今世界は、新型コロナウィルスの影響で今までにはなかった状況に置かれています。
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- コラム 針山愛美
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世界中のアーティスト、ダンサーも影響を受け、自宅待機している方々がほとんどです。
そんな中、一人一人が今できることを考え、活動しています。
今まで、私が2004年から過ごしてきたドイツ。
3月にドイツでは、メルケル首相が国民に訴えかける素晴らしいテレビ演説をされました。
厳しい政策を打ち出しましたが、国民が理解できるようしっかり、はっきり、わかりやすい語り口調で、国民の理解を求めました。
そんな中、打ち出されたドイツのアーティスト、フリーランスの方々、芸術家、個人事業者のための支援プランは素晴らしいと思います。
ここから、文章を少し引用、翻訳させていただき例に挙げます。
ドイツでは2020年3月25日、新型コロナウイルスによる経済への打撃を緩和するための総額7500億ユーロの財政提案が承認されました。
その中にはアーティストの支援プランが含まれます。
文科省のモニカ・グリュッタースは「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在である」と伝え、芸術家等をサポートすることを決定しました。
フリーランスやアーティストへの経済的支援を求める嘆願書への署名運動が日本でも提出されていますが、ドイツでも署名活動が行われていました。
支援はもう始まっており、実際に知り合いのアーティストで既に受け取った方々もいるようです。
助成金に加えて失業保険を含む社会保障も、4月から10月の6ヶ月間、個人やフリーの方々が利用できるようになるそうです。
「助成金は、返済する必要はない」との事です。
日本とドイツの文化政策の予算は全く違いますが、ここでも本当に差があります。
日本では、アーティスト、芸術家は厳しい立場に置かれています。
日本政府は、4月6日現在までは自粛要請を出すものの、自治体やその地方に判断を任せています。そのため、大きなイベントを行うところ、自粛するところ、個人的に決定しなければいけない状態で、主催者、決定される方々にとっては本当に大変なことです。
そんな中、緊急事態宣言が出て今後どうなっていくのか、皆様より一層不安な日々を過ごしていることと思います。
日本も世界も大変な世の中ですが、こんな時こそ芸術の力が人々の力になると信じています。
劇場でパフォーマンス出来ない今、過去に収録した演奏やパフォーマンスを、オンラインで発信する劇場が増えています。
生で見る素晴らしさ、鳥肌が立つような感動は現場でしか得られませんが、それでも世界各地の素晴らしいパフォーマンスを自宅で見ることができるのは幸せなことです。
また、世界のダンサー、教師たちがオンラインでクラスレッスンなども発信しています。
世界中の人々がオンラインで出来る事を考え実現しています。
今後、世界の流れが少し変わっていくかもしれません。
しかしやはり生の芸術は、永遠に生き残って欲しいと強く思います。
ここからは、2020年4月6日現在のヨーロッパはじめ、世界状況に少し触れてみます。
まず、ウィーン国立歌劇場です。
こちらは、シーズン最後まで劇場を閉鎖することを決めました。
マニュエル・ルグリ芸術監督の、10年間就任の最後の年だったためこのような終わり方になり本当に残念に思いますが、またミラノで芸術監督に就任されその活動を心より楽しみにしています。
ウィーン国立歌劇場、ウィーン・フィルハーモニーの音楽家にもインタビューしました。現在は活動できず、夏のフェスティバルの開催を検討中との事でした。
ウィーン歌劇場
ベルリンフィルハーモニー
私が長年お世話になっている、ウラジーミル・マラーホフ氏にもベルリンからの情報を聞きました。
現在、ベルリンは3人以上で集まる事を禁止されていたり、イベント等も開催は不可能になっています。
街はひっそりとしているそうです。
本来彼は、2020年4月29日にスロバキア州立コシシェ歌劇場で、「ルドルフ・ヌレエフ」の新作に出演する予定でした。
マラーホフ氏のために作品が作られる予定でしたが、それもキャンセルになってしまいました。
彼は3月中旬まで「キエフ・グランプリ」の審査員を務めており、それが終わった次の日からキエフの劇場は閉鎖になったそうです。
その数日後にスロバキアに向かうはずでしたが、スロバキアの劇場は無期限で閉鎖、今シーズンの劇場復帰は難しくなったそうです。
現在、延期されるか、作品自体がどうなるか交渉中ということです。ぜひ延期して実現して欲しいと思います。
その他、6月末から7月初めにかけてスロバキアで予定されていたフェスティバルも延期になりました。
こちらは、開催が決定すれば日本からの参加も可能なフェスティバルであったため残念ですが、来年開催される場合は早い段階で情報公開したいと思います。
スロバキア
スロバキア
クロアチア国立歌劇場は、昨年11月にマラーホフ氏が新作「くるみ割り人形」を振り付け演出し、私はアシスタントとして携わらせていただき、つい最近訪れた劇場です。
こちらも劇場は閉鎖していますが、その上先月は地震があり、中心部の大聖堂等に大打撃があったそうです。ダンサーの方々と話をしましたが、とても不安な日々を過ごしていたようでみんな口々に、日々普通に生活していたことがどれだけ幸せかと言うことが身に染みてわかった、毎日を大切に過ごしたいと言っていました。
クロアチア国立バレエ団にて
クロアチア国立バレエ団にて
ニューヨークでは、ブロードウェイのミュージカルも閉鎖中、メトロポリタンオペラも閉まっています。
これは一例ですが、世界中、今どこの劇場もオーケストラも閉鎖しています。
日々、刻々と変わる状況、まだどうなっていくのか分からない状況の中、芸術の力は永遠だと信じます。
この状況を世界中の皆で乗り越え、また生の舞台で感動を分かち合える日が戻ってくることを心から願います。
そして、自分自身も、今できることを実現していきたい、今までできなかったことを実現するための時間を与えられたと思い日々過ごしたいと思います。
インタビュー & コラム
針山 愛美 Emi Hariyama
13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。
1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
◆Emi Hariyama Official Page
『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』
針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)