2020年も残す日々が僅かになりました。

世界中今年は激動の年でした。
新型コロナ禍の中、あらゆることを考え、感じ、過ごした1年でした。
私自身、今まで作り出せなかった時間を持つことが出来、本当に大切な事に気付き様々な事を勉強出来た時間となりました。
今後の人生において、役立てていきたいと思っています。

今回も、ヨーロッパなどの様子等をお伝えします。

◎クロアチア国立バレエ団から
バレエ団は、11月7日に無事『プライドと偏見』の初演を終え、4公演は無事に上演できましたが、11月16日にダンサーからコロナ陽性が出て、全員が10日間隔離となりました。
症状が出てきた人、また希望する人のみ検査を受けに行く指示が出ましたが、隔離の間検査を受け陽性になった人は10数名いました。
その後11月30日、陽性以外の全員が検査を受け、ほぼ全員が陰性だったため午後から仕事を再開したそうです。
現在は『くるみ割り人形』のリハーサル中、当初11月27日から公演をする予定でしたが、12月9日からの予定に延期になったそうです。
クラスもリハーサルの間も、マスクを着用し、クラスまたはリハーサルの合間は10分間の換気をしながら活動中、公演は今のところマスクなしで公演する予定だと言う事です。

◎ドイツ、ベルリンから
ベルリン国立バレエ学校の状況
バレエ学校では、学業は皆常にマスクを着けて授業していますが、クラシックやコンテンポラリー、バリエーション等の実技のレッスンはマスクは着けず、お互いの距離が近くなりすぎないように注意してレッスンしています。
また、授業やレッスンが終わったら、消毒液で机やバーを拭いています。
パ・ド・ドゥは出来るだけ他のクラスとの接触を防ぐために、同じクラスのパートナーとのみなら許可が出て、授業を行うことになっているそうです。

ベルリン国立バレエ団の状況
バレエ団は11月の下旬に『ジゼル』を上演した後、政府から制限が出て2021年1月3日までの公演は全てキャンセルになりました。その後も未定です。
『ジゼル』後のリハーサルは、プリンシパルやソリストのパ・ド・ドゥのみ、他のダンサーはクラスのみでした。
バレエ団から1人コロナの陽性者の方が出て、11月中の約1週間は自宅待機でオンラインでのクラスになりましたが、現在はバレエ団に戻って、クラスは行っています。
レッスンは数グループに分けて行い、14:00までには終了予定、全てのリハーサルはなくなるなど制限付きで活動している様です。

◎ロシアから
現在ボリショイバレエ学校は自粛中でオンラインによるレッスンのみ行われているそうです。
12月15日からレッスン再開予定との事です。

◎スロバキアから
スロバキアでは、10月31日、11月1の日2日間にかけ全国民を対象としたコロナウイルスの検査があったそうです。
スロバキア国立コシツェ州立劇場も検査会場として使用されこの検査で陰性証明書をもらえれば、制限なく外出可能になりました。
11月16日より、コロナによる規制が少し緩まり、劇場でお客様を入れての公演が可能になりました。
客席同士の席が隣り合わないようチケットを販売したり、熱のある方は入場禁止など、公演をするにあたっての規制はまだあります。

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撮影者/Auter:Joseph Marčinský 場所/State theater Kosice

11月17日は小劇場にて「Milada Horáková」の公演を行いました。(前日16日、ダンサーはコロナの検査を受けました)
11月27日は大劇場にて「Jánošík」の公演がありました。まだコロナによる規制はありますが、徐々に再開し12月にも大劇場でも公演を行う予定です。
近々初演を迎える予定のウラジーミル・マラーホフ氏主演『ヌレエフ』は12月中旬に撮影予定、初演は2021年1月末に持ち越されましたが、正式な日程は今後また変更があるかもしれない状況という事です。

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◎ブルガリアから
ブルガリア北部のルセという街にあるState Opera Ruseからのレポートです。
バレエ団は、国立の小さなバレエ団ですが、『白鳥の湖』、『ドンキホーテ』、『くるみ割り人形』など主要な古典作品を公演しています。
そしてバレエ以外にも、オペラが公演する作品にバレエが参加する事もあります。
ダンサーは日本人が5人いて、最近ではスペイン、イタリア、イギリスなど他の国からのダンサーも増えています。
バレエ団の公演は月に1、2回程度で、今どの国も大変な状況の中、収容人数を30%に減らしたり少しでも多くの方に見ていただく為ライブ配信も同時に行ったりして、毎月公演ができています。
11月末から10日間ほど休養と体調管理のためクラス等は無く、12月初旬からは末に行う『くるみ割り人形』のリハーサルを再開する予定です。
現在ブルガリアではロックダウンとは公言していませんが、レストランやモールなどの閉鎖、学校での対面式授業の停止や、イベント、大会等の中止などの措置がとられています。幸いな事に劇場は感染対策を厳守に公演が許可されています。
世界中大変な状況ですが、この状況下で舞台に立てる事に感謝して毎回の公演を大切にしています。

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Бал с маски オペラの作品公演

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© ブルガリア State Oper Ruseから

◎ルーマニアから
ルーマニア国立バレエ団では、11月から劇場が閉鎖しており未だまだ目処が立っていないと言うことです。

私自身も、今年は様々なことを考える1年でした。
芸術家にとって、改めて世界各国との立ち位置の違いを感じました。
長年住んでいたドイツでは、芸術は必要不可欠なものとしてフリーアーティストも支援を真っ先に受ける事を実現する等、文化の優先度を垣間見ました。
私はコロナ禍で、これまで生きて来た中で自分自身で作り出せなかった時間をもらい、今後の人生において大切なことを見つけることができました。
先行き不透明な今後ですが、今年の経験を最大限に生かし、今後も少しでも皆様のエネルギーになるように心から伝えることなど続けていきたいと思います。

今年度の主な出来事、、、。
新型コロナの影響、そして他にも大きな理由がありますが、自分自身と向き合う時間ができた今年、改めて踊りたいと言う気持ちが芽生えました。
そう思い始めたときに、様々な出会いがありこの状況の中にありながらたくさんの舞台を経験させていただきました。

今年1月3日は、誰もがこのような状況になるとは予想していなかった頃、NHKニューイヤーコンサート出演させていただき、動画の絵画をイメージした作品を演出し、踊り今年がスタート。

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今年上半期には想像だにしていなかった事でしたが、新型コロナの影響からも、感謝のご縁があり淡路島で7月以降以降約22回舞台に立たせて頂きました。
8月、10月は音楽とバレエのコラボレーションパフォーマンスを上演。
そして11月は私が、人生で常に様々な状況で関わってきて、そして今回で最後、と思っても、またご縁がある・・・そんな作品『白鳥の湖』。
ハイライトを演出構成振付し、初心者でもわかりやすい新しい形でのバレエ作品としてまとめました。11月末まで公演し、2021年1月も再演予定です。

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和とコラボ

また、和とのコラボレーションの研究中、新しい分野も開発中です。
染色作品と京都嵐山の祐斎亭で、コラボレーションし踊らせていただいたり、三味線や和太鼓ともインプロビゼーションコラボの体験させて戴きました。
和の美しさも今後追求していきたいです。
7月には、まだコロナの先行きが本当に心配だった頃、ピアニストとのコラボレーションパフォーマンスで半年ぶりの舞台復帰。そしてお世話になったスタジオパフォーマンスで心温まる自分自身も勉強させていただけたパフォーマンス、また<INFINITY ∞ 2020-可能性は無限大->など出演者が同じ想いで臨んだガラ公演で踊らせて頂き、久しぶりに懐かしのメイシアターで踊りました。

そして、自然を舞台に!
自粛期間中、伊豆の両親の実家で過ごしている間に、より一層自然の大切さと美しさを伝えたい想いが湧き出て、大地のエネルギーを身体中で感じ無人の空間で踊ってきました。
その中でご縁を頂き、8Kで3日間撮影し映像化しました。
https://youtu.be/OVNvgGpfAQ4

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初のオンラインの公演『Be on the stage』、あなたの踊りを大舞台で!を主催。
10月10日予定していた「With Love From Malakhov」の公演のオーディションが延期になり、代わりにできることを、大舞台を自由に使っていただきたいという想いで急遽企画。
無事開催できたのは様々な方々にご協力いただき、助けていただいたお陰でしかありません。
ワークショップ、生演奏、一人一人の輝いた踊り、マラーホフ氏のライブオンライン指導、ジャパンインターナショナルのダンサーによるショーケースなどを舞台で披露することが出来ました。

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Be on the stage

世界中から配信ワークショップフェスティバルを11月から開催中で(海外のバレエ名教師と日本のバレエをつなぐ)特別企画を2021年1月まで続ける予定です。
https://www.eiarts.art/world-ballet-shizuoka

自身も今、簡単に海外に戻れません。
そんな中、今までお世話になった芸術監督、世界で活躍するダンサー、国立バレエ学校の教師の方々などにレッスンしていただき、直接、今思っていらっしゃる事を伝えていただきたい。ダンサーの方々、目指す方々に、新型コロナの影響で夢を失って欲しくない...。そんな思いが詰まっています。

自分が本当にお世話になって来た方々の第一弾です。
ウラジーミル・マラーホフ(元ベルリン国立バレエ団芸術監督)
アラム・マヌキャン(アルバータバレエ団トレーニープログラムディレクター)
アレッシオ・カルボーン(パリ・オペラ座バレエ団プリミエダンサー)
フョードル・ムラショフ(マリインスキー劇場ソリスト)
ニーナ・アナニアシビリ(ジョージア国立バレエ団芸術監督)
アンナ・メラバッツカヤ(ボリショイバレエアカデミー教師)
キャトリン・バウム(ベルリン国立バレエ学校教師)
ドミトリー・マギトフ(シュツットガルトバレエ学校教師)
シンシア・ハーヴェイ(アメリカン・バレエ・シアターJKOバレエスクール校長)

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私自身も3月末から、毎週ZOOMレッスン、YouTube配信を続けています。
新型コロナで外出自粛になったことがきっかけになりましたが、それでなくても、続けていこうと思いました。
それは、遠くにいらっしゃる方で実際にお会いすることができなかった方々とも、画面を通してなら出会えることが出来る時代になりそのような方々とのご縁、出会いをも大切にし、伝えたいことを伝えることを続けていきたいと思ったからです。
2021年も、できる範囲で細々とですが続けていこうと思います。
https://www.youtube.com/user/emihari
どんな時でもポジティブに、言葉で言うのは非常に簡単です。しかし、与えられた状況の中で何ができるかを考え過ごしていきたいと思います。

2021年は、世界中にとって明るい兆しが舞い込む年になってほしいと願います。
私たちアーティストができる事は限られていますが、心の栄養こそ人間にとって今必要なものの一つではないかと思います。
芸術、文化の灯を消さないよう、そして身近に感じてもらい、今日の、明日の生きる力にしていただけるような活動が出来れば、、、私も日々精進しながら進んでいきたいと思います。
医療の最前線で尽力されている医療従事者の皆様、そしてこの状況の中、身を削って様々なことに尽力し対応して下さっている方々、国民一人ひとりに感謝の気持ちです。
心より、皆様に、感謝いたします。
2021年もどうぞよろしくお願いいたします。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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