今月も、様々な話題をお伝えしたいと思います。

海外のカンパニー、劇場等は現在(8月)夏休みシーズンオフのところが殆どですが、2020-2021年のシーズンがそろそろ始動します。

現在ヨーロッパは、比較的一般的な生活、また舞台活動などにおいても制限が緩やかになっている様です。
バレエ団、劇場等は予定通りシーズンを始めるところが多く無事パフォーマンスできるかどうか、私も見守っているところです。
ヨーロッパ国内では行き来が自由にできるようになりました。
先日お伝えしました、スロバキアのバレエ団では予定通り10月末に『ヌレエフ』の世界初演の新作が上演される予定で進んでいるそうです。
ウラジーミル・マラーホフ氏が出演される予定となっております。またシーズンが始まりましたら、各国の様子などをお伝えしていきたいと思います。

夏は、世界、日本各地で様々なコンクールやフェスティバルが通常なら開催されます。
今年は、新型コロナウィルスの状況の中オンラインで開催されているところも多くあります。

私は、毎年ここ数年はヨーロッパ、ロシアなどのコンクールの審査員を務めてきました。4月に毎年開催されるラトビアのコンクールは来年に延期となり、同じく4月に予定されていたロシアのペルミで開催の『アラベスク』コンクールも11月に延期となりました。
台湾グランプリの審査員も毎年務めてきましたが、今年はオンラインでの審査となりました。
家で1人で審査をすると言う状況は初めてでした。周りに審査員の先生方がいないので、果たして自分が正しく進行できているか心配でした。
家にコンピューター2台、iPad、携帯を準備し自分でメモを取りながら1人ずつ審査していきます。
ライブでの審査でしたので、劇場に居るのと全く同じような感じでした。画像で見る演技は、もちろん生の演技には劣りますが、それでもかなりしっかり細部まで見ることができました。
私の他には、ドイツ、ロシア、その他各国の方々も審査されました。当分続くと思われるこの状況、様々な新しい試みが行われていると感じました。

その他、オンラインで国際的なワークショップも開催されています。
ワガノワバレエ学校のサマーワークショップ、こちらは私が十代の頃からずっと続いているワークショップです。今回は、初めてオンラインでの開催となりました。
直前までワガノワバレエ学校と協議をし、学校の方からオンラインで開催する方向でとお話をされました。これは画期的なことだと思います。300年近く歴史の中で初めての試みでした。
先生方は、ズームを使い、熱血な指導を行ってくださいました。先生方は慣れてくると、少人数でのレッスンのため、しっかり名前も読んでくださって、いろいろなことを伝えてくださいました。
今回特に素晴らしいと思ったのは、教師コースです。
普通ならお忙しい日本の先生方、ご自身のスタジオのレッスンを長くお休みに出来なかったり、遠方から参加することが非常に難しい状況にあると思います。今回はオンラインと言うことで、各参加者が現地で夜に参加していただけるという、ある意味では、不可能だったことが可能になりました。
メソッドをしっかり勉強できる機会というのはなかなかありません。そんな中貴重な機会だったと思います。

ここからは、コラボレーションについて、パフォーマンスについてお伝えします。
私自身、7月、8月は、様々なパフォーマンスに出演させていただく機会がありました。

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私の人生、突然起こる出来事、急に本番(「白鳥の湖」の全幕のハプニング集は多々あります)そんな話が多々あります。
今回は桂 文枝さんの落語と間接的にコラボレーションするというコンセプトのパフォーマンスのお話を、本番当日の2日前にいただきました。
桂さんの落語、その後舞台転換があり、夕日と海の絶景を背景に踊ると言う演出。
本番当日の午後に到着された桂文枝さん、その後すぐ行われたリハーサルを拝見していましたが、プロフェッショナルなお姿に、演技者として大切なことを改めて学びました。
決して妥協せず、ご自身の思いを貫く、素晴らしいリハーサルでした。
私の踊りも客席から見て確認して頂き、結局本番の2時間前に最終的に踊ることが正式に決まりました。
落語とコラボレーションさせていただく事は初めてで、夕日の景色は素晴らしく忘れられない舞台の1つとなりました。
このような機会を可能にして下さった全ての方々に感謝いたします。

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その他、ピアニストとのコラボレーションパフォーマンスにも出演させて頂きました。
本番当日、舞台が始まる2時間前に劇場に到着しました。
照明はこだわりがあり、現場で使えるものを直ぐに確認。演奏してもらいながら、どこでどのような照明にしたいかと言うことをその場で伝え、リハーサルなしでその後直ぐに開演。終わってすぐに撤収。
劇場に到着してから撤収まで全て含めて4時間。通しリハーサル無しの本番となり、踊りはインプロビゼーションでしたが、それでもその時しかできないことを表現出来ればと思いました。
その時限りの空気感、空間、想いを感じながら表現できればと思いながら踊りましたが、全く同じ舞台をもう一度することは無理です。それが生きた舞台、コラボレーションの魅力的なところかと思います。

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その他、感動的な舞台も経験しました。
必ずしも完璧に整った舞台のみが感動するということでは無いことを再確認しました。
たとえ、照明やセットが無くても、その一生懸命な気持ちや思いが伝わったときに、人々の心に届くのだということを。
お教室の先生、生徒たちの思いが伝わり、舞台に参加させていただき自分自身も感動させていただきました。

8月中旬も急な出来事でしたが舞台で踊る機会をいただきました。こんな私ですが、一つ一つ機会があるならば大切にしていきたいと思います。

自然とコラボレーションするプロジェクトも進めて、9月には映像が出来上がる予定です。このような自然を背景に踊るプロジェクトは今後も続けていきたいと思っています。

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コロナの現場の中、様々な舞台などがキャンセルになり、そんな中で開催を可能にしてくださった主催の方々は様々な葛藤があったことと思います。心から感謝の気持ちです。
しかし現場はまだまだ厳しく、この先私たち芸術家が安心して舞台で活動できるか予想はできません。
しかしそんな中でも、前向きに一つ一つ進んでいければと思います。

4月から、オンラインでのレッスンは月曜日に毎週続けています。これは8月の今でも続けていますが、もしかすると家で時間のあるときに体を動かしたい方もいるのではないか、そう思うと今後も続けていきたい気持ちです。
スタジオで大きく動くのとは全く違いますが、それでもバーレッスンは基本ですので、もし今後も需要があれば自分ができることを続けていきたいと思っています。

来月は、また海外の話題も良いのですが様々な話題をお届けしていきます。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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