イギリスでの生活が始まりました!
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- コラム 友谷真実
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イギリスでの生活が始まりました! というか1998年から2009年までの11年間住んでいたので「再開」と言ったほうがしっくりくるかもしれませんね。今は趣味のアルゼンチンタンゴや身体のためのピラティスなど、通いやすい場所を探しているところです。50代になると、周りが20代前後のダンサーばかりで「場違いかな?」と少し気後れすることもありますが、友人が誘ってくれたクラスに今度挑戦してみようと思います。実はプロであっても、新しいダンスクラスに初めて行く時はいつもドキドキして怖いもの。でもその一歩がまた新しい何かに繋がると信じて!
先日1999年から2000年のUKツアー、そしてドミニオン・シアターで一緒に『SWAN LAKE』を踊った仲間のマチリアスと、彼のパートナーのニールと一緒にドキュメンタリー映画の試写会へ行ってきました。
久しぶりにトラファルガー・スクエアを通り抜けてICA LONDONへ向かいました。上映されたのは「Listening Pitch 2026」という企画から生まれた4つの短いドキュメンタリー。"映画における「音」に光をあてる"というテーマの作品たちです。

ICA Londonがある建物

ドキュメンタリー映画試写会
一つ目は、ロベルト・ドゥケ監督の『ボイス・シフト(Voice Shift)』。自らの性自認にふさわしい声を模索するトランス・フェムの人々を追った作品です。どうしても男性的な低い声になってしまうため、ボイスコーチについて発声を習うのですが、単なるテクニックの話ではなく「なぜ声を変えたいのか」というアイデンティティや困難に立ち向かう姿が本当に力強かった。私はこの映画を見て「声を変えなければ女性として社会的に認められない」という切実な状況があることを初めて知りました。空港での不当な尋問など、彼らが受けている差別を耳にするのは苦しかったけれど、こうして映画で「声」を出して世界に知ってもらうことは、とても勇気のいる表現なのだと感じます。
二つ目は、ジェイド・アン・ジャックマン監督の『スピード・オブ・サウンド(Speed of Sound)』。2022年北京冬季パラリンピックの金メダリスト、カリーナ・エドリンガーの「音」の肖像です。幼い頃に視力わずか2パーセントになっても「アドレナリン・ジャンキー」だという彼女。時速120キロを超えるスキーのスピードの中、ガイドの声と背後を吹き抜ける風の疾走感だけを信頼して思い切り滑る姿は、見ていて本当に気持ちが良かったです。

『ボイス・シフト(Voice Shift)』

『スピード・オブ・サウンド(Speed of Sound)』
三つ目は、オルネラ・ムトニ監督の『言えないこと(The Things We Don't Say)』。ルワンダ大虐殺から30年。若い世代が家族の秘密やトラウマをセラピストと共に紐解き、負の連鎖を断ち切ろうとする、とても重厚で意義深い作品でした。英語字幕が早くて追いつけない部分もありましたが、後でニールに詳しく説明してもらい、すべてを深く理解できました。今まで語られなかった「声」が解き放たれる瞬間。見終わった後もずっと考え続けたくなる、誰かと話したくなる作品でした。
最後は、メーガン・マクドノー監督の『オールド・レズビアンズ(Old Lesbians)』。元教師のアーデンさんが全米を回り、社会から「見えない存在」とされてきた数百人の女性たちのオーラル・ヒストリーを記録したものです。これがとてもユーモアたっぷり! 「初めて自分が女性に興味があると気づいたのは、自由の女神を見た時よ!」「娘にカミングアウトしたら『私も!』とお互いレズビアンだと知ったの」このようなエピソードが、彼女たちの豊かな声とアニメーションに乗ってテンポよく進みます。会場も笑いが絶えず、彼女たちの美しさと、その裏にある無視されてきた事実をユーモアで包み込みながら考えさせてくれました。

『言えないこと(The Things We Don't Say)』

『オールド・レズビアンズ(Old Lesbians)』
上映後の質疑応答で、監督たちは口々に語っていました。「まずは、出演してくれる人たちに信頼してもらうことから始めた」「ドキュメンタリーは、知らない世界、無視されている世界に光をあてて知ってもらうことができる」と。ルワンダの監督は、現地のスタッフと一緒に撮影したからこそ、この事実を世界に届けることができたと言います。出演した男性に「世界中に知られても大丈夫か?」と尋ねたところ、彼は「僕には信頼できる真の友人がいるから大丈夫だ」と答えたそうです。そして実際、上映したどの国でも彼を中傷する人はいなかった、という言葉が印象的でした。
私の両親は映画好きで、小学生の頃は月に一度は映画館へ行っていた記憶があります。二本立てのチケットで、お目当ての作品の後にたまたま流れてきた知らない映画が「へー、こんな世界があるんだ!」と面白かったりして。ドキュメンタリーは好きですが、映画館で見るのは久しぶりだったので、今回足を運べて本当に良かったです。上映後のパーティーでは、ワインを片手にDJの音楽を聴きながら、ニールやマチリアスの友人、プロデューサーたちと楽しく感想を語り合いました。これらの作品はこれから米英のフィルムフェスティバルを回るそうです。いつか日本でも上映される日が来ると嬉しいですね。
最後にひとつご報告。6月にとても良いニュースがあるのですが、まだ公表できないので、次回の更新までお楽しみに!

トラファルガースクエア

夜のトラファルガースクエア
インタビュー & コラム

友谷 真実 Mami Tomotani
福岡シティ川添バレエ学苑、三ノ上万由美バレエスタジオでバレエを黒田バレエスクールにてコン テンポラリーダンスを学ぶ。
15 歳で劇団四季合格し、ミューシカルで活躍後、英国マシュー・ボーンのニュー・アドベンチャーズに日本人として初めて入団。「くるみ割り人形」では主役クララを演じ、 「エドワード・シザーハンズ」「Highland Fling」(愛と幻想のシルフィード)、トニー賞 受賞の「白鳥の湖」「カーマン」 「眠りの森の美女」出演。 現在は、マシュー・ボーンのインターナショナルツアーの「前座公演」振付、ワークシ ョップを担当。2023 年―2024 年は「エドワード・シザーハンズ」イギリス公演に出演 する。
また、「ハリー・ポッターと呪いの子」日本アソシエイトムーブメントディレクター 担当。最近では NY のアーティスト、Kazue Taguchi の作品で NY の The Museum of Art and Design で踊り、福岡美術館でバンドネオン演奏者、川波幸恵とのコラボで踊った。
振付家として N.Y の全米 No.1 のミュージカル「フェーム」のモデルにもなったラガー ディア芸術高校で「サウンド・オブ・ミュージック」や芝居の「プライドと偏見」「キ ルトに綴る愛」「Compleat Female Stage Beauty」振付で活躍中。 ピッツバーグ大学の「Zanna Don't!」振付やコンテンポラリーのコンクール作品振付で は、NY の NYDA/Hariyama Ballet の二名のダンサー達が銀賞を受賞。YAGP N.Y でもトッ プ 12 入賞。2019 年には、国際バレエコンクールで 1 位と 4 位を受賞。 振付助手としては 2021 年、ホリプロミュージカル、マリア・フリードマン演出、振付 家ティム•ジャクソン「メリリー・ウィー・ロール・アロング」の 1 幕を担当。マシュ ー・ボーンの「ドリアングレイ」日本公演のリハーサルアシスタントも経験した。
ブロードウェイミュージカルを学ぶ NY のプログラム「Mid Manhattan Performing Arts」 芸術監督。
マイズナーテクニックで有名な「ネイバーフッド・プレイハウス
」、N.Y の Hariyama Ballet、でコンテンポラリー、シアターダンス指導、ジョフリーバ レエサマーインテンシブでコンテンポラリー、シアターダンス、バレエを指導、ステッ プス、カーネギー・メロン大学、プリンストン大学など全米、日 本でワークショップ を開催している。
チャコットの web マガジン「踊りある記」連載中。
その他出演作品は「王様と私 」(ロイヤルアルバートホール)、 劇団四季「キャッツ」、「ジーザス・クライスト=スーパースター」、「アスペクツ・オブ・ラブ」、「ウエストサイド物語」、「オペラ座の怪人」、「ハンス」、「オンディーヌ」、スイセイ・ミュージカル「フェーム」、「ピアニスト」。 オーストリア、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどのコンテンポラリー作品。
Website : https://www.mamitomotani.com/
X : @mamitomotani
Instagram : mami.lesson_choreograph