日本の皆さん、マシュー・ボーンカンパニーで踊っていたPhilip Willingham (フィル)を憶えていらっしゃると思います。

日本公演『くるみ割り人形』『愛と幻想のシルフィード(Highland Fling)』『シザーハンズ』で来日していました。その後、ニューヨークに移り俳優として映画の仕事を主にしていました。
その彼が、今年の1月に癌で他界されました。

私は、昨年11月のニューヨークで『Sleeping Beauty』公演の時に彼に会いました。とっても痩せていて彼自身もなぜ体重が減って行くのか分からない、と言っていました。病院に行ってチェックしたけど、何も悪い所はなく、でも体調はあまり良くない。クリスマスにイギリスに帰るからもう一度チェックする、と言ったので私は、(多分他の友人たちも皆言ったと思いますが)「絶対、もう一人別のお医者さんに見てもらった方が良いよ。」と言いました。
みるからに細くて友人たちととても心配していました。イギリスに帰国し癌と分かった時、彼はフェイスブックで皆に告知して、その後の経過を載せていました。
皆の励ましの言葉がとても嬉しい。返事を書きたいけど、体力がないので、少しずつ返事をするとも書いていました。 1月後半に、病院から実家に戻り体調が良くなったのでキモセラピーを始める。と書いたのが最後だったと思います。あっという間でした・・・

フィルと

フィルと

彼はとても素晴らしいエネルギーの持ち主で、楽屋ではいつもジョークを言い皆を笑わせていました。私とフィルは『シザーハンズ』のアメリカ公演がきっかけでそれぞれ人生のパートナーと出会い、結婚しアメリカに移動したという共通点があり、ニューヨークに行くと、時々アメリカ人との結婚生活の話をしていました。
今年から私はニューヨークに引っ越しましたが、街を歩きながら、ふと彼のことを思い出し、ニューヨークにいたらきっといろいろなことを話していただろうなと感慨にふけることがあります。
彼のフェイスブックは個人のアカウントですが、公式のページもあります。
彼の俳優としての映像も見られますのでチェックしてみて下さい。
https://www.facebook.com/PhilipwillinghamActor
痛みから解放されて天国で安らかに、そして楽しく、いたずらっぽい目で演じているかもしれません。合掌。

Photo:Mami Tomotani

Photo:Mami Tomotani

さて、機会があってN.Yで"CEDAR LAKE"カンパニーのクラスを教えました。私はピアニストと一緒にクラスを教えたことがなく、いつも自分で曲を準備していましたが、やはりピアニストがいるとやりやすいですね! 


素晴らしい空間があるスタジオで優秀なダンサーたちを指導するのはとても気持ちよかったです。今後もここと関係を作っていけたらな、と心から思いました。
そして、マシュー・ボーンから『シザーハンズ』のオファーが来ました。エタのペグ役をエタとシェアで、もう一つは私のオリジナルの役で、ファットスーツ(太って見える様に)を着たお母さん役、グローリアの二つです。
とっても嬉しかったですし、エタと一緒に仕事が出来るので、演じたいのですが、ニューヨークに引っ越したばかりで、その間、5ヶ月もニューヨークを離れてイギリス公演をするのはやはり難しいです。
ニューヨークの友人たちから「世界中からトップクラスの人たちが集まるニューヨークで、5ヶ月も離れると、真実の存在を忘れられる。他の人が真実の仕事をすぐに取るよ。イギリスで大きな舞台に立っていても、そのことはアメリカ人、ニューヨーカーには知られないよ。」と。私もとても良くその意見が分かります。
夫も「真実のキャリアに良いならやるべき。」と言われ、両方とも演じたことがある役なので、新しいキャリアにはなりません。ただ、40代のダンサーになかなか現役の仕事は来ないので、チャンスを逃したくはありません・・・
相当悩んだ結果、お断りしました。2ヶ月半から3ヶ月なら可能です。しかしカンパニーにとっては、今回は5ヶ月と短いのです。それ以上短い期間は契約で難しいことが分かり、とても残念ですが次にまたお誘いがあることを祈って、今年はニューヨーク生活に集中します。
何かワクワクすることが待っていますように!

インタビュー & コラム

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友谷 真実 Mami Tomotani

マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。
http://ameblo.jp/mami-tomotani/

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