インタビュー&レポート

インタビュー: 最新の記事

インタビュー: 月別アーカイブ

関口 紘一
[2018.03.16]

「バレエ・ローズ」公演直前インタビュー
織山万梨子(牧阿佐美バレヱ団)、オーロラを踊る

----留学されていたアメリカの学校、ハリッド・コンセルヴァトリー(The Harid Conservatory)について教えていただけますか。

1803BR_o02.jpg 「バレエ・ローズ」リハーサルより
織山万梨子(牧阿佐美バレヱ団)
キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)

織山 アメリカのフロリダにある全寮制のバレエ学校です。生徒が全学年合わせて40人までの少人数制の学校で、授業料や生活費が寄付金により賄われています。午前中は近くの高校へ行き普通の学科の授業を受け、午後はバレエ学校でバレエや音楽、解剖学、栄養学などのクラスがあります。奨学金をいただいている以上、学科とバレエの両方の成績が良くないといけませんでした。ダンサーになるための訓練をすることだけでなく、その引退後のことまで考えて教育をする学校でした。
当時、私は橘バレヱ学校の生徒で、小嶋直也先生に師事していました。ちょうどその時期に先生が膝を痛めて引退される、ということを目の当たりにしました。たとえどんなに素敵なダンサーになったとしても、怪我をしてしまったりして踊れなくなったら大変なのだということ、そしてバレエだけでなく勉強もできなければ引退後の道が限られてしまう、ということを痛切に感じました。私はその時中学生で、毎日学校が終わったら走ってバレエ学校へ向かい、夜遅くに帰って来て、勉強するという生活をしていました。通学中の電車の中で宿題をしたり、必死に時間を作っていましたが、どうしても一日24時間では足りないくらいの忙しさにしんどくなっていたところでした。
そこで出場したYAGPでスカラシップをいただいた学校がハリッド・コンセルヴァトリーであり、バレエと学校の勉強が両立できる環境という、まさに私が必要としていたバレエ学校でした。日本ではまだあまり知られていませんでしたが、マルセロ・ゴメスさんなどが学んでいた学校としてアメリカでは有名で、私が留学した時は現在ABTのプリンシパルとして活躍しているイザベラ・ボイルストンさんが上のクラスにいました。

----バレエ教育は良かったですか。

織山 一年目がワガノワ・スタイルの先生で二年目はパリ・オペラ座の先生で、三年目がキーロフ・バレエでバリシニコフなどと一緒に踊っていた先生でした。いろいろなスタイルを学ぶことができましたし、コンテンポラリー、スパニッシュ、キャラクター・ダンスなども教えていただきました。
同級生のレベルも高く、かなり刺激を受けました。同級生はABT、パリ・オペラ座、ジョフリー、サン・フランシスコ、PNB、ポーランド国立…など世界中で活躍しています。

----YAGPのコンクールはどういう雰囲気でしたか。

織山 とにかく楽しかったです! 日本とは違い、コンクールの舞台でも踊り終わったら「ワーッ」と拍手が沸き上がりました。踊って力を出した分そのまま返ってくるという感じがあり、すごく新鮮でした。面識がない他の出場者や父兄、先生方までが「すごく良いね」とか声をかけてくれたのが嬉しく、アメリカってなんて素敵な国なんだろうと思いました。

----「バレエ・ローズ」ではオーロラを踊られます。

織山 私は「くるみ割り人形」の金平糖の精や、ガラ公演の中の作品として「コンスタンチア」のタイトルロールを踊ったことはありますが、全幕の主役は踊ったことがありません。『眠れる森の美女』のオーロラ姫自体は、AMスチューデンツ(牧阿佐美がオーディションで選ばれた生徒に直接指導するクラス)の公演の時に第1幕を踊ったことがあり、発表会のゲストとして第3幕を踊ったりという経験はありますが、第2幕のオーロラ姫は全くの初めてです。
「オーロラ姫は、第1幕を乗り切ればあとは楽チン」「バレエで一番難しいのはローズ・アダジオ」などとよく聞いていたのですが…いざリハーサルが始まり、第2幕は第1幕に負けないくらい難しいということを思い知らされました。

1803BR_o04.jpg 1803BR_o05.jpg
「バレエ・ローズ」リハーサルより

----牧阿佐美バレヱ団の『眠れる森の美女』はどういうヴァージョンですか。

織山 英国ロイヤル・バレエ出身のテリー・ウエストモーランド版です。初演は1982年10月になります。テリー氏は牧阿佐美バレヱ団においては既に1979年『ライモンダ』、その翌年1980年に『白鳥の湖』の演出・振付を手掛けて好評を得ており『眠れる森の美女』は彼にとっては牧バレエ団においての集大成となる作品になりました。牧阿佐美バレヱ団では、今年6月に、テリー・ウエストモーランド演出・振付の『ライモンダ』を10年ぶりに上演します。

----今回は「バレエ・ローズ」という公演ですが、バレエと花については、どんなイメージをお持ちですか。

織山 今まで特に意識したことがなかったのですが、『眠れる森の美女』『ジゼル』など、お花が重要な役割を持つバレエの演目が多いということに、今回の公演にあたり気付かされました。「お花」というと「バラ」を連想する方は多いと思いますし、私もそのひとりです。母がバラが好きなのですが、今回のバラでいっぱいのデザインのチラシを見てすごく喜んでいました。花束でもバラだけの花束ってよくありますが、他の花ではあまり見ないですね。やはりそれだけで存在感のある特別な花なのでしょう。

----ご自身がお好きな花はなんですか。

織山 ダリアやガーベラが好きです。好きな理由というわけではありませんが、この二つとも、同じ花束に入っている他の花が枯れてしまっても、最後までしっかり生きているような強いというかしぶといお花ですね(笑)

----お好きな色というと何ですか。

織山 濃いピンクが好きです。あとはグレーとか黒とか…

----リハーサルではもうパートナーと組んで踊りましたか。

1803BR_o03.jpg 「バレエ・ローズ」リハーサルより
キム・セジョン

織山 合わせています。今回、キム・セジョンさんと初めて組ませていただきます。以前に「バレエ★アステラス」で同じ回に出演しお会いしたことはあったのですが、一緒に踊るの初めてです。私がこうしなければいけないと思っている方法(=牧のスタイル)とセジョンさんが思う方法が、全然違ったりすることが多々あります。どちらも間違いではなく、それぞれが学んできたスタイルの違いなのですが、そういったことを話し合うことで勉強にもなりますし、新たな発見があり、とても新鮮です。違う団体で踊っている方と共演する機会はなかなか無いので、今回「バレエ・ローズ」のリハーサルは私にとってすごく刺激的です。

----本番に入る前に決まってするルーティンとかおまじないとかはありますか。

織山 ありません。強いて言えば、かかとが脱げないように松ヤニをつけたり、リボンが出ないように縫うこと…くらいです。(おまじないではなく、以前かかとが脱げたり、リボンが出るという失敗をしたことがあるからですが…)私が子役の頃、上野水香さんがいつも舞台袖に亀のぬいぐるみを持って来ていたのに憧れて、真似して自分の大事なぬいぐるみを持って行っていたのですが、家に忘れてしまった日があり「今日は失敗するかもしれない」とドキドキしてしまいました。その日は大きな失敗はなく踊り終えることができたはずですが、それからそういうことに気持ちが左右されるのが嫌になり、止めました。また、かつては本番に向けて意識を高めようと努めていたのですが、逆に緊張してしまうことに気づき、今は普段通りでいるようにしています。舞台はやはりアクシデントなどいろいろなことが起こるので、普段通りにしていた方が余裕があり冷静に対処しやすいのではないかと思います。

----牧阿佐美バレヱ団のレパートリーではどんな作品がお好きですか。

織山 『リーズの結婚』『三銃士』などは日本では牧阿佐美バレヱ団でしか上演されていない貴重なレパートリーですし、踊っていて楽しい作品です。牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』はダンサーにとってはハードですが、是非オススメしたい演目です。特に第4幕の演出は世界一美しいと思っていますし、全幕乗り切った後は達成感で胸がいっぱいになります。

----どちらかというとドラマティックな役がお好きですか。

織山 踊りやすさという意味では、『くるみ割り人形』第2幕や、『眠れる森の美女』第3幕のようなディヴェルティスマンよりも、『リーズの結婚』などのようにストーリーの流れでいつの間にか踊っているような作品の方が役に入ったまま緊張せず踊れるので好きですね。逆に、バランシンやウイリアム・ダラー振付の『コンスタンチア』など音楽を視覚化したような作品も、自分が音楽の風に吹かれている感覚になるので、大好きです。以前ベン・スティーブンソン版『エスメラルダ・パ・ド・ドゥ』を踊った時、エスメラルダとして舞台で生きていることに幸せを感じたことや、私が心奪われる作品が『ロミオとジュリエット』、『マノン』、『ジゼル』などのような演劇性の高いものばかりなので、ドラマティックな役にもっと挑戦していく機会があることを望んでいます。

----牧阿佐美バレヱ団は最近あまりコンテンポラリー・ダンスを上演しませんね。

織山 3年ほど前にピーター・ブロイヤー振付の『ボレロ』を上演しました。大勢でエネルギーを絞って踊りきり、終わった瞬間にお客さまからの拍手がドンッと沸いた時のことは忘れられません。コンテンポラリーの作品を踊ることにより、型を忠実に守りながらクラシックを踊る時にも大前提として不可欠な「踊る」ことを思い出させられました。日本のバレエ団ではコンテンポラリーの作品を上演する際は集客率が低いことが問題ですが、ダンサーとしてはクラッシック・バレエの型を一度崩して再構築する楽しさと出会うとても意義のあることだと思いますし、それにより自分の身体の動きに対する発見があり、表現の幅が広がるチャンスだと思うので、バレエ団でもコンテンポラリーの作品を踊る機会がもっと増えてほしいです。

----ローラン・プティも踊られましたね。

織山 はい、『ノートルダム・ド・パリ』と『デューク・エリントン・バレエ』に出演しました。

----プティの振付はいかがでしたか。

1803BR_o01.jpg 織山万梨子(牧阿佐美バレヱ団)

織山 かつての現代バレエですが、プティのお洒落な遊び心がありつつ、変に気取った感じはなく型も実はシンプルで、素直に表現できるので踊っていて楽しかったです。
『ノートルダム・ド・パリ』のイヴ・サンローランの衣裳、今でも新鮮味のあるデザインや色彩で素敵です。『若者と死』『アルルの女』は小学生の頃観に行き、衝撃を受けました。また上演してほしいです。

----注目している振付家はいますか。

織山 サンフランシスコ・バレエの振付家でダンサーとしても踊っているマイルズ・サッチャーさん。ハリッド・コンセルヴァトリーでの同級生のひとりです。サンフランシスコ・バレエやニューヨーク・シティ・バレエ、ジョフリー・バレエなどで作品を振付けています。2012年の「バレエ★アステラス」公演でサンフランシスコ・バレエの研修生たちが彼の作品『Spinae』を踊りました。

----バレエの人たちはどうしてもヨーロッパの方を向いていることが多いので、アメリカの若手振付家が紹介されることは少ないですね。
本日はリハーサルなどでお忙しいところ時間を取っていただきまして、ありがとうございました。「バレエ・ローズ」公演を楽しみにしています。
 

BalletRose.jpg

Chacott バレエ鑑賞普及啓発公演
〜ようこそ美しきバレエの世界へ〜
一夜限りのおしゃれなロマンティック・ファンタジー

Ballet Rose in Love Stories
〜バラで綴るバレエの恋の物語〜

演出・振付:伊藤範子

●2018年3月26日(月) 開場17:45 開演18:30
●新宿文化センター 大ホール

▼公式サイト
http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/balletrose/