アメリカン・バレエ・シアターに正式入団した小川華歩のシンデレラ・ストーリーをどうぞ

インタビュー&コラム/インタビュー

[インタビュー]
針山 真実

今年5月13日〜7月6日まで行われたアメリカン・バレエ・シアターのスプリングシーズン中にカンパニーダンサーとして正式入団が決定した小川華歩さん。
私が小川さんに初めて出会ったのは彼女が14歳の時。あの頃からどんなことがあってもうろたえず自分のペースを崩さない彼女はどこか違う気がしていました。そして15歳の小川さんが留学生としてニューヨークに住むことになり私は保護者役となりました。その頃から見てきた彼女が今回、日本人二人目としてアメリカのトップバレエ団に入団。とても嬉しい出来事です。
入団が決まった小川さんに入団までの経緯をインタビューしました。

針山 アメリカン・バレエ・シアター(ABT)は憧れのカンパニーだったのですよね。

小川 そうです。ずっと小さい時から憧れていました。
映画『センターステージ』を見てアメリカン・バレエ・シアターのダンサーたちが大好きになりました。ニューヨークの街にも魅力を感じて、バレエ団とニューヨークの街の両方に憧れを持ちました。映画は何度も何度も見ました。

針山 ニューヨークにはじめて来たのはいつですか。

小川 9歳のときにユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)のコンクールのニューヨーク決戦に出場できることになって初めて来ました。映画で見たニューヨークに来られて感激しっぱなし。満面の笑みでヴァリエーションを踊ったのを覚えています。

針山 私と出会ったのは14歳の時、ABTサマーインテンシブで来た時でしたね。あの時もユース・アメリカ・グランプリがきっかけで来ましたよね。

Photo by Rosalie O'Connor

Photo by Rosalie O'Connor

小川 初めてニューヨーク決戦に出場して以来、毎年ニューヨーク決戦に出場することが出来、それがきっかけでABTサマーインテンシブの参加許可を毎年いただききました。14歳のときはスカラーシップをいただきました。このコンクールは留学先の希望を書くことが出来て、私はいつもABT付属のジャクリン・ケネディー・オナシス・スクール(JKO)を希望しました。

針山 次の翌年の9月からは長期留学生として来ましたね。

小川 ジュニアの部の最年長だったので、これで最後にしようと決めて出場したYAGPニューヨーク決戦で3位に入ることが出来ました。その時にJKOのディレクターのフランコ・デヴィタから年間スカラーシップをいただきました。

針山 JKOは17歳から留学出来ることになっているのに15歳だった、特別でしたね! 留学して大変だったことは?

小川 とにかくまず生活に慣れることが大変でした。朝早く学校に行って勉強して宿題をして、バレエ学校に行って、英語もわからないし1年目は特に大変でした。

針山 確かに1年目はいつも眠そうで、宿題を頑張っていましたね。そして留学生活で変化が訪れたのは?

Kaho Ogawa in George Balanchine's Symphony in C. Photo by Marty Sohl 「シンフォニー・イン・C」小川華歩 photo/MartySohl

Photo by Marty Sohl

小川 留学2年目、地方のバレエ学校の『くるみ割り人形』公演に主役としてゲスト出演することになりました。それとほぼ同時にフランコからローザンヌ国際バレエコンクールの出場の話をいただきました。スクールの中で私1人が出場することになり、声をかけてもらえたことが嬉しかったです。しかし『くるみ割り人形』の練習が12月中旬まであったのでコンクールの練習が始まったのがその後。練習が足りなかったので不安もありました。しかも現地では体調を崩してしまって・・・。コンクールではいい結果が出せませんでした。悔しかった。でもコンクールから帰ってすぐ、フランコからABTスタジオ・カンパニーへ入れることを告げられました。スタジオ・カンパニーはプロになるための準備をするトレーニングプログラムです。

針山『くるみ割り人形』の主役も素晴らしかったし、スタジオ・カンパニーのパフォーマンスでもとても目立っていましたよ。たくさん踊らせて貰っていましたね。それからすぐにABTのアプレンティス(ABTのメインカンパニーの研修生)になりましたね。

小川 スタジオ・カンパニーには4ヶ月しかいませんでした。夏休みになり日本に帰国していたときにメールが届いて、ABTのアプレンティスに入れることがわかりました。まさかメールで届くなんてビックリしました、すぐに就労ビザを取る準備をしました。

針山 戻ってきたらバレエ団とのレッスンやリハーサル。どんな気持ちでしたか。

小川 やはりプロのダンサーの踊りは大きくて自分の踊りの小ささを実感しました。12月にバレエ団の『くるみ割り人形』公演に出演しました。憧れのバレエ団の舞台に立っているという実感がなかなか沸かず、公演が終わってからだんだん実感が沸いてきました。

針山 さぁ、そしてバレエ団に正式に入団が決まったのは?

小川 今年の4月です。バレエ団のディレクター、ケヴィン・マッケンジーのオフィスに呼ばれました。そして「とてもよく頑張っている、振り覚えも早いし、成長が見える。カンパニーに入って欲しいと思っている。」と言われました。

針山 映画を見て以来一筋だったABTへの夢がかなったのですね! 4月に言われてすぐスプリングシーズンが始まりました。スプリングシーズンは作品が多いし毎日公演で大変でしょう。どんなスケジュールだったのですか?

小川 8週間連続で公演、全幕物が多くて全部で9演目の振付を覚えましたが大変でした。ビデオルームでビデオを見て、リハーサルを携帯電話で録画したり、ノートに書いて覚えました。毎日10時30分からクラスで12時から5時15分までリハーサル、そのあと7時30分から本番でした。

針山 本当にお疲れ様。無事に終わって良かったですね! 次は9月からシーズンスタートですね。どんな予定ですか。

リラの精 撮影:和光写真

撮影:和光写真

小川 まずは10月にニューヨークで秋のシーズンがあって、12月には『くるみ割り人形』の公演があります。そして2月には日本公演!! すごく楽しみです。バレエ団に入って初めてのツアー公演が日本で、しかもバレエ団で初めて出演した『くるみ割り人形』を上演するのでとても嬉しいです!!

毎年よく見に行くアメリカン・バレエ・シアターの公演、小川さんと一緒に見に行ったこともありました。これからは日本人が二人になってますます見る楽しみが増えました。小川さん、頑張ってくださいね!!

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