるのではないか、と言われています。

----本日はリハーサルでお疲れのところをお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。新シーズンのご活躍を期待しております。

ル・グラン・ガラ 2018
〜パリ・オペラ座バレエ団トップダンサーたちによる華麗なる宴〜

「トリスタンとイゾルデ」全幕日本初演
振付:ジョルジオ・マンチーニ 音楽:リヒャルト・ワーグナー
出演:ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ
「ヴェーゼンドンク歌曲集」世界初演
振付:ジョルジオ・マンチーニ 音楽:リヒャルト・ワーグナー
出演:ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン、オニール八菜
「スペシャル・フィナーレ」

会場:東急シアターオーブ
日程:2018年1月11日(木)〜13日(土)

詳細はhttp://www.tbs.co.jp/event/parisopera-gala/

「ル・グラン・ガラ」photo/James Bort

「ル・グラン・ガラ」photo/James Bort

インタビュー&コラム/インタビュー

[インタビュー]
三光 洋

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