公演直前インタビュー:沖 香菜子

ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』東京バレエ団初演のジュリエットを踊る 沖香菜子インタビュー

----ボリショイ・バレエ学校に留学されて、2010年に東京バレエ団に入団されました。それまではクラシック・バレエ中心だったと思いますが、デビューは11年の『ダンス・イン・ザ・ミラー』ですね。それまでにベジャールやノイマイヤーの作品はご覧になられていましたか。
 それまではそんなに観たことはなかったのですが、バレエ団に入ってから観て、非常に興味をもちました。

----10年に入団されて12年にはもう主役デビューされています。とても順調に成長されいますね。でも全幕を通して踊られるということはたいへんですね。

 そうですね、体力的にもたいへんですが、主人公の気持ちの移り変わりを表現することが難しいです。

----そうですね、全体もそうですしシーンの中でも変化しますからね。体力的にはいかがですか。
 多分、体力的には他の方々にあまりひけはとらないと思います。

----全幕を踊る時は、やはり全体の中で力の配分などを考えますか。
 リハーサルですべて全力を出し切るようにして、徐々に慣れていけば、本番でも全力で臨めると思っています。

photo : Nobuhiko Hikiji

----昨年、主役を踊った『ラ・シルフィード』はいかがでしたか。
 難しかったですけど、斎藤友佳理さんにこと細かに教えていただいたことが財産になっています。

----今回は、創立50周年記念公演のハイライトとなる舞台の主役を踊るわけですが、プレッシャーは感じていますか。
 そういう意味でのプレッシャーはあまりありませんが、ノイマイヤーさんの全幕作品を踊らせていただくという意味で恥ずかしくないように、と思っています。せっかく踊らせていただくのですから、よりたくさんのことを吸収して成長していきたいです。

----そうですか、ノイマイヤー作品を踊られるのはまったく初めてですか。
 初めてです。

----ではやはり、新鮮といいますか、古典や他の振付家の作品と違いがありますか。
 そうですね。今まで経験したことのないリフトとか、動きの流れなどがあるのですが、無理のない動きなので、音と動きがすぐに身体へ自然に入ってくる振付だと感じています。ただ、初めての振りなので最初はやはり筋肉痛になりました。

photo : Kiyonori Hasegawa

photo : Kiyonori Hasegawa

----やっぱり、リフトがたいへんですか。
 たいへんです。自分だけの問題ではなくて男性ダンサーとのパートナリングの問題がありますから。自分が100パーセントの力を出せば上手くいくという訳ではなく、男性ダンサーに頼ることで上手くいくこともあるので。やはり、信頼関係ですね。

----その点、ロミオ役の柄本弾さんはもうキャリアもあるし。
 はい。信頼しています。

----リフトをするときは緊張しますか。
 ためらうと失敗するので、躊躇せず出来るよう、踏み切り場所や、身体の預け方などを、すべて消化してからやるようにしています。パートナーと打ち合わせをしっかりしておくことがとても大切だと思います。

-----今までノイマイヤーの作品をご覧になっていてどんな印象をお持ちでしたか。
 東京バレエ団が上演した『スプリング・アンド・フォール』を観ました。全体の動きが音の流れに乗っているので、すごく難しいことをしていても何気ない動きのように見えるところが素敵だな、と思いました。

-----ノイマイヤーといえば、今、世界中のバレエダンサーがその作品を踊りたがる振付家ですし、ガラ公演といえば必ずといっていいほどノイマイヤー作品が踊られます。そういう振付家の出世作となった全幕物の主役を踊るわけですから、素晴らしいことだと思います。
ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』にはどんな特徴がありますか。

 ノイマイヤーさんは「ロミオ」と「ジュリエット」はほんとうに少年と少女であってほしいとおっしゃっていました。ジュリエットはバレリーナが扮しているのではなくて、ただの少女であり、ロミオもただの少年である、そこが一番の大切な点だと思います。
自分の中の課題は、演じていることがわからないくらいジュリエットという少女になりきるということです。

photo : Shinji Hosono

photo : Shinji Hosono

-----物語の始まりの頃は、ロミオはロザリンデに恋をしています。ジュリエットも彼女のことが大好きで、目標としているのですよね。
 ジュリエットは彼女のようになりたいと思っていますが、そうはなれない女の子なんです。ジュリエットは完璧ではありませんが、ロミオはあれこれ作り上げられた女性ではない、素の少女に惹かれるのではないでしょうか。逆にジュリエットは、何もかもが完璧な男性であるパリスではなくて、ちょっとおもしろい少年っぽいロミオに惹かれていく、お互いがそういう関係になっているのだと思います。

----そういうふうにロミオとパリス、ジュリエットとロザリンデを対照的に描いているんですね。
なるほど、そういう登場人物の気持ちが、ノイマイヤーの振付では音楽と一緒に巧く現れているんでしょうね。まだ観てないですけど、なんだかとてもわかるような気がします。
それから旅芸人の一座が登場するんですよね。シェイクスピアの『ハムレット』とか、ノイマイヤーの『椿姫』などにも劇中劇が上手く使われていますからね。
踊っていて一番難しいのはどういった点ですか。

 やっぱりリフトですね。流れが次から次へと変わっていくのでたいへんです。高くリフトされている状態で、ポーズが変わっていくんです。その変わり目をスムーズな感じに、難しい技をやっているようには見せないように踊ることが難しいです。

-----どのシーンに大きいリフトがあるのですか。
 ロミオと出会う舞踏会のシーンとバルコニーのシーンと寝室のシーン、三つの大きなパ・ド・ドゥそれぞれに難しいリフトがあります。

-----そうですか、ダンサーの方はたいへんですが、観客にはとても楽しみです。
今まで、他の振付家の『ロミオとジュリエット』はご覧になったことはありますか。

 マクミラン版の『ロミオとジュリエット』はアリーナ・コジョカルさんのジュリエットで観ました。それから吉田都さんのロイヤル・バレエ団の日本公演も観ました。あの時は舞台袖で観ていたので、とても印象的でした。
私たちダンサーは、このノイマイヤー版の『ロミオとジュリエット』の舞台のビデオを観ることも禁じられていました。

-----そうなんですか。
 ええ、ノイマイヤーさんが先にビデオを見ないように、とおっしゃったんです。先入観をもたないように、また、振付が撮影された当時と違っている部分もあるので、見ないでほしい、ということでした。
昨年、ノイマイヤーさんが来日された時に、団員全員に『ロミオとジュリエット』に取り組むにあたっての心構えを話してくださいました。
この作品にはコール・ド・バレエに至るまで登場する人物一人一人にすべて役割があります。そのためにどんな小さな登場人物にも役名が付けられています。一人一人がこの作品を形成する一人だとはっきりと意識して欲しい、と説明されました。

-----ご自分ではだいたいどういった役柄を踊るのが好きなのですか。
 そうですね、元気がよくて活発な役が好きです。ですからもちろん、ジュリエット役も大好きです。

----ジュリエットはできることはすべてやったけれども悲劇の結末ですよね。
 そうですけれども、ジュリエットはロミオが死んでいるのを見て一緒に死ぬので、悲劇だけではないものがあると思います。

-----それではリハーサルでお疲れのところをありがとうございました。『ロミオとジュリエット』ほんとうに楽しみにしています。

訂正/一部に「ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』日本初演」という表記がありましたが、正しくは「東京バレエ団初演」です。訂正いたします。

東京バレエ団創立50周年シリーズ 2
ジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』全3幕
(東京バレエ団初演)

●2014.2/6(木)〜9(日)
●出演[ジュリエット/ロミオ]・開演時間=
2/6(木)18:30 沖香菜子☆/柄本弾☆
2/7(金)18:30 エレーヌ・ブシェ/ティアゴ・ボァディン
2/8(土)14:00 沖香菜子/柄本弾
2/9(日)14:00 岸本夏未☆/後藤晴雄
☆1/14発表配役変更
●S席11,000円/A席9,000円/B席7,000円/C席5,000円/D席4,000円/E席3,000円
※学生券1,000円(1/10(金)発売開始)
※ペア割引券あり(S・A・B席)(NBS(電話、WEBチケット)のみで発売)
※エコノミー券2,000円(1月10日(金)よりイープラスのみで発売。)
※親子ペア割引券(S・A・B席)(11月22日(金)より発売)
●お問い合わせ=NBS http://www.nbs.or.jp/

www.nbs.or.jp/

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[インタビュー]
関口紘一

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