秋のニューヨーク! 芸術の秋を満喫しています!

まずは、イギリスのグローブ座を若い観客で満席にし連日立ち見を出した演出家エマ・ライスのカンパニー "ワイズ・チュウードレン" の『Wuthering Heights』(嵐が丘)です。この作品は、アメリカやイギリスでは演劇の題材として必ず習う古典作品です。
今回の作品はN.Yを皮切りにアメリカ全土で上演されます。しかも私の親友エタ・マーフイットが振付けしたフィジカルシアター(お芝居だけどムーブメントなどがある作品)に、マシュー・ボーンの作品で一緒に踊っていたサム・アーチャーとステッフ(スイング担当)も出演しています。
私はブルックリンのオープニングナイトに招待されて観劇しました!

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photo/Teddy Wolff

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photo/Teddy Wolff

この作品がエマの手にかかると、ダンスあり、歌ありのフィジカルシアターというより、ミュージカルみたいになっていました!
サムは、ロックウッド役から他に2役も演じ、嵐が丘のヒースクリフに挨拶に行くのは、モンティ・パイソンかと思うぐらい、ムーブメント/ジャスチャーで嵐を表現し、今にも吹き飛ばされそうなコメディーの動きをするかと思うと、他の役ではバレエを踊ったり、歌ったりと大活躍でした!

ヒースクリフは、最初は人形で現れるのですが、どんどん暗い性格になり、キャサリンを愛したことでこんな男になってしまうとは、というぐらい嫌な男性を演じ、彼女を想う歌ではとっても素敵な声で、「何、この声。ずっと聞いていたい」と思って後で調べてみると「オペラ座の怪人」のラウル役をされた方でした。
パーティーで「本当に嫌な男だったけど、歌声が素晴らしかった!」と無知な私は彼に直接言いました(笑)。喜んでくれましたが。
キャサリンは、またこれが凄い女性で、そんなに我儘で良いの?というぐらい凄くて、でも愛らしいところがあり魅力が溢れていました。キャサリンが亡霊になって出てきた時にマイクを持ってロックを歌い出した時はびっくりです!エマにかかったらこんなことになるのだと、またエマのマジックをニューヨークの観客はコンサートのように楽しんでいました。

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とても複雑で似たような名前がたくさん出てきてややこしいのですが、それを観客にボードに名前を書いて、授業のように説明するシーンもあり、アンサンブル全員が個性的で、生バンドに合わせてコーラスやダンスと一緒に演じてあっという間の3時間でした。
もちろん、全部の批評で評判が良くこれから全米5ヶ月回るそうですが幸先の良いスタートを切りさすがでした。
私の親友のエタの振りも役者を上手に使って嵐のシーン、パーティーのシーンなど楽しいムーブメントで、リハは楽しかっただろうなと思いました。
この演出家エマのことは、以前にも「踊りある記」で書いていますので是非読んでください。

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もう一つの古典は、アーサー・ミラーの『セールスマンの死』です。
これもいつも聞いてはいたけど観たこと、読んだことがない作品でした。
今回は黒人のファミリーに置き換えての初のトライで評判になっていました。
天井から家の家具などが吊るされていて、時々シーンによって降りて来ます。またスライドする床も上手に使われて場所が違うことを表していました。
こちらのお芝居も今回はジャズの歌やムーブメントもところどころあり、セリフだけでなく、それらが作品をリフトアップして迫力がありました。

最初は、私は物語に入っていくまで時間がかかりましたが、段々とこのウエンデル・ピアース演じるウイリィー・ローマンの気持ちに入り込み、どこから狂ってしまったのか、また社会が人間を機械の駒としてしかみない悲しさなど、息を呑んで見入ってしまいました。奥さん役は、オリビエ賞の最優秀ミュージカル女優賞とこのお芝居での最優秀女優賞を受賞した大ベテランのシャーロン・デ・クラークさんで最後のシーンと歌は魂から出ている声で震えました。
世界中にはこんなに沢山の素晴らしい俳優陣がいて、それを目の前で観られるのは本当に幸せです。英語なので、こういうお芝居はオリジナルの役者たちで日本では上演されないでしょうから、ニューヨークやウエストエンドに来た時は、ストーリーを知っている作品で英語が分からなくても観劇されるのをお勧めします。

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今年は私にとって、今までで一番長期なリハーサル、プレビューを経験したアジア初の『ハリー・ポッターと呪いの子』の日本アソシエイト・ムーブメントディレクターとしての仕事から始まり、最後は、素晴らしいフィジカルシアターの観劇でリッチな2022年でした!

今年も読者の皆様応援やコメントをありがとうございました!
どうぞ暖かく気持ちの良いクリスマス、年末をお過ごしください。

インタビュー & コラム

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友谷 真実 Mami Tomotani

福岡シティ川添バレエ学苑、三ノ上万由美バレエスタジオでバレエを黒田バレエスクールにてコンテンポラリーダンスを学ぶ。
15歳で劇団四季に合格し、ミュージカルで活躍後、英国マシュー・ボーンのニュー・アドヴェンチャーズに日本人で初めて入団。『くるみ割り人形』では主役クララを演じ、『エドワード・シザーハンズ』『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)『白鳥の湖』『ザ・カー・マン』『眠りの森の美女』に出演。
現在は、マシュー・ボーンのインターナショナルツアーの「前座公演」振付、指導を担当。『ドリアン・グレイ』日本公演のリハーサルアシスタントも経験した。また、振付家としてN.Yの全米No.1のミュージカル『フェーム』のモデルにもなったラガーディア芸術高校で『サウンド・オブ・ミュージック』や芝居の振付で活躍中。ピッツバーグ大学の『Zanna Don't!』振付やコンテンポラリーのコンクール作品振付では、N.YのHariyama Balletの2名のダンサー達が銀賞を受賞。
ブロードウェイミュージカルを学ぶN.Y のプログラム「ブロードウェイ・エクスペリエンス」(TBE)のアシスタント・ディレクター。N.YのHariyama Ballet、ジョフリーバレエでコンテンポラリー、シアターダンスを指導、カーネギー・メロン大学、プリンストン大学など 全米、日本でワークショップを開催している。
チャコットのウエブマガジンDance Cubeに「私の踊りある記」連載中。
その他出演作品は『王様と私 』(ロイヤルアルバートホール)、 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』、スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』。 オーストリア、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどのコンテンポラリー作品。
WEBサイト https://www.mamitomotani.com/
Twitter @mamitomotani
踊りある記 https://www.chacott-jp.com/news/column/usa/
TBE https://www.thebroadwayexperience.com/tokyo

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