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[2008.04. 9]

金森穣インタビュー

ベジャールの死は、重大な出来事でした。

-----ケネディセンターの日本フェスティバルから、お帰りなさい。

金森 はい。今回上演したのは、『NINA』にフィナーレを付けたスペシャル・ヴァージョンでしたが、とても好評でした。

----Noismの次回作は6月のスタジオ公演ですか。

金森 最近は広い舞台での公演が続いたので、少し狭い所でやってみたい、と思ったのでスタジオ公演にしました。Noismのスタジオ公演は2回目ですが、特に定期的にスタジオ公演をやっているわけではありません。

----前回のスタジオ公演は『sense-datum』ですね。ダンサーの声というか発する音を意識的に使われていたと思いますが。

金森 ええそうです。今回の作品も使っています。
音楽は今のところ映画音楽から古典クラシックまでを30曲くらい、断片的にコラージュして使います。シーン毎に創ってみて、またシャッフルして物語的に演出していきます。音楽のコラージュをここまで激しくするのは初めてですね。
今回の作品は、ほんとに単純に自分が聴いて惹かれる曲に振付けています。今まで、トン・タッ・アンに音楽を頼んで作ってもらった音楽にどういう風に振付けるか、ということだったのですが、今回はいろんな音楽を聴いて自分の好きなものを使っています。

----以前は振りと音楽が同時進行でした。

金森 ええ、今度は音楽ありきですね。その音楽に対して自分が創りたいと感じる振りの断片をたくさん創って、それを並べてひとつの作品にする感じです。

---『人形の家』というタイトルですが、人形ぶりなどの表現を追究していく・・。

金森 そうですね、見世物というのがメインテーマとしてあります。ダンサーから完全に主体性を抜いて、振りを動く人形にする、ということはどういうことか。

----それは可能ですか。

金森 ええ、可能であり不可能でありますね。同時に人間も人形であり人形でないのです。その辺をいろいろと探索しています。

----そうすると空間的なコンセプトみたいなことでなく・・・

金森 じゃないですね。もっと劇的な表現としてのコンセプトですね。結局、そのためにも小さいところで公演したかった わけです。広いところだとどうしても空間的な出来事になるので、空間構成という話になった時にどうしても抽象性が絡んできてしまいます。もっと具体的に身 体として見世物として表現としてどうなんだろう、ということを突き詰めたい、というのが今回の一番最初の出だしですね。

----ダンサーのほうにも主体性を抜いても踊れるという実力が必要ですよね。

金森 そうですね、そういうクオリティということを考えるとおもしろい作業です。実際ダンサーたちが、主体性を持って 自分で動いているのではなくて、人形と黒子という風にして、黒子が全部動かしているのです。動かされているのだけれど、完全に力を抜いてしまうと動かせな くなってしまうので、そのあたりが模索していてなかなかおもしろいところです。自分の身体であって自分の身体でない、みたいな。

-----それはおもしろくなりそうですね。『NINA』を一歩進めた作品になりますか。

金森 そうですね。進んだというよりも、『NINA』の時も結局、ダンサーとは何なのかとか、表現ってなんなのだろう という根本的な部分を追究した形があの作品になりました。今回はもう一度そのことに対して深く掘り下げたということです。 振付の作業としておもしろいのが、まず、一人のダンサーと一緒にスタジオに入ってソロを創ります。一人のダンサーのソロが出来ます。次に、あえてそこに黒 子を呼んできて、そのソロの動きを全部黒子が動かすようにすると、次第にダンサーから主体性が奪われて行くわけで、とても興味深いですよ。

-----そのプロセスをドキュメンタリーで撮るとか。

金森 それはおもしろいかもしれないけど、既に10月から創り初めていますから膨大なものになってしまいますね。今回 は新しいチャレンジで、今までだいたいリハーサル期間が2、3ヶ月で、プルミエまでぎりぎりになってしまって、それでワーッと創って舞台にあげるという感 じでしたけど、今回はもっともっと練り込んで、一回創ったものをまた壊して創っています。今、ある程度アウトラインができて、じゃどれくらい壊すべきか、 と考えているところです。

----どのくらいの長さの作品になりますか。

金森 休憩入れると2時間くらいになりそうです。

----長いですね。2時間ダンスを構成するっていうのはたいへんですよね。

(この間、通し稽古がありましたけど、見ている側はあっと言う間でした、と広報担当の声)
金森 意外と楽しかったですけどね。 もちろん今までも楽しんでましたけど、今回はほんとに自分が惹かれる曲に自分が惹かれる振りを創っていくだけなので、原点に帰っているといえば帰っている んです。結局、ダンスを創り始めた18,19歳の頃って、そんなに膨大な1時間もあるような作品を誰も創らない訳ですよね。大体誰かのソロとか、すごく惹 かれる5分くらいの曲があって、それでなんか創ってみたいというのが最初だと思います。
今回はもう一度原点に帰って短いシーンをたくさん創って、つなぎあわせて作品として提示されますけど、創っているプロセスとしては、なんか最初に戻った感 じですね。だからすごくベタな曲でも自分がいいと思ってインスピレーションが湧けばそのまま創っています、その時代的にとか、ダンス的にとか、今までこう だったからとか、そういうことをまったく無視して、ただ自分はこの曲に対してこれが見えるし、これが創りたくてこのダンサーと創りたいから創っています、 という感じです。だからメンバー10人を使わなければとかいうことも一切ないんです。

----どうして、急にそんなに自由になったのですか。

金森 どうしてでしょうね、自分でも気付いたのでしょうね。ここいらでもう一度戻らなければならないっていうのは、時期的なものじゃないですか。
偶然といえば偶然なんですけど、ヨーロッパを離れて以来、戻っていないのでもう一度ローザンヌから回ってみたいと思っています。やはり、ベジャールが亡く なったっていうのが自分にとっては大きいのですかね。自分がどこからスタートしたのか、もう一回確かめたいのです。やっぱり、彼の死はすごく重大な事件で した。
ベジャールの作品を踊ったとか踊ってないっていうことよりも、一番多感な時期に彼から直接教えを受けたということと、彼の創作過程をみてきましたからね。彼の作品を踊ったということと彼から学んだということとは大きく違うと思います。

----やはりご自分の創り方に、べジャールの影響を感じますか。

金森 今回のようにいろんな自分の好きな音楽で創ってコラージュするっていう方法は、ベジャール的だという見方もあり ますし。モーリスに関わる本っていっぱい出ているじゃないですか、この間も一冊買って彼の言葉を読んでいたら、今まさに自分が考えているようなことを言っ てるなと、それはやっぱりすごい影響受けているんだな、と思いますよ。その当時はもちろん、なににどう影響をうけてとか、考えない訳じゃないですか、た だ、時が経てば経つほど影響を受けていることを感じますし、ベジャールから始まっていろんなダンスの可能性を切り拓いて、フォーサイスとかマッツ・エクと かキリアンなどと仕事をしました。
そして、日本に帰ってきて、カンパニー創って時間をかけていろんな可能性を追究していく果てに、結局、なんだか戻ってきている感じですね。
自分はどうしてダンスを創りたいのかって思ったら、やっぱり音楽聴いて創りたいと思うのが一番最初でした。
だからここで創っていたはずのものがこっちに行っちゃうじゃないですか。時代とともにとか、ダンスの新しさとか、現代性ってことを考えていると。周り見渡 して自分を客観的に見てもそうだけれども、なんか頭でばっかり創っているのではないか、ちょっと自分がウッと思うものは吐き出して、例えそれが評価されな くてもいいじゃないか、って今そこに帰ろうとしていますね。
そこにNoismが続くのか終わるのかっていう境目っていうこともひとつあって、終わるなら終わればいいって思っていますから。だとすればもう一度、Noismの中でも自分が思うものをワッと吐き出して終わろうかなとも思います。

さっきも言いましたけど、メンバーが10人いたら10人踊らせる。公演数が少ないですから10人が生きるようにって考える自分がいるし、その中で自分の表 現したいことを考える自分もいれば、時代にとって何が刺激的かとか、いろんなことを考えざるを得なくなってきます。その中で今回はそういうことではなく て、自分がこの人とこの音楽でこういうシーンを創りたいと思ったらそういうシーンを創っていく。だから今回あんまり目立ったところのないメンバーもいます けれども、申し訳ないけれども今回はそれがやりたい、というくらい自分に対して貪欲に創っています。

----それはたいへんに楽しみです。 それから、金森さんは今年の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞されたそうで、遅くなりましたが、おめでとうございます。

金森 ありがとうございます。Noismの活動や昨年の『PLAY 2 PLAY』と「W-view」など総合的な成果ということで受賞しました。自分にとってはなにも変わらないのですけれど周囲の動きをみていると、とても大きな事だと実感が湧いてきます。

----受賞者の中でもほんとうにお若いですしね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。新作に期待しております。
(インタビュアー/関口紘一)
Noism08「Nameless Hands~人形の家」

●演出・振付・照明デザイン=金森穣、衣裳=中嶋佑一(arburt)
●振付・出演=Noism08

<新潟> >>>4/12(土)前売開始
●6/2(月)~4(水)、7(土)、8(日)、12(木)~14(土) 7/26(土)、27(日)、30(水)、31(木)
●りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 スタジオB
●一般4,000円/学生2,000円(全席自由・税込)
●開演時間=平日19:00、土日17:00 ※各日とも開演30分前より入場整理券を配布します。
●お問い合わせ=りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521

<東京> >>>5/8(木)前売開始
●7/2(水)~6(日)
●シアタートラム
●一般4,500円(全席指定・税込)
●開演時間=平日19:00、土日16:00
●お問い合わせ=アンクリエイティブ 03-5458-0548(平日11:00~17:00)

・その他の公演
<静岡>
●6/20(金)~22(日)
●静岡県舞台芸術公演稽古場棟「BOXシアター」
●開演時間=平日19:00、土日17:30
●お問い合わせ=静岡県舞台芸術センター 054-202-3399

<いわき>
●7/12(土)
●いわき芸術文化交流館アリオス
●開演時間=16:00
●お問い合わせ=アリオスチケットセンター 0246-22-5800

<金沢>
●7/19(土)・20(日)(予定)
●金沢21世紀美術館
●お問い合わせ=金沢21世紀美術館 076-220-2811