ダイアリー ~ダンサー日記~

針山愛美さん [ プロフィール ]

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
◆Emi International Arts
◆針山愛美のバレエワールド

From Berlin 針山愛美

2017年4月、新学期が始まり春らしい季節になりました。

桜が美しく、日本の四季は本当に世界一と言っていいほど情感があふれたものだと感激しています。

1704emi_01.jpg 劇場外にて

今月は、クロアチアの様子をお伝えいたします。
1月の中旬から2カ月にわたりクロアチアの都市ザグレブに滞在し、ウラジーミル・マラーホフ氏と一緒に「白鳥の歌」の振り付け演出アシスタントを務めました。
3月17日が世界初演の日でしたが、3月6日の週から、ステージリハーサルをほとんど毎日行いました。
まずは、ステージのセット確認、ダンサーなどの立ち位置の確認などから始まり、オーケストラとの合わせを行い、通し稽古を行うまでスムーズにリハーサルが進んでいきました。
そして3月13日からは、衣装つけてほぼ本番通りのリハーサルも始まりました。
1つ1つのプロセスはダンサー、スタッフ、ミュージシャンが一体になり公演の成功に向けて進んでいるのを肌で感じる事が出来、非常になごやかに、そしてエネルギー溢れた数日でした。
これもウラジーミル・マラーホフ氏のお人柄です。優しく、かつ人をまとめる力が凄く、彼についていく!と、一丸となったエネルギーに溢れていました。
普段のリハーサルスケジュールとは違う時間帯でリハーサルをする事に変更したのですが、みんなそれに賛同し、文句を言う人は居ませんでした。

1704emi_02.jpg (C) HNK

1幕の2幕は休憩なし、そして3幕4幕の間も休憩なし、全2部構成として上演されました。
マラーホフ氏が特にこだわっていらっしゃったのは、4幕です。4幕の音楽を探すところから、1つ1つの動き、フォーメーションなどをいちから振り付けされました。
照明やドライアイスも効果的に使い幻想的で美しく、悲しげな4幕でした。
終盤では、プリンス、ロットバルトが息絶えて、1人残ったオデットが悲しみながらプリンセス寄り添い死んでいくところは涙が出そうになりました。
その他、1幕の通常パ・ド・トロワは、プリンスとプリンスの御付きベンノも一緒に踊り、パ・ド・カトルとして上演されました。これもオリジナル溢れた振付で、男性バリエーションもプリンスと、ベンノの2人で踊り見応えたっぷりでした。
3幕では、黒鳥/オディールの手下として黒鳥が4羽登場しました。
そして各国のプリンセスは、コールド・バレエを従えて、華やかな踊りを披露。衣装は色違いで華やか、次々に踊りを披露し、最後はプリンセス5人で王子のために踊ります。このプリンセス5人の踊りもオリジナルで、各国のプリンセスが次々と自分の個性を披露、ストーリー性も含めてとても見応えある3幕でした。

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衣装を担当した Jordi Roig は、ベルリン国立バレエ団でも「シンデレラ」や「ラ・バヤデール」の衣装などを担当し、そのセンスはエレガントで美しく、マラーホフ氏の作品といつも雰囲気がぴったりです。
今回は、「白鳥の湖」が初演されたその当時を思い起こす様な、華やかな宮殿と悲しげな湖をイメージしたセット、ヨーロッパの落ち着いた雰囲気の衣装、アイデアを多用に用い、限られた条件の中で魅力たっぷり、素晴らしい舞台装置でした。
オーケストラは私がベルリン国立バレエ団に在籍していた時代でも、こんなにスムーズにテンポの確認が進み、マラーホフ氏やダンサーの欲求をぴったりと満たしてくれる指揮者は居ませんでした。
オーケストラの音色が素晴らしく、迫力もあり胸にズシリとくる演奏でした。

普通は、振付家が来て新しい作品を作るときは、1キャスト、もしくは2キャストをリハーサルするのがやっとですが、今回は4つのキャストをマラーホフ氏自らリハーサル、準備されました。
カンパニーのモチベーションは活気に満ちてい、2ヶ月でレベルが向上していくのを肌で感じながら、毎日リハーサルしていて逆にエネルギーをもらいました。

1704emi_13.jpg 1704emi_12.jpg クロアチア大統領と
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3月17日当日は、クロアチア大統領を始め、クロアチア芸術文化大臣や、各国の大使、そしてメディアの方々に加え、俳優やセレブの方々も大勢いらっしゃり、招待状を持っている方のみの公演でしたが、満員の観客はブラボーの嵐、大きな拍手で迎えてくれました。
クロアチア大統領 コリンダ・グラバル=キタロヴィッチ様とは、マラーホフ氏と私もご挨拶する機会がありました。
そして、終演後は大統領自ら舞台の上にあがりたいと申されて、前代未聞、大統領がステージでご挨拶されました。
これは今までの歴史の中でも初めての事だったようで、次の日には「白鳥の湖」の成功の様子、そして大統領がステージに上がられた様子が各界のメディア、新聞、テレビで取り上げられました。
日本では、バレエの公演に総理大臣がいらっしゃって、それがニュースになる事は中々無いと思います。やはり芸術が身近にあると言うことを実感した一瞬でした。

終演後は、クロアチア国立バレエ団のディレクター レオ・ジャコビナと、マラーホフ氏が舞台上で挨拶されましたが、この2ヶ月でダンサーとの距離感が近いものとなり、別れが寂しく涙を見せるダンサーたちもいました。私も胸が熱くなった一瞬でした。
この2ヶ月のクロアチアで得たものは本当に大きく一生でかけがえのない時間となりました。
この機会をくださった、クロアチア国立バレエ団のディレクター、マラーホフ氏をはじめすべての方に本当に感謝したいと思います。

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振付:Vladimir Malakhov
指揮:Dian Tchobanov
衣装、セット:Jordi Roig
セットアシスタント:Enrique Conde
照明:Deni Šesnić
振付アシスタント:Emi Hariyama
バレエマスター、ミストレス:Iraida Lukašova, Mihaela Devald Roksandić, Milka Bartolović, Suzana Bačić, Leonard Jakovina, Ilir Kerni
舞台監督:Snježana Marasović, Adnan Osmanović
音楽主任:Ljudmila Šumarova
リハーサルピアニスト:Liliana Zaveršnik

<キャスト>
オデット/オディール:Miruna Miciu (3月17日、20日), Natalia Horsnell (3月18日、21日)
プリンス ジークフリード:Andrea Schifano (3月17日、20日), Guilherme Gameiro Alves (3月18日、21日)
ロットバルト:Guilherme Alves (3月17日、20日), George Stanciu (3月18日、21日)
道化:Takuya Sumitomo
パ・ド・カトル:Asuka Maruo, Anamarija Marković / Simon Yoshida
王妃:Mihaela Devald Roksandić


4月に入り、新しい学校に入学したり、新しい会社に就職したり、またフレッシュな気持ちで1年が始まりました。
皆様も日々お体には充分気をつけて過ごしてください。
来月もいろいろな情報をお伝えいたします。