人生初めて訪れた外国の土地ロシアは、いつ来ても様々な思いが蘇ります。

そして、長年住んでいる街ベルリンも特別です。今回はその両方からお伝えいたします。

今年で3回目になるボリショイバレエ学校での夏の短期留学では、今回もたくさんの才能溢れるバレリーナたちと一緒に過ごし、私自身も様々な事を学びました。

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ボリショイバレエ学校劇場にて

クラッシックレッスンでは、ワガノワ・メソッドを再確認し、改めて、幼いうちにしっかりとした基礎を身につけ、土台を作ることの大切さを感じました。
アンデオール、つま先を伸ばす、膝、5番ポジションなど基本の基本ですが、どの先生方も何度も何度も繰り返しおっしゃっていました。
ロシア人は骨格などの条件に恵まれ、選ばれた子供たちが国立バレエ学校に入学します。日本では環境が違います。完璧にバレエに恵まれた条件を持っていないのに、強制的に無理をさせすぎると足を痛めたりする可能性はありますが、筋肉の使い方で努力していくことは大切だと思いました。
レッスンは数日間同じ振付で、振付を覚えると、どのように身体を使うか、どのように踊るかに集中できる素晴らしい内容でした。

キャラクター・ダンスは、ロシアで勉強しておくと、全幕バレエの時に大変役に立ちます。
キャラクター・ダンスはクラッシックとは違いアンデオールが完璧にできていなければやり直しと言う事は無く、皆楽しく和気藹々とレッスンを受けていました。
その他、レパートリークラスでは日本ではあまり踊られることがない作品や、バリエーションを教えていただき大変勉強になりました。

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ボリショイ劇場

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ボリショイ劇場の前

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赤の広場周辺

レッスン以外には、ロシアバレエ団の、「白鳥の湖」と「くるみ割り人形」を見ました。
ロシアバレエ団は、自身の劇場も持っていますが、今年の夏は、ボリショイバレエ学校の近くにある劇場で上演していました。

「白鳥の湖」は、コールド・バレエ(群舞)がよく揃っているのが印象的でした。
見に行った日はボリショイ・バレエ団のイーゴリ・ツベトコフが特別ゲストでジークフリート王子を踊り、洗練されたテクニックを披露しました。
3幕の民族舞踊は、スペイン、マズルカ、ナポリなど迫力満点でした。ダンサーたちは様々な国の特徴をしっかり出し、エネルギーたっぷり、魅力的に踊っていました。
ロシアバレエの伝統を伝えるクラッシックバレエの殿堂、心に残るパフォーマンスでした。

「くるみ割り人形」の演出は、見やすくわかりやすい演出で、子どもも大人も楽しめる舞台でした。
一人ひとりのダンサーが活き活きと踊っていて、それが観客に伝わり、会場全体がエネルギーあるものになっていました。

短期研修では、ボリショイ・バレエ学校の休みの日にロシアバレエ団での研修を行いました。
現役の先生が見本を見せて教えてくださり、百聞は一見にしかず、と言うように、実際に目で見ることで一目瞭然でした。先生はリクエストに応え、何度もバリエーションを踊って見せてくださるなど、素晴らしい時間でした。
ロシアの街並みも含めて、本当に芸術的な国です。ここでの経験が、将来に役立ってくれることを願います。

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赤の広場周辺

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モスクワ、クレムリン外観

8月から9月にかけて、ベルリンも訪れました。
ベルリン国立バレエ団、ベルリン国立バレエ学校でも新しいシーズンが始まっています。
ベルリン国立バレエ団は、今シーズンから芸術監督にサーシャ・ワルツが就任しました。
サーシャ・ワルツは、自身のカンパニーを継続しながらの活動となります。
先シーズンから芸術監督を務めている、ヨハネス・オーマンと2人でベルリン国立バレエ団を率いていきます。
バレエ団には多くの新しいダンサーが加わりました。中にはコンテンポラリー専属のダンサーとして入団した方もいます。今後、クラッシックとコンテンポラリーがどのように切磋琢磨していくか興味深いです。

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ベルリン国立劇場の中

8月31日、ベルリンでは様々なカルチャーイベントが行われていました。
ベルリン国立歌劇場は、オープンデーとして一般の人々のために様々なイベントを無料で公開していました。
ステージでは、オペラのハイライトパフォーマンスが行われ、野外では、子供向けのダンス教室が行われていました。
私が、2004年から2014年まで働いた思い出ある劇場ですが、改修工事をして新しくなった為、以前のスタジオなどは無くなりました。今回初めて、国立歌劇場内のバレエスタジオも見る事が出来ました。
また、世界遺産である博物館島では、ロングナイトミュージアムデーで夜間博物館が無料で公開されました。
ダンスイベントも行われ、ベルリン国立バレエ学校の生徒達が、博物館の階段でパフォーマンスを行うなど、たくさんの人々で賑わいました。
ベルリン国立バレエ学校の生徒たちは、階段を上がったり降りたりしながら軽やかに舞い、階段でデュエット、難しいリフトを披露するなど見ごたえがありました。ロシアでもヨーロッパでも、アートイベントが多く、アートが日常の中に身近にあることを感じました。日本もそうなることを切に願います。

来月は、またロシア、サンクトペテルブルグなどからお届けしたいと思います。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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