踊る喜び、見る楽しさを伝えたい、そしてバレエの裾野を広げたい・・・

誰もが気兼ねなく集まってくれる場所、劇場の力を借りて、今年度で2年目となるダンスプロジェクトを開催することができました。
2017年度は3つのグループ、2018年度は6つのグループに分かれてワークショップを重ね、パフォーマンスを行いました。
ジャンル、年齢、所属スタジオを問わず、一般市民の方々からバレリーナを目指す方々まで一般応募して集まってくださった方々でパフォーマンスを行うという、誰でも参加できるイベントです。
今回もダンス経験者や未経験者の方々が、豊中市文化芸術センターに集まりました。

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© 植村耕司(すべて)

今年度は合計12回のワークショップを行いましたが、毎回和気藹々とした雰囲気に包まれました。大人の方々の舞台に向けての熱意や子ども達のエネルギーで、熱気溢れる空間となり時間が過ぎるのも忘れる程でした。
毎回、子ども達の発想力の豊かさは限りないものがあると驚きの連続でした。

今回のパフォーマンスでは、1部はみんなが踊りたいものを踊る自由作品、2部は参加者全員で「くるみ割り人形の全幕ハイライト」を行いました。
バレエ経験が無い方も、5歳の子供から大人までが、全員一緒に、くるみ割り人形を上演するなど、最初はどうなるかと思っていましたが、本番の臨場感、そしてみんなの笑顔が輝きを放っていました。最初のシーンは客席からの登場と言うことにしたのですが、客席からお友達もステージに連れてきて良いということにしたので、参加者が手をひいて沢山の子ども達が一緒に舞台に上がり、本当に華やかな一瞬になりました。

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ワークショップの内容は「ダンス」プロジェクトだったのですが、限られた事に留まらず様々な経験をしていただきたいという思いから、アートに関わるありとあらゆる事を行ってきました。
踊るためには、様々な要素が必要です。
その1つに音楽を理解し、感じ、表現する事が大切だと思います。
今回、ダンスを全くやった事がない子ども達も、バレエを長い間踊ってきた子ども達も、音楽を聴いて自分で振付けを考えるクリエーションを行いました。
またワークショップの中で、打楽器やタンバリンなど10種類以上の楽器を用意し、好きな楽器を演奏しながら踊ることも行いました。みんな見た事がない楽器にも興味津々で、音を鳴らしてみるともっと面白いと感じたようで、本当に生き生きとした表現をしていました。

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バレエは、大抵は振りを教えてもらうかビデオなどで覚えて、その振りの通りに踊ります。
自分で振付けを考える機会はなかなかないので、最初は動揺していた子ども達ですが、最後には様々なアイデアが湧いてきて決まりきらなかったようでした。
逆に、ダンスをしたことがない子ども達にバレエ「くるみ割り人形」のネズミと兵隊のシーンの音楽を聞いてもらい、「これを聞いて何を想像する?」と質問すると、様々な答えが返ってきて予想しなかった展開になりました。
先入観のないままに、子供達に自由な発想が出来る環境を与えると、本当に面白いシーンが出来上がっていきます。

ワークショップの中で、子ども達は踊りながら絵を描く事も行いました。
実際ステージの上でも、自由に演奏しながら自由に踊ったり、絵を描きながら踊る事もしました。時間は決めていなかったのですがみんな本当に楽しそうに様々な表現をし10分ぐらいそのシーンが続きました。
そしてパフォーマンス中にステージで描いた絵と、ワークショップで描いた絵を、「くるみ割り人形」のセットに使いました。

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毎回何をするのか参加者も予想出来ないワークショップを行いましたが、その様々な経験が踊りの要素として、人生においても将来生きてくると思います。
今は便利な時代ですが、コンピューターや携帯の前に座る時間が増え、体を使って遊んだり、身体表現をする機会が減っているように思います。
そんな中、本当に楽しめること、喜びを持って取り組めること、一生懸命になれることがあれば素晴らしいと思います。

今回のプロジェクトでは、参加者の想いやアイデアと共に作品を作っていきましたが、踊っている側も、見ている側も笑顔が溢れる舞台を目指していました。
そして垣根なく様々な特技を持った人々が集まり、1つの舞台に向かうその時間や空間を共有した中で、バレエを楽しんで下さる方々の裾野を広げたいとまた強く思いました。

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© 植村耕司(すべて)

まだまだ日本では、一般の方々にはバレエは敷居が高いイメージがあります。また、普通に生活している中で、生の舞台で心から感動したり、生の音楽を聞いて鳥肌が立つような経験をする機会は遠い世界なのが事実です。
バレエの持てる力、芸術の持てる力を、もっと気軽に、楽しい形で、疲れない形で幅広く伝えていくことができ、裾野を広げていくことができればと思います。

「1人でも多くの方に心から楽しんでいただき、その上で芸術が持てる力、真髄を伝えたい」
今後もバレエの素晴らしい伝統、真髄は引き継ぎながら、それとはまた別に広く一般の方々にも気軽に楽しんでいただける芸術、エンターテイメントを提供できればと思っています。
そして、共感する方々が集まり、共に創造できるようなプラットホームを作っていければと思います。

来月は、ヨーロッパなどからまた海外情報をお届けします。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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『世界を踊るトゥシューズ〜私とバレエ』

針山愛美/著 Emi Hariyama
体裁:四六版並製、240頁ISBN978-4-8460-1734-7 C0073(舞踊)

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