バレエの栄光の歴史がきらめく「薄井憲二バレエ・コレクション」の逸品を訪ねて その11
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コラム/バレエの栄光の歴史がきらめく「薄井憲二バレエ・コレクション」の逸品を訪ねて
森 瑠依子
<ドン・キホーテ 2>
前回に続き、薄井憲二バレエ・コレクションから今年生誕200周年を迎えたマリウス・プティパ(1818-1910)の代表作のひとつ『ドン・キホーテ』にまつわる品々を取り上げる。今回はこの作品で人気を博したスターたちのポストカード、舞台写真をご紹介しよう。
1.クセーニヤ・マクレツォワ(1890-1974)のポストカード(1914年)
マクレツォワはボリショイ・バレエ、マリインスキー・バレエ、バレエ・リュス、ミハイル・モルドキンのカンパニーなど、様々なバレエ団に参加し、テクニックにも感情表現にもすぐれたバレリーナとして活躍した。キトリが当たり役。1924年に大阪松竹楽劇部に招かれ、『火の鳥』、『白鳥の湖』抜粋などを大阪、東京などで上演して好評を博している(PC-B-096-01)
2.ヴィクトリナ・クリーゲル(1893-1978)のポストカード(1916年)
クリーゲルは高い技術力と演劇性を誇り、1910年よりボリショイ・バレエで40年近く活躍。アンナ・パヴロワやモルドキンのカンパニーにも参加した。1945年にはザハーロフ振付『シンデレラ』で、シンデレラの義母を初演し、高く評価されている。キトリは当たり役のひとつで、当コレクションにも彼女の美しいポーズのポストカードが多数存在する。(PC-B-076-01)
3.ナターリヤ・ドゥジンスカヤ(1912-2003)とセミョーン・カプラン(1911-1983)のポストカード
ともに20世紀中頃のキーロフ・バレエのスター。ドゥジンスカヤは古典作品の他、『ラウレンシア』『シンデレラ』といった新作の主役も務め、1960年代初頭まで看板スターとして活躍した。カプランは特に『ラ・バヤデール』のソロルで絶賛され、引退後はワガーノワ舞踊学校の指導者、キーロフ・バレエのリハーサル監督として人望を集め、すぐれたダンサーたちを育てた。(PC-GD-006)
4.マイヤ・プリセツカヤ(1925-2015)のサイン入りポストカード
プリセツカヤは20世紀を代表する世界的なスターバレリーナのひとり。ボリショイ・バレエでオデット/オディール、キトリ、カルメンなどを十八番としたのに加え、モーリス・ベジャールの『イザドラ』、ローラン・プティの『薔薇の死』など、西側の一流振付家との名作も残した。パヴロワが愛した『瀕死の白鳥』は、プリセツカヤの代名詞でもある。薄井コレクションには彼女のサイン入りのポストカードが複数収蔵されている。(PC-B-119-03ws)
5.ウラジーミル・ワシーリエフ(1940-)のポストカード(1963年)
ワシーリエフは20世紀を代表する世界的な男性スターのひとりで、超絶技巧の持ち主として有名。ボリショイ・バレエで古典および『スパルタクス』など数々の新作で絶賛されたのに加え、プリセツカヤ同様にベジャールの『ペトルーシュカ』『ロミオとジュリエット』、プティの『嘆きの天使』などに出演し、世界的に活躍した。『ドン・キホーテ』はワシーリエフの華麗なテクニックが発揮された代表作のひとつ。(PC-B-165, Anthony Crickmay撮影)
6. ミハイル・バリシニコフ(1948-)のサイン入り写真
バリシニコフは映画『愛と喝采の日々』『ホワイトナイツ 白夜』や人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』への出演などバレエ界にとどまらない活動を繰り広げ、世界的に知られる大スター。キーロフ・バレエ在団中の1974年に亡命し、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)を中心に世界で活躍した。クラシック・バレエのみならず、モダンダンスにも積極的に取り組み、レパートリーを広げている。『ドン・キホーテ』は彼の人気レパートリーのひとつで、後に芸術監督も務めたABTでは、自ら振付けた版に主演した。(PH-D-025-02ws)
7.アルティナイ・アスィルムラートワ(1961-)とファルフ・ルジマートフ(1963-)の舞台写真
アスィルムラートワとルジマートフは1980年代のキーロフ・バレエの名コンビ。ともにアジア系のテクニシャンで、ABT、英国ロイヤル・バレエなどにも客演して世界的に人気を集めた。アスィルムラートワは引退後、ワガーノワ・バレエ・アカデミーの芸術監督を務め、現在は母国カザフスタンのバレエ団、バレエ学校で指導にあたっている。ルジマートフは現役のままミハイロフスキー劇場バレエの芸術監督を務め、今秋故郷のウズベキスタンで国立バレエ団の芸術監督に就任した。(PH-C-17-10)
8.薄井憲二(1924-2017)の舞台写真
昨年12月24日に93歳で惜しくも逝去された当コレクションのオーナー、薄井氏の若き日の舞台姿。1950年代。日本での『ドン・キホーテ』上演は、1952年に来日したソニア・アロワと小牧正英によるグラン・パ・ド・ドゥ初演で始まり、翌年のミア・スラヴェンスカとフレデリック・フランクリン、1957年ボリショイ・バレエ初来日公演のオリガ・レペシンスカヤとウラジーミル・プレオブラジェンスキーと、世界的なスターたちがグラン・パ・ド・ドゥを披露している。全幕版の日本初演は1965年。ゴールスキー版に基づくスラミフ・メッセレルと谷桃子の改訂振付で、谷桃子バレエ団が行っている。
写真提供:兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクション
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