「バレエ・ローズ」公演直前インタビュー:池田理沙子(新国立劇場バレエ団)、オディールを踊る

----ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)でブロンズメダルを受賞され、スカラシップでハンガリー国立ブタペスト・バレエ学校に留学されたのですね。確か、牧阿佐美バレヱ団の中川郁さんも行かれていたのではないですか。

池田 そうです。私は中川さんと入れ替わりで行きました。

----たくさん踊れる学校とお聞きしました。

池田 そうですね。一つの演目を1日2回公演で2週間とか、とにかく公演数が多かったのでたくさん踊らせていただきました。『くるみ割り人形』だったら金平糖の精を踊って翌日は花のワルツで、夜はまた別の役と言う風で体力が必要でした。バレエ学校の公演がメインですが、時にはバレエ団の公演にも出演させていただきましたので、カンパニーの人たちとクラスレッスンを受けることもあり良い経験をさせていただきました。

----オペラハウスはいかがでしたか。バレエは盛んな国なのでしょうか。

池田 ブタ地区とペスト地区の境界のあたりにあり、オペラハウスは本当に立派で壮麗な建物でした。バレエを見ることが人々の生活の中で日常的なことになっていて、学生チケットではありましたが、数百円という値段で公演を観ることができました。

----ニジンスキーと結婚したロモラはハンガリーの貴族でした。バレエ・リュスもハンガリーでとても人気があったそうですから、元々バレエが盛んな国なのかもしれませんね。チャールダッシュが民族舞踊として有名ですね。

「バレエ・ローズ」リハーサルより 池田理沙子(新国立劇場バレエ団) 井澤 駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

「バレエ・ローズ」リハーサルより
池田理沙子(新国立劇場バレエ団)
井澤 駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

池田 バレエ学校の授業でもチャールダッシュの動きも習いました。

----言葉はどうでしたか。

池田 バレエ学校の先生は少し英語も話されるのですが、ほとんどハンガリー語です。私はホーム・ステイでしたが、そこのお宅の老夫婦はハンガリー語しか話しませんでした。でもなんとか、日常会話はできるようになり、ハンガリー人のお友だちもできました。

----そうでしたか。バレエを習っていたからこそできた経験かもしれませんね。
それからその他のコンクールでも多く受賞されていますが、コンクールの経験というのは、主役を踊るようになられてからも役に立っていますか。

池田 小さい時は夢中で何も考えずに出ていましたが、だんだん気持ちや身体の変化もあり、踊りを研究するようになったり、意識が深まっていきました。舞台に立つ回数はコンクールに参加しただけ増えているので、舞台度胸や気持ちのコントロールといった面でプラスにはなっているのかな、と思っています。

----主役デビューとなった伊藤範子演出・振付の『ホフマンの恋』のジュリエッタ役はいかがでしたか。

池田 はい、娼婦という役が初めてでしたし、自分でもイメージが湧かなくて、「娼婦とは」から始まって同じオペラを見たり、いろいろと調べて、本当に勉強になった役だったなと思っています。すごく難しかったです。

----新国立劇場バレエ団に入団されたわけですが、雰囲気はいかがですか。

「バレエ・ローズ」リハーサルより 井澤 駿

「バレエ・ローズ」リハーサルより
井澤 駿

池田 新国立劇場バレエ団はすごくアットホームな感じです。芸術監督をはじめ先生方も優しく教えてくださいます。制作などそれぞれの部署があり、そのスタッフの方からもアドヴァイスがいただけますし。とても温かい環境で励ませていただいております。バレエ団の中にスタジオと劇場がありとても素晴らしい環境です。

----そして『シンデレラ』で全幕主役デビューして、大注目を集めるということになりました。アシュトンの振付はいかがでしたか。

池田 本当に難しかったです。アシュトンの振付ならではの独特な決まりがあり、アームスは一直線にとか、顔のつけ方とか。それからアシュトンの音の取り方が複雑で、一年目に踊らせていただいた時には振りをこなすのに精一杯で、また二年目には一年目の反省を生かして、より研究を重ねて少しでも成長出来たかなと思うところはあるのですが、それでもたくさんの課題が残っています。一つの音の中に二つの動きを入れたりとか、すごく速い動きの直後にタメのあるゆっくりとした動きになるとか、そういうところをコントロールするのがとても難しかったです。

----いきなり難しい踊りでデビューされて、しかも全幕ほとんど出ずっぱりですよね。

池田 はい。第一幕の灰かぶりのシンデレラと第二幕の舞踏会のシーンのシンデレラではコントラストも見せなければなりませんし。

----演じるだけでもたいへんでしょう。大成功で良かったですね。
その後はローラン・プティの『コッペリア』、次がウエイン・イーグリングの『眠れる森の美女』ですね。アシュトンとプティとイーグリングって、古典と言ってもちょっと難しそうな振付ばかりが続きましたね。

池田 そうですね。難しい作品の連続でした。

----プティの振付はいかがでしたか。

池田 他の『コッペリア』とはまた違う、小洒落たフランス風です。お茶目なスワニルダで難しかったですけれどもすごく楽しかったです。

----かつてまだプティが健在の頃、日本でコッペリウスを踊ったことがあってやはりすばらしかったです。靴に衣裳を結んでね。

池田 はい、舞台スタッフさんが二幕はずっと机の下に隠れていて、その時になると靴に結び付けるんですね。

----ああ、そうでしたか。 イーグリングの『眠れる森の美女』はいかがでしたか。オーソドックスな振付なのですか。

池田 私は初演の後の二度目に踊りましたが、少しづつイーグリング・ヴァージョンが加わっていて、初演の振りで覚えていたら、再演では少し変えていました。

----「バレエ・ローズ」公演では『白鳥の湖』のオディールを踊られるわけですが、以前に踊られたご経験はありますか。

池田 自分の出身の教室で第3幕のオディールを踊ったことがあります。

----どうでしたか、悪役というか。

池田 そうですね、コンクールでは強く幕を意識せず、ヴァリエーションをという感じでしたので、今回は3幕の黒鳥だけでなく全幕を感じて踊りたいです。3幕だけなので難しいとは思いますが、白鳥を彷彿させるオディールを表現したいです。

「バレエ・ローズ」リハーサルより 池田理沙子、井澤 駿

「バレエ・ローズ」リハーサルより
池田理沙子、井澤 駿

----ジークフリート王子を誘惑しなければならないわけですよね。

池田 そうですね。目線の使い方とか、手の動かし方ひとつにもどこか魅力のある部分を作って、ジークフリートを魅了させなければなりません。もっともっと研究していかなければなりませんね。
黒鳥は、もちろん、強いイメージがあると思います。強い黒鳥で魅了させながらどこか白鳥の、腕の動きもそうですが、その部分をイメージさせるような動きをこれから作っていきたいと思っています。

----今回のパートナーは井澤駿さんですね。

池田 井澤さんとは、これまでに何度も一緒に踊らせていただいています。細かいアドバイスをたくさんくださり、出来ないところも出来るまで練習に付き合ってくれ、とても感謝していますし、ダンサーとしてもパートナーとしても尊敬しています。以前も黒鳥のグランパ・ド・ドゥを二人で踊ったのですが、その時よりもさらに成長した踊りを二人で創れればなと、思っています。

----『白鳥の湖』の第3幕のラストでは、オディールがバラの花を効果的に使うシーンがありますね。他にバレエと花というと、どういうことを思いつかれますか。

バレエ・ローズ」リハーサルより 池田理沙子

バレエ・ローズ」リハーサルより
池田理沙子

池田 バレエというとよくお花がでてきますね。『ジゼル』の第2幕ももちろんそうですが、第1幕の花びら占いもありますし、『ドン・キホーテ』の赤いバラも愛情の象徴のように使われています。私も特には意識していなかったですが、「バレエ・ローズ」に出演することになっていろいろと気がつくことがありました。

----池田さんはどんなお花が好きですか。

池田 ひまわりが大好きです。生まれが夏だからということもありますが、夏になるとひまわり畑に行ったりすることもあります。

----お好きな色というと。

池田 ピンク。黄色とか明るい色が好きです。

----最後に春休みなので小さなお客様も観に来てくださるのではないか、と期待しています。何かメッセージをいただけますか。

池田 今回の「バレエ・ローズ」は、ガラ・パフォーマンスのように良いところをクローズアップしている舞台なので、楽しんで観ていただけると思います。観に来ていただいてバレエを少しでも好きになってくださると、とてもとてもうれしいです。

----本日はリハーサルのお忙しいところ、お時間をとっていただきまして、ありがとうございました。公演楽しみにしております。

Chacott バレエ鑑賞普及啓発公演
〜ようこそ美しきバレエの世界へ〜
一夜限りのおしゃれなロマンティック・ファンタジー

Ballet Rose in Love Stories
〜バラで綴るバレエの恋の物語〜
演出・振付:伊藤範子

●2018年3月26日(月) 開場17:45 開演18:30
●新宿文化センター 大ホール

▼公式サイト
http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/balletrose/

「バレエ・ローズ」公演直前インタビュー

インタビュー&コラム/インタビュー

[インタビュー]
関口 紘一

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