今月のヨーロッパの情報、『ヌレエフ』のオンライン配信等について触れたいと思います。

1月22日(金)、日本時間午前4時からの配信でしたが、「ヌレエフ」のオンライン配信を見ました。
この配信の映像は2020年12月に撮影されました。

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Photo:Joseph Marčinskský

サイトがスロバキア語のみでわかりにくかったですが、チケットはオンライン上で10ユーロで購入しました。スロバキア語を想像しながら、入力するとすんなりと無事に視聴することができました。
「ヌレエフ」は、スロバキアのコシシェ州立劇場で昨年世界初演される予定でしたが、コロナ禍の影響で延期になっています。現在のところ、3月にもう一度撮影をし、実際のパフォーマンスは3月中には公演できれば、という方向で進めているそうです。
本当に世界中日々、状況が変わる毎日で大変な状況です。

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Photo:Joseph Marčinskský

<キャスト>
演出、振付:Ondrej Šoth
主演:Vladimir Malakhov

オンライン配信を見てから、主演のウラジーミル・マラーホフ氏にお話を聞くことができました。
延期が続き、もう半年以上リハーサルを続けている状態だそうですが、やはりこのコロナ禍の状況の中、劇場でリハーサルができる環境にあるのは本当に救われる、とおっしゃっていました。
配信映像は、完成した作品かと思った程素晴らしく仕上がっていました。
しかし、マラーホフ氏が、80%位仕上がった状態でまだ完成ではないとおっしゃっていましたので、どのような展開になるか楽しみです。
主演のマラーホフ氏は、タイトルロールのヌレエフを演じます。
作品は、ヌレエフが回想にふける場面が、コールドバレエやソリストたちの踊りで表現され、彼自身はそれに対してリアクションしたり、踊ったりしながら物語が進んでいきます。
途中で、ヌレエフが「バヤデルカ」のソロルを踊ったシーン、ジゼルのアルブレヒトを踊ったシーンなどを追憶する場面もあります。
この場面のみがクラシックバレエを見せる場面、その他はコンテンポラリー、ネオクラシックの踊りが主体です。

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Photo:Joseph Marčinskský

パートナー役としては、若かりしマーゴ・フォンテイン、歳を重ねたフォンテイン等が登場します。
マーゴとのデュエット、男性3人によるパ・ド・ドゥなども見ごたえがありました。
マラーホフ氏は感情表現が素晴らしく、映像で見ていても気持ちがひしひしと伝わってきました。
演出、構成は次から次へと新しい場面、奇想天外な発想で、2時間があっというまに過ぎました。
印象に残るシーンが多く、照明や衣装もオリジナルでユニーク、実際に見てみたい作品です。

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Photo:Joseph Marčinskský

この1年間、芸術や文化のあり方が大きく変わりました。
海外のリハーサル、パフォーマンスなどがライブで映像で見れるようになりました。もちろん生で見ることができる日が早く戻ることを願いますが、自宅から雰囲気を感じることができることも素晴らしいと思った瞬間でした。
バレエ団の状況は、平日は通常通りレッスン、リハーサルを行っていますが、スロバキアの国自体はロックダウン中であるため、働く為に陰性証明書が必要です。バレエ団員も定期的に検査を受け、陰性証明書を発行してもらった上で働いています。週末の土曜、日曜日は劇場出入り禁止となっています。
劇場自体お客様を入れての公演がいつ可能になるかは未定で、引き続きオンラインで配信の為の作品のリハーサル等を行っています。

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Photo:Joseph Marčinskský

海外レポート

ブルガリア
State Opera Ruse では月に1回ペースで1月より公演があり、2月末は「眠れる森の美女」の公演を予定しています。
観客は、収容を30%にして上演しています。
カンパニーでは換気をこまめにしながら、毎日クラスとリハーサルをしています。
公演は今のところマスクの着用をせずに行っています。
街では今月から少し規制が緩まり、学校の授業が対面式で行われたり、ショッピングモールが営業を始めました。

ドイツ
ベルリン国立バレエ学校より

1月中はロックダウンのため学校は休みでしたが、最終学年だけ1番大きいスタジオでレッスンが行われ、卒業試験のためのバリエーションや、パ・ド・ドゥのリハーサルなどを練習していたそうです。
学科の授業は全てリモートで行われています(2月上旬現在)。
今後も、政府からの指示に基づき状況は変わっていくと思われます。

ベルリン国立バレエ団から
2月上旬現在、カンパニーのレッスンは参加自由制度になっています。
また、子どもがいたり直接クラスに来るのが難しいダンサーのために、朝のクラスはZoomでも行なわれています。
リハーサルは、今は新しいクリエーションのみとなっています。それも人数と時間を考えて配分されており、またリハーサルに参加するダンサーはコロナのテストを週2回行っています。
パフォーマンスはロックダウンのレベルによって変わってくる様で、もしイースター後の3月、もしくは4月からの上演許可がおりたら、2月の下旬頃からリハーサルを始め、公演するそうです。
もしロックダウンが長引き、許可が下りない場合は、公演は5月まで延長されると思います。
世界各国、先行きが見えない中、難しい状況が続きます。

早く、劇場でのびのびと踊れる日が戻ってきますように。

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私自身、初めて見る方にもわかりやすい作品第二弾に取り掛かっております。
1作目は、『白鳥の湖』。
2020年11月、2021年、1月と2月にダイジェスト版を19回上演させて頂きました。
2作目は、『眠れる森の美女』です。「白鳥」に引き続き、構成演出振付を担当しています。
いろいろな方向性から、よりたくさんの方々に踊りの面白さ、魅力を伝えつつ、ワクワクするようなプロジェクトも立ち上げていきたいと思っています。

1月の「ニューイヤー祝祭コンサート」では、オーケストラとともに舞台に上がり、生の音楽を肌で感じながら踊りました。
音楽、芸術、文化の持てる力を改めていろいろな方々に伝えたいと感じました。
オペラ『トスカ』との初コラボレーションにもチャレンジしました。
新たな様々な発見があり、今後に活かしていきたいと思っているところです。
今後も、様々な分野とのコラボレーションプロジェクトも続けていきたいと思います。

3月13日には、豊中市文化芸術センターにて一般市民も参加の既存の舞台ではなく、ここでしかできない創作舞台。
バレエ・ダンス・パントマイム...。何が出てくるか、どんな表現になるか。
ワークショップ受講者の長所を伸ばして表現する喜びを味わう。個性が光るオンリーワンの舞台へ・・にもチャレンジしております。今回4回目となります。

【With Love From Malakhov】
2021年9月12日(日)に上演させて頂きます。
公演の出演者・登録メンバーオーディションは、5月16日(日)にオーディションを行います。
マラーホフさん本人もリモートにて審査に参加される予定です。
また状況に応じてオンラインでの参加が可能にできるようにも進めております。
詳細は、近日中に発表になります。
www.eiarts.art

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また、自由に海外と行き来し、大きな劇場で、満員の方々の前でパフォーマンスできる日が来ることを願いながら・・。
今は日本で様々のプロジェクト、今出来ること、勉強を続けていきたいと思います。
また次回も様々な方向からレポートしたいと思います。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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