日本はすっかり春らしい季節ですね。

ベルリンも少しずつ春らしくなって来ました。
今シーズンそしてマラーホフ監督のもと働くのもあと2ヶ月半となり、一言では言えない思いになる一瞬が多々あります。
いつも和やかな雰囲気の中リハーサルしています。

3月に入ってから、ラトマンスキーとスタントン、両氏がいらしてハーサルも熱が入ったものとなっていました。
3月20日は朝からゲネプロでしたが、各国からマラーホフ監督を見にいらしたお客様や、プレスの方がいらして活気のあるものとなりました。

Photo : Emi Hariyama

Photo : Emi Hariyama

そして3月22日
『Clear』と『Namouna』の初演。
初演後は、3月26日、30日、4月4日、5日、8日にも公演がありました。22日は今シーズン最後のプルミエでもあり、シラー劇場は満員のお客様で埋まり、温かく素晴らしい雰囲気に包まれました。

『Clear』
ドイツ初演 音楽:Johann Sebastian Bach
振付:Stanton Welch
衣装:Michael Kors für Cèline
照明:Lisa Pinkham
指揮:Paul Connelly
演奏:シュタッツカペルベルリン
<キャスト>
エリザ・カブレラ
ウラジーミル・マラーホフ
ミハイル・カニンスキー
マリアン・ワルター
アシャック・ギャルミャン
ウラド・マリノフ
ウリアン・トッパー
ドミニク・ホダル

2001年にABTで初演された約25分の作品で、4楽章から成り立っています。
女性1名と男性7名が入れ替わり踊り続け、見応えたっぷりの作品。最初は男性ダンサーが総勢でジャンプ、照明も『カラバッジョ』を思わせる情緒ある美しさ、それに音楽の音色が加わり、初めから心をつかみます、そして一人ずつ順番に踊り入れ替わり立ち代わり踊りながら舞台を横切って行きます。2楽章は、マラーホフ監督とミハイル カニンスキーのデュオ、優しく美しい音楽に、マラーホフ監督の表情、心から染み出る情感が本当に美しい。3楽章は主にウリアン、ウラド、アシャックとエリザのコラボレーション、4楽章は総勢で締めくくり。
お客様の反応は素晴らしく、大成功でした。
ABTの初演の際のバレリーナはジュリー ケント。後にも触れますが、27、28、31日は「マラーホフとフレンド」の公演。そのためにベルリンに来ていた、ジュリー ケントと今回パートナーとして来ていたのマルセロ ゴメスが30日見に来ていました。袖で見ていたジュリー、懐かしそうに作品を見つめていました。
お客様の反応はと言いますと、ブラボー、ブラボー大成功のうち幕を閉じました。

『Namouna』
ドイツ初演
音楽:Édouard Lalo
振付:Alexei Ratmansky
衣装:Rustam Khamdamov | Marc Happel
照明:Mark Stanley
<キャスト>
Nadja Saidakova
Elena Pris
Sarah Mestrovic
Iana Balova
Stephanie Greenwald
Rainer Krenstetter
Ulian Topor

2010年にニューヨーク・シティ・バレエにて初演されました。作品のスタイルはネオクラッシック、高度なテクニックを要する見応えも踊り応えもある作品です。
約1時間の作品ですがあっという間でした。ソリストに加え女性のコールドバレエ16人と男性コールドバレエ8名、総勢で踊るシーンなどは圧巻でした。
ラトマンスキーはマラーホフ監督のクラスメート、しかも寮でも同じ部屋でルームメートでもあった仲。終演後の舞台上のスピーチもユーモアたっぷりで温かく楽しく素晴らしかったです。
公演後のパーティでは、マラーホフ監督自身が挨拶され、これが最後の初演でした、、、と話された時、何人もの今までバレエ団を支えてきた方々も少し悲しい気持ちになりました。今までの10年間のことが頭をよぎり、涙を浮かべている方もいらっしゃいました。
公演後は、自由に参加できるレセプションが劇場2階で行われ、何とも言えない素晴らしいひと時でした。

Photo : Emi Hariyama

Photo : Emi Hariyama

Photo : Emi Hariyama

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3月27・28・31日「マラーホフとフレンド」
今回で「マラーホフとフレンド」もファイナル。またまた心が熱くなる思いで見ていました。
プログラムは1月と同じですがもう一度、
『ショピニアーナ』よりアダジオ
吉岡美佳、ウラジーミル・マラーホフ
『SPRING WATERS 』
振付:アサフ・メッセレル
イリーナ・ペレン、マラット・セミョーノフ
『A SWEET SPELL OF OBLIVION』
振付:David Dawson
エリザ・カブレラ、ミハイル・カニンスキー
『白鳥の湖』よりアダジオ
上野水香、マシュー・ゴールディング
『葉は色あせて』
振付:アンソニー・チューダー
ジュリー・ケント、マルセロ・ゴメス
『レダと白鳥』
振付;ローラン プティ
ナディア サイダコーワ、ウラジーミル マラーホフ
『プルースト』
振付:ローラン・プティ
ライナー ・クレンシュテッター、マリアン・ワルター
『椿姫』
振付:ジョン・ノイマイヤー
ルシア・ラカッラ、マルロン・ジーノ
『ドン・キホーテ』
ヤナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカウ
『DELIBES SUITE』
振付:ホセ・マルティネス
上野水香、 マシュー・ゴールディング
<2部>
『ICARUS』
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
ウラジーミル・マラーホフ
『メロディー』
吉岡美佳、ビスラウ・デュディック
『101』
ウラジスラウ マリノフ
『DUETTO INOFFENSIVO』
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
ナディア・サイダコーワ、エリザ・カブレラ
『LIGHT RAIN』
振付:Gerald Arpino
ルシア・ラッカラ、マルロン・ディノ
『シナトラ組曲』
振付:トワイラ・サープ
ジュリー ・ケント、マルセロ・ゴメス
『スパルタクス』
イリーナ・ペレン、マラット・セミョーノフ
『THE OLD MAN AND ME』
振付:ハンス・ファン・マーネン
ベアトリス・クノップ、ウラジーミル・マラーホフ


前回と同じプログラムですが、ジュリー・ケントのパートナーとして今回はマルセロ・ゴメスが客演。『シナトラ組曲』はジュリーとマルセロのパートナーシップ、意気投合ぶりが秀逸。ジュリーが身を任せ自由に楽しんで踊っているところからも、その様子が伝わり笑顔になる踊りを披露してくれました。
マラーホフ監督は、6日間で5回の舞台をこなされて(3回は「マラーホフとフレンド」、2回は「スタントン、ラトマンスキーの夕べ」)疲れていらしたと思いますが、日に日にシャープでエレガント、気持ちの入った素晴らしい踊りで、観客を魅了しました。舞台上の彼は、いつ見ても特別な何かを放っています。
ゲストの方々も本当に気持ちのこもった素晴らしい踊りでした。
東京バレエ団から、吉岡美佳さん、上野水香ちゃんがベルリンにやって来て、これまでのマラーホフ監督の日本との交流のドイツでの締めくくりに、華々しく温かい花を添えてくださいました。
31日の終演後は、ゲストのダンサーの一人一人がバラの花を持って、舞台中央に立つマラーホフ監督のもとへ行き温かい拍手とキスを送ると、涙ぐむダンサーの姿も見えました。
彼は終始笑顔でステージに立っていましたが、後ほどのマラーホフ監督談、「涙が出そうになった時は花で隠して、また正面を見て、、、」と必死に涙をこらえていたそうです。
マラーホフ監督のお人柄から、今までの交流関係があって集まってきたダンサーたち、そして観客の皆様、みんながひとつになって温かく素晴らしい空気に満ち溢れた一夜でした。
この日はマラーホフ監督が、ベルリン・ドイツ・オペラの監督として踊られる最後の舞台でした。

Photo : Emi Hariyama

Photo : Emi Hariyama

今、私は、ペルミ国際バレエコンクールに来ています。
3日から13日までアラベスク、国際コンクールが開かれていまして、ワシーリエフが審査委員長、ニーナ・アナニアシヴィリなど審査員も素晴らしい方々ばかりです。私もプレス審査員で呼んで頂いていますので、コンクールの模様はコンクールが終了次第、レポートしたいと思います。
4月、5月は新作初演はベルリンではありませんが、『ロメオとジュリエット』『オネーギン』などを再演します。
来月も楽しみにしていて下さいね。

Photo : Emi Hariyama

Photo : Emi Hariyama

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi International Arts
針山愛美のバレエワールド

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