ベルリンにもようやく春が訪れました
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- コラム 針山愛美
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街で桜を見つけてとても嬉しかったです。
今回は最後にチャイコフスキーの初演5月4日のレポートしますね。
4月5日
この日はワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」のゲネラルリハーサルを見ることが出来ました。
4月8日から15日まで国立歌劇場オペラのフェスティバルなので、連日ワーグナーのオペラを見られます。
さて、リハーサルと言ってもチケットを発券し、ほぼ満員の観客がいる前での上演でした。
これを読んでくださっている方はバレエファンの方が多いと思うのですが、私も以前オペラや演劇はそんなに見に行く機会がなく、身近なものではありませんでした。
ただこの環境にいるのに・・・、是非見なくては・・・、といろんなものを見るようになってから大好きになりました。
ベルリンの桜
「トリスタンとイゾルデ」は6時間の大作です。
しかし、自分でもびっくり!あっという間に時間が過ぎてしまいました。
演出は全てモダンで、装置は1幕から3幕まで同じ。ライトを使って背景に色を出していましたが、基本的には黒と白というシャープなイメージ。
キャスト、オーケストラはこれ以上ないくらいの世界トップが集まりました。
バレンボエム指揮、彼は6時間を暗譜で振れるのですから尊敬です。素晴らしい演奏で心から感動しました。
4月8日
「リング」の本番でした。
この日は新しいキャスト。ローゲをロナルド・サフコービッチが踊りました。
本当に踊り手によってイメージが変わるものですね。マラーホフ、ライナーとは全く違ったローゲでした。
そして、この日の為にビシニョーワが客演しブリュ―ヒュンデを。久々に彼女のブリュ―ヒュンを見ましたがやはり貫禄!
ビスラウ・ヂュディックがボータン役でしたが、彼とのパ・ド・ドウも素晴らしかったです。
4月9日
オペラの話題が続きますが、この日はワーグナーのオペラ「パージファル」を見ました。
1列目のチケットを買う事が出来て、ひそかに国立劇場で働いている事に感謝しました。
これまた6時間半の大作。全く飽きることなくあっという間でした。もちろんバレンボエム指揮。
ここで気がついたのですが、私たちバレエの「指輪」。
日本公演でも上演したベジャール振り付けの「指輪」なのですが、エンディングの音楽はパージファルの音楽だったと知りました。
てっきり「指輪」の音楽だけを使っていると思ったのですが、ベジャールさんは最後だけパージファルから抜粋したようです。
それにしてもワーグナーのオペラは歌舞伎のよう、、、一日仕事です。
休憩時間も45分と長く、ビュッフェでスナックとドリンクをつまみながら話をするのも公演の楽しみの一つですね。
リハーサル風景エイフマンと
4月15日
初めてチャイコフスキーの通し稽古をしました。
今まで部分部分でリハーサルを進めてきて、どこが自分の出番かもわからなかったのですが、これでようやく全体の流れがわかりました。
リハーサル風景
4月19日
今シーズン最後の「リング」でした。
その前にチャコフスキーのリハーサルが国立歌劇場でありました。朝9時からクラスで10時から1時までリハーサル。長い休憩があり、6時から今度はドイツオペラでの本番でした。
昨年バレエ団がベルリンバレエとなってから、両方の劇場で公演していますが移動が結構大変です。
長い一日でした。
ゲネプロから
4月20日
新作バレエ「チャイコフスキー」の振付家エイフマンとのリハーサルがありました。
エイフマンは数日前からベルリンにいらっしゃっていましたが、ステージ関係の打ち合わせなどでお忙しく、全体のリハーサルは今日が始めてでした。
前日「リング」の本番5時間があり、みんなも少しお疲れモード。
しかし、ステージを使えるのが、10時から1時なのでクラスは9時から。
あまりに早いので、この日はフリーチョイスでクラスは強制ではありませんでした。
2幕より
マラーホフ、ロナルドサフコービッチ、ベアトリス・クノップ、ナディァ・サイダコーワのキャストを中心にリハーサルしました。
エイフマン・・・、すごいです。
ベジャールさんがいらした時も思いましたが、振付家は動きの一つ一つに意味を持たせている・・、というのを強く感じました。
そしてその意味をわかってから同じ動きを踊ると全然違うのです。
当たり前かもしれませんが、動きが全く違ったものに見えてきます。
彼が少し動いて見せてくれるだけで、その動きの意味が不思議なくらいわかるのです。
この日は1幕を通すのでいっぱいいっぱいの3時間でした。
その後スタジオに戻り、2幕のリハーサルがありました。
4月から5月4日
「チャイコフスキー」初演までの道のり、そして「チャイコフスキー」のプリミエ速報。今シーズン最後のプリミエでした。
ボリス・エイフマン振り付け、ヴィアスティラフ・オークネフ コスチュームデザインで、ベルリン国立バレエのために新しく改造されての上演になりました。
今度のバレエは何ですか?とよく聞かれ、「チャイコフスキーです」と答えると、みんな「チャイコフスキー作曲の何?」と聞き返してきます。
このバレエはチャイコフスキーそのものの生涯を描いたバレエです。もちろん音楽は全てチィコフスキー、全2幕のバレエです。
ロシアの巨匠振付家エイフマンとリハーサルできた事は、バレエ団にとってもとても有益なものになりました。
初演の3日前、1幕の最後のシーンを客席から見た彼は、その後すぐダンサーを招集し1時間でその部分の振りを変更しました。
その場にいてやはりすごい振付家はこうなのだ、と垣間見る事が出来ました。しばらく頭の中で考えていらっしゃる様子で、ひらめいたように「この動きをやってみて」と、私たちに要求します。
そして何度も何度もやって「これだ・・・!」と言うものが出来るまで絶対妥協されませんでした。
音楽はチャイコフスキーの交響曲5番全てと、6番悲愴のラストの部分、イタリア協奏曲やセレナーデなどが使われています。私はこの曲、特に交響曲5番と6番が大好きでCDも何枚か持っていますが、生の演奏で踊れるのは本当に幸せでした。
このバレエは最初から最後までドラマの連続、音楽もそうであるように次々と見所があります。
今回のキャストは
チャイコフスキー:ウラジーミル・マラーホフ
チィコフスキーの影:ロナルド・サフコービッチ
メック:ベアトリス・クノップ
チャイコフスキーの妻:ナディァ・サイダコーワ
プリンス:マリアン・ワルターとジーヌ・タマズラカウ
プリンセス:アナ・サレンコ
パーティで、後方は演説するマラーホフ
プリンスはマリアン・ワルターが熱をおして出演したのですが、2幕からはセカンド キャストだったジーヌが出演しました。
マラーホフ監督のチャイコフスキー。
胸に迫るものがあって最後はみんな袖で見入っていました。チャイコフスキーの生涯は苦悩と葛藤であった・・・、というようにこのバレエは描かれているのですが、それを彼が踊ると言葉では言い表せないようなものが伝わってきて、心から感動しました。
ロナルドも素晴らしく、チャイコフスキーの影、すなわち分身のような感じの役柄なのですが、彼の当たり役だと思いました。
ベアトリスとナディアも踊りはもちろん、心に迫ってくるものがありました。
チャイコフスキーのリハーサルから
満員のお客様、スタンディングオべイションで役10回のカーテンコールが15分ほど続く大盛況でした。
本番の後打ち上げがあり、バレエ団のメンバーからエイフマンや助手のオリガさんに花束とプレゼントを渡し、マラーホフ監督が感謝の言葉を述べて、みんなで大拍手でした。
その後のパーティは観客全員誰でも参加できるもので、そこでもスピーチがありました。
マラーホフ監督が「これからもバレエ団を応援してください!全ての作品、全ての公演を見に来てくれるように、、、!!!!」とおっしゃって笑いを誘っていました。
翌日の新聞はトップで大きく写真が載っていました。
さて、5月5日に「夢コンサート」のチケット発売になりました。
時間が過ぎるのはあっという間でびっくりします。
暖かくて心が安らぎ、そして明日へのパワーの源となるような素敵な公演をお届けできるよう。頑張りたいと思います。
5日の新聞一面
インタビュー & コラム
針山 愛美 Emi Hariyama
13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。
1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
◆Emi International Arts
◆針山愛美のバレエワールド