新年明けましておめでとうございます
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- コラム 友谷真実
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2017年、アートの世界がもっと活躍できる年になりますように、私も微力ながら努力します。どうぞよろしくお願いします。
NDTの舞台を久しぶりに観ました。コンテンポラリー界ではトップ3の一つと言っても良いと思いますが、ダンサーたちはさすがです! あれくらい素晴らしいダンサーたちを使っていればどんな振付でも彼らの身体、表現を通せば最高の芸術になるという感じです。:)
4作品あり、最初は『Safe as House』Sol Leon & Paul Lightfoot振付です。二人ともNDTのダンサーでその後、PaulはNDTの芸術監督になり、Solは芸術アドバイザーでもあります。
とてもすっきりした空間に舞台の端まで大きな壁があります。そこは人が一人だけ通れる空間が壁と袖にあるぐらいで、高さも人間より高いとても大きな1枚で出来ています。
ブルックリンブリッジから見たマンハッタンの夜景
まだ客電が落ちる前にダンサーが3名出てきて、幕前に後ろ向きに立ちます。観客はそれに気づかないのですが、だんだん気づいた人から静かになり、かなりの間そのままでした。ダンサーたちは後ろ向きなので観客が見えないのですが、遅れてくる観客を待ち、静かになり、舞台と観客が一つになるのを待っている感じです。
気持ち良い空間でゆっくり踊りだすのと同時に、大きな壁が回り始めるのですが、その前をまたは後ろを、そしてどこからか、壁で見えないところからダンサーが一人ずつ登場して、毎回違う異次元から登場して来たような感じがしました。壁が回る度に次は何が起こるのか。という様に見入ってしまいます。同じ空間なのに、壁が回る度に違う世界を見ている感じです。
今回は、私がニューヨークでコンテンポラリーを指導しているHariyama Balltの生徒さんたちと一緒に観に行きました。彼女たちは10歳から高校生までですが、コンテンポラリーだけの公演を観に行くのは初めてです。その彼女たちが一番好きだと言ったのはこの作品でした。
NDTを観に行った生徒達
2番目の作品は、『Work up Blind』Marco Goecke振付で、リズミカルでJeff Buckleyの歌に合わせた男女の恋愛のような感じです。体の一部、一部、関節が動くところは全部別々に動かすようで、こんなに人間の体は小さな動きもできるのかという振付でしたが、バレエの生徒たちは、時々コンテンポラリーの振りを「変な動き」と言います。これこそ子供たちから見たら変な動きで、でもそれをゆっくり、または早く恋に狂ったよう体を動かし、踊りにしているのを見せて良かったと、個人的に先生としての立場では思いました。:)
3番目は、子供たちも「一番怖かった。最初は面白かったのに、だんだん怖くて見ていられるか、と思った」というほど、観客がテレビドラマを見ているように飲み込まれていました 。これは『The Statement』Crystal Pite振付です。
大きなテーブルがあり、ビジネスの格好をした男女4組が録音された会話に合わせて動くのですが、会話をしているようにジェスチャーからだんだんミステリーの様に追い詰められる感じで素晴らしかったです。あとで、怖かったという生徒たちに「何も武器も使わす、脅かす音も使わず、会話に合わせたダンスだけで観客を怖がらすことができるのは凄いよね。やっぱり、こういう作品はただ踊るのではなく、気持ちが入っているからリアルティがあるよね」と話しました。
最後の作品は、とても美しい作品です。『Stop -Motion』最初と同じで、Sol Leon & Paul Lightfoot振付ですが、ここまでにセットなどを変えるために1作品ごとに幕が下りて休憩があります。なので、かなり長くまた素晴らしい作品を三つ観てお腹がいっぱいになったのに、その後に30分と長いデザートが出たという感じで、良い作品なのですがなくても良かったかな、と正直思いました。生徒たちも学校を終え、私のコンテンポラリーのクラス後に8時から観て11時過ぎまである4作品をよく見たと思います。次のクラスで感想を聞くのがとても面白かったです。
これからも生徒といろいろと観に行きましょうね、と話し、良い観劇会になりました。
それからマシュー・ボーンのパートナーでもあり、『ザ・カー・マン』、『くるみ割り人形』でも共演したArthur Pitaの作品がニューヨークのCity Centerで上演されていたので観に行きました。
バレエダンサーのNatalia OsipovaとSergei Poluninが、1960年代のグループ The Shangri-Lasのロックンロール音楽から、あの時代のティーンエイジャーが死、セックス、ドラッグについて表現した作品です。
最初に二人の腕だけが床から見えて絡み合いあい、女性が立つとそれが砂の中、お墓の中だと分かります。そこから時間が戻って二人が出会うところから、別れ、そして最初に見た死までを表現していました。それぞれのシーンがとても素晴らしく、セット、小道具も使いとてもオシャレで1960年代を表していますが、たくさんシーンがありすぎて、それぞれのシーンのつながりが切れていたような、でも「詩」と同じで、観る人によって意見が違うだろうな、と思いました。彼が振付けた『マッチ売りの少女』は、イギリスのサドラーズウエルズの小劇場でクリスマスの時に毎年上演されていますが、かなりお勧めだそうです!
https://www.youtube.com/watch?v=KHv-lS_nNJs
読者の皆様も2017年、いろいろな舞台、アートを見に行かれ、エネルギー、パワー、美、ユーモアなどをもらってくださいね。皆様にとって健康で平和でもっとワクワクする年でありますように。
インタビュー & コラム
友谷 真実 Mami Tomotani
マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。
http://ameblo.jp/mami-tomotani/