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インタビュー/関口 紘一
[2015.04. 1]

K バレエカンパニー『シンデレラ』全幕に主演し好評を博した
イングリッシュ・ナショナル・バレエ団 ファースト・ソリスト
加瀬栞インタビュー

-----昨日、加瀬さんが踊られたシンデレラを見せていただきました。素敵なシンデレラでとても良かったです。なんていいましょうか、バレエのテクニックがそうとは思わせないほど自然に動けていて、滑らかな踊りでとても感心しました。

加瀬 栞 ありがとうございます。

----私は流山市在住のなので、つい応援にも力が入ってしまいました。

加瀬 栞 私は出身は東京ですが、すぐに千葉のほうに越してきました。

1503kaseshiori2.jpg 「シンデレラ」
シンデレラの加瀬栞と王子の宮尾俊太郎 (c)Jin Kimoto

----今までに『シンデレラ』の全幕を踊られてことはあったのですか。

加瀬 栞 はい、発表会で全幕を踊らせていただいたことはあるのですが、それ以来となります。

-----熊川さんの振付はいかがでしたか。

加瀬 栞 私は、今まで観た『シンデレラ』の中では一番好きです。というのは、技術だけを見せるというのではなく、ストーリー性を大切にし、重視しているところが好きなところです。

-----そうですね、魔法の世界と現実の世界がたいへんスムーズに融合した物語でした。加瀬さんは、オーチャードホール25周年記念ガラで踊った『シンプル・シンフォニー』が、初めての熊川さん振付の舞台でしたか。

加瀬 栞 そうです。熊川さんのK バレエカンパニーの舞台は、2006年にロイヤル・バレエ・スクールに行く以前は、ずっと観てました。熊川さんがヴィヴィアナ・デュランテさんと踊った『カルメン』(ローラン・プティ版)や『白鳥の湖』などなど、その頃の舞台はほとんど観ていると思います。自宅にはチケットの半券も鑑賞した記念に保管しています。

----そうでしたか。イングリッシュ・ナショナル・バレエ団(ENB)に入団された時は、芸術監督はウエイン・イーグリングですか。

加瀬 栞 ええ、イーグリングです。イーグリングがロイヤル・バレエ・スクールのクラスを見に来て、そこで何人かピックアップしてカンパニーのクラスを受けにきなさい、と指示しました。私はその中から選ばれて入団することになりました。そして現在の芸術監督タマラ・ロホが来るまでの2年間は、イーグリング監督の下で踊りました。

----イーグリングがENBのレベルをかなりアップしたんだ、というようなことも聞きましたが、いかがですか。

加瀬 栞 そうですね、ENBは公演数も多く、イーグリングが若いダンサーにチャンスを多く与えたことが良かったのではないでしょうか。

-----年間どのくらい公演するのですか。

加瀬 栞 クリスマス・シーズンだけで60公演くらいありますから、200公演は越していると思います。国内ツアーは必ずありますが、海外ツアーはある年とない年もあります。タマラ・ロホ芸術監督になってからは公演数がさらに増えています。

-----イーグリング振付の全幕物はレパートリーに何作くらいあるのですか。

加瀬 栞 全幕物は『くるみ割り人形』だけです。いまでもENBの『くるみ割り人形』はイーグリング版です。そのほかに小品があります。

-----加瀬さんがスワニルダを踊った『コッペリア』は誰のヴァージョンですか。


加瀬 栞 ローランド・ハインズです。

-----ユース・アメリカ・グランプリの時、当時のロイヤル・バレエ・スクール校長ゲイリーン・ストックに誘われて、行くことを決めたのですね。

加瀬 栞 はい、そうです。

----ゲイリーン・ストックは長くロイヤル・バレエ・スクールの校長を務め、バレエ・スクール同士の国際交流も積極的に行っていましたよね。

加瀬 栞 はい、他のバレエ・スクールとの交流を大切にされていました。私もワガノワ・バレエ学校との交流に参加しました。何人かの生徒と一緒に選らばれて、サンクトペテルブルクまで行って公演しました。
他のバレエ・スクールのダンサーたちを見ることができ、一緒にクラスをすることもできたのでとても良い経験をしました。

-----クラスを一緒にするだけでも違いますか。

加瀬 栞 ええ、エクササイズから違いますし、ロシアの床には傾斜があるので、踊るのにずいぶん苦労しました。劇場はそうでもなかったんですが、バレエ・スクールはかなり傾斜があったと思います。床も古い伝統的な床だったので、水を撒いてから始めていました。今ではもうその床も変わってしまったと聞きました。

1503kaseshiori.jpg Photo/DANCE CUBE by Chacott

-----イギリスに行って、日本でバレエに携わっている時と一番違ったことはなんですか。

加瀬 栞 日本では朝早く起きて学校に行って授業が終わるとレッスンが始まり、遅い時間までやってました。でもイギリスに行ってからは、朝から夕方までバレエができて、その後に自分の自由な時間があるというのが違いました。その自分の時間で次の日のために身体を休められるというのが助かりました。

-----それからイギリスでプロフェッショナルのダンサーになられたわけですが、その環境というのはいかがでしたか。

加瀬 栞 ちょっと慣れるのにたいへんでした。バレエ・スクールにいた時は、朝から晩までずってやってました。でもカンパニーに入ってからはそこまで練習させてもらえない、ということがありましたし、体力作りがたいへんでした。バレエ・スクールにいた時よりもやることが少なくなった分は、体力作りに励まなければならなかったからです。
カンパニーではクラスの後は、平行して複数の作品をリハーサルを行うことになります。体力作りと身体のケアも当然、自分でしていくことになります。

-----加瀬さんは、タマラ・ロホが芸術監督になってから13年にソリストに昇格したのですね。ロホ監督はいかがですか。

加瀬 栞 彼女は、頭の良い方です。イーグリング監督の時はほぼクラシック作品を踊っていましたが、タマラがきてからはカンパニーのことを考えてコンテンポラリー・ダンスを踊る機会を多く作っています。レパートリーの幅も広がりました。
クリスマス・シーズンが終わって、3月ころになるといつもトリプルビルを上演しています。
昨年のトリプルビルでは、リアム・スカーレットの新作を踊りました。この時はポワントでしたけど。それからアクラム・カーンとラッセル・マリファントの新作というトリプルビルでした。
また、ウエィン・マクレガーはバレエ・スクールの時に踊りましたが、やはりたいへんでした。彼は頭が切れる方のなので、先へ先へと振付がどんどん進んでしまって、ダンサーはみんな追いついていけないくらいです。頭の回転が速い人なので、ついていくのに必死でした。ポワントで踊ったのですが、すごい良い経験になりました。

----ENBはコロシアムやロイヤル・アルバートホールで公演をしばしば行いますね。加瀬さんは『コッペリア』をファースト・キャストでコロシアムで踊られましたが、いかがでしたか。

加瀬 栞 広いし、会場の飾付けなどもきれいで、とても踊りやすいです。国内ツアーなどでは、狭い劇場でも踊らなければならないこともありますから。

----ENBは日本公演の話とか出てませんか。アリーナ・コジョカルというスターもいるのだから来日公演があってもいいですね。以前には来日しましたけども・・・

加瀬 栞 私、あの時の公演も観に行きました。熊川さんがゲスト出演された『白鳥の湖』でしたね。

----そうでしたか、ご覧になっていたのですね。

加瀬 栞 はい、でもその時は、熊川さん目的で観に行ったので、まさか、このカンパニーで将来、踊ることになるとはまったく考えていませんでした。

-----ところで、加瀬さんにインタビューしてコンクールの話を聞かなかったら叱られてしまいます。加瀬さんは2014年にニューヨークのジャクソンのコンクールで金賞を受賞されましたが、このコンクールはたいへんでしたか。


加瀬 栞 はい。期間が長くて最初のうちは時間があるのですが、人数が絞られてきて第2ラウンド、第3ラウンドと進んでいくと練習する時間もあまりなくなってきてしまうのです。全部で6曲踊りましたが、第1ラウンドが2曲、第2ラウンドはコンテンポラリー作品を1曲、第3ラウンドに3曲踊ります。プロフェッショナルのダンサーも出場していますし、コンクールのレベルとしては高かったです。

----いくつものコンクールで入賞されて輝かしい成績を収められていますが、やはり、コンクールに出場することは、その後のダンサーとしての活動の役に立ちますか。

加瀬 栞 もちろん、舞台経験を積むことができますし、普段よりも目標をもってしっかりとした練習ができるところは良いと思います。でも、順位とかはどうでしょうか、練習の励みにはなると思いますけれど・・・やはり、バレエは順位を決めるとかいうことは無理だと思ってしまいます。
でもバレエ教室で習ているだけでは、コンクールに出ないとレッスンすることだけで終わってしまうケースが多いのです。コンクールに出るということでもっと練習ができるし、舞台にも立てるということが良かったことです。

----やはり、ダンサーは本番の舞台があって育っていくのですからね。

加瀬 栞 そうですね、コンクールに出ないと発表会くらいしか本番の舞台に立つ機会が無いですから。
ユース・アメリカ・グランプリですと、審査員の方がそれぞれの参加者に注意事項を紙に書いてくれます。私はそれがすごく参考になりました。ただ、評価されるだけでなく、どこが良くないというのを書いてくださると次に繋げられるので、すごい良かったと思います。審査員の方も1人で順位を決めている訳ではないので、何人も審査員の方が見てらしてひとりひとり評価が違うので、それもまた興味深かったです。
海外の舞踊家の方に見ていただける機会は少ないので、ユース・アメリカ・グランプリは良かったです。しかもいろんな国の方がいっぺんに集まるので。私は2回参加しました。1回目はニューヨークまでは行かなかったですが、2回目は14歳でしたが、ニューヨーク・ファイナルで3位に入賞しました。でもニュ−ヨーク・ファイナルに行く前から、ロイヤル・バレエ・スクールのゲイリーン校長からオファーをいただきました。それは日本の予選の1週間くらい前から講習会を受けてたから。ただ、ゲイリーン校長は講習会の終わり頃、急用ができて、ロイヤル・バレエスクールに帰ってしまったのです。それでどうなるのかな、と思っていたらご主人から、ユースの日本予選の結果発表の時にロイヤル・バレエ・スクールに来ないか、と言われました。

----これからコンクールに挑戦しようとしている人たちにアドヴァイスをお願いいたします。


加瀬 栞 コンクールに参加することは何回でもできる訳ではなく、一度で決まってしまうので、本番で踊れる以上の練習が必要だと思います。自分で10回踊って10回ともできるように練習して参加してください。それが一番大切なことだと思います。

-----本日は公演でお忙しいところをありがとうございました。これからもがんばってください。期待しています。