ダイアリー ~ダンサー日記~

針山愛美さん [ プロフィール ]

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
◆Emi International Arts
◆針山愛美のバレエワールド

From Berlin 針山愛美

2016年9月2日と3日、2日間にわたり「MALAKHOV & FRIENDS」の公演がベルリンアドミラスパラストで行わました

「MALAKHOV & FRIENDS」は、マラーホフ前ベルリン国立バレエ団の監督に就任した後ベルリンでは2年おきに素晴らしい舞台を上演して、2014年惜しまれながらファイナルを迎えました。日本で上演された「マラーホフの贈り物」公演も、全部で8回を数え、マラーホフはこうした公演を「MALAKHOV & FRIENDS」として世界各国で行ってきました。
そして今年、9月2日と3日には、前芸術監督として活躍した記憶も新しいベルリンで、「MALAKHOV & FRIENDS」の公演が実現しました。この公演が行われるのは2年ぶりで彼の踊りを見るために、そしてこの様なガラはマラーホフならではで、沢山のバレエファンが訪れ客席は熱気に包まれました。
私自身も参加させて頂き、このような素晴らしい舞台に立てた事は感動でした。舞台袖から見た感想と、舞台上、袖から感じた事を、自身で撮影した写真とお届けします。

emi1609_04.jpg リハーサル

【MALAKHOV & FRIENDS マラーホフと仲間たち】
Part I
『チェロのための5つのプレリュード』

振付/モーリス・ベジャール、音楽/J.S.バッハ、出演/吉岡美佳、ガリオット・マッティア(ベジャール・バレエ・ローザンヌ)
タイトル通り、チェロを使い小品を次々見せて行く作品で、ストーリーを語っているようなアイデア満載の作品でした。
ベジャール氏が生前に振付た作品全てが全く異なる多様なもので、形にはまらず有りとあらゆる作品が存在するのは、やはり偉大な振付家だと思いました。
美佳さん、マッティアは初めて一緒に踊ったそうなのですが、素晴らしいパートナーシップでした。

『Soul』
振付/László Velekei、音楽/Max Richter、出演/László Major, 植松だいち(ハンガリー、ジュール・ダンス・グループ)
2人の男性ダンサーが、シンクロでパ・ド・ドゥを踊り、照明も素敵で作品が一層引き立っていました。だいちさんと、ラザロの身体力、身体の使い方が一瞬の隙間を見せない緊張感が溢れるものですばらしい作品でした。

『真夏の夜の夢』
振付/ジョージ・バランシン、音楽/フェリックス・メンデルスゾーン、出演/トリシア・アルバートソン、ライナー・クレンステッター(マイアミ・シティ・バレエ)
ライナー・クレンステッターは、ベルリン国立バレエ団の元プリンシパルで、私も日本やドネツクなどでも一緒に踊ったり、バレエ団でも10年間一緒に働いていました。
2年前にマラーホフ前ベルリン国立バレエ団芸術監督が辞した際、マイアミ・シティ・バレエに移籍し、最近ではアメリカで活躍しています。今回はマイアミ・シティ・バレエで19年間活躍しているトリシア・アルバートソンとバランシン振付の『真夏の夜の夢』を披露。ロマンチックで素敵でした。

『Keep Calm』
振付/ウラジーミル・バルナバ、音楽/ヨハン・シュトラウス、出演/ヴィクトリア・ブリレワ、フェードル・ムラーショフ(マリインスキー・バレエ)
コメディバレエで、バレリーナのヴィクトリアもひげを付けて2人共男性かしら?と思わせる踊りで観客の笑いを誘っていました。クラッシックの作品も見たかったですが、ユーモア溢れる素敵な作品でした。

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『カルメン』
振付/アルベルト・アロンソ、音楽/ジョルジュ・ビゼー、ロンデオン・シェチェドリン、出演/上野水香(東京バレエ団)
水香さんの素晴らしいスタイル、ラインに見惚れてしまいました。そしてダイナミックであり、足を上げるとスタイルがさらに引き立ち本当に魅力的でした。

『スパイラル・ツィスト』
振付/ラッセル・マリファント、音楽/マックス・リヒター、出演/ルシア・ラカッラ、マーロン・ディヌ(バイエルン国立バレエ)
2人のパートナーシップは言うまでも無く完璧でした。
音楽はミステリアスで印象的、巧みなリフトや集中力、2人ならではの良さが引き出された作品はとても素敵で最初から最後まで見入ってしまいました。

『海賊』
振付/マリウス・プティパ、音楽/アドルフ・アダン、レオン・ミンクス、出演/ユリア・ステパノワ、デニス・ロヂキン(ボリショイ・バレエ)
ユリア・ステパノワは、2年前にベルリンで開催されたマラーホフ財団主催の第1回タリオーニ・ヨーロッパ・バレエアワードで、最優秀女性バレリーナ受賞したバレリーナです。デニス・ロヂキンも長身で容姿も素晴らしくノーブルもキャラクターもこなせる今最も売り出し中のプリンシパルです。
一部のラストの締め括りにふさわしく、クラッシックの真髄を見せてくれました。

Part II
『タランテラ』

振付/ジョージ・バランシン、音楽/ルイス・モロー・ゴットシャルク、出演/トリシア・アルバートソン、ライナー・クレンステッター(マイアミ・シティ・バレエ)
ライナーは、ベルリン国立バレエ団時代に『タランテラ』を踊った時よりさらに磨きがかかっていました。
音楽のシンコペーションの使い方に緩急がつき、ダイナミックさが加わりメリハリがついていました。ブラボーです。

『Dream』
振付/針山愛美、音楽ジュール・マスネ、出演/針山愛美(スペシャルゲスト)
「タイスの瞑想曲」に振付をしたいと思い、コンセプトや衣装、照明の全て自分でしました。何度かこの作品を踊りましたが、自分の作品なので毎回コンセプトが変化して行きます。
今回は、マラーホフさんもリハーサルの際に御意見下さり、また少し違う結末に仕上がりました。この様な機会に踊らせていただき、感謝です。

emi1609_07.jpg 針山愛美 emi1609_08.jpg 針山愛美

『Inner』
振付/László Velekei、音楽/リサ・ジェラルド、出演/László Major, 植松だいち(ハンガリー、ジュール・ダンス・グループ)
ラザロの振付も素晴らしかったのですが、だいちさんの動きの緊張感が作品の良さに更にプラスアルファされ、洗練された引き締まった作品でした。

『チーク・トウ・チーク』
振付/ローラン・プティ、音楽/アーヴィング・バーリン、出演/上野水香(東京バレエ団)、ルイジ・ボニーノ
水香さんと、ルイジのパートナーシップにブラボーです。チャーミングで、セクシーかつ軽快なステップに観客も一体になって楽しんで拍手喝采でした。
ルイジの為に作られた作品だそうで初演はジジ・ハイヤットとの共演、作られたのは1978年とおっしゃっていました。

emi1609_06.jpg 上野水香(東京バレエ団)、ルイジ・ボニーノ

『三島とシェロー パ・ド・ドゥ』
振付/モーリス・ベジャール、音楽/ユーグ・ル・バール、出演/吉岡美佳、ガリオット・マッティア(ベジャール・バレエ・ローザンヌ)
2分程の短い作品でしたが、印象深いパ・ド・ドゥでした。
タイトル通り日本を意識した作品で、音楽の中に時折聞こえて来る日本語が面白く作品にスパイスを加えていました。衣装も素敵、2人の動きも素晴らしかったです。

『マクベス』
振付/ウラジーミル・ワシーリエフ、音楽/キリル・モルチャノフ、出演/ユリア・ステパノワ、デニス・ロヂキン(ボリショイ・バレエ)
最初に1人で登場したデニスの存在感と雰囲気に圧倒されました。真っ赤な照明の中で妖艶に踊る2人、大人の雰囲気で難しいリフトなども次々と見せていき観客を引き込みました。海賊とは全く異なる雰囲気で、とても素敵、振付をしたウラジーミル・ワシーリエフのカリスマ的男性的なエネルギーも感じる作品でした。

emi1609_02.jpg ユリア・ステパノワ、デニス・ロヂキン(ボリショイ・バレエ)

『ライモンダ』
振付/マリウス・プティパ、音楽/アレクサンドル・グラズノフ、出演/ヴィクトリア・ブリレワ、フェードル・ムラーショフ(マリインスキー・バレエ)
ヒールを、履いてキャラクターダンスを披露してくれました。容姿も美しく、クラッシックもキャラクターもできるソリストの2人には頭が下がります。
次回は、是非クラッシックの作品を見たいところです。

emi1609_01.jpg ルシア・ラカッラ、マーロン・ディヌ
(バイエルン国立バレエ)

『ライト・レイン』
振付/ジェラルド・アルビノ、音楽/ダグラス・アダムス、出演/ルシア・ラカッラ、マーロン・ディヌ(バイエルン国立バレエ)
前回の「MALAKHOV & FRIENDS」でも見ましたが、何度見ても驚嘆の連続です。総タイツが本当に似合い美しい2人、ラカッラの足のラインはまるで本から出てきたような美しさ。足を上げればどこまでも続くような軽やかさで、その柔軟性は彼女の持ち味でもあります。
その柔軟性とラインを巧みに活かし作られた作品は、ラカッラ、ディヌの十八番で、観客は、湧きに湧きました。

『The Old Man And Me』
振付/ハンス・ファン・マーネン、音楽/J.J.ケイル、ストラヴィンスキー、モーツァルト、出演/ディアナ・ヴィシニョーワ(マリンスキー・バレエ)、ウラジーミル・マラーホフ
この作品は、マラーホフと色々なパートナーで見ましたが、パートナーが変わると本当に違う踊りに見える位その人のパーソナリティが見える作品です。
ヴィシニョーワ&マラーホフのペアは、世界バレエバレエフェスティバルで初めて見ましたが、その後、マリンスキー劇場やウラジオストクでも踊っています。今回はますます内容が濃いものとなっていました。
一瞬の隙もなく、小さな動きのすべてにも完璧なテレパシーを感じあっている2人。
全ての動き、目線、ジェスチャー、タイミングに意味があり、2人の人生を垣間見るような感覚に陥いりました。17分の作品があっと言う間でした。

emi1609_05.jpg ディアナ・ヴィシニョーワ(マリンスキー・バレエ)、ウラジーミル・マラーホフ

1,400席ある客席は、ほぼ満席。『The Old Man And Me』が始まりマラーホフが舞台に出てくると、既に鳴り止まない拍手。観客が本当にこの日を待っていた、という事が舞台上にいても伝わってきました。公演が終わった後は、マラーホフ自身が、マイクを用い、ベルリンの観客に、そして世界中から集まった観客に感謝の言葉を述べました。
その後も、何回もカーテンコールが続きました。ベルリンの新聞も、大きく取り上げていました。

http://ballett-journal.de/malakhov-and-friends-classic-and-modern/
http://klassiker.welt.de/2016/09/04/diesmal-im-admiralspalast-malakhov-friends/

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2016年9月7日に、ベルリン市長によるプレスコンフィレンスが行われ、2019年にナチョ・ドゥアトの契約が終了した後ベルリン国立バレエ団の芸術監督の座を退く事が発表されました。そして、その後サーシャ・ワルツとJohannes・ Öhmanが2人で芸術監督に就任することが発表されました。これを受けて、今日(9月7日)ベルリンはラジオ、新聞で大きなニュースになっています。ヨーロッパでクラッシック全幕バレエを上演出来る数少ないバレエ団でしたのに、私としては残念に思います。コンテンポラリーの小さなカンパニーは沢山存在するドイツ、クラッシックを主流にするバレエ団として継続して欲しかったのですが、なかなか状況は難しいようです。
このニュースをけて、9月10日の国立歌劇場の今シーズンの開幕パフォーマンスの際に観客が、マラーホフ監督に戻ってきてほしいとコールしたと言うことが新聞に載っていました。

http://www.bz-berlin.de/liveticker/sie-wollen-tanzchef-malakhov-zurueck
http://www.morgenpost.de/incoming/article208219065/Etwas-wird-passieren-Es-gaert-beim-Staatsballett.html

さて今月は、キューバに行きます。
昨年のこの時期に初めて訪れて衝撃を受けた国。1年経ってどのように変わっているか楽しみです。また報告いたします。

emi1609_09.jpg クラスより
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