今回は、以前から振付指導などで携わっているスロバキアのバレエ団の近況や、日本で企画した公演の様子などお伝えしたいと思います。

『One heart 2022』
10月2日、豊中市立文化芸術センター大ホールにて『One heart 2022』を開催いたしました。
想い、願い、愛を込め、温かくパワーあふれるステージにしたいと様々なアイディアを盛り込んだパフォーマンスでした。
ウクライナから来ているネリア・イワノワさん、スヴェトラーナ・シュリヒテルさん、マルガリータ・ドシャコワ先生、カテリーナ・エフチコーワ先生、全国から集まってくれたダンサー方、音楽家、歌手の方々を含め総勢140人以上のステージを企画しました。
妥協できず最後の最後まで変更、改良を重ね続け、それでも直ぐに対応してくださった皆様には感謝しきれません。
世界的バイオリニスト川久保賜紀さんにも急遽出演していただき、「瀕死の白鳥」でコラボレーションしました。
鳥肌が立つ凄いパワーの太鼓の演奏 上田秀一郎さん、エネルギー溢れる和太鼓「鼓淡」とバレエ、コンテの共演はプロジェクトマッピングで映像空間を演出してくださった「プリズム」の皆様のお力も加わり大迫力の作品になりました。
「Trio Mathemata+」のジャズ演奏と蔡 暁強さんのダンスのコラボレーションなど幅広いジャンルでお届けしました。

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今回は「世界の平和」が念頭にありました。
『第九』ハイライトは、「愛」の意味を含め第三楽章の一部分から始まります。
私が1991年最初に留学した年に旧ソビエトが崩壊し、その後様々な経験積んできました。ロシア留学時代のペレストロイカの直後でバレエと向き合いながら、「今日も無事生きて過ごせるように」と願いながら過ごした日々が今の私の土台になり、明日はどうなってるかわからない中、今日を精一杯生きていきたいと思っています。
一人一人が手を取り合い、助け合いながら、勇気を持ち進んでいける世界になればなぁ...と願いを込めてこの曲を選びました。
『第九』は喜びの歌でもあり、ベルリンで暮らしていたなかで一年の締めくくりの大晦日と新年には国立歌劇場などで毎年聞いた曲です。
人生の一年を一つ終えてまた一つ進むという、私の中の伝統的な意味もあります。
生演奏で上演することはやはり肌で感じるその迫力が違うのでできるならば毎回そうしたいと思っています。
今回は合唱やオーケストラ、そしてダンサーの方々120名ほどがベートーベンをお届けしました。今後も作品を通して様々な想いを伝えていくことができればと思っています。
公演では「ウクライナの民族舞踊」も披露しました。
マルガリータ・ドシャコワ先生が振付した『プレスカーチ』は「手拍子」という意味で、ウクライナから来ているダンサー全員、それに 日本人ダンサー6名も共演しました。
ネリアとスべトラーナが創作したネオ・クラシックの作品『More Than Rose』は彼女達の想いが詰まった作品はピアノの生演奏とともにお届けしました。

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今回、最大のチャレンジだったのは、和太鼓とダンスと空間最新映像とのコラボレーションでした。
冒頭は上田秀一郎さんの大太鼓のソロに、月夜の下「強い心と信念を持つ和の女」のイメージのデュオで始まり、続いて倉智太朗さんとパ・ド・ドゥ、蔡 暁強さんと男性2名によるアクロバティックな踊りで第一章をお届けしました。その後、第2章ではコンテンポラリーのダンサーたち5名が炎の舞を踊りました。
第3章ではクラシック・バレリーナ達がトゥシューズで和のコンテを踊りました。
最後に和太鼓演奏者10名も加わりダンサー全員と総勢25名でフィナーレ、20分弱の作品に、プロジェクトマッピングの空間映像の演出が加わり世界観を表現しました。
衣装はアーティスト有月 様の墨絵柄の生地を部分的に用い細部にもこだわりました。
昨年2021年12月は、ウラジーミル・マラーホフさんを迎え開催した『One heart』。中村恩恵さんに振り付けしていただき「アルテア〜源氏物語から〜」や、宝満直也さんの振付で「I'm you」などを上演しました。
日本で、このように大きな公演をプロデュースしていくのは大変難しいですが、できる限り続けていきたいと思っています。
芸術には国境も無く、言語が通じなくても心で伝える事ができると思います。音楽や踊りの力には人々の心を動かす、様々な事を感じていただく力があると思います。その芸術の力で微力でも感動、勇気、喜び、夢、そして明日への希望をお届けする事が出来ればと願います。
https://www.eiarts.art/oneheart2022

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『24時間テレビ』(8月28日18時半 国技館生中継)
YOSHIKIさんとネリアの共演を演出、振り付け指導、衣装などを担当させていただきました。
お話をいただいた時は、本当に私で大丈夫かと思いました。生中継でリハーサルなどもほとんどできない中、その時に出せる最高の場面を想像しながら演出を考え振り付けさせていただきましたが、その場にならないとわからない部分もあり、壮絶な体験でした。自分も踊らせていただき、奇跡としか言えない経験でした。
心よりの感謝申し上げます。

『Souls For Peace』平和祈念公演 4公演(8月24〜27日)
企画、演出、振付させていただきました。
こちらは、淡路島に、新しく建ったテントシアターのこけら落とし公演でした。
ベートーベンの『第九』を生演奏と総勢40名のコーラスと共に上演しました。
ウクライナから避難してきたネリア、スベトラーナ、マルガリータ先生、マルガリータ先生の娘エリナ、カテリーナ先生、それに加えカテリーナ先生の娘アンナさんもトークショーで出演しました。
この公演にも全国からたくさんの素晴らしいダンサーが集まってくださり、平和への願いを込めた温かい公演になりました。
その公演の期間中には、『Step For Your Future学べるコンクール・ワークショップ』を開催しました。(8月26日〜30日)
学んでお互い切磋琢磨して成長して欲しいと言う願いで企画。
全国から沢山の若いバレリーナが集まり励ましあいながら真剣な瞳でレッスンしている姿を見て、このような活動を続けていきたいと心より思いました。

スロバキア便り
コシシェ州立劇場のバレエ団からのレポートです。
10月21日、振付家イリ・ブベニチェクによるコンテンポラリーバレエ「PROCES」の初演がありました。本作品はフランツ・カフカの小説「審判」が元になっており、突然理由を知らされずに逮捕された男 ヨーゼフ・Kが、刑に処されるまでを描いた物語です。

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リハーサルを行うにあたり、振付家イリ・ブベニチェク、彼の奥様で本作品の衣装を手懸けたナディナ・コジョカル、そして2019年に本作品の初演がスウェーデン王立バレエ団で行われた際に主役を踊られたアルセン・メフラビアンが劇場にいらっしゃって、約2ヶ月間ご指導くださりました。
リハーサルでは常に素晴らしい手本を見せてくださり、また細かい手足の通り道や自然な演技などについて、とても丁寧にご指導くださいました。
特に、「演技をするのではなく、その役になる」こと、「過去と未来の失敗を考えて不安になるのではなく、舞台に立っている"今"に集中する」ということの大切さをよく話されていたのが、強く印象に残っています。
主人公であるヨーゼフ・Kと恋に落ちるレーニは、ヨーゼフ・Kが本作中盤で訪れる弁護士の女中であり、ヨーゼフ・Kを誘惑したかと思えば、次のシーンでは別の男性と過ごしているといったような、少し性悪な女性です。
レーニの衣装には仕掛けがあり、スカートの前側の切れ込みと腕がゴムで繋がっていて、手を広げるとスカートが開く仕組みになっています。手を広げスカートを開く仕草が、男性を誘惑する様子を表しており、とても斬新なアイデアだと思いました。
作中ダンサーがセリフを話したり、笑ったり、叫んだり、歌ったりと見所が多く、客席からは時々笑い声も聞こえてきました。原作は難しい内容でありながら、とても楽しめる作品となっており、お客様が大変気に入ってくださったのが嬉しく思います。(レポート田中雛羽)
Choregraphy: Jiří Bubeníček
Costumes: Nadina Cojocaru
Stage design: Otto Bubeníček
Photo: Joseph Marčinský

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11月「ドン・キホーテ」ハイライト公演の企画から演出、構成、振付を担当しました。
今、ウクライナから来ているネリア、スベトラーナ、マルガリータ先生、カテリーナ先生が総出演。
それに加えて、オーディションに参加してキューピットで出演してくれている方々など全国からダンサー、そして「Awaji world ballet academy 」に通っている生徒など子役たちも出演しています。
今回のコンセプトは、初心者や子供たちにもわかりやすく伝えるバレエ。
まず冒頭に、人物紹介やマイムのレクチャーを行い、3時間ほどある作品を1時間にまとめ披露しました。
会場は、8月24日にオープンした、淡路島のテントシアター。
その会場で、できる限りの演出を仕掛けました。プロジェクションマッピングで映像を出したり、観客席側とステージの両方を演出として舞台に使用したりと試行錯誤の日々が続きました。
観客の方々には、公演を見に来るだけではなく質問コーナートークショーもご用意しました。そして来ていただき、レッスンを受け学ぶことができればより良いなと思い、公演前にワークショップも企画しました。
バレエを習っている子供達から初心者でも参加できる大人の方々まで、幅広い方々にレッスンも受けていただき充実した1日になってほしいと言う願いから、、、ウクライナから来ていただいている先生方による本格的なレッスンを受けられます。
https://www.awajiballet.com/performance

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今回主演キトリは、ウクライナから来ているネリアとスベトラーナが日替わりで踊ります。
私は、今回メルセデスと街の踊り子として出演もしています。

これからも、身近に感じていただけるわかりやすい作品と、本場の真髄を伝えられるようなバレエ、そして音楽、映像、バレエなどあらゆるジャンルを交えたパフォーマンスなどをお届けして行けたらと思います。

また来月、様々な舞台、ヨーロッパからの便りなどお伝えしたいと思います。

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インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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