今回はクロアチアからお届けいたします。

2019年11月29日、クロアチア国立歌劇場でウラジーミル・マラーホフ演出・振付・台本による『くるみ割り人形』が世界初演されました。
私は、前回2017年3月に同じクロアチア国立歌劇場で初演された『白鳥の湖』に引き続き、演出・振付補佐を務めさせて頂きました。
バレエ団は幅広い年齢層のダンサーたちで成り立っています。
最近は国際色も豊かになり、ヨーロッパだけではなくブラジル、オーストラリア、日本などからのダンサーも活躍しています。

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クロアチアの首都、ザグレブにある国立歌劇場は歴史ある建物で、ヨーロッパの格式高い雰囲気です。街もとても素敵で、お店やアパートなど普通の建物でも見てるだけで心が豊かになるようです。

今回のマラーホフ版『くるみ割り人形』の演出は、冒頭から最後までクララの夢であったと言う設定になっています。その中で、ドロッセルマイヤーが物語を引っ張っていく重要な役割となっています。
主役の女性はクララ役として、1幕最初から最後の金平糖のパ・ド・ドゥまで1人で踊り切ります。
音楽は、チャイコフスキーのオリジナルを使用していますが、所どころアレンジが加わっています。

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1幕冒頭のシーンは、ダンサー1人ひとりが様々な家族像を描きながらクララの家に入って行きます。皆、自然な演技が素晴らしく最初から物語に引き込んで行きます。
パーティーの場面でも、クララの家にゲストに訪れた各家族が面白おかしく場を盛り上げ、まるでコメディの様な場面も。
1幕2場でネズミと兵隊が戦う場面では、スペイン、アラビア、中国、ロシア、フランスの人形たちもクララの味方として加わります。そして、この場で登場した人形たちが2幕でクララを迎え、ディヴェルティメントを踊ります。

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2幕では各国のそれぞれ踊りの間に間奏が入り、毎回パントマイムが入ります。
それによって、ディヴェルティスメントがコンサート形式のようにならず、物語が続いて行くので子供たちにもよくわかるような演出で、マラーホフ氏の意図がよく出ています。

最後の花のワルツでは、ソリスト役で各国の踊りのカップルが出演し、衣装も豪華でとても華やかな1場面となっています。
最後の金平糖のパ・ド・ドゥは、かなり高度なテクニックを要する振付で、ここでもマラーホフ氏の特徴がよく出ていました。

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衣装とセットを担当した Jordi Roig は、ベルリン国立バレエ団でも『ラ・バヤデール』や、『ラ・ペリ』などのデザインをしてくださいました。一つ一つの衣装にこだわりがあり、本当にクオリティーの高い素敵なデザインでした。

リハーサルは、いつも温かい雰囲気で進んでいきました。マラーホフ氏はいつもその現場の状況を大切にし、ダンサー達にはできるだけ負担のないよう配慮しながらも、熱のこもった指導を行っていました。
またプリンシパルダンサーのリハーサルの時には、1人3役、ときにはドロッセルマイヤー、くるみ割り人形、ネズミの王様にまでご自身で見せながら指導されていました。
主役のリハーサルでは、それぞれのダンサーが1番よく見え、踊りやすいような振りに少しずつ変え、各カップル毎のオリジナル版が確立されました。

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主役のカップルは6キャスト、日替りで上演されています。
初日の11月29日は、クロアチア出身イバ・ヴィタック・ガメイロ、ポルトガル出身のギレウム・ガメイロ・アルベスのカップルが踊りました。
プライベートでもカップルである2人は息もぴったりで、パ・ド・ドゥでは優雅で正確な踊りと夢を感じる華やかさを見せてくれました。
ドロッセルマイヤーは、同バレエ団監督でもあるレオナルド・ジャコビナが務めました。立っているだけでオーラがあり、さすがでした。
パフォーマンスは大成功を収め、惜しみない拍手が続きました。
公演は今も上演中で1月までに計20回公演行われていますが、チケットは発売の翌日に全公演分が完全完売したそうです。
大人も子供も楽しめる夢ある作品、いつか、日本でも上演されることを願います。

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振付・演出・台本:ウラジーミル・マラーホフ Vladimir Malakhov
指揮:Dian Tchobanov
衣装・セットデザイン:Jordi Roig
照明:Deni Šesnić
振付・演出・台本補佐:針山愛美 Emi Hariyama
セット補佐:Enrique Conde Martinez, Irena Kraljić
バレエミストレス、マスター:
Pavla Pećušak, Edina Pličanić, Mihaela Devald Roksandić, Suzana Bačić
Izrada maski
Enrique Conde Martinez

初日キャスト
クララ:Iva Vitić Gameiro イバ・ヴィタック・ガメイロ
プリンス:Guilherme Gameiro Alves ギレウム・ガメイロ・アルベス
ドロッセルマイヤー:レオナルド・ジャコビナ

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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