日本で観劇したNoism Company Niigataのダンス公演の感想と思ったことです。
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日本で観劇したNoism Company Niigataのダンス公演の感想と思ったことです。
小倉の北九州芸術劇場で初めて有名なNoism Company Niigataのトリプル・ビル「円環」を観劇しました。
素晴らしかったです! 私は、時々コンテンポラリーダンス公演を観ていて長く感じる時もあるのですが、三つの作品のバランスがなんだかフルコースを味わっている様で、観劇後もずっとあの味、感覚を覚えているという幸せな気持ちになりました。
コンテンポラリーダンスの良いところは、観る方がそれぞれの気持ちの目線で自由に見られることだと思います。正解、不正解もなく。
芸術総監督、金森穣さんの振付、出演された『過ぎゆく時の中で』は、若い方の迸るエネルギーが素晴らしかった。何も恐れず、進む。目標があり、迷ってもとにかく進む。仲間を見つけて互いに刺激しながら進む。そこに一人の人生を経験した人間がいて優しく彼らを包み導き、また若い世代からも何かを得ているような。若い世代もふと彼と一緒に時を過ごし何か得る様な。
〈あー、こんな作品を踊れる場所が日本にある! 若い方達にとってよかったねー〉と思いました。音楽も好きでした。
「過ぎゆく時の中で」photo: Joseph Marčinský
「過ぎゆく時の中で」photo: Joseph Marčinský
「過ぎゆく時の中で」photo: Joseph Marčinský
二つ目は近藤良平さん振付の『にんげんしかく』。とても楽しく最初は箱から出ている足で「地元の子供達を使っているのだ!」と思ったほど皆さんの足が可愛くて、出てくるのは大人だったのでびっくりしました(笑)。
それぞれの衣裳も個性を出していて、箱から出るのが恥ずかしい人、箱からすぐに出る人、助けが必要な人など。段ボールは人生の身近にありいつも使う箱。とても楽しい作品に仕上っています。
最後に箱から去る、というくだりは、それぞれのタイミングで今いる場所を出る。扉を開けてあたらしい世界に行く。今までの友人達はいつもの世界に戻るけど明日は同じ場所にその人はいない。箱に戻るのも選択。など、私の経験などから何か心に残るフィーリングを思い出しました。
「にんげんしかく」photo: Joseph Marčinský
「にんげんしかく」photo: Joseph Marčinský
「にんげんしかく」photo: Joseph Marčinský
三つ目は、劇団四季にいらした宮河愛一郎さんが出演されていた金森穣さん振付の『Suspended Gardenー宙吊りの庭』です。これは、とても素敵な作品でした。
エレガントで、3人の男性、山田勇気さん、宮河愛一郎さん、中川賢さんの役なのかご自身そのものなのか分かりませんが、それぞれが一人の女性、井関佐和子さんの人生の前に現れては消える。お互い熟知しているようで、変化しているのも感じているのか、女性に対してのコミュニケーションの仕方も三人三様で、女性はどこか違うところを見ているような。3人の男性はそれをわかっていて、彼女を尊く、自由にしてあげていくような・・・それぞれの世界へとまた旅立つようなとても深い作品でした。このメンバーで出来た空気を見た感じです。こういう大人の作品は大切だなと思います。
若い世代のエネルギーとは違い、立っているだけでそれぞれの経験から味を醸し出していて、一番大事なところを見せてもらった感じです。なんというか、それぞれの声が聞こえる感じでした。
「Suspended Gardenー宙吊りの庭」photo: Joseph Marčinský
「Suspended Gardenー宙吊りの庭」photo: Joseph Marčinský
「Suspended Gardenー宙吊りの庭」photo: Joseph Marčinský
「Suspended Gardenー宙吊りの庭」photo: Joseph Marčinský
昔は(長くて)ダンサーは35歳ぐらいまでと言われていましたが、これからは、40代、50代、60代など、その年代だからこそできる表現、踊りでいろいろな作品が生まれるでしょうね。
もう一つ書いておきたいのは、日本で初めて新潟市に外国のような劇場専属の芸術団体のカンパニーがあることです。このようなカンパニーを市が立ち上げたニュースを聞いた時に、「ああ、凄いな! これから日本のダンス界も変わるな」と思ったのを覚えています。
今回20周年公演でしたが、20年経って他の市にこういうダンスカンパニーがないのは予想していませんでした。もっと増えていると思っていました。私が希望を持ちすぎたのか分かりませんが。
それほど、このカンパニー、新潟がされていることは日本のダンス界、芸術にとってとても大事なことなのです。
もちろん、いろいろなダンサーの方が独自のやり方でカンパニーを持ち、変えようとされています。
私もいろいろと海外でノウハウを知り、いつか何か自分が出来ることで貢献できたらと思いますが、芸術だけを考えるのではなく市や県の行政に納得してもらい、芸術が人間には必要ということを理解してもらったりなど、本当に凄い改革をされていらっしゃる金森穣さんと国際活動部門芸術監督の井関佐和子さんには頭が下がります。
SNSで自由に世界にむけてダンスパフォーマスができる時代になり、それは良いことと思います。ただ、生の舞台での表現、波動、エネルギーは映像とは全然違います。もっと皆さんに劇場に行ってほしいです。SNSがそのきっかけとなるのは良いですね。
公演を観に行き残念だったのが、パワーのある素敵なパフォーマンスをされた宮河愛一郎さんとは短い時間ご挨拶できましたがもっとお話したかったです。と同時に客席にいらした金森穣さんにご挨拶ができなかったことです。とても真剣な眼差しでいらしたので声がかけられませんでした・・・
なかなか日本に帰った時にタイミングよく舞台を観られませんが、今回良いものを観させていただきました。遠くより応援をしております。また、他の都道府県で海外のように、地元の方に賛同してもらえる専属のダンスカンパニー、あるいはミュージカルやオペラの上演できるカンパニーがもう少し増えると良いですね。都道府県が持っている劇場の役所の方々にも劇場の使い方、演目などもアーティストの声も聞いていただき一緒に芸術が親しみやすく広がると良いですね。声を出し続けましょう。
Noism Company の4月からの公演予定は、下記のとおりです。ぜひ観に行かれてください。
〈黒部シアター2025春〉
Noism0+Noism1『めまい―死者の中から』
富山県黒部市で開催される「黒部シアター2025春」に今年も出演。
富山:2025年5月17日(土)19:00、5月18日(日)19:00/前沢ガーデン野外ステージ
公演情報 https://noism.jp/npe/kurobetheater-2025spring-vertigo/
黒部シアター公式サイト https://kurobetheatre.com/ticket/
Noism0+Noism1『アルルの女』/『ボレロ』
新潟:2025年6月27日(金)19:00、6月28日(土)17:00、6月29日(日)15:00/りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
埼玉:2025年7月11日(金)19:00、7月12日(土)17:00、7月13日(日)15:00/彩の国さいたま芸術劇場
公演情報 https://noism.jp/noism0-noism1larlesienne-bolero/
〈TOKYO MET SaLaD MUSIC FIATIVAL[サラダ音楽祭]2025〉
東京:2025年9月14日(日)、9月15日(月祝)/東京芸術劇場
サラダ音楽祭公式サイト https://salad-music-fes.com/
インタビュー & コラム
友谷 真実 Mami Tomotani
福岡シティ川添バレエ学苑、三ノ上万由美バレエスタジオでバレエを黒田バレエスクールにてコン テンポラリーダンスを学ぶ。
15 歳で劇団四季合格し、ミューシカルで活躍後、英国マシュー・ボーンのニュー・アドベンチャーズに日本人として初めて入団。「くるみ割り人形」では主役クララを演じ、 「エドワード・シザーハンズ」「Highland Fling」(愛と幻想のシルフィード)、トニー賞 受賞の「白鳥の湖」「カーマン」 「眠りの森の美女」出演。 現在は、マシュー・ボーンのインターナショナルツアーの「前座公演」振付、ワークシ ョップを担当。2023 年―2024 年は「エドワード・シザーハンズ」イギリス公演に出演 する。
また、「ハリー・ポッターと呪いの子」日本アソシエイトムーブメントディレクター 担当。最近では NY のアーティスト、Kazue Taguchi の作品で NY の The Museum of Art and Design で踊り、福岡美術館でバンドネオン演奏者、川波幸恵とのコラボで踊った。
振付家として N.Y の全米 No.1 のミュージカル「フェーム」のモデルにもなったラガー ディア芸術高校で「サウンド・オブ・ミュージック」や芝居の「プライドと偏見」「キ ルトに綴る愛」「Compleat Female Stage Beauty」振付で活躍中。 ピッツバーグ大学の「Zanna Don't!」振付やコンテンポラリーのコンクール作品振付で は、NY の NYDA/Hariyama Ballet の二名のダンサー達が銀賞を受賞。YAGP N.Y でもトッ プ 12 入賞。2019 年には、国際バレエコンクールで 1 位と 4 位を受賞。 振付助手としては 2021 年、ホリプロミュージカル、マリア・フリードマン演出、振付 家ティム•ジャクソン「メリリー・ウィー・ロール・アロング」の 1 幕を担当。マシュ ー・ボーンの「ドリアングレイ」日本公演のリハーサルアシスタントも経験した。
ブロードウェイミュージカルを学ぶ NY のプログラム「Mid Manhattan Performing Arts」 芸術監督。
マイズナーテクニックで有名な「ネイバーフッド・プレイハウス
」、N.Y の Hariyama Ballet、でコンテンポラリー、シアターダンス指導、ジョフリーバ レエサマーインテンシブでコンテンポラリー、シアターダンス、バレエを指導、ステッ プス、カーネギー・メロン大学、プリンストン大学など全米、日 本でワークショップ を開催している。
チャコットの web マガジン「踊りある記」連載中。
その他出演作品は「王様と私 」(ロイヤルアルバートホール)、 劇団四季「キャッツ」、「ジーザス・クライスト=スーパースター」、「アスペクツ・オブ・ラブ」、「ウエストサイド物語」、「オペラ座の怪人」、「ハンス」、「オンディーヌ」、スイセイ・ミュージカル「フェーム」、「ピアニスト」。 オーストリア、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどのコンテンポラリー作品。
Website : https://www.mamitomotani.com/
X : @mamitomotani
Instagram : mami.lesson_choreograph