世界は、ウクライナで起こっている事、世界情勢により激変してしまいました。

各地でバレエ団を自ら離れるダンサーも後を立たず、ダンサーだけではなく音楽家を含め辞任や移籍、公演のキャンセルが相次ぎ、世界状況がここまで芸術活動にまで及ぶとは思っていませんでした。

思い起こせば1991年の春、初めて行った海外が旧ソビエト連邦の第2の都市、当時のレニングラードでした。
当時13歳、ワガノワ・バレエ・アカデミーへの短期留学でした。
その当時はウクライナをはじめ、現ジョージア、カザフスタン、ラトビア、リトアニアなども旧ソ連でした。
到着したのは暗かったモスクワのシェレメチボ空港。寝台列車赤い矢号に乗り、向かったレニングラードで初めて見た夢の様な街並みが今でも目に焼きついています。
その時、心に矢が刺さったような衝撃を受けました。
広がる美しい景色は壮大で、幼な心にもバレエを続けるならここで学ばなければ、と決心してから30年以上が過ぎました。
1993年、モスクワのボリショイ・バレエ学校に留学した直後に起こった10月政変の際には戦車をこの目で見たり、ペレストロイカ後の変化して行くロシアでモスクワ ダンチェンコ音楽劇場バレエ団時代も含め4年弱過ごしました。
1993年から97年までロシアで経験した事は、今の自分の土台なっており、今の現状に本当にいてもたってもいられない気持ちです。

IMG_5287.JPG

ガラ公演にて

ロシアを離れた後も、ドイツ、アメリカではバレエ団に所属し踊ってきました。そしてヨーロッパ各地、アジア諸国、キューバ、旧ソ連の国々で踊り、活動してきました。
ウクライナでは、2013年にドネツクでのガラ・パフォーマンスに出演しました。
キーウは、2014年以降毎年数回訪れていました。
2014年にはウラジーミル・マラーホフ版「仮面舞踏会」の振付アシスタントとして当時の呼び方で″キエフ国立バレエ学校"を訪れました。
翌年には、ウラジーミル・マラーホフ振付演出「ラ・ペリ」を振付指導し、2016年2月には「パキータ」も振付指導させていただきました。
2018年11月、ウクライナ各地で「ウラジーミル・マラーホフと世界のスターたち」と題するガラ・パフォーマンスが開催されました。
まず11月22日は黒海の近くにあるオデッサ国立劇場で、そして11月24日はキエフ国立歌劇場でのパフォーマンスでした。
その時に、その他の地方でもパフォーマンスが予定されていましたが、内戦が起こっており、パフォーマンスがキャンセルになった事実もあります。
首都キーウから列車で7時間かけて向かったオデッサ、当時パフォーマンスの観客は、反応が良く、一つ一つの作品に対して大きな拍手と歓声が沸き起こりました。
劇場は古い歴史のある建物で、中に入るだけでも別世界にいるようでした。

IMG_5286.JPG

ドネツクのガラ

IMG_8628.JPG

そのオデッサも今は、、、心が痛みます。
11月24日はキエフ国立劇場でのパフォーマンスで、その当時のことも昨日のように思い出します。
当時存在したドネツクのバレエ団がフランスで公演した時には、主役の怪我のため、急遽 代役の打診された当日に飛行機でフランスに飛び、翌日通し稽古無しで1日2公演を主演した事もあります。
ウクライナ、ロシア、そしてカザフスタン、ジョージア、ラトビア、リトアニア、クロアチアなど本当にご縁があり、ずっと関わってきた国々です。
一つ一つの経験、その時の思い、関わった方々のことを思うと何か自分にできる事は無いかと思うばかり。
世界各地で踊ってきましたが、踊りに国境を感じた事はありませんでした。
しかし今、悲しい状況を目の当たりにしています。
各国で芸術文化の立ち位置や価値観は異なり、バレエではメソッドなども異なります。
しかしアーティストは、アートを通して世界の人々の架け橋となり、様々な文化や歴史などを認め、心一つに平和的解決に貢献する事が出来ればと思います。
今、この思いを実現すべく進めていることがあります。
微力ながらも実現できるよう一歩一歩進んでいきたいと思います。

現在、ウクライナをはじめ世界状況の中で厳しい環境の中にいらっしゃる方々のために、日本へ来ていただけるよう動いています。
将来に向けての壮大な夢もあります。それに向けて一歩一歩進んでいます。

日本で暫く活動したいという厳しい環境の中にいるウクライナの方々、またこの状況で行き場を失った方々に、生きがいを持って過ごしていただけるようバレエや芸術のプラットホームを作っていき、将来はそんな方々や同じ想いを共有する方々と素敵なパフォーマンスをご一緒できるようなこともしていきます、、、。
若い世代のジュニアのためのプラットホームも作りたい、、、手がけていきます。

1日を無事に過ごせる事に心から感謝し私に出来る事を続けて行きます。

IMG_5285.JPG

キエフ国立バレエ学校

IMG_6947.JPG

IMG_6843.JPG

IMG_6907.jpg

IMG_0319.JPG

IMG_6884.JPG

IMG_6897.JPG

IMG_8377.JPG

IMG_8533.JPG

IMG_0169.JPG

インタビュー & コラム

hariyama.jpg

針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

2018emi_book.jpg

『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

ページの先頭へ戻る