オーレリ・デュポンとともにこの夏来日し指導を行う
パリ・オペラ座バレエ団教師 アンドレイ・クレム インタビュー

----- この夏に日本でバレエの指導してくださるとのこと、うれしく思っております。
今回、日本の子どもたちに指導しようと思われたきっかけは何ですか。

クレム 今回、日本のダンサーのみなさんを指導する機会を得て、とてもうれしいです。
日本のバレエ文化が、この30年ほどで飛躍的に発展したことに心をうたれたことがきっかけです。私は1985年、まだボリショイ・バレエ・アカデミー(ボリショイ・バレエ学校)の生徒だったときに、初めて日本を訪れました。それ以来、日本のバレエがどれほど発展してきたのか、この目できちんと見てきました。この30年で、世界のバレエ界は、本当にたくさんの素晴らしい日本人ダンサーと出会ったと思います。現在では、ほぼどのカンパニーにも魅力的な日本人ダンサーが在籍していますね。
そしてもちろん、この10年間で私がパリ・オペラ座バレエで経験したこと、学んだことのすべてを日本のダンサーのみなさんに伝えたい、と思ったことも日本で指導することを決めたきっかけです。さらに、世界的なスターダンサーであり、パリ・オペラ座バレエ団の新しい芸術監督となるオーレリー・デュポンとともに指導できるということも魅力的でした。

アンドレイ・クレム © Maria-Helena Backley

アンドレイ・クレム
© Maria-Helena Backley

----- 日本の子どもたちに一番伝えたいことはなんですか。

クレム 私が、ロシアとフランスで学んで得た経験を伝えたいと思います。オーレリーとともに、スペシャルプログラムを用意し、このプログラムに一致したレパートリーを選んでいます。

----- クレム氏は、ロシアやドイツで踊り、フランス、イギリス、オランダなどで教師をされていますが、多くの国々のバレエを経験したことで良かったことはどういう点ですか。

クレム 今日、バレエ・カンパニーのレパートリーは、どこもとても似通ってきたものになりました。ダンサーは、あらゆるスタイルの振付け・ムーヴメントをこなせるようになる必要があります。教師は、それを受けて、出来る限り多くの異なったスタイルを知り、そして自分のクラス・レッスンのために、最も良いものを選択する必要があると思います。ダンサーが身につけなければいけない、ありとあらゆることを、準備する必要があります。

----- クラス・レッスンを受けることで最も大切なことは何ですか。

指導するアンドレイ・クレム氏 © Maria-Helena Backley

指導するアンドレイ・クレム氏
© Maria-Helena Backley

クレム 最も大切なことは、きちんとウォームアップをして準備を整え、早く学びとり、音楽をよく聞きながら、毎日のクラス・レッスンに参加することです。指導者の注意やアドバイスにきちんと耳を傾けることも大切だと思います。

----- 日々のクラスを教えることで、気をつけている点はなんですか。
また、アンシェヌマンを組む際にどのような点を重要視していますか。


クレム ダンサーが新しいことを学べるよう、そしてすでに学んだことを思い出せるように。さらには次のクラスやリハーサルに向けて、きちんとウォームアップと準備ができるよう、ダンサーのためになるあらゆることを行おうと思って指導をしています。
アンシェヌマンを組む際は、いろいろな点に気を配っています。いま、ちょうどそうしたことに関する本を書いているんです。今年か来年に発表できればと思っています。あらゆる疑問に対して、たくさん答える予定です。

----- オーレリー・デユポンさんのような世界最高水準の技術と身体能力をもったダンサーのヴァリエーション・クラスを受ける時に、注意すべきことは何でしょうか。

クレム "バレエの巨匠" から学べるこの素晴らしい機会を、まずは楽しむことが大切ですね。

----- あなたのクラスを受けて、オーレリー・デュポンさんのヴァリエーション・クラスを受ける時に忘れてはならない大切なことは何ですか。

クレム 私のクラス・レッスンの延長線上にヴァリエーション・クラスはありますから、ヴァリエーション・クラスのために、包括的に準備を整えることが大切だと思います。

© Maria-Helena Backley

© Maria-Helena Backley

© Maria-Helena Backley

© Maria-Helena Backley

----- ヨーロッパのバレエを学ぶ生徒たちと日本の生徒たちには、異なった点がありますか。それぞれの傾向がありますか。

クレム 私は世界中のあらゆるところで、指導を行っていますが、私にとっては、どの生徒も同じ生徒です。私が知っていることを彼らに教え、伝える義務があることにかわりはありません。
とはいえ、日本人生徒に関して言いますと、非常によく訓練されていて、学びとるのがとても早いです。こうした姿勢は、指導者にはとてもうれしいものです。

----- ダンサーとして大きく成長した生徒たちに共通した特徴はありますか。


クレム まず、どの生徒も舞踊芸術を愛しています。そしてきちんと訓練されていて、自身でも鍛錬を怠らないところだと思います。

----- 日本のカンパニーの公演をご覧になった感想を聞かせてください。

クレム 日本のバレエ・カンパニーは、いつも力強いエネルギーを持って踊り、そして先に述べましたように、常に発展を続けていると思います。

----- プロのダンサーを目指す生徒たちに一言アドヴァイスをいただけますか。


クレム 毎日レッスンに参加し、自己鍛練を怠らないことが大切です。また可能な限り現在のバレエ、そしてバレエの歴史についての両方を知る必要があると思います。本を読んで、人から学びを受け、周りの人々と自分自身の行いに愛と尊敬を持ってほしいと思います。役柄を深めたり、踊ったりするときに、こうしたすべてのことが、ある日必ず必要になってきます。

© Maria-Helena Backley

© Maria-Helena Backley

アンドレイ・クレム(Andrey Klemm)

1967年、モスクワ出身。
1977年、ボリショイバレエアカデミー入学。1985年、モスクワクラシックバレエに入団、ソリストとして活躍する。その後ドイツへ渡り、ボン州立バレエ、ベルリン国立バレエのソリストを務める。
同時にバレエ教授法の勉強を開始し、アメリカとロシアの大学にて学ぶ。ベルリン国立バレエの教師を経て、2007年よりパリオペラ座バレエの教師となる。現在、英国ロイヤルバレエ、オランダ国立バレエにも定期的にゲストティーチャーとして招かれ、世界中で精力的に指導を行っている。
また中村祥子氏、イザベル・シアラボラ氏、アマンディーヌ・アルビソン氏などが出演する、多数のバレエDVDのプロデュースも行っている。

▼ワークショップの詳細はこちら
http://www.le-temps-lie.org/events

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