「バレエ・ローズ」公演直前インタビュー:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)、ジュリエットを踊る
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----今回「バレエ・ローズ」では、『ロミオとジュリエット』のバルコニーのシーンを踊ってくださいますね。ドレスデン国立歌劇場バレエ団に行かれた時に、ベルギー人のスティン・セリスの『ロミオとジュリエット』が上演されたそうですが、これはコンテンポラリー・ダンスですか。
永橋 はい、私は研修生だったので踊っていませんが、リハーサルから見せていただきました。コンテンポラリーですね。音楽はプロコフィエフでストーリーも大きく変えていたわけではありませんが、動きはコンテンポラリーでした。ドレスデンでもコンテンポラリーが得意なダンサーたちが出演していました。
----ドレスデンはフォーサイス作品もレパートリーになっていますね。
永橋 はい、私は『アーティファクト』を踊らせていただきました。
----コンテンポラリーがお好きでしたか。
永橋 コンテンポラリーは好きでした。クラシック・バレエも好きです。
----ドレスデンはかつてデレヴィヤンコというロシア人が芸術監督でしたが。
永橋 今はアーロン・ワトキンが芸術監督で、『白鳥の湖』もクラシックですがワトキン版になっています。日本人のダンサーも5人くらい在籍していると思います。
「バレエ・ローズ」リハーサルより
永橋あゆみ、三木雄馬
(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
----谷桃子バレエ団では『ロミオとジュリエット』は踊られていますね。クルベリー版でしたが、確か1幕物でしたね。
永橋 そうです。私は好きです。『令嬢ジュリー』と一緒に上演されることが多いですね。
----クルベリーの動きはどうですか。
永橋 コンテンポラリーですね。クラシック・バレエではないです。
----今回はクラシック・スタイルで伊藤範子さんの創作による「バルコニーのシーン」で、音楽もプロコフィエフですね。
永橋 はい。私もクラシック・バレエの『ロミオとジュリエット』を踊るのは初めてです。発表会のガラで一度だけ踊ったことがありますが、ロシアのヴァージョンでした。
----今回パートナーを組む三木雄馬さんとは、もちろん、谷桃子バレエ団で踊られていますよね。
「バレエ・ローズ」リハーサルより 三木雄馬
永橋 今回、私が踊る『ロミオとジュリエット』がこの作品唯一のオリジナルの振付作品です。谷桃子バレエ団には『ロミオとジュリエット』のクラシック・ヴァージョンがレパートリーになかったので、伊藤さんもクルベリー版を踊られていたわけです。でも今回はミラノ・スカラ座に在外研修でいらして、リハーサルからずっと『ロミオとジュリエット』の公演を見てこられたので、満を持しての振付になると思いますので、踊るのがとても楽しみです。 でも、今回はプロコフィエフの楽譜にあるロミオのヴァリエーションというかソロをしっかりと踊ることになるので、ロミオの方がたいへんかもしれません。
----そうですか、バルコニーのシーンはロミオが元気良いところをいっぱいに見せなくてはなりませんからね。三木さんもロシア版は何回か踊っているでしょうから、楽しみですね。
永橋 バラも登場しますし。
----そうか、物語の流れの中にバラが登場するのですね。
お母様が長崎の方で石井獏のお弟子さんに創作バレエを習われていた、とお聞きしました。谷桃子さんは石井小浪に習われたわけですし、縁があったのかもしれませんね。永橋さんがクラシック・バレエを習得したいと思われたのは、どういうところからですか。
永橋 友だちがコンクールで入賞して動画を送ってもらい、私も踊りたいと思い山本禮子バレエ団に入団しました。厳しかったですが、仲間もいましたし、バレエが好きだったので頑張れました。
----中学2年生の時からですか。
永橋 中学1年の途中から行きました。寮があったので全国から来ていましたね。
----そうですか、それからはバレエの道を進まれたわけですね。でも、一時的に少し離れたくなった時もあった、とお聞きしましたが。
永橋 ありました。中学3年間でお腹がいっぱいになりましたので。それで高校は地元に戻って普通の高校生になりましたが、やはりバレエは続けたくて。自分に負けるのが悔しかったし、親にも負担をかけていたわけですからね。結局、佐賀の野村バレエアカデミーに入り、そこで野村先生に再び踊る喜びを教えていただきました。でも、今、考えるとその時期があったから、今日があるので良かったと思います。
----そして1999年に谷桃子バレエ団に入団されたわけですね。その頃の谷桃子バレエ団というと。
永橋 『テス』の初演があった年です。
----望月さんの作品は良かったですね、『舞姫』とか『レ・ミゼラブル』も良かったし、きちんとしたストーリー展開のできる振付家でした。惜しい方を亡くしましたね。
谷桃子バレエ団でデビューしたのはどの作品でしたか。
永橋 『白鳥の湖』です。
----もちろん、谷桃子先生の教えを受けられて。
永橋 はいそうです。22歳の時でした。谷先生の教えは、テクニックよりも感情表現、いつも気持ちで心を込めて踊って、と教えられました。特に『白鳥の湖』と『ジゼル』は先生の想い入れも強かったので、リハーサルでもまず、「それでいい」という言葉はありませんでした。先生が見せてくださる一瞬の仕草が素晴らしく、言葉で言われたこともそうですが、目で見た姿がいつまでも心に残っています。その気持ちを忘れないようにして、いつもそこに戻れるようにしています。谷先生に直接教えていただけたのは、私の年代くらいで最後だと思います。本当にありがたかった、と思っています。
----今はもう、ほとんどのクラシック・バレエの名作は踊られましたね。
永橋 はい。やはり、『ジゼル』が好きです。
----谷桃子バレエ団は古典と創作の両方を大切にしてきていますが、コンテンポラリー・ダンスの方では何がお好きですか。
永橋 クルベリー版の『ロミオとジュリエット』が好きです。
----ドレスデンではフォーサイス作品も踊られましたしね。
永橋 はい。フォーサイスが踊れただけでもドレスデンに行った甲斐があったというくらい嬉しかったです。あの頃のフォーサイス作品はクラシックの基礎ができていないと、絶対に踊れない作品でした。
----そうですか、最近の作品は違いますからね。永橋さんも久しぶりの舞台となりますね。
永橋 昨年、ウラジオストックのマリインスキー劇場でアリエル版『眠れる森の美女』のオーロラを踊って以来の舞台になります。日本の本公演では、2016年の新春公演『眠れる森の美女』以来2年ぶりの舞台となります。
----今回の『ロミオとジュリエット』を踊るにあたって、ここを気をつけようと思われていることはありますか。
永橋 ジュリエットを踊るためには、思いっきり心を込めて全身で踊ろうと思っています。自分の性格と合っているかどうかはわかりませんが、とにかく全力で臨むつもりです。まだ、振りに追われてしまっている部分があって、すっきりとは踊れていませんが、これからさらに感情表現にも磨きをかけて踊るつもりです。
----「バレエ・ローズ」という公演ですが、永橋さんのお好きな花と色はなんですか。
永橋 お花はアーティチョークというアザミのような花が好きです。好きな色は紫ですね。
----今回、春休みの公演ですから、小さいお子さんも見に来てくださると思います。何かアドヴァイスをお願いします。
永橋 コンクールなどでヴァリエーションだけを踊る機会も多いと思いますが、作品の物語全体の中の場面であることをしっかりと意識して踊ってください。テクニックのことにばかり気を取られていると、登場人物の気持ちを忘れてしまうことがありますから、感情の面も気をつけて踊ってください。
永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
Chacott バレエ鑑賞普及啓発公演
〜ようこそ美しきバレエの世界へ〜
一夜限りのおしゃれなロマンティック・ファンタジー
Ballet Rose in Love Stories
〜バラで綴るバレエの恋の物語〜
演出・振付:伊藤範子
●2018年3月26日(月) 開場17:45 開演18:30
●新宿文化センター 大ホール
▼公式サイト
http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/balletrose/
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