清瀧千晴が振付・演出し、青山季可、久保茉莉恵、塩澤奈々が踊った育藝会コンサート
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関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

リハーサルより
去る2025年12月17日、東京オペラシティリサイタルホールで47回目の育藝会コンサート「Snow & Grace ~ヴァイオリンと白鳥のクリスマス」が開催された。この公演は、牧阿佐美バレヱ団のプリンシパル、清瀧千晴の初めての振付・演出によるバレエと、周防亮介のヴァイオリン、酒井有彩のピアノによるコラボレーション公演だった。
プログラムは「シューベルト:アヴェ・マリア」「チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ」「ヴィターリ:シャコンヌ」「サン=サーンス:白鳥」「メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」という構成である。東京オペラシティリサイタルホールの小規模公演だが、とても雰囲気の良い舞台だった。
ヴァイオリンは周防亮介。京都府出身で2016年にヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール入賞、審査員特別賞を受賞したほかにも多くの受賞歴があり、NHK交響楽団、パリ管弦楽団他のオーケストラほか数多くのオーケストラとも共演している。若手の注目のヴァイオリニストである。ピアノの酒井有彩はベルリン芸術大学を最優秀で卒業。レオポルド・ベラン国際コンクール第1位など多くの受賞歴がある。NHK Eテレ「クラシック音楽館」、テレビ朝日「題名のない音楽会」などにも出演している。

リハーサルより
冒頭のシューベルトの「アヴェ・マリア」では、エレン役の青山季可(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)とマルコム役の清瀧千晴が踊った。周防の力強い弦の響きに乗って、しっかりとした動きで二人の身体が良く調和していた。チャイコフスキーの「ワルツ・スケルツォ」は、久保茉莉恵(牧阿佐美バレヱ団ファーストソリスト)と塩澤奈々(同・ソリスト)が踊った。そして、ヴィターリの「シャコンヌ」は、周防亮介のヴァイオリン(宗次コレクションより貸与された1678年製ニコロ・アマティ)のドラマティックな圧巻の演奏だった。
続いてサン=サーンスの「白鳥」は、青山季可による『瀕死の白鳥』。ロシア帝政時代の名花、アンナ・パヴロワがミハイル・フォーキンの振付により初演した伝説的なバレエである。青山はパヴロワの初演と同様に、胸に銃で撃たれたことを暗示する赤いブローチを付けて、実にしっとりと踊った。穏やかで静かな、しかし厳粛な死であった。
メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」は、周防の心に底に響くヴァイオリンとともに、4人全員が華やかに踊った。清滝の振付は、楚々としてケレン味なく丁寧。衣裳もベージュがかった白と薄いブルーで落ち着いたものだった。動きはシンフォニックに構成し、少し速めにしていたようだが、音楽としっとりとした親和性があった。
清滝は、12月13日に文京シビック・ホールで『くるみ割り人形』の王子を踊り、この公演の翌日の18日には前橋でやはり王子を踊る、という強行日程の中、バレエミストレスを務めた酒井はなの協力なども得て公演を行なった。次はまた物語性のある作品にも挑戦してほしいと思った。
(2025年12月17日 東京オペラシティリサイタルホール)

リハーサルより

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