ウクライナから日本に避難のため無事到着したダンサーと先生の事など、お伝えいたします。

今月は、ウクライナから日本に避難のため無事到着したダンサーと先生の事など、お伝えいたします。

コロナ禍でベルリンに戻れなくなり、ご縁を頂き淡路島に拠点を移し、バレエを通じて芸術の普及、若手の育成、そして世界と日本をつなぐ活動を続けてきました。
1991年に初めて行った海外が旧ソビエト連邦でした。モスクワのボリショイバレエ学校に留学した直後に起こった10月政変の際には戦車をこの目で見たり、明日はどうなるか、命の危険を感じる日々もありました。当時ロシアで経験した事は、今の自分の土台になっており、今の世界情勢には心を痛めました。
ウクライナには2013年以降毎年数回訪れ、指導したり、キエフ国立歌劇場でも踊りました。
一つ一つの経験、想いを形にしたい、自分にできる事はと模索してきました。
アートを通して世界の人々の架け橋となり、芸術の力で明日のパワーを。そして少しでも平和への力になる事が出来れば、と思い続けています。

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そんな中、自分1人は決してできない事を沢山の方々に助けていただき一歩一歩進んでいます。
先ず、日本に避難する事を希望していた元リビウ国立バレエ団のダンサーの方々、キエフ国立バレエ学校の教師を日本にお迎えする事が出来ました。今後、ウクライナからコンテンポラリーダンサーの方やその家族、バレエ学校の講師の方も日本にいらっしゃる予定です。
この状況の中で行き場を失った世界中の方々に、生きがいを持って過ごしていただけるよう、バレエや芸術のプラットホームを作ることが出来ればと思っています。

バレエレッスン、様々なワークショップなどでバレリーナを目指す子どもたちに一流の指導に身近に触れてもらいたい。
そして今しかできない素晴らしい経験をしてもらいたい。
バレエに触れたことないような方々には、バレエの楽しさ素晴らしさを実感してもらったり、初心者の方でもご一緒できるようなレッスンや機会を設けていきたいと思っています。

毎日、できることを続けていますが、ウクライナから避難してきたダンサーたちと先生と一緒になり、切磋琢磨しています。
みんな本当にバレエに情熱を持っていて、私自身も学ぶことばかりの毎日を過ごしています。
学ぶことには限りがなく、様々なことを企画しながら自分も生徒になった気分です。
そんな素晴らしい方々と一緒に経験できる様々なワークショップ、舞台で共演出来る機会、公演などを企画させていただきました。

その第一弾が6月18日、19日淡路島にて開催されます。

6月18日、19日
ウクライナチャリティーイベント
ワークショップ
参加無料。
ウクライナダンサーによるバレエ公演 入場無料(申込みは必要になります)
ダンサー募集オーディションも同時開催します。

詳細
https://awaji-seikaiha.com/news/naminoritei/1897/

現在公演の準備中。リハーサルを行っています。
プログラムは、クラッシックの作品やトークショーもあります。ウクライナから来たダンサーたちが自ら振付けてくれた作品も披露します。

6月20日〜
Awaji World Ballet Academy がスタートします。
こちらは、淡路島でウクライナの先生方に学べる機会を作りました。キッズからバレリーナを目指す方々、はじめての大人の方々まで幅広く経験を共有していただければという思いです。
通常レッスン、オープンクラスも行う予定です。

8月24日、25日、26日、27日
『Souls for peace 』平和祈念公演

淡路島にてウクライナのダンサー達と共演出来る公演を予定しています。沢山の方々にこの機会、経験を共有していただきたい思いです。オーディションは6月18日、19日に淡路島にて行う予定ですが、子供も大人の方も参加いただけます。

8月26日〜30日
ワークショップ学べるコンクール「Steps for your future」

ウクライナから、キエフ国立バレエ学校教師、コンテンポラリー講師、現役ダンサーによる特別ワークショップです。
最初の3日間の内容はクラッシック、キャラクター、レパートリー、コンテンポラリーを1日3クラス、もしくは4クラス予定しています。
宿泊施設は海が目の前の温泉付きの素敵な施設で、3食付きです。合宿形式で切磋琢磨しながらバレエも人間としても成長していただきたい思いです。
ワークショップ4日目には、学べるコンクールとし、準備してきたバリエーションや自由作品、コンテンポラリー、グループダンス等をウクライナの先生方に見ていただきます。
最終日の5日目にはそのバリエーションに対してのアドバイス指導を個人的に受けられます。
4日目と5日目は、パフォーマンスのほか、クラシックのレッスンも行います。最後2日間だけの参加も可能です。
今だからこそ出来る学びの経験をしていただきたいな、と思います。

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ウクライナからのダンサー、講師インタビュー
スベトラーナ・シュリヒター、ネリア・イワノワ、マルガリータ・ドゥシャコワ

――バレエはどのように始めましたか
ネリヤ:母がバレエスタジオを見つけて始めました。バレエは人生で唯一のものになりました。
スベトラーナ:11歳の時に母に連れられて習い始めました。キエフ国立バレエ学校を卒業し、その後リビウ国立歌劇場で働き始めました。まさか自分がダンスを習うことになると思っていなかったし、まさかバレエを習うと思っていませんでしたが母がその機会を与えてくれました。

――淡路についての感想
ネリヤ:美しく、静か。日本についても知ることができ、また島についても知ることができた。
スベェータ:私たちはとても淡路を好きになりました。美しい海はあるし、空気もきれいだし、自然もたくさんある。私たちは日本の文化について学びたいし、写真ではない日本をもっと見たい。
マルガリータ:私は海が大好きなので、アパートからも、劇場からも海が見えることが本当に夢のようです。

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――日本に来るまでの生活はどうでしたか?
ネリヤ&スベトラーナ:日本に来るまでは様々な大変な事がありました。自分たちの劇場で公演をすることが難しくなり、戦争がはじまり、サイレンが鳴り続け、最初はすごく怖かった。バレエの公演はどんどん少なくなっていった。一番恐ろしいことは戦争が始まったこと。
マルガリータ:2月末に娘と2人でウクライナを出国することを決め、旦那はウクライナに残りました。娘と2人で行くあてもなく先ずプラハに行き、そこで知らない方に助けていただき数日過ごし、本当に不安な日々を過ごしました。今でも、家族3人離れ離れで気持ちだけは繋がっています。

――今の気持ち
ネリヤ:私たちは今安全です。現地のウクライナにいる私たちの親族や友人が心配です。
スベトラーナ:人々が死ぬことがなくなり、普通の生活に戻れることを願っています。

――バレリーナとしてこれからどうなりたいですか?
ネリヤ:私たちはまず6月18日、19日の私たちの日本での最初のコンサートで無事に踊りたいです。その後は様々な事を理解し、新しい事にも色々チャレンジしていきたい。長い時間がかかるかもしれないし、とても難しいけれど、できることを願っている。
スベトラーナ:同じ意見です。

――日本で好きなレストランやご飯はありますか?
スベトラーナ:ここは魚がすごくおいしいです。ウクライナにはないような様々な料理があります。私たちにとっては珍しいものが多く興味深いです。慣れなきゃいけないなと思っています。でもどれもおいしいです。
ネリヤ:正直にいうと、スーパーで食材を選ぶ時たくさん学ぶことがあります。ウクライナの食材はないですし、ウクライナでは知られていない食材があり、日本の色々な食材を知れるのは嬉しいです。全部の食材は好きにはなってはないですが(笑)。全く違いますけど、食べてみるとおいしいです。
マルガリータ:お寿司とお米が好きです。

――メッセージをお願いします
スベトラーナ:私たちの公演を気に入っていただけることを願っています。ウクライナの文化を、バレエをお見せしたいと思います。
ネリヤ:バレエを芸術として、ウクライナの文化をお見せ出来れば。見に来ていただけると嬉しいです。
マルガリータ:私は子供が大好きです。私の経験や知識を日本の方々に共有したいです。

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5月29日【人形浄瑠璃×バレエ】
淡路人形座とのコラボレーション「はじめてのクラシック、和と洋」

音楽や、自然など様々なコラボレーションはさせていただきましたが今回ははじめてのチャレンジ、こちらについて少し触れたいと思います。

初めて国指定重要無形民俗文化財にも指定されている淡路人形座浄瑠璃を見たのは昨年でした。
その時、即座に「ここで踊ってみたい、コラボレーションしてみたい」という思いに駆られ、可能性に向けて話しを進め実現しました。
最初は、お互いどのような形になるのかあまり想像できませんでした。
作品や公演の流れを打ち合わせし、後はリハーサルの中で変更や改良を加え、殆ど即興でのパフォーマンスでした。
数少ないリハーサルでしたが可能性に限界は無く、もっとこうしたい、もっとこうすれば良いのではないか、まさに臨場感ある現場でした。
実際、本番が終わってみないとどのようなパフォーマンスになるかは未知の世界でした。
瀕死の白鳥をまず踊り、その後「鷺娘」では雪も降る演出でコラボレーション。
「蝶の道行」では感情加えた踊りで全て生演奏にて上演しました。
3作品とも現場でしかできない演出構成で踊りましたが、人形が心ある人間のように感じられ、本当に語り合っているような、そんな感覚に陥りました。

日本にいながら、海外にいる様な不思議な感覚で毎日を過ごしています。
日々、何が起こるかわからない世界状況ですが、一瞬一瞬を大切に過ごしていきたいと思っております。

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Photograph by Maco

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インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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