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(インタビュー/三方玲子)
[2009.12. 3]

康本雅子、フォーラムセッション『当日仕入れ弁』を語る

 『当日仕入れ弁』康本雅子(ダンス)&DJ吉沢dynamaite.jp(音楽)
「ダンス・アンソロジー~身体の煌めき」愛知芸術文化センター

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11月20日から12月27日まで愛知芸術文化センターで開催中の「ダンス・アンソロジー~身体の煌めき~」は、これまでにもダンスの最前線で注目を集めてきた愛知県が企画する、ダンスのミニ・フェスティバル。平山素子とNoism1のそれぞれの新作公演をはじめ、ニブロールの映像インスタレーション、愛知を拠点に活躍するダンサーたちのショーケース、Noismの舞台写真展示、平山素子ワークショップなど、ダンス好きなら見逃せないプログラムが並ぶ。

このフェスティバルの目玉の一つが、康本雅子とDJ吉沢の即興ダンスセッション。お互いに当日仕入れてきたネタで、事前の手合わせなしに見せる、その場勝負の即興パフォーマンスだ。愛知で踊るのは初めてという康本に話を聞いた。


――今回は、劇場内ではなく、ロビーで無料パフォーマンスをされるとか。DJ吉沢さんとの即興セッションというアイデアはどこから。
康本 踊る場所が劇場じゃなくオープンスペースなので、作り込んだ作品より、イベント的なその場の雰囲気を生かしたダンスがいいかなと考えたんです。じゃあ即興で踊ろうとなったときに、音楽も即興でお願いしたいと思って。ミュージシャンのライブを即興でというアイデアもあったんですけど、それは以前にも何度かやったことがありました。DJの方とご一緒したことはなかったので、この機会にと。

――即興の場合も、作品のアウトラインは決めてあるんですか。
康本 決める場合もありますけど、今回はアウトラインもまったく決めないで、「すべて吉沢さんにまかせます!」って(笑)。吉沢さんにも、使う曲を事前に決めて来るんじゃなく、音源のネタをごっそり持ってきてもらって、その場の雰囲気や私を見ながらその時に良いと思う音をかけてくださいってお願いしてあるんです。

――タイトルも『当日仕入れ弁当』とありますね。
康本 そうそう、当日仕入れた材料で、美味しく作るお弁当(笑)。吉沢さんと私の当日の感覚で、当日仕入れてきたネタでお見せします。吉沢さんと、事前に一度手合わせしてみたほうがいいかという話も出たんですけど、それをやると逆に良くないんじゃないか、完全にその場勝負の、本当の即興でやりましょうと。たとえばこれまで、『吾妻橋ダンスクロッシング』や『踊りに行くぜ!』などで発表している作品は、100パーセント作り込んでいます。今回みたいにすべて即興で見せるチャンスはあまりないので、いつもよりさらに遊べるかなと楽しみですね。

――DJ吉沢さんとは、これまでにも交流があったんですか。
康本 いえ、今回初めてご一緒します。プリコグの中村茜さんに紹介していただいて。音源を聴いて「You Tube」でパフォーマンスを拝見したんですが、遊び心があって、あらゆるジャンルを幅広く網羅している方なので、安心して任せられるかなと。踊る曲は自分で選ぶことが多いんですが、やっぱりジャンルや方向性がある程度限られちゃうんですよね。せっかくなので吉沢さんには、踊れて、なおかつ自分ではあまりチョイスしないような曲をかけてもらったら楽しいかなと思ってます。

――愛知で公演をされるのは初めてですか。
康本 はい、愛知芸術文化センターの大ホールのエントランスで、高さ50メートルの吹き抜けで頭上が開けている空間で踊ります。通りすがりのお客さんも立ち止まれる、いわゆる公共スペースで、最近そういう場所で踊っていないので嬉しいですね。

――これまでにも『踊りに行くぜ!』をはじめ全国津々浦々で踊っていらっしゃいますが、いろんな土地で公演する楽しさというと。
康本 踊るだけじゃなく、その地域ごとの制作者や手伝ってくれる方たちと交流を持てるのが嬉しいです。ダンスにまつわるボランティアが盛り上がっていたり、関心が高まっている地域もけっこうあるんですよ。本当に有難いなと思います。

――普段はどんなレッスンをしているんですか。
康本 以前習っていた少林寺拳法の型を、稽古のときに毎回やります。少林寺拳法は、身体の中心というか “身体の幹” を動かす作業で、踊りに非常に役立っていますね。今年、出産したばかりなのでちょっと休んでたんですけど、それまでは暇さえあれば稽古してました。ダンスを始めたのは高校の創作ダンス部だったんですが、18・9歳頃にバレエにはまったこともありましたよ。背すじがピンとする感覚も、しんどいぶんだけ気持ちの良い汗をかけるすがすがしさも、つらいポーズをキープするのが逆に快感になる感じとかも(笑)、楽しくて。あと、スタジオに通ってハウスダンスを習っていた時期もありましたね。

――今後作りたい作品は?
康本 もう一度、『チビルダ ミチルダ』みたいに長編を作りたい気持ちはあったんです。けど、すごくまとまった期間が必要なので、子どもを授かった今は、大作は難しいなあと。出産を経て、今までのようには踊れなくなってきたのも大きいです。それまで稽古中毒で1日に何時間も踊っていたのが、妊娠・出産の間はまったく身体を動かせなくなった。で、久し振りに踊ってみたら、「あれ? この感じなんだろう?」って身体に戸惑いを感じて。けど、じゃあ「身体が以前のように動かなくなったから、ダンスやめちゃった」ではもったいないですよね。踊りたいって気持ちがある以上は、「今ある身体でいかに踊りを続けていくか」が今後のテーマかな。

――お子さんができて、ダンスに対するスタンスが変わってきた…
康本
 子どもができてもダンスを続けるかどうかは、悩みましたね。今までは、好きなときに好きな場所へ行って気軽に踊れた。子どもがいる今は、稽古や公演の時間は子どもを預けて、本番中に子供が泣いていようが駆けつけられない、かまわず踊る。そこまでしてダンスを続けたいのか、子どもが小さいうちは子育てに専念するべきなんじゃないかって。でも、子どもの顔を見ながらでも踊りは踊りたいんだ、そこまでしてやりたいものなんだ、ってダンスを再認識できた気がしています。それと、親に「アンタ、意地でやってるんじゃないか」と言われたとき、「あ、それも当たってるかも」と思ったこともあるんですよ。半分、続けることに対する意地もあるかもって。踊ることが好きという大前提はあるんですけど、今ここでやめたら、これまで積み上げてきたものが中途半端になってしまう気がして。そして、続けていった先に何か開けるんじゃないかという期待もある。何も開けなくてもいいけど(笑)、期待はある。だから、やっぱりまだまだ踊り続けていきたいなと思っています。

「ダンス・アンソロジー~身体の煌めき」愛知芸術文化センター
フォーラム・セッション 康本雅子(ダンス)&DJ吉沢dynamite.jp(音楽) 『当日仕入れ弁』

日時:2009年12月5日(土) 15:00~
会場:愛知芸術文化センター2階 フォーラムⅠ
料金:入場無料・申込不要