キャラクターダンス講座 クラシック・バレエとキャラクターダンス:その1マズルカについて
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キャラクター・ダンス講座 第3回
クラシック・バレエとキャラクターダンス:その1マズルカについて
マズルカ、チャルダッシュ、タランテラ:これら3つの踊りは、バレエにおいて特上の地位を占めています。その本質が民族的な伝統の中に見える3つそれぞれの独特な世界です。ここでは、それらの起源について述べていきます。
多くの振付家や作曲家が、民俗芸能に対して興味を抱いていたことは、よく知られています。まず最初に例を挙げると、バレエ界ではマリウス・プティパやオーギュスト・ブルノンヴィル、カルロ・ブラジス、同様に音楽界でもフレデリック・ショパン、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、ベーラ・バルトーク、ゾルタン・コダリーなどがいます。外国と民族に対するこの愛着には、非常に多くの理由があります。すべてを引き合いに出さずとも、本源はもちろん、民俗芸能の伝統が提供するたくさんのインスピレーションの源である点です。
次に作劇的な理由が来ます。雰囲気や音楽のリズム、世界を変えると、ひとつの同じ雰囲気を扱う退屈さを消し去りながら、伝統的形式主義の図を強調することができます。政治的理由も軽視するべきではありません:外国大使へ敬意を表し、彼らの文化が敬意を持たれている演目へ彼らを招待しなければなりません。これは外交規範の一部を常に成しているのです。
こうして、クラシック・バレエの語彙は、これらの些細な事柄から逃れることなく、民俗舞踊のステップから多くを借用せざるを得なかったのです。以前のこの連載記事中で、ダンス・ドゥ・キャラクテールである民俗舞踊の再解釈が、ヨーロッパのクラシック・バレエの起源であることにふれる機会がありましたが、思い出していただけたでしょうか。
マズルカ
マズルカは、ポーランド起源の踊りです。18世紀に大流行したマズールという、庶民の踊りがその名前の由来となっています。
マズルカのリズムは時とともに進化し、今日では、本質的に3拍子の音楽で構成されています。4つか8つの複数の小節からなる闊達さは、複数のメロディーの弱拍によって始まるものがもっとも多く見られます。
生き生きとして輝きを放つ踊り、マズルカは、様々なステップ、様々なテンポによって衝突やこれ見よがしに誇示することなく、アクセントを変えることができる踊り手の熟練のなかで、優美さが引き出されます。
マズルカは19世紀のヨーロッパのサロンにおいて大流行となりました。しかし、1830年代に、プロシア、オーストリア、ロシア間でポーランドが分割された際、多くのポーランド人が祖国を追われました。彼らは移住の際、踊りの伝統もともに持ち去ったのです。その中にマズルカも含まれていました。
正確にいえば、その豊かさゆえマズルカには、個々の伝統が固有の振付を採用しながら、実に様々な形式があります。したがって、民族舞踊のいくつかの集団がしばしば信じているのとは反対に、マズルカは、特定の地域の伝統を代表するものではなく、それを踊る人々の社会的属性を考慮する場合しか、庶民的とはいえません。
民俗舞踊
YouTube参照 Danse Folkolorique Provencale(La Mazurka)
プロヴァンス地方のマズルカ(南フランスの踊り)
ある階級の人々についての、別の階級の人々の相互作用の意味を解明するのは、いつもながら非常に困難です。貴族階級が庶民のダンスに影響を与えたのか、それとも《庶民》が上流階級のように踊りたいと思ったのでしょうか?
それに反して明白なのは、フレデリック・ショパンの作品によってマズルカが名声を浴び、上流階級が踊るようになったことでした。この作曲家は、何よりもまず、作品に祖国愛を表現し、母国のマズルカのテーマをサロンに売り込みました。
「機嫌がいいショパンは、自分の席を立ち、ピアノの前に腰かけて(というのは、彼の才能に敬意を払って、人々は舞踊曲を弾いてとは頼まなかったので)、陽気さの手綱を緩めた。その時、たくさんの即興のマズルカが彼の指から山ほど繰り出されたが、これらの中で翌日、楽譜に書き留められるのは3曲だけだ。」(オスカル・コルベルク)
この舞踊曲の動きは無数にあり、可能な組み合わせの数が困難さをさらに増しています。、元々は、動きの順序やステップのつながりはおろか、何も決まっていませんでした。さらに、かつては、各自ができる演技の中では、即興が主要な位置を占めていたのです。
アンリ・セラリウスが1847年の彼の著作"La danse des salon(サロンの踊り)"の中でこう述べています:
「マズルカは、われわれがポーランド人のように踊るために、フランスで十分に知られてはいない。すなわち、練習をしないのだ...‥要するに、盛大に発表されたマズルカは不器用な踊り手によって総崩れに終わってしまうことがよくある...‥」
ポーランド併合以後、ロシアで非常に人気となったマズルカは、スラヴの魂に語りかけると見なされ、こうして主要なダンス・ドゥ・キャラクテールのひとつとなったということが言えます。
正確には、ジェドロズィアン王子が、マリー・タリオーニのトウシューズの中のシャンパンを飲むくだりのあるマズルカを、彼女が見事に踊って以後と言えるでしょう。このマズルカは、女性の靴の中のこの飲み物を飲むという、妖精の世界で広く行われているしきたりを広めることになりました。
マズルカは、また、女性がパートナーを選ぶ舞踏会の最後に踊られる、フランスの有名な踊り、コティヨンでよく用いられるために、恋愛の踊りという評判も獲得しました。
レオ・ドリーブは1870年『コッペリア』で、そしてその後何回もバレエにおいて、マズルカを採用した最初の作曲家でありましょう。チャイコフスキーは『眠れる森の美女』と同様に、『白鳥の湖』でもマズルカを取り入れました。
ドゥミ・キャラクテールの踊り
YouTube参照 «Mazurka» de Coppélia, Bolshoi Ballet
ボリショイ・バレエ『コッペリア』より《マズルカ》
ミンクスは、『パキータ』で子どもたちのマズルカを書きました。また別の例では、エドゥアール・ラロの楽譜によるセルジュ・リファールのバレエ作品『白の組曲』でも、マズルカが見られます。グリンカも『ライモンダ』で素晴らしいマズルカを作曲しています。
ドゥミ・キャラクテールの踊り
YouTube参照 « Mazurka des enfants » de Paquita, Bolshoi Ballet
ボリショイ・バレエ『パキータ』より 《子どもたちによるマズルカ》
ジャン=ギヨーム・バールは、2012年に創作したバレエ『La source(泉)』の振付で、ドリーブとミンクスの曲を再び取り上げ、ニュアンスに富み、さらに美しい作品というに値するマズルカを作りました。
マズルカが観客に好まれるのは、貴族の世界へと誘う古典主義的な高雅さを保ちつつも、まだ消えるには遠い過去の遺風を感じさせるからです。
ダンス・ドゥ・キャラクテール
YouTube参照 Mazurka Ballet school Vancouver Canada
2009年6月5日カナダ、ヴァンクーヴァー随一のバレエ学校パシフィック・ダンスアーツの生徒達による《マズルカ》
[筆者紹介] ナデジダ・L・ルジーヌ Nadejda L. Loujine
現在、ゲルシー・カークランド・アカデミー(New York)、ゲスト教師。ジョフリー・バレエ・スクール(New York) ゲスト教師。
元パリ・オペラ座バレエ学校教師。
パリ・オペラ座バレエ団、ジャン=ギヨーム・バール振付『泉』のレ・ダンス・コカジエンヌ(コーカサスの踊り)振付助力。テアトル・デュ・ソレイユ 教師および振付アドバイザー アリアーナ・ムーシュキン演出『Les Naufrages du Fol Espoir』。バルセロナ・オペラ座 Grand Teato del Liceo 『スペードの女王』振付・指導。その他、モリエールをはじめ、多数の演劇作品に振付。
Chevalier des Arts et des Lettres受章。
著書 「ダンス・ドゥ・キャラクテール」アンフォラ社
URL www.dansedecaractere.com
コラム/その他
- [ライター]
- ナデジタ.L. ルジーヌ Text by Nadejda L. LOUJINE
- [監修]
- 今井 美樹 Miki Imai
- [訳]
- 香月 圭 Kei Kazuki
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