前回記事をアップしてからも、世界状況は目まぐるしく変化しています。
- インタビュー & コラム
- コラム 針山愛美
掲載
新型コロナの影響で、各地の劇場は閉鎖を余儀なくされ、ヨーロッパ、ロシア、アメリカはじめ世界中各地のバレエ団は夏までの公演をほぼキャンセルしています。
4月から今に至るまでの各地の近況をご報告いたします。
まず、現在はアメリカニューヨークのABT(アメリカンバレエシアター)でバレエミストレスを務める元キーロフ劇場の名プリマバレリーナ、イリーナ・コルパコワ先生と話をしました。
夏に予定されていたメトロポリタン劇場でのパフォーマンスは全てキャンセルになり、リハーサル等もなく、現在も活動はしていないそうです。
コルパコワ先生はじめ、ダンサーの多くもニューヨークにとどまり、外出は控えているそうですが、お給料はパフォーマンスの時と同じように出ているとおっしゃっていました。
とても厳しい状況にあると思いますが、芸術に対して理解ある素晴らしい対応だと思います。
ベルリン国立バレエ団は、5月13日からクラスを再開したそうです。
バレエ団が再会した5月から今現段階で、1グループ6人から8人で行われ全部で12グループ、各1時間のクラスが行われているそうです。
感染予防のため、毎回クラスのメンバー、バレエマスター、開始時間は変えずに行われています。楽屋に入れる時間、スタジオでのウォーミングアップの時間、クラス後のクールダウンの時間など、細かく決められ感染予防に最大の配慮がなされていると言うことです。
またクラス後、次のグループのクラスが始まるまでは1時間の空き時間があり消毒などが行われています。
2日間ドイツオペラの舞台を使い、ソロやデュエット作品をビデオに撮りガラ形式で発表する予定で、映像が楽しみです。
今シーズンは6月21日で終了します。
クロアチア国立バレエ団では、5月中旬から5月24日までの2週間の間は、カンパニーのダンサーの主要メンバー(若い踊れる人達)を優先的に、7人ずつ5グループに分けてレッスンが行われたそうです。
10時ー11時 Aグループ クラス
11時ー12時 休憩、舞台の消毒
12時ー13時 Bグループ クラス
13時ー14時 休憩、舞台の消毒
14時ー15時 Cグループ クラス
15時ー16時 休憩、舞台の消毒
16時ー17時 Dグループ クラスまでで終了。
1日最大4グループで、次の日は5つ目のEグループ目からレッスンを開始していたそうです。
クロアチア国立バレエ団の内部
3月22日、クロアチアの首都ザグレブでマグニチュード5.4の地震が発生し、数軒の建物の倒壊や教会の一部が損壊するなどの被害が出た影響でスタジオが使える状態ではなく、劇場の方の建物は無事なので舞台上で行っていたそうです。
1本のバーに2人まで、先生とダンサーとも間隔を保ちながらのレッスンだったそうです。
そして5月25日からは、スタジオで全員クラスを10時から11時15分とリハーサルが再開されているそうです。
6月に入ってからは、カフェやレストランなどもオープンし、ザグレブは元の生活に戻りつつあります。
野外ステージで、5月30日に政府向けの舞台が行われたそうです。
オペラ、演劇、バレエ各部門全てが出演し、ガラ形式のパフォーマンスだったということです。
その後も、劇場前の屋外ステージで公演が数回控えており、15時からクラス、リハーサルをしているそうです。
バレエ団は、6月18日から「グレンバイ」(振付:Leo Mujic )の公演を6回行う予定とのこと。
作品のリハーサルでは、間隔をあけること、ダンサー同士が触れ合えないため、振付し直したそうです。
7月5日からは夏休みの予定です。
ヨーロッパの10カ国くらいを対象にボーダーも開け出したようで、街もすっかり元通りに戻っています。
以上がクロアチアからのレポートです。
スロバキア、コシシェ州立バレエ団近況
スロバキア、コシシェ州立劇場
6月に入り現在はスロバキアの規制も徐々に緩和され、それに伴い1クラスで受ける人数の増加、時間の延長、更衣室も使用可能になりました。
6月8日からは平日毎日レッスンが可能となりました。
6月18日には、無観客での公演撮影があるため、一部のダンサーは、それに向けたリハーサルも始まっているそうです。
シーズンが終わる6月30日までは、10月末に世界初演として予定されている「ヌレエフ」のリハーサルを行うそうです。
劇場内の消毒
距離を置いて並ぶ
7月1日〜8月16日がシーズンオフですが、コロナによる様々な影響を考慮し、海外から来ているダンサー達の多くはこのままスロバキアに残るようです。
8月17日から次のシーズンが始まり、「ヌレエフ」を中心に、その他レパートリーのリハもしっかり再開したいと聞いています。
6月付で、芸術監督とディレクターが変わり新体制となり来シーズンを出発することになりました。楽しみです。
マスクの自動販売機
バレエ団ではありませんが、ウィーン・フィルハーモニー交響楽団はシーズンが終わる前、6月7日にコンサートを再開しました。
これは素晴らしい知らせとともに、勇気のある決断です。
しかし、最初は100名の観客のみでのコンサートでの開催だったそうです。
以上、世界各地からの声をお届けいたしました。
私は、今現在新型コロナの影響で海外へ戻れなくなり、日々、流れてくるニュースを聞きながら様々なことを考えています。
日本では両親の住む伊豆に身を寄せていますが、伊豆の大自然のエネルギーに圧倒され、力をもらい、美しさに感動し、その場で自然に体が動き出してしまいます。
何か自分にできることはないかと思い、踊ることで人に少しでも笑顔を取り戻していただければ、と父が携帯で撮影した動画や写真などをSNSなので配信してきました。
こんな時に、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は逆に、こういう時だからこそ、見て心が和むような、明るい話題を届けられたらと思いました。
その映像を見てくださった事がきっかけとなり、私と同じ思いを持った素晴らしい方々が集結して下さりました。かけがえのないご縁をいただき、本格的制作プロジェクトが始動することになったのです。
ドローンを使った空撮、日本では未だ数社しか導入してない8Kでの撮影、またクレーン等も使い大がかりな撮影を決行する事になりました。
伊豆の大地、大自然の中で「白鳥」を踊る姿を映像に、、、考えるより先ずは実行しよう。大赤字になっても実現させたいと、あっという間にプロジェクトを行うことに決めました。
まだまだ沢山の方々のお力を借りなければ映像を完成することは出来ませんが、8月中旬以降に完成できる事を願っています。
参加したスタッフ全員の熱い思い、メッセージ、コンセプトが詰まった結晶になればと心より願います。
世界の方々に大自然の美しさを見ていただき、日本、伊豆に来ていただきたい。
そして、いつの日か、野外ステージで大地の声を聞きながらパフォーマンスできる日を夢見ながら進んでいきたいと思います。
インタビュー & コラム
針山 愛美 Emi Hariyama
13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。
1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
◆Emi Hariyama Official Page
『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』
針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)