ナタリー・ポートマンのバレリーナボディを作った、メアリー・ヘレン・バウアーズにインタビュー

『バレエ・ビューティフル』----似たような名前のエクササイズは数あれど、これはちょっと違う。夫君のミルピエがパリ・オペラ座の次期舞踊監督に任命されたナタリー・ポートマンを、一年でプリマ・バレリーナのボディラインへと導いたワークアウト、と言えばもうお分かりだろう。2010年公開の映画『ブラック・スワン』で彼女があそこまで迫真のバレリーナを演技じ切ることができたのは、ひとえにこのワークアウトのおかげ、と言っても過言ではないのだから。
その生みの親でナタリー・ポートマンのパーソナル・トレーナーを勤めたメアリー・ヘレン・バウアーズ自らが出演するホーム・エクササイズDVDが発売された。"バレエ初心者から上級者まで様々な方に、効果を早く確実に実感していただけます" という触れ込みに、当方も早速やってみると...。
プリエ、タンデュ、バットマンタンデュ、(極めて単純な)アレグロを組み合わせて構成された『カーディオ・ワークアウト』(有酸素運動効果あり)は、覚えやすいシンプルな動きの連続。しかし、続けて行うと結構ハード。特に、脚の内側と腕から背中につながる筋肉が伸びる・締まる!! ヨガマット1枚ほどのスペースで行えるのに5分もすると汗がじわじわ。
腹筋、ランジ、ストレッチ、で構成された『エッセンシャル・ワークアウト』は私の大嫌いな地道な腹筋、ランジをこれでもかというほど頑張る。
もういやだやめちゃえ!! と思うのだがなぜか15分間のメニューの最後まで頑張ってしまうのは、映像の中のメアリーが、一緒にはぁはぁ言いながらやっているから。通常、このテのDVDでお手本を勤める人は、いかにも先生らしく涼しい顔をして美しくポーズを決めている映像でまとめられているものだが、『バレエ・ビューティフル』は違う。はぁはぁ言い、ぐらつきながら、メアリーが私たちを励ましてくれる。

ただひとつ...
このDVDには大きな欠点がある。うっかり鏡の中の自分を見てしまうと、げげげっと落胆せざるを得ない点である。
映像の中でお手本を繰り広げているメアリーの、なんと頭の小さく手足の長いことか!!
しかしわが家の鏡の中には、かけ離れた現実がある。
「もともと短い脚なんだもの、こんなことやったって無駄なんじゃないの!?」そう言い募る私に、しかしメアリーは言った。

「見た目に固執してはいけません。ワークアウトに集中して楽しむことで、あなたは内側から快適に美しく変わっていきます」

この1月、メアリー自身が『バレエ・ビューティフル』のプロモーションのために来日した時の話である。彼女は、私の質問に、時にその長い手足を惜しみなく使って、答えてくれた。

----ナタリー・ポートマンも、毎日のようにこのワークアウトを実践したんですか?

メアリー(・ヘレン・バウアーズ) 映画の撮影中も含め約1年の間、彼女は毎日このワークアウトを行ったわ。私はロケにも同行して彼女に指導を続けたけれど、早朝から撮影がスタートする日でもウォーミングアップにのワークアウトを取り入れたわね。だから身体の変化は割と早い時期に現れたわよ。

----このワークアウトがいちばんに目指しているボディラインは?

メアリー ナタリー(・ポートマン)が小柄であることを考慮して、カバーするために、長く見える手足となだらかな肩のライン、ゆったりと開いた優雅な胸のラインを目指したの。ですから、筋肉、中でも脚や腕の内側を長く使うことを意識したないようになっているでしょう?その代表的なものが、DVDでも繰り返し行っている"スワン・アーム"よ。

----ナタリーが小柄ってことは、私たち小柄な日本人にも希望はありますね!!

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メアリー そうよ。大切なのは身体の使い方なの。

----さらに、ナタリーはバレエ経験があるとはいえ、長らくバレエは踊っていませんでした。たとえ演技上とはいえそれらしく見えるようになるには、筋肉や運動の質もバレリーナのものに近づける必要がありましたよね。

メアリー 彼女が演じるのは絶頂期のプリマ・バレリーナですからね。バレリーナが他の身体と違う点と言えばまず、足裏からつま先にかけての動きです。その部分をしっかり使えるよう鍛えました。次に、バレエのステップを踏むときは、脚の外側の力は抜き、内側の力だけで行います。ですから『バレエ・ビューティフル』の動きもそういう動きを組み合わせています。

----ナタリーの変化はどのくらいの期間を経て目に見えてきましたか。


メアリー とても早かったと思います。2週間くらいかしら。皆さんも、週に3日行っていればきっとそのくらいから変化を感じられると思いますよ。

----毎日すべてのプログラムを実践しなくてはなりませんか。

メアリー 一日30分でも大丈夫です。だから、日替わりで、プログラムを二つずつ、組み合わせたらどうかしら。大切なのは続ける、ということ。続けることで身体は変わってきます。まず身体にハリが出ます。ヒップの位置が高くなります。そして体幹部が強くなります。バレエを長くやっている人やプロなら、バレエ・テクニックが今までより楽にできるようになると思いますよ。

----ところで、あなたが10年間活躍されていたニューヨーク・シティ・バレエ(N.Y.C.B)には、あなたのような美しいボディラインをもったバレリーナがたくさんいます。それは、N.Y.C.Bのレパートリーや普段のレッスンと関係があるのかしら。とくにバランシン作品との関係性はあると思いますか。

メアリー そうだと思うわ。バランシンのレパートリーは、身体を長く使うように創られているの。例えば4番のピルエットも一般的にはアンナバン、つまり、エネルギーを丸くして自分の方へ向けることが多いと思うけれど、バランシンは同じ4番でも後ろ側の脚をうんと長く伸ばして、前の腕は前方へ長く伸ばすことが多いの。

----長く使うイメージが、身体のラインを長くつくりかえるのですか。

メアリー そういうこと。小柄な人がスクワットやウエイトリフティングなど縮める方にパワーを使う様な運動ばかりしていると、筋肉が固まってついて短く見えてしまうの。身体を長く動かすイメージはとても大切よ。

----加えて、バランシンの作品は極めて音楽性が高いですよね。細かな音をすべて聞き分けて、それに身体を反応させるには、たしかに体をフルに、長く使わなくてはならないのでしょうね。

メアリー その通りです。たいへんでしたけれど、私は、N.Y.C.Bのレパートリー、中でもバランシン作品が大好きで入団しましたから。

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----N.Y.C.Bでは踊っていない今も、その素晴らしいバレリーナ・ボディをキープしているのはやはり『バレエ・ビューティフル』の力? 他にはどんなことに気を付けて日常を過ごしているのですか。

メアリー 舞台に立っていた頃は、一日10時間以上踊っていたので筋肉的にはとてもハードだったわ。作品によっては負荷がかかりすぎてたくましくもなるの。だから、一日1時間程度のワークアウトを日常に取り入れている今のほうがボディラインはすっきりしているわ。
あとは、水をたくさん飲み、きちんとした食事をして、たっぷり睡眠を取ること。そして自分へのご褒美も忘れないわ。

----それはスイーツのことかしら?

メアリー そう! 私はビーガンではないし、お砂糖を取ることにも否定的ではありません。肉も卵も魚も、バランスよく食べます。現役のバレエ・ダンサーだった頃は体力の消耗も激しいから、しっかり食べないと身体が持ちませんでしたし。それに、甘いもののない生活なんて非現実的です。

欲しい時には良質なスイーツを食べます。簡単に言うと、安いものを大量に、ではなくたとえ高価でも心から欲する良質なものを少量。同じ値段なら量より質。食事は身体を作るものであり同時に気分を創るものでもあると思うの。自分がいい気分で生きていけば、人生にもいいエネルギーが循環する。そうしたらいろいろなことにエネルギーがむかうでしょう? ワークアウトを続けるためにも大切なことよ。

----美しい身体を目指すうえで、リスキーなことがあるとしたら、何ですか。

メアリー ひとつだけ間違えないで欲しいのは、ワークアウトは自分の身体をいじめるためにやるのではない、ということよ。自分を快適にするためにやるのだということを忘れないでください。

----『バレエ・ビューティフル』はライフスタイル・ビューティフル、にもつながりそうですね !

メアリー そうね、いつかトータルでそういう提案ができたら素敵だわ !

●DVD『バレエ・ビューティフル』
カーディオ・ワークアウト
エッセンシャル・ワークアウト
発売・販売元:日本コロムビア
2枚組¥5,040(税込)

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[インタビュー]
浦野芳子

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