二度の『パキータ』主役を踊り終わって オニール 八菜

----5月10日午後1時 モンマルトルに近い9区のカフェで

S 『白鳥の湖』の舞台を見たピエール・ラコットさんが、八菜さんに白羽の矢を立てて『パキータ』の主役が決まったのですね。

オニール はい。とてもうれしかったです。

S 『パキータ』の振付家から「自分がイメージしたヒロインはあなただ」と指名されたというのは大きな意味がありますね。

オニール そうですね。

S 9日夜のカーテンコールでもラコットさんは舞台に出てきて、本当にうれしそうにマチアス・エイマンと八菜さんの頬にキスしていました。

オニール 実は練習が今回もまたプレ・ジェネラルまで二週間しかなかったんです。『白鳥の湖』よりちょっと短いくらいでした。第2キャストでしたが、舞台の通し稽古があったのは幸運でした。

(C) A.Koizumi

(C) A.Koizumi

S 『パキータ』を踊るのははじめてですか。

オニール コール・ド・バレエの一員としてはすでにカナダで踊っています。でも今回は全然違いました。指導してくれたのはアニエス・ルテステュさんです。コール・ド・バレエとヒロインでは体力的にもすごく違います。テクニック的によりむずかしいということはありませんが、体力的にはかなり疲れます。アニエス(ルテステュ)が言うには、『パキータ』が一番むずかしい。次が『ドン・キホーテ』、その次が『白鳥の湖』ということです。
第1幕はヴァリエーションが4つつながっていて、休むひまがありません。

S リハーサルで特に注意を受けた点がありましたか。

オニール ピエール・ラコットさんから重心を前に乗せて踊るように指示されました。私はちょっとなんとなく後ろに引いている感じなので、その点を注意されました。スタイルの違いですね。

S 積極的な女性というイメージを強調するということでしょうか。

オニール そうでしょうね。

S 第1幕第1場でパキータは、舞台を左手奥から去ろうとしているリュシアンが背を向けている時にさっと近づいていって、相手が振り向く前になるとすっと顔を隠す場面。少女らしい恥じらいながらも相手にちょっとでも近づいて気持ちを伝えたい、という気持ちの動きがはっきり演じられていました。

オニール そうでしたか、ふふ(笑)。

(C) 萩野真理子

(C) 萩野真理子

(C) 萩野真理子

(C) 萩野真理子

S マチアス・エイマンと初めてパートナーを組んだ印象はいかがでしたか。

オニール ともかくすごく楽しかったです。彼のオーラがこちらにも伝わってきて、勇気がもらえました。やはり本物のプロだな、と感じて安心して踊れました。

S 彼は年齢的にも八菜さんに近く、これからも二人のカップルは他の作品でもぜひ見てみたいです。

オニール どうでしょうね。私も彼といっしょに出られるといいけれど・・・すごい仲良しで気が合うんです。

S これで『白鳥の湖』でオデット/オディールを一回、パキータで二回(その後配役変更で三回)と一気にスポットライトが当たったシーズンになりましたね。

オニール あと一回だけ5月の終わりにコペンハーゲンで『パキータ』を踊るだけです(その後キャスト変更で5/16にもパキータを踊った)。その次は『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』にコール・ド・バレエの一員として出演します。
それから7月23日と24日に上海で、昨年「若いダンサーの夕べ」で踊った『天井桟敷の人々』のパ・ド・ドゥをヤニック・ビッテンクールと踊ります。それとはじめてですがジョゼ・マルティネズ振付の『ミ・ファヴォリータ』を踊ります。ジョゼはもう5月末からの『天井桟敷の人々』の準備でパリに来ています。アニエス・ルテステュが彼をよく知っているので彼女から話を聞いていますが、練習はまだです。去年何回かリハーサルをしていただきましたが、ジョゼは本当にいい人ですね。
8月は東京にチャコットの撮影でちょっと帰って、それからパリに戻り、お友だちとスペインに旅行します。

S 来年のシーズンはプログラムが大きく変わりますが、どの作品を踊りたいですか。クラシックは『ロミオとジュリエット』『ラ・バヤデール』『ジゼル』ですね。

オニール モダンがたくさんあって、知らない作品もあります。クラシックは三つともすごい素敵なバレエなんでどれも踊りたいですけど、『ラ・バヤデール』は踊ったことがありますけれど、『ジゼル』と『ロミオとジュリエット』はまだなのでできたら踊りたいです。

S 配役が決まるのは直前ですね。

オニール ええ。それからウイリアム・フォーサイスをはじめてこの間踊ったんですけど、勢いがすごいので、できたらどの作品か踊りたいですね。あとはわからないです。楽しいプログラムだといいんですけれど。

S バンジャマン・ミルピエ新バレエ監督になって、プルミエで踊るはずでもゲネプロのできがもう一つだと別の人が踊ることもあって、若いダンサーが起用されることが増えているので『パキータ』で高い評価を得た八菜さんにはいろいろなチャンスはあると思います。次のシーズンがたのしみですね。お疲れのところありがとうございました。

(C) 萩野真理子

(C) 萩野真理子

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三光洋

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