マシュー・ボーンの『くるみ割り人形』で双子を演じた時のこと

オリンピックが始まり日本は世界の注目を浴びていますね。
本当に、いろいろとスキャンダルがあり国民の失望などを聞くと日本はまだまだ教育が偏っているのか、島国なのか、遅れているなと分かる残念なことが多かったですね。グローバルではないですよね。でも、その中のいろいろな状況下で開催に関わった方々は大変だったと思います。

私たちの舞台の世界でもあります。急に全部変更になったり怪我人が出て一人抜きで演じたり、追加のナンバーができたりセットや照明が変わったりと・・・。
それでもやらないといけない時は、火事場の馬鹿力でなんとかお客様に楽しんでもらうように最善を尽くします。

開演前の急な変更など1幕の間に怪我人が出て急にみんなでどうするか考え、休憩の時に「ここはカット、このカップルはなし。そこは違う役だけど、大事なシーンだから他の役の場所をやって」などたくさんあります。
私は何回か『キャッツ』でありました。1幕はヴィクトリアを演じて、2幕でボンバルリーナを演じる。その反対もありました。お互いよく知っているメンバーで信頼がありなんとかできるだろうと、不安よりも「やってみせるぞ!」と言うアドレナリンが出るという感じです。

一番不安だったのは、マシュー・ボーンの『くるみ割り人形』で双子を演じた時!
二人が全く同じ動きをしないといけない、シンクロナイズドスイミングのような感じのダンスもある役で、初日の当日の朝に、一度も踊ったことがない相手役に変わった時は流石に焦りました。相手役の方は違う役を急に言われて、覚えていることを思い出すだけで精一杯と思います。開演前ギリギリまで一緒にリフトを合わせたり、位置の確認などしました。

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私が慣れている役なので合わせるべきと思いましたが、マシューは彼に「真実の表現、エネルギーで演じて欲しい。真実に合わせろ。」と言われていたのですが、彼と踊ったことがないので私はもっと不安になりました。私のテンポ、踊りの大きさ(ステージの使い方)について来られるのか? 私が合わせた方が良いのでは? と相手を信じきれずにどうしようと思いました。
でも、役になりきることを先決にし、彼となるべく息の音で合わせるようにし、目をみて空気を感じて演じました。この時の彼、ギャビンは天晴れでした! この緊張感が客席にも伝わるのでしょうね。翌日ほとんどの新聞で「Mami TomotaniとGavin Edenは舞台をさらった!」などと主役でもないのですが書かれたのに二人でびっくりしました。

オリンピックとは違うので比べられませんが、やはりインターナショナルな判断をするときに日本の感覚だけでは無理ですね。例えばイスラム教の方の食事が用意されていない。祈る場所がないなども海外に住んでいると、「え? そんな大事なこと、海外の空港ではきちんとあるし学食でもあるのに。刑務所でさえあるのに(これはテレビドラマで知りました。)知らなかったの?」と思います。

みなさん、これからの時代できる限り旅行ではなく、留学、1ヶ月でも良いので勉強だけでなくカルチャーを感じるために海外に行ってください。そうすることで日本の良さもとても良く見え感謝の気持ちも出ます。

私は秋から芸術監督としてニューヨークのスタジオのMID Manhattan Ballet and Performing Arts(仮名)で午前中に行われるダンススクールの内容を、プロデューサーの方やスタジオのオーナー&午後からのバレエスクールのディレクターの方、三人で検討しています。
このスクールはバレエ、シアターダンス、コンテ、ヴォーカル、演技と午前中に2クラスを学べます。午後は自由に他のスタジオ、英語学校にも通えます。
日本で学校やスタジオを卒業しオーディションを受けている方々に世界を見てもらい刺激を受けてほしい、と言うプロデューサーの気持ちに私も共感して、世界で踊り、教育に携わっている立場から参加しています。

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興味のある方、講師の皆さま「プロになってほしいけど、世界を見ておいで」という生徒さんがいましたら、下記へお問い合わせを下さい。大人、学校を卒業した方向けです。期間も選べることができます。NYの方はオープンクラスとして受けることも可能です。ホームページです。
https://www.midarts.info/

ちなみに、このスクールは私が今まで関わっていたTBEとは違います。TBEは主に学校に行っている生徒さんが年に一度全国から集まってミュージカルを学んでもらいます。こちらは名前が変わり来夏開催予定です。
日本を愛し、グローバルになりましょうね!

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ニューヨークの新しいダンススクール(MID)のスタジオ HP https://www.midarts.info/

インタビュー & コラム

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友谷 真実 Mami Tomotani

福岡シティ川添バレエ学苑、三ノ上万由美バレエスタジオでバレエを黒田バレエスクールにてコンテンポラリーダンスを学ぶ。
15歳で劇団四季に合格し、ミュージカルで活躍後、英国マシュー・ボーンのニュー・アドヴェンチャーズに日本人で初めて入団。『くるみ割り人形』では主役クララを演じ、『エドワード・シザーハンズ』『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)『白鳥の湖』『ザ・カー・マン』『眠りの森の美女』に出演。
現在は、マシュー・ボーンのインターナショナルツアーの「前座公演」振付、指導を担当。『ドリアン・グレイ』日本公演のリハーサルアシスタントも経験した。また、振付家としてN.Yの全米No.1のミュージカル『フェーム』のモデルにもなったラガーディア芸術高校で『サウンド・オブ・ミュージック』や芝居の振付で活躍中。ピッツバーグ大学の『Zanna Don't!』振付やコンテンポラリーのコンクール作品振付では、N.YのHariyama Balletの2名のダンサー達が銀賞を受賞。
ブロードウェイミュージカルを学ぶN.Y のプログラム「ブロードウェイ・エクスペリエンス」(TBE)のアシスタント・ディレクター。N.YのHariyama Ballet、ジョフリーバレエでコンテンポラリー、シアターダンスを指導、カーネギー・メロン大学、プリンストン大学など 全米、日本でワークショップを開催している。
チャコットのウエブマガジンDance Cubeに「私の踊りある記」連載中。
その他出演作品は『王様と私 』(ロイヤルアルバートホール)、 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』、スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』。 オーストリア、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどのコンテンポラリー作品。
WEBサイト https://www.mamitomotani.com/
Twitter @mamitomotani
踊りある記 https://www.chacott-jp.com/news/column/usa/
TBE https://www.thebroadwayexperience.com/tokyo

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