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インタビュー/関口紘一
[2009.12. 7]

辻本知彦インタビュー「今、最高に体の調子がいいので新しい表現を創っています」

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----日本人として初めてシルク・ド・ソレイユで踊られていかがでしたか。

辻本 純粋に楽しかったですよ。いろんな国々からアーティストが来ている中でやっていることが楽しかったです。海外のカンパニーで踊るとか一人で海外でやるという感覚がぼくは好きなのかな、とも思いました。

----エンターテインメントとしてのダンスを踊るということはいかがでしたか。

辻本 純粋に表現ができたと思います。
一番良かったのは、最終日は観客が子供だけの日だったんですが、その時に自分の表現が変わったことがわかったことです。より素直になったのが実感できて、「ああ、いいなあ」と思いました。
日本では作品にもよりますが、純粋に踊ることがなにかこうセンス悪いかな、と思ってしまうことがあるんですが、シルク・ド・ソレイユでは素直に踊り演じることができて、いい表現だったな、と思いました。

---子供の観客だと反応が違いますか。

辻本 反応が出るか出ないかよくわからなかったですけど、基本的に暖かい気持ちになりますね、舞台に立った時点で。どういう顔を見せるかですが、この感じは大人同士ではあまり感じないかもしれません。的を絞るとこういう表現もできるのかな、と思いました。

---初めて感じられた感覚ですか。

辻本 そうですね、なんかたとえば親の前で踊るような感覚でしたね。うまい下手関係なく表現しなきゃいけない場所があるんじゃないか、といわれているような気持ちがして。そういう中で「楽しませてよ」って求められました。

----そうでしたか。話は変わりますが、服部有吉さん、群青さんと踊られた『3D』はほとんどインプロで構成された作品ですよね。

辻本 インプロで構成されているわけじゃないですね。振りやきっかけが決まっている部分があってポジションも決まっていて、構成がしっかりある中に、インプロの部分もある、という程度です。

----ピアニストの松永貴志さんが後ろを向いて演奏していて、ダンサーが見えない・・・

辻本 あれ見えているんです。最初は見ないで演奏する、という案もあったんですけど、やっぱり見なきゃ無理だということになって。
それで、見えるんですよ。最初のシーンとか見えない部分は音で決まっていて。舞台上はかなり暗いんですが、結局、暗くてもほとんど見えています

----でも松永さんは時々振り向いてダンスを確認していたようにみえましたけど・・・

辻本 それでよかったんですね。彼が振り向いたら大体バロメーターになって、今どういうシーンなのか、ダンサー同士も合わせられるし、彼が見るとダンスと音の間隔はこういう感じでいいんだ、と分かり合えるかた。むしろこちらはそこを遊べばいいという感じでした。

----そうでしたか、じゃあ公演ごとにダンスはあまり変わらなかったですか。

辻本
 基本的には変えないようにして、変えなくてどこまでいけるかっていうのは、リハーサルから何回もやっていましたから。
普通はこの公演で何かをしでかそうっていう意気込みがあったりしますが、『3D』の場合は全体的に崩れるのがいやだ、という考えをダンサー同士が共有できました。それが踊っている本人としてはとてもよかった。だからインプロベースじゃなくてよかったなと思っています。

----てっきり、音とダンスは別々に進んでいると思っていました。

辻本 それじゃあうまくいかないんです。実際にやってみて無理や、ということになった。別々にやっていると、どうしてもダンスと関係なく演奏者の気持ちで曲調が変わってしまう、ということになって、じゃあ踊りを見て弾いていいんかって。
このシーンは見ていいけどこのシーンはだめって、それがバロメーターになるからそれがいいということになったんです。

----それからあの公演の前に世田谷美術館でも踊られましたよね。

辻本 ええ、ぼくあれ好きですね。たいへんだったけれども一年に一回、一人でやりたいな、と思っています。一人の方がきっともっと集中できると思うし。
美術館の中を移動しながら8時間ぶっ通しで踊って、食事以外トイレも一回も行かなかったんです。ブレイク入れたら7時間45分くらいですか。もっと全然踊れます。こんないい機会は滅多にないと思いました。生きているうちの何分の一かを踊っているんだ、と思えたことが楽しかった。ああいう静かなきれいな場所では、コンセプトで喜ばせなくちゃいけない、という考えもあったけど、ぼく的には反対。今度はぜひ一人でやってみたいです。

----音なしでも。

辻本
 音なしでも。3時間でも4時間でも見られたいですね、ずっと。

----ずっと見てる人はいましたか。

辻本 いましたね、長い人は6時間くらい見ていました。ぼくも客の側になれば、見方がはまれば6時間くらい見られると思います。最初から見始めればわかり易いけど、途中から見始めるとなんか気に入らないシーンがあったら止めてしまうかもしれないですけども。
時間の経過と自分がどうなっていくか、常に自由だっていうスタンスを計算すると、見ていてもおもしろいものになると思うんです。美術館が、好きだったり、美術館が遊び場になっていないと面白くないかもしれません。踊っててそう感じました。見てる人と空間がつながっているから分かるんですね、あっ、これ一人やったら3時間続けて見てもらえたら楽しいんやけどな、って。
 

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----ミュージカル『レント』の振付も担当されましたがいかがでしたか。

辻本 新しいことには常に困難はありますよね。けど新しいことをしないと新しい感覚も生まれないし、成長しないですよね。そういう意味で悩みましたけど、悩んだことは、結局は良かったと思います。悩む中で、いろいろ考えたことを具体的にミュージカルにしていくことがすごく楽しかったです。結果的に楽しかったわけで、今はその結果だけを楽しめばいい。苦労はわかっていますし、その楽しみ方を覚えたんです。

----やっぱり、人を踊らせるということはたいへんなことですか。

辻本 ここ1年くらいずっと振付をしていて、そんなにたいへんじゃなくなりました。自分で踊るほうが難しいですね。第三者に振付ける方が簡単というか、人の踊りを見て感想を言えばいいわけですから、そんなに難しいことではありません。

----決められた振りを踊るときと、自分が振りを作って踊るときとではどうですか。

辻本 今、インプロは基本的にはしないでおこうと思っています。以前は一人で踊るときはインプロベースでやっていて、どこまでできるかなと不安でした。でも構築されていないものは自分で納得するまでやりましたから、今はもっとしっかりした構築したものをやろうと思って、そういう体を作っています。インプロに頼らない体です。
そうすると逆に公演の回数をこなせなくなりました。そのおもしろさに体がはまってきたんです。一回二回のラッキーで生まれる良さっていうのは、あんまり面白くなくなってきました。今は振付を踊る体でやり続ける難しさがありますが、それに以前、インプロベースでやってた自分がミックスされたときに、ものすごくいいものが生まれると思っています。これを続けていくとまたインプロ主体に戻ると思います。交互に進んでいくと思いますから、今はインプロを抑えたいです。

---大島早紀子振付の『神曲』はどうでしたか。

辻本 自分との感覚の違いが歴然と見えて良かったですね。あの頃だったと思いますけど、自分の好きな形、嫌いな形があっても、身体においてはそういう考えをやめました。振りのかっこよさとかそういうことではないな、と思うようになりました。動きにくいとか、動きやすいとかも問題ではないな、と。大島さんの振付に個性があったから自分にそういう思いをもたらしてくれたんだと思います。

----シルク・ド・ソレイユからローラン・プティ、服部有吉から大島早紀子、さらにミュージカルの振付までいろいろなダンスを経験されて、そろそろひとつに絞るとか、そういうお考えはありませんか。

辻本 絞ることはないです。もっとみんながびっくりするような場所に行ってみたい。ダンスということでつながっているので、そんなに大したことことではないです。ぼくの中では、小道がつながっている。さらにもっと広い世界でいつかつながる時がくると思います。表現という意味ではみんなつながってますからね。
来年、再来年くらいから少しづつ自分ひとりで創っていこうと思っています。だけど本当は、40、50歳くらいで本格的にやろうと思っています。その歳になってから他人と一緒に創るのはいやですから、そういう時の楽しみのために残してあるんです。
ダンサーになると決めたときから、いつかは必ず一人になると思っていました。ぼくは一人になると他人と話さなくなってしまう、意見を交流したくなくなると思うんです。そうなると世界が狭くなってしまうから今のうちにいろんな人と話しておこうと思います。

----ダンス以外のたとえば、特別の音を使ってみたいとか、そういうことは考えていませんか。

辻本
 探せばいっぱいあると思うんですけど、なんか運命を感じさせるものでないとだめですよね。そのものに対して思い入れというか、それを待っています。探そうと思って探したものはあまり愛着がわかない、おもしろくなくなってしまいます。
今、興味があるのはバリの音楽。ガムランがすごく好きで振りも考えていますけど、いつ発展するか、時期とタイミングを計っています。

----今、ご自分で創っている動きですが、コンテの動きって流行り廃りがあるじゃないですか・・・

辻本 ああ、もうそんなところにはいません。ぼくの動きは、単純に誰が見ても興味深いものになっていくと思います。ダンスやってる人が見てもやっていない人が見ても、そういうものを創り上げていきます。今はもうそれをまとめる作業をしてます。
10年以上やってきて、今が体の調子が一番いいんです。これを4、5年キープしていくのが楽しくてしょうがない。体がちょっとずつ上がっていくのがわかって、一日一日が過ぎるのが早過ぎるんです。
今まで大きな部位の動きと表現を突き詰めてきたけれど、これからはもっと、たとえば「手」の細かな動き、もっともっと末端に対する繊細なもの、素晴らしいものが創れるんじゃないか、と思っています。今、指の形を作ってそのデザインにあうものとかを探しています。自分で振付けてすごい難しいですね。そんなにすぐできるはずがないですけど、それに合わせた身体にトレーニングをしながら創っています。

----ミュージカル『蜘蛛女のキス』にも出演されますね。

辻本 平山素子さんと名倉加代子さんが振付けます。二人とも素晴らしい振付家だから、初めて踊るのがとても楽しみです。
ぼくはまず、あまり作品に対する知識をもたないようにして、とりかかりたいんです。自分なりの入り込み方でいきたいです。最初の仕事の1週間前から改めて気持ちを入れていくように決めています。先にあれこれ考えていると、裏返って間違った方向に行く可能性があるので。自分で考えをもってしまうと、振付に対して自分で創るほうに行ってしまうから、自分は受けるほうなので。一緒に仕事をする人とコミュニケーションを取るために、しておかなきゃならないことをしておくのは当然ですけど、自分のペースでやっていこうと思っています。
初めて平山さん、名倉さんの振付を踊るので、まずはスタッフを楽しませることから始めなくてはだめですね。毎回提案されたものを、「あ、これ見たいな」、という表現にもっていければ、作品も良くなっていくイメージができていくと思います。

---ありがとうございました。これからの舞台を大いに期待しております。

The Musical 『蜘蛛女のキス』

  • 脚 本 :テレンス・マクナリー
  • 作曲・作詞:ジョン・カンダー&フレッド・エッブ
  • 演出・訳詞 :荻田浩一
  • 出 演    :石井一孝 金 志賢 浦井健治
    初風 諄 今井朋彦 朝澄けい 縄田 晋 ひのあらた 田村雄一
    照井裕隆 笹木重人 長内正樹 辻本知彦


【大阪公演】

  • 2010年1月16日(土)〜18日(月)
  • 会場:梅田芸術劇場メインホール
  • S席12,000円 A席8,000円 B席4,000円(全席指定・税込)
    ※未就学児童のご入場はご遠慮下さい。
  • 発売中


【東京公演】

  • 2010年1月24日(日)〜2月7日(日)
  • 会場:東京芸術劇場 中ホール
  • S席12,000円 A席8,000円 Z席3,000円(全席指定・税込)
    ※Z席…一部見えにくい場面がございます
    ※未就学児童のご入場はご遠慮下さい。
  • 発売中
     
  • お問い合わせ:梅田芸術劇場 メインホール TEL:06-6377-3800(全日10:00〜18:00)

 <大阪公演イベント情報>
★「蜘蛛女のキス」アフターイベント”プレミアナイト セレブレーション”開催決定!

公演の初日を記念しまして、アフターイベントを開催致します。
詳細は“蜘蛛女のキス”Blog http://kiss-of.spiderwoman.main.jp/ にて発表いたします。

※上記イベントは1月16日(土)の「蜘蛛女のキス」公演チケットを
 お持ちのお客様を対象とさせていただきます。

<東京公演イベント情報>
★「蜘蛛女のキス」アフターイベント“カンダー&エッブ トリビュート”開催決定!

「シカゴ」「キャバレー」そして本作品「蜘蛛女のキス」などの作曲・作詞家コンビで知られる
ジョン・カンダー&フレッド・エッブの作品にちなんだトークとLIVEをお楽しみください!

  • 1月28日(木)13:30終演後
    出演:金 志賢 浦井健治 初風諄 今井朋彦 朝澄けい 縄田晋
    ひのあらた 田村雄一 照井裕隆 笹木重人 長内正樹 辻本知彦
     
  • 2月3日(水)13:30終演後
    出演:石井一孝 金 志賢 浦井健治 初風諄 今井朋彦 朝澄けい 縄田晋
    ひのあらた 田村雄一 照井裕隆 笹木重人 長内正樹 辻本知彦

※上記イベントは1月28日(木)、2月3日(水)の「蜘蛛女のキス」公演チケットを
 お持ちのお客様を対象とさせていただきます。