パリ・オペラ座の超新星! オニール 八菜にインタビューしました!

----2013年のバレエ・アステラスのレセプションでお目掛かったことがありました。あの時はフロロン・メラックと『眠れる森の美女』のグラン・パ・ド・ドゥを踊られましたね。それから、随分、いろいろなことがありました。

オニール バレエ・アステラスに出演した時は、オペラ座と正式契約した後でした。その後、ほんとうにいろいろなことがありました。私が思っていたよりもずっと早く、いろいろな役を踊らせてもらったり、オペラ座のコンクールでも毎回、上に上がることができて、想像よりもずっと進行が早い感じです。でも毎日毎日ひとつずつ練習してきて、その早い進行の間でも練習を重ねて、この短い間でも進歩してきたと思います。ですから実感として、早過ぎてトントン拍子に進行した感じではありません。 今から2年前はまだ、カンパニーに入ったばっかりだった、と思うと「すごいなー」、とも思いますが、なんだか毎日がとても長いという感じです。

----そうですか、それだけぎゅっと凝縮した経験を積まれたということですね。
オペラ座と正式に契約しないとコンクールには出られないわけですから、あの2年前はまだコンクールにも出ていなかったわけですね。


オニール 入団するためのオーディション(コンクールとも呼ばれている)は、受けていました。だんだん難しくなっていくんです。2年目の時は、もう1年間カンパニーに在籍していましたし会場がスタジオでしたから、楽ではなかったですが上手くできました。3年目のオーディションが一番辛かったです。

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これで入団できなければ、自分としては違うカンパニーに行こうと思ってました。でもやはりオペラ座には絶対入りたい、と思っていましたから、一番プレッシャーを感じました。

----審査員は昇級のコンクールと同じように見ているわけですね。

オニール ええ、でも舞台ではなくてスタジオです。白のレオタードで踊りますから、スクールのテストみたいで隠れるところはないですし、一番たいへんでした。

----そうですか、では昇級のコンクールとは感じが違うのですね。

オニール 全然、全く違います。
昇級コンクールのほうは、1人でガルニエ宮の舞台でヴァリエーションを踊れる、というだけでも私はとても嬉しかったです。

----昇級はとても順調ですね。

オニール ええ、コリフェに昇級した時は1位で、スジェになった時は2位でした。

----オペラ座のスジェは、今、激戦区だと聞いていますが、いかがですか。

オニール そうですね、スジェのみなさんとても上手な人ばかりです。テクニックが違うとかではなく、みんな踊り方が違って競い合っているということですね。年齢的には私が一番若いです。ベビー・スジェです!(笑)

----もう何回も聞かれたと思いますが、『白鳥の湖』の主役を踊ることになった時、どなたから告げられたのですか。

オニール 実際には芸術監督のミルピエが教えてくれました。クラス中にバーを使ってフォンデュが始まった時でした!「オデットをあと3週間で踊ることになったからね」と、英語で言ったので周りの人にはその時は分らなかったと思いますが、もうそこから私はドキドキしちゃってクラスに集中できなくなって、クラスが終わりました。

----ミルピエは、オニールさんとは英語でコミニュケーションできますからね。

オニール ええ、でも何時もはフランス語です。私が英語がわかるので、時々、英語が混じることがあります。正式契約してからまだ1年半の時でした。

----1年半で『白鳥の湖』の主役を踊ることになった! すごいですね。

オニール 主役を踊る前はだいたい、何かの役を踊る場合が多いのですが、私にとってはスジェになってから初めての舞台『白鳥の湖』のパ・ド・ドロワがデビューでした。そのリハーサル期間に言われて、私はまだ何の役も踊ったことがなかったのです。デビュー前に主役を告げられわけで、私自身が一番びっくりしました。

----さらにそのオデット/オディールを踊った舞台を観ていたラコットさんから、『パキータ』を踊るように言われたわけですね。ラコットさんから告げられたのですか。

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オニール いえ、『パキータ』はアニエス(・ルテステュ)がコーチしてくれていたのですが、『白鳥の湖』が終わった2日くらい後に、彼女から電話がかかってきて、「聞いた、聞いた?」と言われたのですけど、私は何も知らなかったのです。「まだ内緒だけど、多分踊るから、今夜からビデオ観て練習しなさい」と言われました。『パキータ』の主役を言われたのは、本番の2週間半前でした。

----振りを覚えるだけでもたいへんでしょう。

オニール そうなんです。『パキータ』は第1幕で、ヴァリエーションを4つも続けて踊らなければなりません。振りを覚えるだけではなくて、体力的にもとてもたいへんで、疲れます。初めから全部続けて練習しておかなければなりませんから、たいへんでしたが、すごく楽しかったです。
『白鳥の湖』の時は、ヤニック(・ビトンクール)のデビューでもありました。私にはとても良いパートナーで、二人のコネクションもすごく良かったです。『パキータ』の時のパートナーはマチアス(・エイマン)で、エトワールなのでそれだけ経験も多いじゃないですか。ほんとうにプロだな、エトワールとはこういうものか、と思いました。

----そうですね、パートナーも違うタイプのダンサーと踊ったわけですね。

オニール 「エトワールさん、スジェですみません」という感じでした。マチアスは舞台に立つとオーラがすごいです。それが私にも伝わってきて、それが何か私のパワーになるようにも思いました。
マチアスもラコットさんのミューズじゃないですけど、すごくお気に入りのダンサーなのです。ですから、二人一緒に踊れてラコットさんは満足だったと思います。でも怪我人が多くて結局、私は二回舞台がふえましたが、それもラコットさんがマチアスと踊って欲しいということでした。それからコペンハーゲンのツアーでも『パキータ』を踊りました。とてもラッキーでしたね。

----もちろん、ラッキーもありますが、結局、きちんと踊れなければ何もすすまないわけですからね。しかし、疲れましたね。

オニール そうですね、『白鳥の湖』は特に、2幕のアダージオでは軸足が変わらないので、左足が死にそうになってたいへんでした。『パキータ』は1幕がすごい辛いんです。ヴァリエーションが続いて体力的にはたいへんなんですけど、2幕でクラン・パが始まるともう大丈夫です。いくらたいへんでも結局、私には踊るしかチョイスがないですからね。

----『白鳥の湖』も2幕がやっと終わって、3幕になると今度は黒鳥としてエネルギーを出して、王子にアピールしなければなりません。

オニール そう言う点でもコール・ド・バレエで踊った経験は大切です。疲れている時は、目をしっかり見開いてパートナーやコール・ド・バレエを見詰めると、重心が前に掛かって呼吸がし易くなってしっかりします。このことを頭に入れて踊っています。周りの人もみんなお友だちですから、しっかりと支えてくれますし。
ロットバルトを踊ったカール(・パケット)には、いつもすごく良くしてもらっています、今回もデビューでしたし、しっかり助けてくれて、エトワールというのはやっぱり違うな、と実感しました。
結局、『白鳥の湖』と『パキータ』の後は、脚を挫いちゃって他の役は踊ることなくシーズンが終わってしまいました。

----そうですか、たくさん踊られたので疲れも出てしまったかも知れませんね。


オニール やはり、気が緩んでいるわけではないのですが、あまり慎重にならなくてもできると思われるような場面で、思わず知らず傷めてしまいます。じつはそう言うところが一番大切なのですけれど。

----『白鳥の湖』は誰に習いましたか。

オニール 『白鳥の湖』はクロチルド・ヴァイエです。すごくたくさん練習しましたので、クロチルドにも感謝しています。

----そうでしたか。まず、何はともあれ、パリ・オペラ座の主役デビューおめでとうございます。私も長いことバレエの隅っこに関わる仕事をしてきましたが、あのパリ・オペラ座で主役を踊り、エトワールの有力候補といわれるダンサーと、日本語でコミュニケーションをとることができるようになるとは、夢にも思いませんでした。とてもうれしいです。ありがとうございます。
フォーサイスの『Pas./Parts』も踊られましたね。


オニール はい、先シーズンの最初の公演です。初めての大人数で踊らないバレエへの出演でした。難しかったですが、すごく楽しかったです。同時にクラシック・バレエの動きで構成されている『エチュード』も踊りましたが、フォーサイス作品はクラシック・バレエとは違う動きでしたから、リハーサルは少し辛かったです。筋肉痛にもなりましたがとても良い舞台を経験しました。

----モダンやコンテンポラリーの作品を踊るのもお好きですか。

オニール 好きです! オペラ座ではあまり踊ったことはないのですが。

----ミルピエが今度はフォーサイス作品を主演させよう、とか思っているかも知れませんよ! 来シーズンの予定は決まりましたか。

オニール エトワールとプルミエのダンサーたちはおそらく、分っていると思いますが、私たちはキャスティングが発表されないと分りません。

----楽屋に貼り出されるまで分らないのですか。

オニール ええ、そうです。最初のプログラムでは、ミルピエの新作とバランシン作品『テーマとヴァリエーション』のバレリーナ役のアンダースタディは決まっているので、踊らせてもらえる機会があるかも知れません。自分の衣裳はちゃんとありましたけど。

----次は、ミルピエとバランシン作品を踊ることになるかもしれないわけですか。全幕物の主演とまた、全然違いますね。ミルピエ監督もいろいろと新しいことを試みていくようですね。

オニール そうですね、でも、オペラ座にフランスの素晴らしいカルチャーがあるということはすごく大切だと思います。もちろん、変わっていくものはたくさんあると思うのですが、他のカンパニーと同じになってフランスのスタイルが無くなってしまうというのはとても残念だと思います。がんばってここまでフランスのテクニックを勉強してきたので・・・。

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----ミルピエはダンサーと直接コミュニケーションをとったりするのですか。

オニール そうですね、よくクラスには来ています。たいへんお忙しい方ですでど、彼自身ダンサーでしたし、とっても優しい方ですごく話し易いです。

----今年は、ドラマティックな年になりましたが、夏はどのように過ごされるのですか。

オニール 東京に1週間いて、帰国してからダンサーの友だちと一緒にスペインに行きます。

----いいですね。ゆっくり休暇を楽しんでください。
ところで、これから踊ってみたい作品や振付家を教えてください。


オニール ええ、そうですね、私の夢のバレエは『白鳥の湖』でしたが、それをデビュー作品として踊ってしまいました。いろいろな振付家の作品を踊ってみたいですが、次に踊りたいのは『ジゼル』です。オペラ座では来年『ジゼル』を上演する予定がありますが、これは踊れないだろうなと思っています。

----あ、そうだ。オペラ座ではプティ・メールになっていますか。

オニール はい、全部で5人の子どもがいます。

----5人も! 女の子ですか。

オニール 全部女の子です。サラちゃん(入学して2年目の4年生)、それから日本人と確かアイルランド人とのハーフの子でマヤちゃん(入学したばかりの6年生)。彼女は時には日本語の手紙をくれたりします。もう1人はクレモンスちゃん(入学して1年目の5年生)です。コペンハーゲンのツアーで『パキータ』を踊った時は3人とも来ていて楽しかったです。時々、練習を観て欲しいとか、相談にのったりすることもあります。可愛いです!!

----子どもたちのほうが、プティ・メールを選ぶのですか。

オニール そうです。あと2人いますが、その3人とはわりと良く話をします。

----来シーズンはやはり「デフィレ」から始まるのですか。

オニール はい、次からは「デフィレ」も曲が変わって新しくなります。

----そうですか。来シーズンにそなえて生活のリズムも、もうすっかりオペラ座のダンサーとしてすすんでいますね。あんまりプレッシャーをかけるのは良くないと思いますが、われわれもオニールさんがエトワールに昇級する日を夢見て、心から楽しみにしています。
今日はお忙しいところいろいろとお話ししていただいて、とても楽しい時間を過ごすことができました。ほんとうにありがとううございました。

インタビュー&コラム/インタビュー

[インタビュー・構成]
関口紘一

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