この3年間何度延期しただろうか・・・

この3年間何度延期しただろうか・・・。
だけどこの状況ではマラーホフさんを招聘するわけにはいかない・・・。

オリンピックも無観客になった2021年の夏、9月に予定していた公演『With love from Malakhov 』も2022年1月に再延期すると決断せざるを得ませんでした。
10月ごろ、コロナの状況が少し落ち着き、14日間隔離から10日間になるという知らせを受けました。
その知らせを聞いて、12月に新たにマラーホフさんを中心に『One heart』公演を開催する決断をしました。
即実行、すぐに日程調整やプログラム、出演者との調整など、携帯電話も24時間対応状態でした。
公演は豊中市立文化芸術センターと、コロナ禍の期間自粛していた際に魅了された伊豆に感謝も込め、2箇所で実施することにしました。
以前から、何か一緒にできると良いですねとお話ししていた、中村恩恵さん、宝満直也さんに直ぐに連絡をとり、新作を作っていただけることになりました。
ずっと取り組みたかった「和」とのコラボレーションでは和太鼓とダンスの作品をお願いしました。
空間映像とのコラボレーションも演出に加える事にし、早速テスト実験のため東京に通いました。
音楽は私にとってかけがえのないもの、生演奏にこだわり豊中ではオーケストラ、伊豆では世界で活躍する音楽家の皆様にご一緒していただけることになりました。

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Photography by Maco

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Photography by Maco

そんな中、まさにマラーホフさん出発の日、24時以降に出発する飛行機以降外国人入国禁止のニュースを見て心臓が止まりそうになりました。まさに1時間半前のギリギリのヨーロッパ出国、奇跡の入国を果たしてくださりました。
リハーサルは、非常に大変でした。
短いリハーサル期間の中で2つの世界初演作品を仕上げなくてはならなく、振付は限られた決められた時間の中で行わざるを得ませんでした。
マラーホフさんが教えてくださる『白鳥の湖』は、後々に伝え続けていかなければならない経験となりました。
リハーサルは絶対に妥協は許されない、ある意味厳しいものでした。
一つ一つの動きに意味があり、それを実際に見せて伝えてくださりました。
そして一人で踊るのではなく、パートナーと呼吸を感じ、信頼して踊ることの大切さを改めて感じました。
今までやってきた踊り方と変えることは、私にとってはチャレンジの日々でした。いちど身体に身に付いたものが自然にそのまま出てしまうからです。新しく覚えるのも大変ですが、今までのことを直すのはもっと大変でした。
12月16日の「One heart 」
その一つ一つが勉強、大きな経験となりました。舞台、そこまでたどり着けたことが本当に奇跡だと思いました。
すべての方々のサポートがなくては、この日を迎えることができませんでした。皆さん本当に助けて頂き、どれだけの方に感謝してもしきれません。

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Photography by Maco

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Photography by Maco

無事に16日を終えて、次は26日の本番に向けて、そして1月19日の本番に向けてリハーサルが続きました。
12月26日の伊豆でのパフォーマンスは踊りの演目は殆ど同じだったのですが、ソロの演奏も加わり、構成など豊中とは全く違うプログラムになりました。
伊豆の音楽家の方は全員初めて共演させて頂く方々でした。楽譜の編曲もプロの方にお願いし、演奏家の方々とのやりとりなどは父にも協力してもらいました。しかし現場に行かないとわからない部分がほとんどでした。
伊豆公演では、豊中公演に加えて『I'm you』を世界初演しました(宝満直也さん振付)。
マラーホフさんが「この作品はその時によって表現が全く変わる、その時を生きている作品だ」とおっしゃっていましたが、まさにその通り...舞台上が人生そのものに感じました...。
本当にこの日を迎えられたことがまた信じられず、無事終えられたこと。言葉では言い表せない気持ちでした。

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© ステージグラフィカ

それから一息つく間もなく1月19日の『With love from Malakhov 』のリハーサルが続きました。
2021年を終えて、2022年心新たに、と行きたいところでしたがその余裕はありませんでした。
1月19日は、『Dream Fantasy』マラーホフ新作(世界初演)、『白鳥の湖』より2幕、3幕ハイライト、『I'm you』宝満直也振付、『パキータ』マラーホフ版と言うプログラムでした。

『白鳥の湖』のハイライトはジュニア含め75人のダンサーの皆様とのリハーサル。そして世界初演となる『Dream Fantasy』を仕上げるべく日々クリエーション。衣装の事から背景の映像の事まで全てをコーディネートしなければなりませんでした。
今回、マラーホフさんは『白鳥の湖』から2幕、3幕のジークフリード王子を踊ってくださいました。
表現すること、音楽との対話、テクニックではない何かでお客様に心を伝えること、など若いダンサーの皆さんにはマラーホフさんと同じステージに立ち、リハーサルし、様々な事を感じ吸収して欲しい、そしてまたそれを後世に伝えて欲しいという思いがありました。
10代のジュニアの方々も出演していただきたいという思いがあり、そのために3幕の黒鳥の最後のシーンも加えました。そこに一緒に立って欲しかったのです。
マラーホフさんの迫真の表情を間近に見て何かを得てくれていたら嬉しいです。
そして今回『白鳥の湖』の背景では、″XR映像"(現実と非現実を掛け合わせた最先端映像技術)を作成する事にも初チャレンジしました。マラーホフさんも白鳥が飛び立つ映像などにはとてもこだわり演出に加わってくださいました。
私自身はマラーホフさんと『白鳥の湖』2幕のオデット、3幕の黒鳥を踊らせていただくにあたり、一つ一つ丁寧に見せて作り上げていくリハーサルの中で、クラッシックの本質の大切さを再確認しました。

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© ステージグラフィカ

世界初演となる『Dream Fantasy』は、全国からオーディションで選ばれたダンサーと一から作品を創りました。
リハーサル過程は一瞬一瞬がかけがえ無い時間でした。5年以上前から新作を実現させたい想いがあり、それに向けて一歩一歩進んできました。
ふとマラーホフさんが「この曲で作品を作りたい構想がある」とおっしゃっり、その場で音楽を聞かせてくださったのが最初のきっかけです。
ベルリン国立バレエ団で10年間芸術監督として、かつトップダンサーとして舞台上で輝くオーラ、存在感はそこにいるだけで感じるものがあり、かけがえない沢山の事を教えてくださりました。
そんなマラーホフさんと、これからのダンサーの方々が同じ空間でリハーサルし、舞台で共演する経験を通して全てを感じとってほしいと言う思いがつのり、日本で振付けしていただこうと決心しました。
衣装のデザインは、マラーホフさんが、ベルリン国立バレエ団で「ラ・ペリ」や「シンデレラ」を制作された時にもお世話になり、ウィーンニューイヤーコンサートなどでもデザインを手がけるジョージ・ロイグさんに依頼しました。
何回もズームでミーティングし、できるだけイメージ通りのものを作って頂ける様に最大限努力し、制作は「Hバレエ」にしていただきました。
背景の映像デザインも、ジョージさんとマラーホフさんにして頂き、『Dream Fantasy』のタイトル通り、夢を見るような素敵な作品に仕上がりました。

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© ステージグラフィカ

「パキータ」では、ダンサーが活き活きした踊りを見せてくれ胸が熱くなりました。
コロナ禍で、ジュニアの方々の最初の振り付けはズームで行い、リハーサルの変更も多々ありました。限られた時間の中でのリハーサル、本番直前にはオミクロン株の感染がどんどん広がっていき、誰か陽性になったり濃厚接触者になると公演が開催でききなくなるという心配が出てきました。
それで最終の日曜日、全員集合するリハーサルは、まず開催できることを第一に考え、キャンセルする決断を余儀なくされました。限られたリハーサルで、一人一人が精一杯のことをしてくれました。
当日の直前まで、本当に何が起こるか分からない、何かまた起こるのではないかと思っていました。
無事に幕を閉じることができた事が今も信じられません。
全てにおいて妥協なし。常に全力投球。
それに向き合う姿勢、それら全てが勉強でした。
私は文化や芸術のもつ力を、幅広く一人でも多くの方にお伝えしたい。そしてこれからも様々な活動を通して、夢や希望を持ち続けることの大切さ、素晴らしさをお届けできるよう歩んでいきたいと思っています。
また、今回のような世界的レベルの方から肌で何かを感じ、学べる機会も作って行けたらと思います。
全ての方々に感謝の気持ちを込めて、本当にありがとうございました。

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© ステージグラフィカ

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© ステージグラフィカ

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追記
ローザンヌ国際バレエコンクール
オンラインでライブで見れる時代になりました。
コンクールであっても学びの場であってほしいと常に思います。そして、コンクールであっても人の心に伝えられる踊りをしてほしいなぁ、とも。
ローザンヌ国際バレエコンクールでは、参加したダンサーの皆様が、数日間でみるみるうちに変化していく様子なども見ることが出来素晴らしかったです。
今はもう開催されていませんが、以前私が参加させていただいたことがある「ニューヨーク国際バレエコンクール」では、2週間ダンサーが共に過ごし、学び、リハーサルし同じ演目を踊ると言う趣旨でした。
そこで学んだり、切磋琢磨した事は今でも忘れません。
これから楽しみなダンサーの皆様、一つ一つの経験を大切に次に向かって進んでいってほしいです。

次回は、海外からの情報もお伝えしたいと思っております。
2022年、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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