昨年のトニー賞を三つ受賞したブロードウェイミュージカル『An American in Paris』(巴里のアメリカ人)を観てきました!
- インタビュー & コラム
- コラム 友谷真実
掲載
この作品は、ジーン・ケリーのアカデミー賞受賞の映画で有名ですが、ガーシュインの音楽に合わせて、1人のパリジェンヌのバレリーナと兵役を終えパリで絵かきとなったアメリカ人男性とその仲間2人の男性のお話です。
ガーシュインの音楽に合わせて踊るダンサーたちの美しいこと! もちろん、ポワントのシーンもありますよ。一番印象に残ったのは、このアメリカ人の絵かき、ジェリーを演じたGaren Scribnerです。カリスマがあり、ハンサムでチャーミングでダンスも歌も素敵でキャラクターもすごく良く出ていました。
彼は、初演メンバーではないのですが、一緒に観に行ったTBEのベンも「彼はとっても良いね、カリスマもあるし」と同感でした。
それに比べると、主演のリズ役のLeanne Copeですが、ロイヤル・バレエのファースト・アーティストからブロードウェイのミュージカルの主役に抜擢されて、美しい、凛としたパリジェンヌを演じ、歌もとても良かったのですが、私には演技が・・・というか、演技も良いのですが、演技とダンスが一緒になっていないシーンがあり、彼女のリズと観ていて同じ気持ちになりませんでした。
ベンも、「上半身が固いね。」というほど、バレエのシーンではとっても素敵で、パリジェンヌとしての立ち姿も粋なのですが、肝心の「この人しかいない」、と溢れる気持ちでジェリーと踊るシーンや演技で隣に立ったり、座ったり、あるいは抱きつくシーンもバレエとまったく同じの上半身が真っ直ぐなのです。
バレエでも『マノン』など、たくさん上半身を柔らかく自由自在に使う振りもあり、バレエダンサーでも素晴らしい動きをされる方がいますが、ミュージカルは、演じている時はそのキャラクターの心が見えないと感動しません。まるで、この子恋していないな、という感じでした。上半身が、相手役に触れていても、息をしていない、ドキドキしていない感じで・・・。
2幕のバレエは圧巻です。あの時代の振りをメインもアンサンブルもブロードウェイらしくゴージャスに踊っていました!
アンサンブルやスイング(たくさんの役を覚えて、代役で出る方たち)は大変だろうな、と思いました。ユニゾンの振りが少なく、また交通(舞台上での交差)も複雑で。
クリストファー・ウィールドンの振付は私は面白いと思いましたし、存分にこのストーリーからセット、空間を使って造っていて楽しかっただろうな、というのが感じられます。マシュー・ボーンがニューヨークに来た時にランチを一緒にしましたが、『巴里のアメリカ人』も観る予定だそうで、クリストファーがマシューに会いに来る、と言っていました。マシューも新作が映画の『赤い靴』からなので、どう思ったのかな、と思います。今度の『眠れるの森の美女』のツアーで聞くつもりです。
気になったのは、踊ってセットを持ってくるダンサーたちがはける時に(舞台から袖に引っ込む時)、バレエではけるようにアームスを前後に伸ばして、バレエ走りではけるのが古いというか、あの時代の話だからそうしたのか、でもやはりミュージカルとしては、突然バレエのシーンでもないのに・・・「あらら」と、物語から現実に戻されました。1幕は、ミュージカルを見ているというよりバレエのモダン作品を観に来ている気になりました。これを、バレエカンパニーが演じると新しいバレエに見えるのだろうなという感じです。
2幕は、面白かったです! それは、肝心のお話がドキドキする内容になるからです。
やはり、お芝居あってのダンス、歌ですからね。この3人の男性たちからいつ、ジェリーを選ぶのか、どうなるのかとダンスよりも物語に引き込まれました。
セットも衣装も素敵で、3人の男性陣はそれぞれにキャラクターがあり、ダンス、バレエもたくさんあり見応えがある作品でオススメですが、「これは!」とびっくりする演出はありませんでした。
ロンドンのウエストエンドでも上演されるそうです。ベンと、イギリス人はどう思うかな?バレエでいうと、もっとリアルな動きをたくさん観ている観客に受けるのかな、と話しました。『コンタクト』もイギリスではあまり受けなかったみたいなので。
日本人のお客様には受けるかもしれませんね。私としては、『Something Rotten』の方が好みで、日本人のお客様にも受けると思うのですが。:)
さて『眠れる森の美女』、英語で『Sleeping Beauty』をミュージカルの『Beauty and Beast』(美女と野獣)と混ざって『Sleeping Beast』(眠りの森の野獣)ととても恐ろしいタイトルを言ってしまう私ですが、とにかくアジアツアーが始まります。韓国では、とってもお客様に喜ばれ、大成功のスタートでした。次は、シンガポール、上海、北京、そして東京です! その前に、親友のエタの50歳の誕生日祝いのためにイギリスに行き、その前はホリデーで夫とジャマイカに行き、と私はあちこち飛びまわっています。
韓国公演に観に来て下さった、
韓国のミュージカルスターのマイケル
Michael K.Lee
NOTRE DAME DE PARIS, and runs
at Bluesquare Theater until August 21.
The website is www.mastent.co.kr
また、8月8日からニューヨークでTBEが始まります!! 今年は4名の日本人の生徒さんたちが受講します!! 楽しみですね。私はツアーでTBEには参加できないのですが、通訳で入ってくださる、元劇団四季の俳優さんであり、アメリカでも『アベニューQ』に出演されたり、歌唱指導をされている 西田玲美奈さんからの報告を楽しみにしています。
皆様も暑さに気をつけて、良い夏をお過ごしください。
インタビュー & コラム
友谷 真実 Mami Tomotani
マーサ・グラハム・サマースクール、劇団四季研究所、川副バレエスクールでダンスを学ぶ。
★主な出演作品:
ニュー・アドべンチュアーズ『くるみ割り人形』(クララ、キューピット役ほか)、『白鳥の湖』、『カーマン』、『エドワード・シザーハンズ』(ペグ 役ほか)、『Highland Fling』(愛と幻想のシルフィード)、州立バレエ・リンツにてロバート・プール、オルガ・コボス、ピーター・ミカなどの作品(オース トリア)、 アルティ・ブヨウ・フェスティバル(京都)、ベノルト・マンブレイの振付作;スイセイ・ミュージカル『フェーム』、『ピアニスト』; 劇団四季『キャッツ』、『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『ウエストサイド物語』、『オペラ座の怪人』、『ハン ス』、『オンディーヌ』など
★TV/映画:『くるみ割り人形』(BBC)他。
★振付作品:『just feel it?以・真・伝・心』個人のプロローグ(02年);アルティ・ブヨウ・フェスティバル(98年)、他。
http://ameblo.jp/mami-tomotani/