キャラクターダンス講座 クラシック・バレエとキャラクターダンスその2:タランテラについて

キャラクター・ダンス講座 第4回

クラシック・バレエとキャラクターダンスその2:タランテラについて

タランテラは、陽気ではじけた踊りで、南イタリアから伝わり、古い伝説をもちます。この音楽は2拍子系で、たいていは4分の2拍子ですが、時には12分の8拍子のものもあります。この踊りの始まりは、おそらくディオニソスの豊穣の祭りに端を発するようです。酒の神ディオニソスがメナードという巫女を伴う姿は、春の再来、緑の再生を象徴するものです。

伝説によると、コモリグモ科の、大型の黒クモの一種である、タランチュラコモリグモに噛まれた人は、タランテラを踊ると治ると言われていました。
タランティズムもしくはタランチュリズムというのは、15〜17世紀頃、イタリア南部のタラントという町を中心とする地方で特に猛威を振るった病気です。このことが、タランテラの名前がこの地方に由来するということを、あまりにも普通に信じ込ませることになったのです。蜘蛛に刺された痛みは、強烈な昏睡状態をもたらすとされ、踊りで揺れ、汗をかいて毒を出すことでしか治らないとされていました。反対に、毒蜘蛛に刺されたら、治すためには蜘蛛の気をひいて、蜘蛛がまた跳ぶ間に、蜘蛛の動きを真似なければならないという人もいました。私たちのもとに届いた描写によると、毒蜘蛛に刺された人は、手で歩き、背中は後ろに曲がり、蜘蛛の巣にぶら下がったようにバランスを取りながら、蜘蛛の動きを再び行い、無秩序に跳んでいると書かれています。

YouTube参照 Tarantella "alla carpinese"
民俗舞踊
タランチュラ《alla Carpinese》

YouTube参照 Rare - Tarantella calabrese - cumpari sonati
《Tarentelle calabraise 南イタリア、カラブリア地方のタランチュラ》

YouTube参照 Tarantelle sicilienne - danse populaires europeennees
《Tarentelle Sicilienne 南イタリア、シチリア地方のタランチュラ》

YouTube参照 Tarantelle napolitaine Italie FDP50
《Tarentelle Napolitaine 南イタリア、ナポリ地方のタランチュラ》


一般的に、村の共同体のアンサンブルの踊りでは、毒蜘蛛に刺された病が治る過程において、たいていの場合、一人の女性が前提とされていました。治癒は短い期間しかないと言われていました。というのは、毎年、蜘蛛に刺された日に病気がぶり返すとされていたからです。この慣習は、終日続く結婚式や地方の祭りが長く行われた後に踊られ、1950年代まで続きました。
タランテラが踊られた、これらの民衆の儀式は、20世紀半ば以降、ほとんど姿を消してしまい、今日ではカタルシス(感情の浄化)のひとつの形、社会や家族、宗教の慣習や性的衝動から来る抑圧の解放と見なされています。
確かに、この踊りの、いわゆる治療的性質は、また、17世紀イタリアの一地方で、宗教に最も厳格でない人々に対して、キリスト教以外の異教を起源とする踊りを保存する口実でもあったのです。この伝統は、ありとあらゆる踊りに対する教会の命令が非常に厳しかった地方において、極端に扇情的な振付を合法的なものへと変化させました。これらの大衆の儀式は、20世紀半ばに、ほとんど消えてしまいました。今日では、治療的役割は失われ、タランテラの記憶がとても鮮やかに残り、イタリアの文化遺産の一角を成しています。
タランテラは、ヨーロッパでとりわけ人気があり、1839年、イタリア人の血を引いてはいるものの、パリで生まれ、亡くなった、イタリアのメートル・ド・バレエ、ジャン・コラッリ(・ペラチーニ)のバレエによって、特にフランスで人気を博しました。残念ながら、このバレエに関する映像資料は現存していないようです。多くの作曲家がタランテラを作曲し、偉大な詩人でシャンソン歌手のシャルル・トレネ(2001年没)もこのテーマに想を得たシャンソンを残しています。

YouTube参照 La Tarentelle de Caruso
《カルーソーのタランテラ La Tarentelle de Caruso》シャルル・トレネ Charles Trenet

ドゥミ・キャラクテールのダンス
YouTube参照 Bournonville Tarantella Napoli
『ナポリ』のタランテラ (オーギュスト・ブルノンヴィル振付)

YouTube参照 Parrish Maynard - Grand Tarantella
《グランド・タランテラ》/出演:クラウディア・アルフィエーリ、パリッシュ・メイナード/2010年11月3日

[筆者紹介] ナデジダ・L・ルジーヌ Nadejda L. Loujine

現在、ゲルシー・カークランド・アカデミー(New York)、ゲスト教師。ジョフリー・バレエ・スクール(New York) ゲスト教師。
元パリ・オペラ座バレエ学校教師。
パリ・オペラ座バレエ団、ジャン=ギヨーム・バール振付『泉』のレ・ダンス・コカジエンヌ(コーカサスの踊り)振付助力。テアトル・デュ・ソレイユ 教師および振付アドバイザー アリアーナ・ムーシュキン演出『Les Naufrages du Fol Espoir』。バルセロナ・オペラ座 Grand Teato del Liceo 『スペードの女王』振付・指導。その他、モリエールをはじめ、多数の演劇作品に振付。
Chevalier des Arts et des Lettres受章。
著書 「ダンス・ドゥ・キャラクテール」アンフォラ社
URL www.dansedecaractere.com

コラム/その他

[ライター]
ナデジタ.L. ルジーヌ Text by Nadejda L. LOUJINE
[監修]
今井 美樹 Miki Imai
[訳]
香月 圭 Kei Kazuki

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